日常を知るためにも、やっぱり標準を知りたい
春頃から、マトリッツォだかマリトッツォだかがはやっている。
ブリオッシュにクリームが、まるで恐竜の化石の復元で足りないところを石膏で補ったかのように入っているアレだ。
イタリア・ローマのスイーツだ、というところまではどこかで聞いた。
何がきっかけかは知らないが、急にパン屋に並びだした。
ティラミスやナタデココの時みたいに、え? 前からありましたよ? と言わんばかりにスッと忍び寄ってきた。
今ではコンビニの名を冠した袋入りのものさえ売られて、すでにあんパンかクリームパン級の市民権を獲得した模様だ。
これまでに食べたことがあるのはコーヒー、ストロベリー、ラムレーズンの3種類、こんな感じだった。
見た目から受ける印象よりはあっさりしていて、うまかった。
ふつう、真っ白で何も加えられてないものがプレーンという先入観がある。
しかし、その店にはこの3種類しかなかったことから、混乱が始まった。
もしかして、ラムレーズン入りがいちばん白っぽいし、これがプレーン?
そんなのどうでもいいと思わなくもないが、やっぱり標準がお酒のきいたものなのか、甘いものなのかで、そのスイーツの性格は随分と変わる。
つまりローマ人の日常に関わる問題なのだ。
だって、もしローマでたこ焼きがはやったとして。
温玉のせネギたっぷりたこ焼きを最初に食べてしまったローマ人は、ふつうのたこ焼きが出てきた時に、こんなんじゃない!と叫ぶかもしれない。
ローマ人の日常を知るためにも、やっぱり標準を知りたい。
こんなに華丸みたいなローマ人がいるかは別として。
幸い、通り過ぎるパン屋はどこも今、マトリックスだかマトリッツォだかを推していて、店頭には写真入りのポップが貼ってある。
それを見ると、イチゴのスライスがペタペタと貼ってあったり、黄色や緑色のツブツブがべーっとかかっていたりとさまざまだ。
切れ込みにしたってホットドッグのように真上に入っていたり、ハンバーガーのように水平に完全に切り離されていたり。
うーん…どれが標準なのか、さっぱり分からん。
結局まぁどれが標準って世界ではなくて、ローマにはいろんなマリオッツォだかマリトッツォだかがありましたとさ、ということなんだろうと思う。
アカン、ずっとそればかり考えてたら…
笑うセールスマンにしか見えなくなってもたやんか。
(2021/6/25記)