【論文紹介】なぜ歳をとると感染症にかかりやすく、また重症化しやすくなるのか?
Hematopoietic mosaic chromosomal alterations increase the risk for diverse types of infection (Nat Med, 2021)
論文へのリンクはこちら → https://rdcu.be/cl6XF
論文内容
[イントロ] ヒトの年齢と感染症への応答には関連があります。例えば、新型コロナウイルスは高齢患者で重症化しやすい傾向があります。一般的には、高齢になるほど感染症にかかりやすくまた重症化しやすくなります。これは免疫系の機能の低下や変化により引き起こされていると考えられており、"immunosenescence"と呼びます。
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[結果・考察] 本論文では、加齢と共に血球系細胞のゲノムに変異が蓄積し、それらが感染症への応答と関連することを報告しています。著者らは加齢に由来する体細胞変異をAge-related mosaic chromosomal alterations (mCAs)と呼んでいます。著者らは78万人(!)の血液を解析しmCAsを検出しました。ゲノム統計解析の結果、幅広い感染症との関連が確認されました。例えば、新型コロナウイルスによる入院等との関連です。mCAを有する血球系細胞の増殖は新型コロナウイルスにより入院した患者の6%において認められましたが、対称群では3%でした。これらの結果は、血球系細胞や免疫細胞におけるmCAは免疫系機能の低下のマーカーとなりうることを示唆します。
記事作成者コメント
本研究は体細胞変異と感染症との関連を丁寧かつ大規模に解析した研究です。特に、加齢と共に蓄積する体細胞変異が感染症と関連することを示している点が新しくユニークな視点だと感じました。感染症の発症・重症化メカニズムへの理解が求められる中、大規模なヒトゲノム解析からその原因の一つを明らかとした重要な研究だと考えます。
引用:Zekavat, S.M., Lin, SH., Bick, A.G. et al. Hematopoietic mosaic chromosomal alterations increase the risk for diverse types of infection. Nat Med (2021). https://doi.org/10.1038/s41591-021-01371-0
編集:ウイルス学若手ネットワーク 小嶋
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