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ヴァイオリン・ヴィオラの「重音」byカトー・ハヴァシュ

ハヴァシュ式ヴァイオリン講師の石川ちすみです。

上手な人は楽々と弾いているように見える。
でもいざ、ヴァイオリンと弓を手にとって自分でやってみると出来ない・・
出来そうで出来ないのがヴァイオリンの魅力であり、もどかしさでもあります。

初心者はなおさらそのような感を持ちながら、夢と希望を持って「練習」しています。
やがて、その夢が打ち砕かれ、徒労感と敗北感を抱いてやめてしまうまでは・・・・。
ヴァイオリンの先生の皆様は、どんな生徒にも、その夢がかなえられるように指導したいと思いませんか?

重音奏法もその一つです。
美しくハモると、グッと演奏の厚みが増します。
綺麗に弾けるとうっとりするけれど、汚く弾くとこれ以上破壊的なものはないのが重音です。

そこで、私の先生、ハンガリー人神童ヴァイオリニストで、カリスマ教師カトー・ハヴァシュ先生の書籍「12回レッスンコース」(日本未発売)からの抜粋を翻訳してご紹介したいと思います。

この本は拙訳「ハヴァシュ・バイオリン奏法」(ヤマハ・ミュージックメディア)の奏法を、より具体的に12ステップにて譜例付きで、レッスンするように詳しく解説した本です。

この本の11回目のレッスンでは、重音をどのように考えれば良いかについて、
とても興味深い内容になっています。

それでは、どうぞお読みください。

== Kato Havas ”The Twelve Lesson Course” ,
Bosworth publishing LTD. p.73-75 ==

重音を弾くのは、ヴァイオリン演奏の中でもとりわけ、エキサイティングで満足感があるものです。

なぜなら、重音を弾くことによってはじめて、ヴァイオリンは完全に他の楽器、
例えばピアノや他のヴァイオリン、オーケストラ等々、の伴奏を頼りにすることから解放されるからです。

ありがちなことですが、気のいい親戚や友達が、あなたがヴァイオリンをやっていることを聞きつけて、「なにか弾いてよ」と頼んで来たとき、あなたはきっと、半ばパニックで「いや、伴奏者がいないから弾けません」と答えることでしょう。

 実際に、ヴァイオリンは歌にとても近いものですから、一人立ち上がってメロディーを奏でるというのは、さらされたような気分になるものです。

これをするには特殊な才能が必要で、何人かのジプシーを除けば、帽子一つでこれをやってのけるのは、私が知るかぎり詩人のローリー・リーただ一人です。

ところが、もし重音やコードを楽々と弾けたなら、全く新しい可能性の地平が開けてきます。バッハの無伴奏や、パガニーニのカプリス等々です。
そして、他の楽器から完全に独立して、素晴らしい音楽的エナジーを感じることが許されるのです。

 ここで改めて強調しますが、「基礎的な」とか「上級の」重音の弾き方などはありません。方法はいつも同じです。

もし重音が正しく奏されれば、そしていかなる力みも引きつりもなければ、初心者でも上級者と同じようにそこから喜びを見出すことができるのです。

 もちろん、左手の引きつった感じは、指をバラバラの方向へ伸ばす時にありがちな症状ですが、他の何よりも、重音を弾く時に最も顕著になります。
これを避けるには、ここまでで学んできたすべてのバランスのポイントが互いに連携し、相互に依存していることが不可欠になります。

例えば、ヴァイオリンの構えが正しくなければ、左腕は自由になれないですし、
もし左腕をねじっていたら、左指の動きはぎこちなくなります。

そして、指の動きがぎこちなくなると、手首が固くなり、指の動きが基関節から来ていなかったら、親指が動けなくなります・・・。

このことから、重音を楽しむためには、これらのすべてのポイントが正しくできていることが不可欠なのです。

どうか、もう一度すべてをおさらいしてから、この先へ進んでください。

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