第三回こむら川小説大賞結果発表 大賞は いぬきつねこさんの『やがて空より帰る』に決定
令和2年12月21日から令和3年1月23日にかけて開催されました第三回こむら川小説大賞は、選考の結果、大賞・金賞・銀賞、特別賞を各一本、各闇の評議員の五億点賞が以下のように決定しましたので報告いたします。
◆大賞 いぬきつねこ『やがて空より帰る』
受賞者のコメント
この度は大賞をいただき、ありがとうございます。
連絡をいただいた時は、夢か!?と飛び上がりました。本当にありがとうございます。
こむら川小説大賞は二度目の参加です。
評議員の皆さんや参加した皆さんからも反応をもらえるのが嬉しく、また皆さんの様々な作品から創作意欲もモリモリもらえました。いただける言葉の一つひとつが温かく、励みになります。
小説楽しいよ!みんなも書こう!と小説を書き始めた赤ちゃん達に勧めたくなる、本当に素敵な企画でした。
闇の評議員の皆様、参加された書き手の皆様、お疲れ様でした。また機会がありましたら、その時もぜひ参加させてください!
大賞を受賞した いぬきつねこ さんには、みゅーでさんによる表紙風ファンアートが進呈されました。
◆金賞 神崎 ひなた『テセウスの君、空っぽの空』
◆銀賞 鈴元『ぬばたまの瞳、ぬばたまの心、ぬばたまの空蝉』
◆特別賞 きなこ『ナインリッヒーズの祝福』
◆五億点賞
謎の有袋類賞
ももも『ドラゴンカーのシー太』
謎のアンデッド賞
水瀬『宝石の春、歌う鯨』
謎の神賞
妹『天使の妹である私がオギャっと生まれる少し前から今日までの話。と見せかけて大体お姉ちゃんの話』
◆ファンアートの紹介
理解のある彼くん vs おもしれー女 ニュートン無様敗北編/和田島 イサキ
証明の匙/蒼天 隼輝
アナコンドルVSフライング・ブルシャーク サメ狩人は挫けない/武州人也
◆みゅーでさん 絵
Drag&Rider/こむらさき
空鳴き姫と白の守護者/Veilchen(悠井すみれ)
糸の震え/鍋島小骨
シュレディンガーの消えた猫/ナツメ
というわけで、川系列KUSO野球大会、第三回こむら川小説大賞を制したのは、いぬいきつねこさんの『やがて空より帰る』でした。
おめでとうございます。
以下、闇の評議会三名による、全参加作品への講評と大賞選考過程のログです。
◆全作品講
謎の有袋類
みなさんこんにちは。伝統と格式のKUSO創作甲子園本物川小説大賞のオマージュ企画。こむら川小説大賞です。
最終日に36作が追加されるという大氾濫を迎えましたが、第三回も無事に終了することが出来ました。参加してくださったみなさんも、感想をつぶやいてくださったみなさんもありがとうございました。
川系列の伝統?に従って、大賞選考のための闇の評議員を一新しまして、今回は謎のアンデッドさんと、謎の神さんに協力していただきました。
今回の議長も前回と引き続き主催である謎の有袋類が行います。よろしくお願いします。
謎のアンデッド
謎のゾンビです。初めての講評となりますがよろしくお願いします。
謎の神
謎の神です。3ヶ月ぶりに評議員を務めさせていただきました。今回も素敵な作品とたくさん出会えて楽しかったです! みなさんお疲れ様でした!
謎の有袋類
前回に引き続き、こむら川大賞でも、本物川小説大賞と同じくそれぞれ独自に講評をつけた三人の評議員の合議で大賞を決定し、その過程もすべて公開します。
以下から、エントリー作品への講評です。
1 雪女の恩返し/こむらさき
謎の有袋類
大人げなく主催者が一番乗りです。
黒デニムのホットパンツと網タイツっていいよね。
謎のアンデッド
速い。
速いの意味が二つあって書き上げる速度と、導入の速さです。
男の気まぐれからの雪女の登場、異常事態をぶつけてからの初期収束がスピーディでありこの女が何者なのか?という点を納得させつつ特殊な状態に置かれたことに向き合うのが主人公の男だけ、とここまで物語一気にを折りたたみ済みです。
超常の存在でありながら空への共通点を二人に持たせて日常と共感を共有し、そして二人は。
いいなー、可愛いですね雪美ちゃん。
謎の神
主催がきっちり一番槍に錦を飾る「誉れ」の鑑――あまりにも疾風(はや)過ぎるんじゃァ!! 主催ってやることめっちゃ多いのに、この「速」は流石こむらさきさんだと思いました。
「空」を見上げながら想う主人公の心情が、少し変化する物語。空を怖いと感じる理由が、はじまりと最後でちょっとだけ変わっています。自分から誰かへ。そのちょっとした差に「エモさ」が詰め込まれて、とても良いな~と感じました。あと起承転結のバランスが非常によかったです。文字数的にも、展開的にも。短編として、しっかり完成しているという印象を受けました。
またラストの一文も、優しさに溢れるいい終わり方だと思いました。
ただ、どこかぶつっと終わってしまっている感も否めなかったので、セリフの後にもう一文ほど締めくくりの言葉が続くと、さらに余韻が引き締まってよかったかもしれません。(これはもう正直、ぼくの好みレベルの話ですね……)
