白木蓮の着物love No4 帯締めはパーソナルカラー(わたし色)
かつて、寝ても醒めても着物の事を考えていた、若き日がありました。
恋に近い病のような。
お金は無いけど着物が欲しい。
時は、バブルが弾けた少し後の1990年代半ば。
私はまだ35歳でした。
同じような着物友達が出来、2人で、銀座の老舗やデパートの呉服売り場など、着物のウインドウショッピングに繰り出すのです。
その楽しみは週に一度の間隔で、三年程続いていたと思います。
ここからは超高級品ですよ、とオーラが漂う、踏み込むのが恐れ多いデパートの特選呉服売り場などでさえも、
見せて下さい!と飛び込んでしまう。
高級料亭を借り切って開かれる、高級品のみの展示会の案内状なども頂き、恐る恐る伺った事もありました。
振り返ると、我ながら怖いもの知らずで、恥ずかしく
なってしまいますが、
若さと言う特権を使い、沢山の良いものを見た経験で、
自分に似合うものがわかる、
審美眼が養われたように思います。
それでもビギナーの頃は、
失敗ばかりしていました。
和装小物を買う時も、
似合うものが分からず、
店員さんから
「間違いないですよ」
と言われたものの似合わず、
一度も使わず箪笥の肥やしに…
それを何回も繰り返す始末
でした。
着物は散財を重ねて、学ぶと
言われていますが、
庶民は、そう言うわけには
いきませんもの。
そんな中の、とある日。
いつも通り友人と2人で、デパートの和装小物売り場をぶらぶらしていたのですが、そこの特設コーナーで、帯締め職人さんがデモンストレーションをしているのを見かけたのです。
職人さんが、帯締めを組みながら声をかけています。
「お客さんは、茶と緑だよ」
等々…
各々に、似合う色を選んでいるようでした。
私もアドバイスして欲しくなり、
「私は何色ですか?」
と、尋ねてみると、
「お客さんはね、鳶色と紺
だね。帯締めは何本も要らないよ。似合う色が少しあれば
ね」
とのアドバイスをくれました。
多分、長年の販売経験で
わかるのでしょうね。
目から鱗とはこの事です。
頭の中が鳶色鳶色…紺紺…と
一杯になり、鳶色が気になって購入したかったのですが、相当お高く手が出ませんでした。
職人さんが、礼装用の紺ならあるよ、と勧めてくれたのが、写真の濃紺と金の帯締めです。
随分ディスカウントしてくれ、私にも買えるお値段にしてくれました。
それから、25年近くも経ちますがこの帯締めは私の
礼装時の要となり、濃紺で
最後にピシッと纏めると
とても、自分らしい装いが出来上がります。
職人さんのアドバイスを
聞いてから、私はとても慎重になり、帯締めは着物と帯に
合わせると言うより、自分色を探し、使い回して来たように思います。
白、薄いピンク、この2本は必須です。
どれだけ年を重ねても私に寄り添ってくれるでしょう。
この深い赤はお気に入りで、随分役だってくれましたが、残念ながら色を抑えたものが
必要になってしまいました。
さて次は、どんな赤が似合うのかが楽しみです。
後1本は、2年程前に購入した
ピンクブラウン。肉眼で見ると、もう少し赤みがあります。
鳶色とまではいきませんが、職人さんのアドバイスを
思い出します。
後に知ったのですが、私のパーソナルカラーはブルーベースの夏。
帯締めを並べてみますと、
ブルーベースに近い色味を
選んでいる事に気付きました。
秋色カラーの黄色味が強い色を買って、失敗を繰り返してしまったようです。
反対に、ブルーベースは、
紺色が特に似合うらしく、
当時の職人さんが、パーソナルカラーを勉強していた訳では無いと思われますので、
職人さんの見る目の鋭さには、頭が下がる思いです。
パーソナルカラーの中の、
好みに合い、似合う色を、
「わたし色」とでも呼びましょうか。
私の60代は、薄いグレーを
仲間入りさせ、年を重ねる
面白みを知りたいと思っているところです。
きゅつと帯を締め、
最後の仕上げは、是非、
わたし色で。
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