ヴァージンVS過去・現在・未来9~落ちてもマイクを離しませんでした~

ヴァージンVS過去・現在・未来 9
「スカイキッズレビュー」3
~落ちてもマイクを離しませんでした~

「スカイキッズレビュー」富山でのライブ最終曲で、客席に突入し、テーブルに上り、数秒後に落下したの続きです・・・

いや、落ちたのではなくテーブルの板が外れたのです。
決して運動神経云々の話ではないことを氏の名誉のために明記しておきましょう。
森魚ちゃんは落ちたばかりではなく、丸テーブルを支えていた鉄の支柱の先端へ、イヤというほどあばらをぶつけたのでした。
普通の人ならばここで失神してしまうところでありましょうが、森魚ちゃんは失神するどころか床でのたうち回りながらもマイクをしっかり握って離さず、何小節かの空白の後に、またもや「ヒズオンリィ、ロンリオンリィ」と、苦しい息の下から歌い出したのであります。
これはまさに歌い手であり続けることに生きてきた、あがた森魚の頑固な存在証明にほかりません。
落ちてもマイクを離しませんでした!!
(この時点で「ロンリーローラー」がレパートリーに入っていたのか?、いまさらながら自信がなくなってきたが)

ステージが終わり這うようにして楽屋に引き上げてきた森魚ちゃんに、お店のマスターが救急車の要請を確かめに来ましたが、それをきっぱりと断り、心配したマスターが、それでは、と消毒用に持ってきてくれた封を切っていない焼酎のビンにも手を触れず、森魚ちゃんはゴソゴソと黒いカバンの中から胃腸薬「恵命我神散」」を取り出しました。
この隠れたファンを持つ胃腸薬を、森魚ちゃんはなんと、丸テーブルの支柱跡がクッキリと丸く残ったあばら辺りの傷口に、「ウッ、イタタ・・・」とか言いながら振りかけ始めたのです。
我々はただ茫然と事の成り行きを見守っていましたが、木村しんぺい氏が
「森魚ちゃん、それ胃腸薬じゃないの?」
っという、みんなの素朴な疑問を代表して質問しました。
森魚ちゃんは少しも動ずることなく、苦しみの中にも笑顔を見せて、
「いや、これは何にでも効くんだよ」
と答えてくれました。
そして薬を振りかけ終ると自力でガーゼを当てて、これで手当は一件落着。

事件の割には、手当がいやに簡単であったかのように思いますが、とにかく大事に至らなくて何よりでありましたし、のたうち回りながらも不死鳥のごとく歌い出した森魚ちゃんの姿にお客さん、バンド共々深い感銘を受けたことは間違いないでしょう。

この日は大宴会はやめにして、早々に宿舎に引き上げましたが、消毒用にと頂いた新品の焼酎は久保田と木村しんぺい氏によってすぐカラになってしまったことは言うまでもありません。
でも、ケガに焼酎を、というこの店のマスターは江戸時代の人のようですね。

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