2 晴れ/ところどころ曇りでしょう/草食った
謎の有袋類
二番槍です!おめでとうございます。
第二回こむら川で鮮烈なデビュー(デビューとは?)を飾り、不能共でバズった草さんです。
前回は雪と小屋という季節擬人化の可愛いお話と、空蝉というダークな作品で殴り込んでくださった草さんですが今回は、アオハル!というような爽やかな学生の恋愛を書いてくれました。
これは完全に僕の悪い趣味が高じてしまったのですが、雲に自分の思い描いたことが反映される……という現象がそういう疾患による思い込みなのか、他人からも認識できる雲なのかわからなくて勝手にハラハラしてしまいました。
最後はハッピーエンドでよかった……。
きれいにまとまっていて、とても読みやすい作品でした。
第一回の時に出してくれた「雪と小屋」は序盤に夏がゲストに来るラジオという形でガツンと「この作品はこうです」を示してくれていました。
今作の「晴れ/ところどころ曇りでしょう」もふわっと不思議要素があるので、「この現象は主人公の思い込みではなくて、実際に起こっていることですよ」と開始してすぐに誘導してあげると読者に優しいかもしれないです。
実際に起きているのか、主人公の思い込みなのかを故意にわからないように隠していて、読者をハラハラさせることが目的だったらごめんなさい……。
個人的に好きなシーンなのですが、五色さんに感謝を伝えるところです。すごく爽快感があって、きれいで短編ながらカタルシスを得られました。
草さんが新たな一面を見せてくれたなと思える作品だと思います。
この調子でどんどん色々な作品を書いていってほしいです。
謎のアンデッド
想像していたもの、空想したこと。それが人に知られてしまう。
思春期以降ならこれはかなり辛いことで、そりゃ引きこもるよね。分かるよ。
ってあっという間に世界観に引き込まれました。
自分に降りかかる大きな問題に他の誰かは理解を示さない、そりゃ引き籠るよ(2回目)仕方ないですよ。
でも、外に出るきっかけが凄い眩しい。クラスメイトとの邂逅と何気ない一言、重いものを背負っていた筈が実はそんなに重くないんだよと教えてもらって。
ものすごい気持ちの良い読後感でした。
謎の神
前々から草さんの文体が好きすぎて正常なバイアスで講評を書ける気がしない……という前提(言い訳)の元で聞いてほしいんですが、まず主人公が獲得してしまった特性が面白いと思いました。いや思春期にこれって相当キツイですね……海綿体ですよ海綿体。そりゃ不登校になってしまうのも納得というものです。
だから、発想は突飛なんですけど、こういうところの生々しさ(或いは現実に対するディティール)というか、文章力の素力(すぢから)が高いので、すんなり物語を読んでしまい、気が付いたら読み終わって、うーんいい話だった面白かった……と普通に楽しんでしまったので講評に困っています。それくらい完成度は高いと感じたのが正直なところです。
個人的にはヒロインの影がちょっと薄いかな……とも思ったんですが、作中の主人公との距離感を考えると、むしろ妥当なピントの合わせ方のようにも思えますね。
強く印象に残ったのは、最後の一行でした。想像の視点を五色ちゃん(下)から自然と「空」(上)に上げさせて、そこから主人公の逸る気持ちを持ってくる、という流れるような描写がバリバリに想像力を搔き立ててきます。
開催からの短時間で、「空」というお題をこうもトリッキーに発想してくるとは……。とても面白く、楽しませて頂きました!
3 不似合いな天気/狐
謎の有袋類
第十一回本物川小説大賞でマンドラゴラの人という二つ名を得た狐さん!参加ありがとうございます!
アオハル二連続です。やはり空といえば青春!みたいなイメージがあるんでしょうか。
狐さんの作品は、感情を読み取って頭上の天気が変わるという不思議な世界のお話です。近未来的かファンタジーかどちらに分類すべきか難しいのですが、すごく素敵な設定だなと思いました。
泣きたいのに雨が降らない青年と、笑っているのに頭上は晴れている女性が出会うお話です。
正反対の天気の人同士が、抱き合うとお互いの天気が混ざり合うというギミックがすごく良かったと思います。これ、雨女の少女は太陽がどんな風に存在しているのか知らないと言っているのですが、自分の天気しか見えなくて、他人の天気は上空からじゃないと原則的にはわからないという世界なんでしょうか?
非常に些末な部分なのですが、ここら辺の設定を詰めて見るともっと物語に対しての没入感が深まってエモが高まったような気がします。
狐さんは正反対の二人、補い合う関係性というような感情や人間関係を書くのがすごく得意だと思っています。
この作品に出てくる「僕」と雨女さんのキャラクターは3000字と短い作品ながら非常に魅力的に書けていたと思います。
この作品の「あなたの不幸はあなただけのものなんですから」という台詞もすごく好きなので同じテーマで色々なアプローチを試して欲しいなと思いました!
