噓日記　2/24 それぞれの青春

あーあ、エモくなりてぇな。
最近の子ってエモさにかなり重きを置いて生活してるよね。
つまるところ、エモいやつはウケがいいわけだ。
おら、エモくなって若人たちにウケてぇだ。
海を望む踏切で誰かをずっと待ってたり、夜空を眺めながら家路についたり、夜の公園でタバコを吸ったり。
そういうのがガキどもの言うエモなんだろ？
俺はエモさ直撃世代じゃないけどそういうの分かるんだよ、大人だからよ。
俺でもできんじゃん。
てか、俺もうやってるぞ。
踏切で誰かを待ってるふりしたり、酔い覚ましに歩いて帰ったり、夜中に公園の喫煙所でタバコ吸ったり、全然してる。
俺ってエモいの？
よく考えたら俺ってエモいのかもしれない。
逆にね。
土曜になったら立ち飲み屋で一人酒を飲んだりさ、スナックで時間潰したりしてるの、あれ全部もしかしたらガキの言うところのエモなんじゃないか？
俺、エモいです。
しかし、ウケがいいわけでもねぇな。
エモいがウケるってのは俺の勘違いなのかもしれない。
でももっとエモくなりてぇよ、俺は。
エモい奴が一番モテんだから、令和なんてさ。
俺がたくさん遊んでた平成なんかはあれよ。
チャラいやつがモテてたよ。
髪をM字バングにしてさ、髪を盛って、ヘアピンとか付けちゃって。
ピンクと黒のチェッカー柄のベルトとか付けちゃってね。
ウォレットチェーン付けてよ、腰パンしてよ。
今思うと変な格好だよね。
でも、俺の過ごしてたあの頃のモテ方って、汗臭さと男らしさと女性っぽさが同居してたのよ。
なんかトータルで浅黒い感じの思い出なの。
今のモテる男ってなんかクリーンじゃん？
無色透明って言うのかな。
首尾一貫で爽やかな感じ、言い換えちゃうと人間味がねーの。
あの頃のチャラ男たちは皆人間だったね。
モテたいという原動力で皆ギラギラしてた。
俺も当時はギラギラしてたね。
プリクラってあんじゃん、プリントシールの。
あれをソロで撮るのよ。
ソロで撮って落書きエリアで自分の携帯番号を落書きしてさ、近所の女子校の校門前で女の子に配るのよ。
とち狂ってるでしょ？
とち狂ってんだもん仕方ねーべ。
でもこれでどうにかなる時代だったの。
事実として連絡があったりしたもん。
インターネットで繋がるとかそれ以前のコミュニケーションだね。
そこまでネットも発達してなかったしね。
今、そんな愚行をやってごらんよ。
すぐ逮捕、すぐ通報よ。
良かった、平成が俺のピークで。
でもさ、今思い返せばそんな浅黒い青春ももしかしたらエモかったのかもしれないよね。