ノートとペンと音楽プレーヤー

無人島に三つしかものを持っていけないとしたら、あたしはきっとノートとペンとイヤフォン付きの音楽プレーヤーを持っていく。
水も食料もなかったら死ぬじゃないか。
実際にそんなことになったら、生きたいのでそれなりに考えて備蓄食だの用意するだろうけれど、あたしの精神が生きていく上で、これらの三つが無くなったら駄目なんだ。
ペンとノートはすごい。なんでも書ける。日記が書ける。本当の気持ちを何もかも書き散らかせる。歌詞が書ける。絵が描ける。漫画が描ける。小説が書ける。大好きな人への恋文だって書けるんだ。
あたしは夜更かし癖がここ最近、というか高校生になった辺りからなんだけど抜けなくて。
くだらない動画を何本も見て後悔してしまうこともあれば、誰かと朝まで電話して幸せなこともあるけれど、大体はペンを握ってノートに何かを書いている。小学生の時は漫画を本気で描いていたからペンだこが凄かったが、今は誰にも見せたことのないノートに、自分を慰めるために、自分のプライドを守るために、自分を愛するために、文章を書き連ねている。だから指が痛い。手首も痛い。
それでも毎晩毎晩、飽きることなく、書く。
まるでそれは、犯人が自分の罪を白状するかのように。
そんなこと言ったら、なんだかとんでもないことを書いているんじゃないかと思われそうだけど、別に脳内をそのまま文に書き起こしているだけで、そこまでヤバイことは書いていない。
でも、一生誰にも言えないだろうなっていう思いとか、絶対本人には言えない思いとか。あたししか見ないし、偽る必要がないから。
このノートを書き始めたばかりの頃の文章に、“このノートは最後の砦。誰かに見せたら崩れるよ”と書き記してあった。今もそれは変わっていない。
でも、いつか誰かに、見て欲しいと思っている自分もいるんだ。きっとその人は大切な人だから。
あたしの本当を、全部知って欲しくて、でもそれが叶わなくて、その隙間を埋めるためにまた今日もペンを取る。
幸せなことがあっても、悲しいことがあっても、咄嗟にノートを取り出す癖がついている。
イヤフォンをつけて音楽プレーヤーから曲を流す。
そして事細かに記すのだ。その日に聴いた曲の名前も添えて。
ページを見返す未来のあたしは、どう思うんだろうな。青いって思うかな。そう思っても、本当の本音をここでしか吐けなかったあたしの思いを、軽く扱うようなヤツにはならずにいて欲しいと思う。
今日、3月から使っていた茶色い表紙のノートのページが無くなる。だから明日、新しいノートを買いに行くよ。

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