謎のアンデッド
永遠に語り継がれる映画なんやなって。
パーソナルスペースに個人の気分が天候として表示されてしまう、それが常識として受け入れらている未来。そんな未来なのに気持ちの方向と表示機能が反転した少年少女が主人公なんですね。
ただ、ここで気候が反転していることと女の子の言動がぎくしゃくした感じがあります。晴れた空に、の前後が突然同じ会話の中でちぐはぐの向きを向いてるような感じを受けました。
ただ、そのテンションの強さが当初は受動的な少年をも根明な女の子に引っ張ろ、明るい気持ちになって行く。というくらい強いものなのかもしれません。
しかしシステム開発者は後でデバッグ大変そうだ。
謎の神
狐さん、今回も早いですね……。最近では「一番槍争いといえば!?」に名の挙がる、筆頭候補になっている印象を受けます。すげぇよ!!!
やはり書き慣れている方ということもあって、短編としての「切り取り方」が非常に上手だと感じます。こういう、独特な世界観のお話ではつい設定を語りすぎてしまいがちですが、自然と主人公の独白や女の子のキャラクターの中に息づいている、溶け込んでいるという印象を受けました。物語の中で何を語るべきであって、最後に何を書くべきなのかという、そこが自分の中でしっかり定まっているように思いました。(これ、簡単だと思う人もいると思うんですけど実際にやってみるとめっちゃ難しいんですよね……)
「僕と彼女に起こる共通事象の正体はわからないが、一つだけわかったことがある」に続く言葉が、非常に美しい言葉でエモさを感じさせてくれるのも良かったです。このお話に登場する二人は、どこか正反対の似た者同士だという解釈をしたくなるのですが、そこを敢えて明言せずに読み手の想像力に委ねてくれるところも良いですね。最後に残された一文にも、想像力が働こうというものです。
総合して、いい短編だったな~~と思える仕上がりの作品だと感じました。楽しく読ませていただきました!
謎の有袋類
この講評を書いた時の僕たちは、まさかマンドラゴラさんが70ドラゴラ越えのマンドラゴラに囲まれるとは思っていませんでした……。
4 夢の話/神澤直子
謎の有袋類
第二回こむら川ではおちんぽチャンバラ小説と百合で参加してくれた神澤さんです。参加ありがとうございます!
今回はがらりと雰囲気が変わって抽象的な内容の小説ですね。怪文書というにはちょっと理路整然としすぎかも?どうだろう。
夢の話とタイトルにある通り実際に見た夢を参考にしているのでしょうか?
青空から始まり、夜の空、雨模様の空と空にちなんだ場面が続くのかなと思っておたら急に会社になったりと、容赦なく場面が切り替わるのはまさに「夢」という感じなので神澤さんの試みは成功しているのでしょうか?
僕はちょっとintが低いので、突然出てきた会社の話からアヌビス神との自分とは何かという問答、最後の夕焼けの赤い空が何を示すのかわかりませんでした。すみません。
色即是空の空(一切法は因縁によって生じたものだから我体・本体・実体と称すべきものがなく空しいこと―Wikipediaより引用)のことだったりするのかな?
抽象的な暗喩を含む作品を書く場合、それがわかっている人向けに書くのなら多分このままで良いのかも?
もう少し間口を広く取りたい場合は書きすぎかな?というくらいヒントを書いてあげるといいのかもしれません。
色々な作風にチャレンジするのはすごく良いことだと思います。この調子で自分がしっくりくる作風を見つけて最強になっていきましょう。
謎のアンデッド
なんとなく連想したのが映画版のドクター・スリープの輝き。もしくはインセプションでした。
定義を行うほど世界の要素は増えて行くけれど、世界の方のハンドリングができなくなっていく。って感じなのかな?
