歳寒くして然る後に松柏の彫むに後ることを知る
子曰く、歳寒くして、然(しか)る後に松柏(しょうはく)の彫(しぼ)むに後(おく)ることを知る
子曰、歳寒、然後知松柏之後彫也
(子罕第九)
寒くて厳しい冬の時には、より枯れない松やヒノキなどの強い木々を見分けることができる。
苦境こそ本性
この論語のことばでは、調子が良いときや物事が順調に進んでいるときは、誰でもうまくできるもので、苦境に立たされたときこそ、その人の実力が問われることを述べています。
ビジョントレーナー
私はサッカー指導者としての顔の他に、ビジョントレーナーとしての顔も持っています。
ビジョントレーニングとは目だけの訓練ではありません。そこに関与する脳であり、身体であり、心に刺激を加えます。
そのため、ビジョンとメンタルは密接な関係にあります。
我々人間は、基本的には動物でもあり、不安や危険を感じれば、脳は身を守る力を発揮します。
不安や不満は脳からの信号により血液中に緊張のホルモンが増えてしまいます。逆に明るく肯定的な意識は、脳幹の満足中枢が活性化し、神経ホルモンのドーパミンが分泌されるのです。
つまり不安な脳力が働くと、創造や予知も、これまで培ってきたことの知識や技術の発揮も、もっと言えば病気や怪我を防ぐ力も低下していきます。
逆境時は明るく朗らかに
私が指導・運営するクラブがある東京都北区出身の思想家・実業家である中村天風は、「積極一貫に生きる」ことを説きました。
大谷翔平選手も愛読するという中村天風の著書『運命を拓く』の中で、下記の言葉があります。
人間の健康も、運命も、心一つの置きどころ
ー中村天風
上に述べた脳の働きからもそれは間違いありません。
不安な時もあるでしょう。苦しい時期もあるでしょう。
その時、その時期を我慢して凌ぐのではなく、積極的に明るく朗らかに勇ましく生きることが大切です。
選手も指導者も難しい時期に、諦めず、我慢せず、積極精神でその逆境を乗り越えたいところです。
成長する選手達
トップの選手達でも、育成年代の選手達も、その心をいつも前に置くことは簡単ではありません。
指導者の私も人生の中で、そのことの難しさをよく理解しています。
それでも私が指導している子ども達には、節目の大会の中でそれを強く求めます。彼らはそれを素直に、一生懸命に意識して試合を行ってくれます。
鏡に曇りがあれば物は完全に映らないですが、しっかりと前向きな精神で戦ってくれる中で、課題も明確に見えてきます。
指導者としては、しっかりとプランニングして今後のトレーニングやゲームに反映し、そこに彼らが手にした自信と悔しさといった心を乗せて、また一緒に前に進むことができます。
枯れないどころか咲かす花も
様々な偉人が”逆境”についての名言を述べています。
逆境の中で咲く花は、どの花よりも貴重で美しい。
ーウォルト・ディズニー
枯れないどころか、花を咲かすこともあり、その花はそれはそれは美しいでしょう。
指導者は、指導者であるならば、自らも選手達も前向きな精神にしてやり、花を咲かせてやれる存在で在りたいものです。