サイエンスZERO「土」特集アンコール放送!!!
おしらせ
3/12 23:30~、5/18 11:10~ サイエンスZERO「土」特集のアンコール放送があります。以前のnoteを再掲いたします。人工土壌ネタは、クレイジージャーニー、松岡修造のみんながん晴れ以前にこちらで特集していただきました。
数か月、企画、ロケ、スタジオでお手伝いしました。
NHKは教育テレビ「ヘウレーカ!」の「ノー “土” ノー ライフ!?」、
BS キャッチ!世界のトップニュース「失われる土」特集以来です。
メイク担当の方に顔を覚えていただいていたのが嬉しかったです。
きっかけ
JST創発課題「熱帯荒廃地の炭素貯留を高める人工土壌のデザイン」に採択いただき、JST理事長の定例記者会見で講演いたしました。それをNHKの方が興味を持ってくださり、サイエンスZERO土特集につながりました。
なお、課題採択後、JSTの方からは「IPS細胞の山中さんのように、遅咲きの研究者を応援するのはJSTの存在価値なんだ」という話をいただきました。私はまだ花を咲かせてはおりませんが、大器晩成の可能性は誰にでも残されていると信じています。
土が酸性になる仕組み
私の研究テーマは、土が酸性になる仕組みの解明です。
始める前から「伝統的な酸性雨の研究」、「古臭い」、「パッとしない」と評価され、大学4年次から博士号取得まで研究費を1円も取れませんでした。私自身も悩みました。ところが、実際に土の酸性になる原因を調べてみると、酸性雨よりも植物や微生物の働きが大きいこと、植物や微生物が栄養を獲得するために積極的に土や岩石を酸性にしていることを解明しました。土壌酸性化=悪ではなかったのです。この内容で日本生態学会の奨励賞を受賞しました(自薦、ダメ元でした)。
土壌酸性化による土壌再生
とはいえ、土壌が酸性になると作物はよく育ちません。私が長く調査を継続しているインドネシアでは土壌酸性化によって畑が捨てられ、新たに熱帯雨林が切り拓かれていきます。ところが、インドネシアの現地で30年間残された土の変化を調べた結果、土が急速に回復する場所を発見しました。酸性な土に適応した植物、微生物が定着できた場合でした。
人工土壌という挑戦
うまくいかない場所もあります。土壌が分解・侵食によって失われ、微生物が極めて少なくなってしまった場所です。すぐに植林しても共生微生物がいなければ、うまくいきません。隣の森林から土を持ってくる客土では、隣の森が劣化してしまいます。堆肥も有効ですが、日本のように堆肥が充分にある場所ばかりではありません。そこで考えたのが人工土壌です。植物・微生物による酸性化によって岩石粉末を速く土壌化し、隣の森林の微生物が定着することができれば荒廃地にも移植できます。
宝探し
問題は土ができるのを実証するのに時間がかかることです。ところが、研究所の先輩が1978-1979年、岩石粉末をストッキングに詰めて埋設していたのです。しかし、先輩は1980年に急死。森の中に埋めた”タイムカプセル”は本人ですら見つけるのは困難です。回収は諦められていました。
しかし、私の好きな映画はGoonies。宝探しアドベンチャーです。見込みは甘く、空振りばかり。それでも、幸運にも奄美大島では40年前に埋設された岩石粉末を発見しました。そこには土のような構造があり、多様な微生物も定着していました。人工土壌に適した岩石材料や環境の選定を進め、インドネシアでも検証していこうとしているところです。
展望
これまで「土は人には作れない」とされてきました。いくら人工土壌がこれまでの認識よりも速くできたといっても、土ができるのには時間がかかるので、守った方が早いのは事実です。それでも、荒廃地を前に困っている現地(=インドネシア)の人々の希望を、人工土壌によって提供したいと考えています。
他のラインナップ
他にも、N2O削減ムーンショット、炭素貯留を高める団粒内部構造、アルツハイマー治療薬につながる微生物など。ややバイオ+テック色、楽観色が強めなのはサイエンスZEROという番組への歩み寄りです。いずれもそう簡単に解決できる問題ではありませんが、「土とのつきあい方を見直すことで、土も私たちの暮らしも変えられるかもしれない」というポジティブなメッセージになればと思って企画いたしました。土の話題は明るいものばかりではありませんが、まずは多くの方に興味を持っていただけるとありがたいです。