【会計事務所SoVa流】エクイティ・ファイナンス時に考えること、準備すること
SoVa代表の山本です!
SoVaは、専門家とテクノロジーをかけ合わせた新しいカタチの会計事務所として、2024年8月21日に、Boost Capitalとジャフコとの共同リードで、シリーズAの資金調達をさせていただきました。
今回はシリーズAということで、巷でよく言われるように結構苦労をしたのですが、そもそも、シリーズAやプレシリーズAの際の「どうやって準備し、投資家とどんなコミュニケーションをとっていくべきか」というナレッジは、あまり出回っていないような気がします。
まだまだ稚拙かもしれませんが、僕が今回行なって良かったことをnoteにまとめてみたので、これからシリーズAの資金調達をされる方に少しでも参考になれば嬉しいです。(長文になるので、お時間ある時に読んでください!)
■資金調達を検討する時の基本的な考え方
僕は複数のことを同時に考えるのが得意ではないので、経営の仕事を「ヒト・モノ・カネ」に分け、さらにそれぞれ2要素に分けて、
という6要素に分解し、「今、どこが一番やばいんだっけ?」と自分に問いかけ、ボトルネックとなっている1位と2位に全力で取り組むスタイルをとっています。
その中で、特に資金調達は、経営者の時間も体力も大幅に割くことになるので、そこに時間を使うタイミングは限定的にしています。
そんな背景で、資金調達に頭と時間を使い始めるタイミングは、僕の場合、目標払込期日(≠キャッシュアウト日)から6ヶ月前としています。
そして、それまでの期間を、以下の3つに区切って考えています。
ここからは、それぞれの期間において大事にしていることを、順にお話していきます。
■準備期(着金6ヶ月〜3ヶ月前)
資金調達の中で、一番大事なのは、この準備期だと思っています。
過去の経験から、調達がうまくいった時とうまくいかなかった時を比べてみたのですが、違いはこの時期の過ごし方にあると感じています。
この準備期に行うことは3つです。
①投資家のアタックリストをつくる
資金調達をする際、最初に行うことは、とりあえずまずは「投資家に会うこと」です。
僕は初めての起業で、投資家ピッチというものがどういうものなのか全く分からなかったので、シードラウンドの時は、とにかく「アポをとる→フィードバックをもらう→修正する」をたくさん繰り返しました。
シリーズAでもその要素はもちろんありますが、ある程度、株主や知り合いの紹介で会える方も増えてきていると思うので、基本的には会いたい人を紹介してもらって会うほうがいいと思います。
僕はTrelloで、
・「話したい方(面識なし)」
・「話したい方(面識あり)」
というタブを作り、知り合いの投資家や株主の方に「話したい方(面識なし)」のリストを見せて、ご本人を紹介していただき、
面談後には、
・「無理そう」
・「継続コミュニケーション」
・「前向きに検討してもらえそう」
というタブに分けていました。
この時に大事なことは、
以前、「未上場会社の資金調達は、画廊にかけられた絵」という話を聞きました。たとえ99人がこんな絵はいらないと言っても、1人が1億で買うと言ったら、その絵の値段は1億なのです。
僕もプレシリーズAの時は40社以上のVCに断られましたが、もうこれで最後にしようと思ってお会いしたジャフコの藤井さんに「これ、いいですね。」と言ってもらって、投資をしてもらいました。
「諦めたら、そこで試合終了だよ」という言葉がありますが、このメンタリティを持っておくことが大事です。
ちなみに、こんな偉そうなことを言っていますが、僕は投資家の方に厳しいことを言われ、回復するために2時間昼寝したこともあります…(笑)
②バリュエーションの感覚を合わせる
次にこの時期にしておくべきことは「バリュエーションの感覚を合わせる」ことです。
資本政策は点ではなく、線で考えないといけないので、今回、高いバリュエーションをつけすぎて、次回ラウンドで誰も入れない…という形になってしまっては、線で考えられている資本政策とは言えません。
さらに今後は、IPOではなくM&Aという形も増えていくので、M&Aという選択肢は残っている価額なのか(=買い手候補の会社を想像した時に、その会社が今回の設定バリュエーションより高い価額で買ってくれそうか)も考える必要があり、むやみに高いバリュエーションにしすぎないことが大切だと思います。