なので特にストーリーはないのかなと思いました。
とにかく何もない空間に主人公の知識がフィードバックされて世界が狭くなる、という印象。
空、というより夢ですね。
謎の神
神澤さん……また一段と筆が速くなりましたね!?(congratulation)
今回のお話は短編かつ断片(夢の中の出来事という意味での)という印象が、率直な読了後の感想です。しかしながら同時に、実に味わい深い短編だとも思いました。夢、或いは幻想的なモチーフをできる限り正確に切り取ろうという、真摯さが感じ取れるようでした。
夢って荒唐無稽でありながらどこか示唆に富んでますよね。特にアヌビス神の発言や慌ただしく過ぎゆくオフィスの光景なんかに、その片鱗を感じました。
なんか無性に好きなんですよね……こういう浮かび上がった光景をより純粋に表現する、書き手の心情が伝わってくるようなお話が。脳内、思想の原風景に忠実であるからこそ本物に近いのかもしれない、という感想を持ちました。
敢えて惜しい点を挙げるとすれば、最後の展開でしょうか。ここが少し唐突に途切れている感がありました。具体的には、『僕は僕だ。僕以外の誰でもない』というエモさを感じるフレーズがありつつも、最後の光景に映える、茶色い大地と空、赤く染まった空と、いまひとつ繋がらない印象がありました。
「それが主人公にとってどんな心情を齎しているのか」というあたりまで掘り下げる、その一点だけで多くの読み手にとって強く、感情を揺さぶられるお話に化けるポテンシャルがあるように思えたのが、正直なところです。
神澤さんは常連さんなのでめちゃくちゃ要求が高いことを言ってるんですが、なんなら正直「やれるよね……?」くらいの感覚があるので言っちゃってるんですが、ご自身の表現されたいこととぼくの講評が食い違っている時はどうかご容赦ください。
5 時と光とツグミ/辰井圭斗
謎の有袋類
こむら川でははじめましての方ですね。参加ありがとうございます。
辰井圭斗さんは、神ひな川では耽美なファンタジーを、第十一回本物川小説大賞では真に迫る創作家の内面を描いていた作風の広い方です。
今回は、宇宙へ旅だった幼馴染みのツグミと、僕のお話です。
年齢の差、物理の差、様々な差があり、それでも歩み寄って、距離を測り直して……という青春と言うには落ち着いた、でも愛情と言うには若々しい複雑な感情をすごく見事に書いていてすごくよかったです。
このままでも十分素敵な作品なのですが、少しだけ掴みが弱い部分があるかな?と思います。
短編なので一行目からツグミさんを宇宙へ飛ばしてしまってから、モノローグを流す構成だと、物語の緩急がついてじわっとだけではなくワクワクも追加出来るのかな?と思いました。
終盤の、ツグミさんが空を見上げて「ペテルギウス」と呟くところがとても印象的です。
距離を埋められた、埋めようとしていたけれどこの人は縛れないんだと、読者にも「僕」にも悟らせることが出来るのはワザマエ!という感じですごく好きでした。
3000字の短編とは思えないじわっとした温かい読後感が残る素敵な作品でした。
コンスタントに短編も長編も書いていらっしゃる筆力のある作者さんなので、色々なチャレンジをして更に強くなって欲しいなと思います。
謎のアンデッド
空を挟んで対極にいる少年少女。
空の先が生きる場所の少女と、空の下が生活の場所の少年。
少女の近くに居た少年が、大人になった時に再開して改めて少女と少年の隔絶を示してくる。
大人になった少年が少女との共感を得られた、と一瞬感じるシーンがとてもいいです。
悲しいようなゾクリとした感じも受けるお話です。
スッと入れてスッと読み終えれる実に入りやすく作られてます。
謎の神
凄まじいですね……。神ひな川の時にも思いましたけど、べらぼうに小説が上手いと感じました。まさに「空」というテーマに相応しいお話だと感じます。
二人の関係と時間と心情が美しく描かれつつ、最後ツグミが呟いた星の名前には……いやはや、業というのか性というのか……いずれにせよ、様々な心情が星のように浮かんでは消えていくようで、とにかく想像力が強く刺激されたと感じました。
四十になっても「僕」にとって彼女の存在は眩しく、すぐに手が届かないところに行ってしまう、まるで星のような存在だと感じました。ずっしりとのしかかってくるエモさがあってとても味わい深いです。
ツグミがもう一度旅立ち、そして帰ってきたとき、どういう風に「僕」と向き合うのか……というところまで想像させられました。やっぱり泣いた後にまた空を見上げるのかなと思うと、時間というのは残酷であり、残酷であるからこそ眩いのかもしれません。タイトルの妙にも思わず唸りました。
美しく、そして非常に完成している短編といえるでしょう。とても好きなお話でした!
6 空で/惟風
謎の有袋類
第十一回本物川小説大賞では「おでんを作ろう」でほっこりとした温かいお話を書いてくれた惟風さんです。こむら川はは意外なことにはじめましてだった!参加ありがとうございます。
死後、空の世界へ行って家族と再会するお話です。
雨野川での作品や、おでんもそうなのですが惟風さんは、じんわりとした家族のお話、絆のお話を書くのが得意な作者さんだと個人的に思っています。
今回も自分の得意なことを活かしたじんわり来るすごく温かなお話でした。
死んで家族が待っているところへ行くことが出来た主人公は、これからずっと空の上に止まるのでしょうか?
様々な事情で離ればなれになった家族全員が再会したとき、もう一つ物語が生まれそうだな……。
息子の死後、後悔をたくさんしたのであろう主人公が報われて良かったなと思いました。
文章も読みやすく、内容もまとまっていてわかりやすい作品です。
小説を書き始めて4ヶ月くらいとのことですが、一場面を切り取る形の短編や掌編の完成度はとても高いと思います。
今度は、もう一歩踏み込んで少し長い物語を書いてみると良いかもしれません。一万字規模の物語を書いてみましょう!
