嫉妬
あの女が、始めて私の元に
忍び寄って来たのは、幼稚園児の頃だった。
同じクラスに居たカヨコちゃん。
色が白くて、つぶらな瞳に
長いまつ毛。フランス人形みたいなカヨコちゃん。
カヨコちゃんは、東京から
来た女の子。
私は真っ黒に日焼けした
田舎の子。
あの女が私の耳元で囁く。
あんたは、不細工でお馬鹿な子。
カヨコちゃんは、可愛いくて賢いお姫様、と。
なんで私は、カヨコちゃん
みたいに、なれないの?
いつもカヨコちゃんに
なりたかった、5歳の私。
大人になった今も尚、
あの女は、時々私の元に
やって来て囁く。
あんた、5つの時と変わってないね。
いまでも、カヨコちゃんに
なりたいんだろ、と嘲笑う。
人生は不公平。
頑張っても、あがいても、
手から溢れ落ちてゆく夢。
掌の中に残ったものが、
私の真実。
私の宝。
私は わたし。
もう、カヨコちゃんに
なれなくていいのよ。
あの女は、まだ私を
追って来るだろうか?
(黄薔薇の花言葉には、嫉妬、と言う意味があります。
欧州では、キリストを裏切ったユダが.黄色の服を着ていた事から、黄色はネガティブな色として、認識されているようです)