あと、僕が毎回行っているのが、
冒頭に「今回はステージ的に難しいと思うのですが、次回でぜひ御社に投資してほしいので、そのための課題を教えてほしいです」とお願いをして、アドバイスをもらいます。
そして、課題を聞き終えたら、その課題をクリアできた時のバリュエーションの目安も聞いておきます。
そうすれば次回ラウンドのバリュエーションから逆算して、今回のバリュエーションを決定でき、資本政策を線で考えることができます。
③ピッチを磨く
最後は「ピッチを磨くこと」です。
ピッチを磨くには以下の2つの要素が必要です。
基本的に、投資家の方に1時間アポを頂き、その中の時間配分は、
・冒頭5〜10分:自社のピッチ
・その後50分:全てQ&Aに充てる
が理想的だと思います。(最初の話が長いと先方も飽きてしまう)
そして、その中でもピッチの冒頭1〜2分が特に重要です。
ここで、相手の興味を惹ければ、残りのピッチも真剣に聞いてくれるし、良質なQ&Aが行えるので、ここは拘ったほうがいいです。
このピッチのストーリーを考えるとき、いきなりスライドをつくり始めるのはオススメではありません。
スライドを作ってしまうとどうしても、細かな表現やデザインに気を取られてしまい、肝心のストーリーから意識が離れてしまうからです。
僕がよくやるのは、1人で歩きながらブツブツ思いつくままに、自社のピッチをつぶやき、「この表現いいな!」とか「このつながり良いな!」と思ったものをメモすることです。
※端から見たら、結構やばい人だと思いますが、背に腹は変えられません(笑)
ここで大事なことは、「分かりやすいもの以外は、全て分かりにくい」という意識を持つこと。
これはSoVaの株主の守屋さんの言葉なのですが、世の中には分かりやすいものと分かりにくいものしかないんです。
だから誰かに話して、「分かりやすいね!」と言われなかったということは、残念ながらそれは分かりにくいということなんです。
基本的に投資家さんは1日に何本も起業家のピッチを聞き、疲れています。
(厳密にいうと、疲れていると思ったほうがいい)
そのため、どんなに疲れている人でも、多少上の空で聞いても分かるぐらい分かりやすいピッチを作ったほうがいいです。
そのためには、多少、正確さや自分が語りたいことを削ってでも、分かりやすさを優先したほうがいいです。正確さのための補足や自分の想いはQ&Aタイムで話せるので。
一通りストーリーができたら、ピッチの上手い投資家や起業家仲間に見てもらったり、ピッチ大会に出て、周りの反応を見て、確認するのがオススメです!
そして、2つ目の「資料を磨く」について。
ここで意識すべきなのは、「理想の時間配分は、最初10分で自社のピッチをして、その後は50分全部Q&Aタイム」ということです。
最初の10分ピッチが洗練されてくると、だんだん投資家に「よく質問されること」が分かってくると思います。
これに対する完璧な回答を補足スライドに入れておくのがオススメです。
基本的に、スライドは最初のピッチで使う本論部分と、Q&Aの時に使う補足スライド部分で構成されます。
その上で、よく質問されることに対する回答を補足スライドでしっかり準備しておくことで、「よく考えているんだな」という印象を持ってもらうことができます。
ここで1つポイントなのが、よく聞かれる質問の回答は、本論スライドに入れないことです。
投資家ピッチにおいて、質問をもらうのは当然であり、何も悪いことではありません。本論ピッチの役割は、自社事業の概要を掴んでもらうことなので、資料は足していくというよりは削ぎ落としていったほうがいいです。
質問とその回答までを含めて、投資家ピッチの形を事前に設計できれば理想的です。
■DD期(着金3ヶ月〜1ヶ月前)
着金3ヶ月前になったら、いよいよ本格的に株主布陣の座組を整えていきます。
準備期において、バリュエーションと前向きに検討してくれそうな投資家リストは出来上がっていると思うので、それを踏まえて動いていきます。
希望株主布陣案をつくる
僕はエクイティ・ファイナンスを、「お金を集める行為」ではなく、「株主という仲間を増やす採用活動の一貫」と考えています。