これからの成長がとても楽しみな作者さんです。
謎のアンデッド
人生の最後に何を思うか。
やり残したことだったり幸せだった思い出だったり色々あるんだろうなとは思います。が、これは悔恨への最後の救いの話ですね。
簡単なすれ違いが産んだ後悔が人生のその後に救われる。
残された者にも救いのある優しい話でした。
シーンとしてはクライマックスその物から始まるホットスタートなんですが、主人公の後悔や悔恨に対する物語があと少しあると、救いを得た地点がより輝く造りになるかと。
やり直せないけど、その後があるっていうのは良いですね。
謎の神
胸に染みますね……。自然と目頭が熱くなってしまいました。
心に残るセリフが多く、家族同士のやりとりには暖かさを感じさせます。短いながらも書かれるべきことがしっかり書かれており、様々なテーマを感じさせる奥深さ。短編としての完成度も申し分ないと言えましょう。
なんだか色んな事を考えさせられるお話でした。上手くまとめられる自信は無いのですが、「家族」「再会」、そして「待つこと」、といった複数のテーマにフォーカスが当てられている作品と感じました。
それ以外にも「旅立ち」や「残された人」にも思いを馳せられるように、この作品は見る人によって様々な感じ方がありそうです。
視点を変える度にまた違ったテーマや美しさが見えてくる、奥深さを感じるお話でしたね……深イイ……。
7 着飾った空の祭典/崇期(すうき)
謎の有袋類
こむら川でははじめましてですね。参加ありがとうございます。
空のファッションショーを悪魔の司会が紹介するというお話しです。
発想がすごくおもしろく、コミカルで軽快な語り口が印象的な作品です。
空のファッションショーであり、司会が
>翼や羽をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ショーの開始までに「マナーモード」設定に切り替えの方
と注意するなど世界観の作り替えや、最初に「こういう世界ですよ」と、思い切りよく空が人格を持ち、悪魔が出てくるのを当たり前に出してくるのがとても上手だなと思いました。
お話としては、地の文で一方的にドカドカと空さんたちの紹介をされて終わってしまうので動きがもう少しあるとメリハリがあって良いかも……と思いました。
アイディア自体はすごく素敵で、空の描写もそれぞれの空たちの個性もとてもおもしろいので、使い捨てしないでショーに出てもらうまでの事件なんかを書いて新しく短編を書いてみてもおもしろいと思います。
空のファッションショーという非常に個性的で尖った試みの作品でした。おもしろかったです。
謎のアンデッド
プロレスだこれ!?
空のファッションショーってなんぞ?と思って読み進めるとそのものがそのまま発生します。
カレー屋に入ってカレーを頼んだらカレーが出てくる展開。
そして、その空のファッションショーを実況した結果脳内で展開されるのがファッションショーではなくプロレス会場になり始めました。ファッションショー、とプロレスは表裏一体だった……?
デザイナーさんが意外と主張を効かせて来るんですが空の方にはパーソナリティがないのかな?基本的に司会者がアピールする物語になって空のキャラ性がないのが惜しいなあ。
空のキャラってなんだよと思わされたのでプロレス展開に講評も巻き込まれました。
謎の神
うはははwww 着想が突飛で面白い! 空のファッションショーなのにベルゼブブが司会をやってるのにも笑ってしまいました。
ただ、ファッションショーとしての形態がいま一つ分かりにくいのが勿体ないですかね。空の写真を加工しているのか、それとも空の擬人化的な「なにか」が観客の前で披露しているのかな? もし人型のシルエットに空の色が浮かぶような「なにか」が服を着ていたら、と想像するのも一読み手としては楽しくありましたが、この辺はもうちょっと分かりやすく示してもいいかな~と思いました。
文章は「色」がふんだんに散りばめられているのが印象的で、特に、
> アクアブルーのドレスに投げかけられる幾筋かのセピアの光。うっすら入った濃縹のラインは、あなたが夏に身につけていた遠い記憶の中の浴衣の色。あなたはそれきり去っていってしまったけれども、まだどこかで会えるという願いがこの胸にこの色を残したの……
という文章はとても美しいと感じました。エモさがあります。
発想の独特さが面白く、楽しませていただきました。これは突き詰めるほどさらに面白くなるな……という可能性を感じます。
8 ナインリッヒーズの祝福/きなこ
謎の有袋類
初小説!きなこさんだ!参加ありがとうございます!
大学の学祭を通して憧れの女の子と仲良くなるアオハルなお話。
小説を初めて書きましたとのことなんですけど「マジで????」ってめちゃくちゃびっくりしました。
すごいわかりやすいし、読みやすい文章ですし、お話の流れもエモ……。
主人公であるメイちゃんとなゆさんが徐々に距離を縮めていく様子がすごくよかったです。
なゆちゃんの懐く速度が速かった理由を最後に持ってくる構成もすごくテクニカル!読者に些細だけど流してしまう違和感を植えて後でしっかり回収するのは僕も苦手なので見習いたいなと思いました。
テーマの空との向き合い方もすごいよかったです。写真の楽しさを忘れかけている主人公が、なゆさんによって変わっていき、人と関わり合いを持とうとして前向きになるという結論が美しいなと思いました。
満点!と言っても過言ではない作品なのですが、短編なので「お願いがあるんですが、大学祭当日まで髙橋さんの家に泊まらせてもらえませんか?」からスタートして話を動かしていく構成にしてしまってもいいかも?
既に基礎はばっちりで、とてもおもしろい作品だったので、これからもたくさんお話を書いて欲しいなと思いました。
謎のアンデッド
初めて書いたってほんまか?
