噓日記 12/28 怪談頻出単語辞典
ばーっ【バーッ】─やって
①何かが突然現れること。「そしたら上からなんかが─て出てきよるんですよ」②早く動作をすること。「先輩来るから机の上、─片して」③大勢が来ること。「前の方から人の集団が─こっち走ってきて」〔近年では怪談中の動作を表す言葉の代用として、そのニュアンスを伝えるために用いられることが多い。例、「家帰ってシャワーを─浴びよったらですね、なんか気配感じよるんですわ。あぁ、この感じ後ろ振り向いたらアカンなぁ、でもなんか気味悪いなぁって感覚があるんです。せやから─振り返らんと風呂場に置いてる鏡で後ろ─見たったろうと。で、鏡に映る肩口の方から僕の後ろ─見たったんですよ。そしたらまぁ何も映らんのです。あぁ、勘違いか。ならええんやけどな、思って体拭いてさっさと風呂場から出たんです。ただその間もなんかの気配がずっとしよるんです。うわ、最悪や気持ち悪いなぁ思いながら髪乾かす時の賑やかしでテレビつけたんですね。ドライヤーで髪、─乾かしながらやったんでテレビから流れる音が全然聞こえへんのんです。ほんで、ドライヤーってクールモードがあるやないですか? あれで最後に仕上げたらサラサラなるって聞いてからずっとやってるんですけど、クールモードにする時って一瞬ドライヤー音小さなったりしませんか? モードが切り替わる瞬間やからやと思うんですけど、僕が使ってるドライヤーもそうで。カチ、カチとボタン押してクールモードに切り替えて、少し小さなった音の中で、なんか聞こえよるんですよ。何言うてるかしっかり分からへんかったんですけど、その瞬間何故か鳥肌─たちまして。直感的に、あ、これは聞いたらあかんやつやと思って気付いてないふりで、また強風のモードにして、テレビの音量上げたんです。それからしばらくして、なんとなくずっと感じてた嫌な気配ってのが一瞬で─無くなって。あ、もういいやろ、と思ってドライヤーのスイッチをカチッと消したんです。そしたらその瞬間、耳元で『いいわけないだろ』って女の声が聞こえよるんです。うわ、あかん! ここおったらあかん! ってとっさに思って鍵と携帯だけ持って─外出て、一番近くのコンビニまで行ったんです。そんで馴染みのコンビニやから店員さんに、これこれこういう事情があって申し訳ないんやけど一時間くらいお店おってええかな? って聞いてみたんです。そしたら店員さん、こう言うんですよ。『いいわけないだろ』って。この後、僕は死んだらしいです。────」