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噓日記 5/20 知らない電話番号

知らない電話番号から電話がかかってきた時、我々はどうしたらいいんだろう。
今日はそんな知らない番号からの電話について俺が体験した話だ。
俺は普段知らない番号から電話がかかってきたとしても切れるまで待ち、その番号を検索して保険の案内だとか面倒なものじゃないかを確認するようにしている。
そんな知らない番号から今日、着信があった。
昼の十三時ごろ、休日ということもあって目が覚めてしばらくした頃だ。
知らない番号からの着信だったのですぐには取らず、それが切れるまで待った。
丁度十コール、なり続けた電話は切れた。
その番号をネットで検索してみたのだが、なんとも興味深いことに私が住む地方とはかなり離れた地域のおもちゃ屋からの入電だったようだ。
大方、娘が通販か何かでおもちゃでも買ったのだろう、そう思って折り返してみたのだがしばらくコールしても電話に出ない。
仕方がないので一度切り、そのまま日常に戻る。
そして十四時頃だったか、また着信があった。
番号はもちろん、先程のおもちゃ屋。
相手の素性が分かっているので今回は3コール程度で電話に出た。
「もしもし?」
そうやって意味もなく相手の出方を伺う言葉を吐く。
相手の素性なんてほとんど分かっているというのに。
無意味な時間だ。
「こちら、おもちゃの〜の渡辺と申します。〜さんのお宅でお間違い無いですか?」
電話口の男は慣れた感じでやや高い声で話す。
ええ間違いありません。
そう答えると、何故か電話口の男は神妙なトーンで話し始める。
「あの、薫さんからご注文いただいた件に関してなんですけど」
ああ、やはり娘が注文していたのか。
俺でよければ要件を聞いておこう。
薫の父ですが何かあったのなら娘に伝えますよ。
そう電話口の男に伝える。
すると男は言う。
登録頂いていた住所に誤りがあったのでご連絡しました。郵便番号と住所のどちらかが違うみたいなんです。
そう言うので、俺は正しい住所を彼に伝えた。
すると電話口の男も安堵したような声で礼を言い、電話を切った。
まさか住所を間違えるとは、俺の娘もまだまだ子どもだな。
俺は自分の頭をコツンと殴りつける。
俺に娘はいない。
正確には俺の頭の中にだけいる。
ちゃんとしろ!
罵声を鏡に映る俺にぶつける。
おもちゃも本当は俺が頼んだのだ。
俺はもう頭がおかしい。
だから俺の頭の中で家族を養うことでしか自分を保てない。
だから住所もあえて間違えた。
そうすることでリアリティが生まれるから。
電話口の男からすると俺は子どもがいる父親に思われただろう。
本当はただの狂人なのに。

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