と思うくらいしっかりした筆力を感じさせる作品。
空をテーマにした作品を撮影するっていうメタ的な構造を含んでいるんですが、撮影という味付けをきっかけに物語が動き出してスムーズに没入できますね。空って実際に空だけ取ると『空!』ってなっちゃうんですよ無限に表情があるんですが。でも、そこに人を入れるとかすると結構ブレイクスルーしたりするので、個人的に手触りのリアルさがとてもよかったです。
きっかけ、発生、展開、結果。その後。
きっかけの部分にその後で回帰していてきっちり落ちている。
一つの話の中にこれだけちゃんと含んで、初作品ってすごい。
分るよ良いよねナインリッヒーズ(幻覚)。
謎の神
ひとつひとつの文章や場面が丁寧に描かれており、構成も起承転結がしっかり整っている印象を受けました。百合という要素、写真という要素、そのどちらかに頼ることなく両方をバランスよく扱っている点でも上手だな~と感じました。これが処女作ってマジですか?(驚嘆)
キャラクターの造詣にも個性があってよかったです。なゆちゃん可愛い。時々敬語が混じるようなところがツボでした。
非常によく纏まっており、題材と丁寧に向かい合って書かれているな~というのが伝わってくる良いお話でした。これからもぜひご自身の強みを生かしたり、好きを突き詰めて創作に取り組んでもらいたいなと思います!
9 もろびとほろびて/ナツメ
謎の有袋類
第二回こむら川小説大賞の覇者が、バズをテーマにした第十一回本物川小説大賞も制覇してくれました!ありがとうございます!
クリスマスに読んでくださいというアナウンスの通り、クリスマスを題材にしたお話で、天地が急に逆転してしまうという作品です。
最初の「橋から足を踏み外しかけてひやっとする。何しろ突貫工事だ、それは誰よりぼくがよく知っている」で掴みが抜群なのがすごい。
短編はスタートダッシュで顔面を殴れ!を体現しているお手本のようなスタートだと個人的には思います。
世界が急に逆転してしまって、困っている主人公たち。でも、世界は優しさに溢れていたというお話なのですが、その中でも三木さんとの会話がお話の良いアクセントになっていると思います。
優しさに溢れているというのは後からの結論で、最初はパニックにもなっているし、人を疑うのはある程度仕方ないと思っているのですが、主人公ももちろん最初に他人を少し疑います。
そこで屈託のない善意をぶつけてくれた三木さんという存在がすごく愛おしくなりました。
作品の中で出た結論も「争わなければダメなら滅びれば良い」というものではなく「もしかして、人間は滅びずに、優しいまま栄えられるように進化するかもしれない」となったのも個人的には大好きです。ハピエン厨なのと、やはり読んでいて前向きになれる作品が好きなので。
ナツメさんはトンチキも真面目なお話もどちらも強いイメージがあります。
基礎力も応用力もバッチリなので今後は自主企画などで実験的な作品や、普段書かないけどチャレンジしたいことなどもガンガンやって行くのも良いんじゃないかな?と思いました。
目指せなんらかのアレを取って三冠王!!!!
謎のアンデッド
ナイスSF。
スタート地点がとてもシンプルです。
天地がひっくり返った、物理的に。これだけで瞬間で黙示録の世界に突撃できます。
でも、実際は穏やかな世界が延伸しました。穏やかでしかいられない世界というべきでしょうか?
緩やかに緩やかに取り戻される日常と、絶対元に戻れないという確信。
世界はまだ続くという希望と、穏やかに提示される諦観。
それでも明日は来るし、まだ世界は続く、滅びてなお続く未来へのお話。
お見事だ……。
謎の神
文字通り天地がひっくり返る話といえば突飛かもしれませんが、しかし、そんな状況の中でも生きようとする人々の描写に、強いリアリティを感じさせるお話です。災厄から生き延びるために、というのも勿論、人と人が思いやりをもって自然に交流していく、繋がっていくところに現実世界の震災を思い出させました。
そうした世界に滅びの予兆を覚えつつも、「それでも」と希望を見据えていくシーンはとても見ごたえがありましたね。
>色んなものを飲み込んだその空は、それでもやっぱり、綺麗だった。
という言葉は美しく、「空」というテーマもしっかり生かされているなと感じました。
人と人との繋がりについて考えさせられる、これは強く印象に残ったお話でしたね……!
