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噓日記 8/24 歳下の男の子

歳下の男の子が成功しているのを見ると、どうにも許せなくなる。
自分の器の狭さだとか、そんなちゃちな原因では断じてない。
俺は他人の全ての成功を妬んでいるため、歳下の男の子だけに妬み嫉みが湧くわけではないのだ。
そして、歳下の男の子の場合はただ単に妬むだけではない。
許さないのだ。
断じて。
成功した歳下の男の子の姿を目の当たりにすると可能な限り彼らの実家を攻め立てる。
一番攻められたくないところが実家だ。
俺はそれを闇金ウシジマくんのギャル汚くん編の肉蝮から学んだ。
こんな社会なので調べようと思ったら実家を割り出すことなど訳ないのだ。
俺は彼らの実家に突貫し、ポストに例のあれをぶち込む。
そう、ペプシのおまけのボトルキャップだ。
それもスターウォーズの。
もちろんキャラクターはジャージャービンクス。
作中一番の嫌われ者を模ったボトルキャップを投函される気持ちはもはや測りかねる。
それだけの威力がある。
俺は過去、祖母の棺にジャージャービンクスのボトルキャップを入れたところ、火葬場のスタッフから取り除かれたことがある。
あれは地獄への片道切符なんていれるものじゃないというスタッフの言外の優しさだったのだと解釈している。
その地獄への片道切符を無言で投函するのだ。
彼らの両親がそれを発見した時のことを想像するだけで興奮が止まらない。
ポストを開け、それを確認した時の絶望に染まる顔。
ジャージャービンクスにはそんな呪いが込められている。
一種、不幸の手紙的な側面もあると言えるだろう。
ジャージャービンクスは全ての曜日のゴミ回収に対応していない。
燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミ、粗大ゴミなどなど、どんな曜日のゴミに出しても回収してもらえない不幸の塊なのだ。
名指しされ、回収できません、と張り紙をされるのがオチだ。
そう、ジャージャービンクスはよく喋るタイプのゴミなのだ。
日本のリサイクルがより発展するまでジャージャービンクスが彼らの実家から消えることはない。
彼らがそれに耐えきれなくなり、他人の家のポストに入れるまでは。
そう、かつて俺がそうされたように。
俺も成功した歳下の男の子だった時代がある。
しかし、それもジャージャービンクスによって水泡に帰した。
実家に帰る度に、ジャージャービンクスのボトルキャップがこちらを恨めしげに見ているのだ。
いつしか耐えきれなくなり、同じく歳下の男の子の成功を見た時に湧く、「どうしてコイツの実家にはジャージャービンクスのボトルキャップがないのか」という気持ち。
悪意は連鎖する。
この世の悪意はジャージャービンクスによって循環していく。

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