マイオリジン・オブ・サブカルチャー
私の叔父はすごい人である。
彼はコミケで千冊以上同人誌を売ったり、ゲームのイラストやラノベの表紙を担当したり、Twitterのフォロワーも13万人以上いるらしい。
私は彼の作品がとても見たいので、いつも見せてくれと頼むのだが、所謂成人向けであるがゆえに未だにちゃんと見せてくれたことが無い。そろそろいいではないかと思うが。
私はサブカルチャーと呼ばれるコンテンツが大好きだ。漫画とか、アニメとか、音楽とか色々あるけれど、小学生でボーカロイドを好きになってから「そっち系」にばかりのめり込んできた。
私がサブカルチャーを好きになったあのビックバンは、叔父の部屋で起こった。
確か私が小2か小3の頃だったと思う。
当時彼は私の祖母、つまり彼の母と共にマンションで暮らしており、私はよくそこに遊びに行っていた。
彼の部屋にはパソコンが数台と、デジタルイラストを描くためのタブレット、青年マンガ、フィギュア、イラストレーターの画集などがあった。
私は興味津々だった反面、萌え系のイラストは普段見る環境にないので、見ていいのだろうか…と内心ドキドキしながら見ていた。
一度、彼が描いていたイラストのフォルダを私と妹が勝手に操作してしまい、エッチなイラストを見てしまったことがある。あまりの「刺激」により、その絵は私の脳に克明に記録され、今でもはっきりと思い出せるくらいだ。
それでも、泊まりに来るたび、叔父の部屋に入れてもらうのがとても楽しみで、不思議な高揚感があったのを覚えている。
ある時、彼がニコニコ動画で魔法少女まどか☆マギカを見せてくれたことがある。
「これめっちゃ感動するから!!」と言い、ニコ動のコメント付きで、まどマギのクライマックスの、みんながまどかを忘れてしまうシーンを見せてくれた。
いやいや、いきなりこれ見せられても、ネタバレだろ…と、小学生ながらに思った。
でも、今までに感じたことのないときめきを確かに感じたのだ。
アニメに漂う、えも言えぬ退廃美の感じ、ヒロインを忘れてしまうというあの頃の私にはショッキングで切ない展開、そして「コメントが流れてみんなで見られる」という独特の文化、子供向けアニメからは感じ取れないアンダーグラウンドな雰囲気、何より、あの「オタク」の代名詞のような絵柄…。
何もかもが新しくて、でも私がずっと希求していたもののように思えてならなかった。
そのあとも、私の母の影響でBUMP OF CHICKENの「ray」を聴いたら、初音ミクがコラボしていて、(しかも私の母は叔父からの影響でBUMPを好きになった)私が入院した際に借りた母のWALKMANにはメルトやみくみくにしてあげる♪、アンインストールや創生のアクエリオン、you、だんご大家族などが入っており、これまた彼の仕業であった。
つまり、私がサブカルオタクになるための壮大な伏線を作ったのは、他の誰でもない叔父なのである。
未だに私の厨二病やオタク心をくすぐるような音楽を聴くと、彼の部屋が思い浮かぶ。
彼は今引越し、彼女と同棲しているらしい。
彼女が羨ましい。
あと、彼は小説も書く人だったようで、彼が昔書いたという短編小説を読んだことがあるのだが、度肝を抜かれる程面白かった。
メッセージ性もあり、構成、最後のオチまで完璧で、鳥肌が立った。
(ただし彼は勉強はあまり得意ではなく、私が椎名林檎の話をしたところ、「ああ、幸福倫ね!」と言っていたし、神聖かまってちゃんの話をしたところ、「夕暮れの島ね!」と言っていた。残念なところで間違えてるよ…)
彼のエピソードを話すとキリがないのだが、とっても面白くて、自慢の叔父である。
また彼とゆっくりマンガや音楽の話をしたいなぁ。
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