10 機人の空/木船田ヒロマル
謎の有袋類
すっかり常連さんのヒロマルさんの作品です。
女性型アンドロイド(ガイノイド)のパイロットと、人間のパイロットの関係性を描いた作品です。
僕はこういうミリタリー系がわからないのでエイトとアイシクル、岡崎とフラッシュでそれぞれ呼び名が違うことで少しだけ混乱はしたのですが、難しいミリタリー用語が全然わからなくてもお話の流れはわかるので、楽しく読むことが出来ました。
ヒロマルさんは常連さんですし、元々お話を作るのも上手いので厳しい視点になってしまうのですが、1万字弱の上限に対して展開する物語の規模が大きいかな?と思います。
短編には短編の、長編には長編のチューンナップをしていくと更に鋭いお話しが作れる気がする……。
設定やキャラクターが魅力的なので、使い捨てにしてしまうには勿体ないなと思いました。
ラストの山中さんのところで完全に「?」となってしまったので、もう少し山中さんと主人公のエピソードが欲しい気も……(僕が鈍いだけの可能性も高いのでアレですが)
あとこれには絶対に触れたいのですが、エイトちゃんがすごく魅力的で、徐々に自分に心があることを認めていく過程がすごくよかったです。
岡崎さんが遺した言葉が、今後エイトちゃんにどう響いていくのかとかも見たかったですね。
前回のデリリウム・デリュージョンについてもそうなのですが、こちらの作品も中編以上の規模でじっくり読みたいなと思いました。
どちらの作品も使い捨てにしてしまうには惜しい舞台と設定なので(二度目)、リライトしたものを是非書いて欲しいなと思います。
謎のアンデッド
空を舞台にする空戦もの。フェイントをかけないすげーいい作品でした。
戦闘機という物の構成品の中で唯一の生身の人体と、それを捨て去ってアドバンテージを取ったアンドロイドの物語ですね。
アドバンテージがディスアドバンテージになるのも説得力があってすごい良かった。
専門用語も少し出てきますが内容より雰囲気を醸し出すツールとして機能してます。これでもっと長編読みたいなって思わせてくれる作品をこの容量でまとめるのが腕前を感じられますね。
謎の神
来たな……ヒロマルさん! 面白いエンタメ小説を読んだな~という気持ちが強いです。専門用語がけっこう使われていても読み手の想像力を置いていかない、やはり書き手としての力量が高さが伺えます。
サブテーマに「心」というものが据えられているように感じました。きっとエイトはフラッシュとのやりとりの中で「心」を指摘されなければ、最後のシーンがまた少し変わっていたのかもしれませんが、エイトは「悲しい」とはっきり理解しているようです。この構図が感情に強く訴えかけてくるようで、非常に読みごたえがありました。また登場人物のセリフの軽妙さも好きですね。一人一人に個性を感じますから、その点も物語に引き込まれるポイントだな~と感じました。
これはもう長編の序章にしてほしいくらいですね。エイトがここからどう成長していくのか、という部分がめちゃくちゃ気になりますし、彼女がフラッシュの代わりに十一飛行隊を率いたり山中三佐との激突があったり……と展開を勝手に想像するのも楽しいくらいです。
超面白かったです。ぜひこれで長編書いてください(ゴリ押し)。
11 axisymmetric /辻藤
謎の有袋類
はじめましての方ですね。参加ありがとうございます!
異世界転移した異形の存在が、元の世界と非常に近い世界で生きていくことを決めるという作品でした。
ユニークな設定で、多分、読み進める内に違和感に気が付いて欲しい叙述トリックのような作品を目指したんだろうなと思います。
なんとなくおぼろげに人間とニンゲンは違う姿なのだということがわかったので作者さんの目論見は成功したのだと思います。
違う世界なのに空「だけが」同じというには類似点がたくさんあるような気がしてそこで引っかかってしまうのが勿体ないかな?と思いました。
>世界の解像度が上がって楽しそうだなあ と思い、やってみました。
とのことなので初めての創作!初めての小説だと思います。
発想やアイディアがとても面白いので、作品を完結させれば完結させた数だけどんどん慣れていくと思います。
細かいことを気にするよりは、カッコいいと思うことや好きなことをガンガン書いて行きましょう!
謎のアンデッド
対象の、対称的な。
主観としての自己認知が人間が人間以外の世界に訪れてしまったなら?そういう不協和音が座リザりと音を耳元でアピール、そんな話です。
ある日ある時突然に自分の認知が異常になってしまった世界。
ただ、このストーリーの主人公は人間ではありません。
一般からの逸脱を人間としては普通では?といった趣で進行していく物語です。
面白い要素があるので、僕が見たいのは「主人公としての通常世界の話」との違和感をバンバンアピールしてほしかったなあって点ですね。
匂わせを展開してはいるのですが、同時に人間とニンゲンの違和感が伝わりにくい部分、それが主人公の感じている違和感なのでもっと具体的に元の自分との違和が描かれていると、異常な世界に異動してしまった悲哀や気持ち悪さや理不尽さを得られると思います。
メタ的な意味での異世界転生として、共有概念の外から始まるのは試みとして楽しいので違和感、異物感を上げるともっと効果範囲が広がると思います。
謎の神
異世界に迷いこんでしまった人の物語。異世界と言えど、元いた世界とあまり変わりなく過ごせている主人公。諦観を感じさせつつも、なんとか折合いをつけて生きるしかない、と日々を過ごす様子が、なんとも言えない味わいを感じさせるお話でした。
主人公にとっての「空」を思う気持ちからも、やはり元の世界への未練を捨てきれずにいる、でもどうしようもない、生きていくしかない、複雑な心境が現れていると感じます。人間の漠然とした内面を、そのまま切り取って形にする、というのが上手だと感じましたので、そういった長所をどんどんこれからも創作に生かしてほしいですね!
12 伸ばした手は、いつか/白木錐角
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます!
