味付け海苔と、焼き海苔
実家では、海苔と言えばとにかく味付け海苔だった。
味付け海苔は手がベタベタするが、海苔とはそういうものだと信じて疑わないほど、海苔=味付けだったのだ。
大学生になって初めて焼き海苔を食べたが、味がない、乾物くさいとしか思えず、「味付けをする前に出回ってしまった低級海苔」なのだと思った。
しかし、次第にこの焼き海苔の旨さに目覚めていく。
醤油や砂糖ではなく、磯の香りがすることに気づいたのだ。
どうやら焼き海苔は、間違って出回った低級海苔ではなかった。
味付け海苔がメインだったなんて、おかしな家に育ってしまったものだ。
コンビニでおにぎりを選ぶときに味付け海苔タイプは選ばなくなったし、ホテルの朝食で出された海苔が味付けだったときには食べなくなった。
しかし、あるとき、知ってしまう。
西日本では味付け海苔が標準であることを。
神戸の実家だけがおかしいのではなかった。
それを知ってから、また少しずつ味付け海苔も食べるようになった。
一周回ってまた西日本に戻ってきたと言えなくもないが、以前とは違う。
焼き海苔のおいしさも知ってるもんね。
高校までは自分と同じ狭い文化圏に住んでいるが、大学で友人関係は一気に全国規模に広がる。
そこに生まれる異文化との衝突で、焼き海苔を知ったと言っていい。
今日から国公立大学の二次試験が始まる。
受験生にはこれまでの努力をまずは発揮してほしいが、肝心なのはその先。
新しい世界に待っている未知との遭遇をぜひ楽しんでほしい。
味付け海苔と、焼き海苔。
どっちもおいしいから。
(2021/2/25記)
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