もちろんお金は大事ですが、株主は一度迎え入れたら生涯を共にすることになるので、長い目で見て重要なことだと思うんです。
この考え方をもとに、僕はDD期に入る前には、目標調達額とともに「今回はどんな方に株主になってもらえたら理想か」を妄想します。(実際には思い通りにはいきませんが…)
ちなみに、SoVaには「挑戦者としての大胆さと、専門家としての緻密さを両立する」というバリューがあります。
個人としてもチームとしても、このバリューをより磨いていきたいと考えていたので、今回の調達の際は、これを体現している方に新たに株主になっていただきたいと考えていました。
そんな最中に、たまたまBoost Capitalの小澤さんにお会いし、まさにこの方だ!と確信して、出資のお願いをさせていただきました。
どうしても目標金額を集めることに目がいきがちですが、株主という大事な大事な仲間を採用することの重要性も忘れないようにしましょう。
スムーズなDD対応をする
僕も過去に何度か勘違いをしたことがあるのですが、面談の時はすごく前向きで「一緒にやりましょう!」と言っていた投資家の方から、資料を送った途端、急に返信がなくなるというのはよくあります。
ですので、口約束は信じず、契約書にサインするまで話はなくなるかもしれないという意識を持つというのは、大前提として重要です。
それに加えて意外と重要なのでは?と思っているのが、DD用の資料準備です。
投資家の方も時期によっては、複数の案件を並行してDDをすることがあるので「資料がきちっと揃っていて、知りたいことをすぐ知れる会社」と、「資料に不足があり、毎度依頼しないといけない会社」だと、前者のほうがスムーズに話が進むと思います。
そこでSoVaでは、「投資家様共有資料」というドライブを用意し、DDで使いそうな資料は全て格納して、DD開始のタイミングでお渡ししています。
(最近はnotionでやっている会社も多いようですが、どちらでもいいと思います)
そうすることで、資料関連のやりとりが格段に減って、話がスムーズに進む気がします。
■契約書調整期(着金1ヶ月前)
投資委員会を通過し、金額も決まってきたら、もうあと一息です!
普通株やJkissの時は、契約書の調整にかかる負担はあまり重くないですが、種類株式になってくると契約書の各条項の調整は結構大変です。
多くのVCは、自社の投資契約書の雛形を持っていると思うので、基本はリードVCが持っている雛形をベースに調整をしていくことになります。
当然、VCの雛形は、VCに有利な形で作られていますので、内容は要交渉です。よほどファイナンスに詳しい人は大丈夫なのかもしれませんが、基本的には弁護士に依頼して、一緒にひとつずつ条項を確認していくことをオススメします。
この時に大事なことは「弁護士に丸投げしないこと」。
投資契約書の条項はとても重要なので、例え細かい契約書を見るのが苦手な起業家も、ここだけはちゃんと読んで理解したほうがいいです。
ちなみにVCによって、ここは譲れないという条項と、ここは起業家の希望に沿えるという条項があるので(多分)、密にコミュニケーションをとりながら、良い落とし所を見つけていきましょう。
なお、誤解が生じたり、ニュアンスが伝わらなかったりするので、チャットではなく、ドキュメントにコメントを入れ合った上でオンライン面談するのがベターだと思います。
おわりに
・・・とこんな感じにつらつら書いてしまいましたが、最後まで読んでくださって、ありがとうございます!
自分自身、まだまだ経営者として未熟で、スタートアップとしても序の口中の序の口ステージの身分で、こんなことを書くのはどうかな…とも思ったのですが、
僕も初めての起業で右も左も分からない中、たくさんの投資家や先輩起業家に色々教えてもらったので、ぜひまた次の方々へ知見を受け継いでいきたいと感じ、書かせていただきました。
そして、我々SoVaのミッションも「専門知識のアクセシビリティを高め、安心して挑戦できる社会をつくる」なので、このエクイティ・ファイナンスに関する専門知識で、誰かの挑戦を後押しし、資金調達の不安を少しでも取り除くことができたら嬉しいなと思っています!
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