架空のフルオーバーというスポーツ選手だった主人公と家族のお話でした。
フルオーバーというスポーツの設定や、上空200mにある霊園など近未来というか、SFっぽい世界観のお話でした。
空にダブルミーニングを持たせた作品の第一号です。
最初に出た台詞を最後に持ってくるのもすごく良い試みだと思いました。
これは僕の好みというだけなのですが、主人公が正体を隠した妹と会話をして終わるモノローグが中心となってしまうので、主人公が行動をして再び記録を出すまでにフォーカスするとグッとエンタメよりの作品になると思います。
このままでも家族に対する後悔や、葛藤、そして心に残っている大切な言葉というじんわり来る作品なので十分素敵な作品だと思います。
主人公が堂々と家に帰ったときに、妹に種明かしをされる様子が想像できる素敵な作品でした。
謎のアンデッド
空を飛ぶ競技。あったら一回は手を出したいですよね、私は出すと思う。
空を飛べる、と言うだけで夢のある話なんですがスポーツである以上プロ競技化が行われてしまう、当然の流れとも言えます。
そして、プロになると楽しい楽しくないの外に一度出てしまう。
挫折を感じて日本に帰国した主人公が序盤に墓参りが行きますが、終盤を見ると主人公の思い入れと喪失した家族が結びつかずにアレ?って感じが少ししますね。
妹の口から墓の対象が母と言うのが明かされますが、直前まで主人公は妹のことを考えていてその妹に気付かない、と言うのは主人公が本当に家族というものに対して淡白な人間である、といった印象になってしまいます。またメジャースポーツ化したと謳ってるので経済状況が良くない話と相反しちゃうのが勿体ない感じです。
空を飛ぶ競技、これ物凄く夢があるので競技自体をもっと膨らませると楽しいんじゃないかな?
謎の神
フルオーバーという架空の競技の存在する世界。主人公が問題にぶつかり、それが解消されるまでのお話。
最初に読んだときは、妹さんが亡くなってお墓に訪れたのだと思っていたんですが、亡くなっていたのはお母さんだったんですね。ここが少し分かりにくかったので、地の文で補強してあげるとよかったかもしれません。
>地上に戻った彼は、しばらく右手を固く握りしめたままだったという。
という最後の一行が、とてもよかったです。彼の表情や、200メートルの上空が光景として映し出されるようで。また、それに至るまでのお話の流れもしっかり整っていると感じました。
妹さんとの関係性も非常に想像力が刺激される、いい形になっていると思います。妹さんはずっと兄を気にかけているのだと伺えますが、お兄さんは妹さんの顔すら分からなくなっている……それだけ競技一筋の人生だったのでしょう。
妹さんが言うように、いつか堂々と家族の元に帰れる日が来たらいいですね。固く握りしめた掌に、その答えがあればといいなと思いました。
13 閉ざされた扉……なら開ければいいさ/流々
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
名探偵とその助手が、フィアンセの依頼で謎解きをするというお話でした。
シリーズものだということですが、このお話だけ読んでも楽しめました。
武者小路先輩が可愛らしくて個性的な様子や、ことある毎にマイセンのカップを高く持ち上げる仕草がすごく好きです。
謎も一方的に投げかけられるのではなくて、種明かしもすっきりしていることと、最初の「はし」の行き違いが後半への伏線になっているのがすごく面白かったです。
作者さんもしたいことが出来ているように思えるので、特に言うべきことはないのですが、敢えて言うなら文章はもっとブラッシュアップ出来るかも?
僕も苦手なことなのですが、音読をして推敲するとより自然でわかりやすい地の文が書けるようになると思います。
細かいことを気にするよりは、このまま好きなことを書いていたらいつのまにかめちゃくちゃ強くなるタイプの作者さんだと思うので、これからもどんどん作品を書いて行って欲しいと思いました。
ミステリーの中にある謎が、解くだけのものではなく、キャラクターの個性や魅力を引き立てる役割を持っているエンタメ性などとても完成度の高い作品でした。
武者小路先輩が本当にかっこよくて可愛いので、シリーズに新規読者を誘導出来る読み切り短編のお手本という感じですね。
おもしろかったです。
謎のアンデッド
序盤軽妙な流れから時代めかした探偵の映像が脳に浮かびます。
町の名前や描写に大正-昭和といった雰囲気を何処となく感じさせる物があるなと思っていると突然のボルボ。
なるほどそこそこ金持ちの現代の娯楽としての探偵事務所で、助手も婚約者も探偵氏が好きでこの事務所を回しているのかなと連想されます。
コミックの蒐集を行いコミックネタでオチを付ける。
綺麗にさっぱりと片が付く、という点がいいと思います。
ただ同時に謎解き事態にウェイトを置きすぎて読後感が「なるほどなー」で終わりになり易いかもしれませんね。名探偵の紹介には弱く、探偵の存在意義を示すには薄い感じを受けました。
物語としての探偵ものではなく純粋な出題解答を小説の形に直した、といった印象です。
ちょっと事件性が高いバージョンとかで読んでみたいですね。
謎の神
短い時間で楽しめるミステリー小説。個人的な感覚としては、ターゲット層を児童向けに絞った作品なんだと思いました。そのための工夫が、随所に散りばめられている。謎のために人が死なない点、IQ〇〇と記載されている点が、特に工夫されていると思いました。子供でも安心して読めるし、IQの高いお話であるほど「解いてやろう!」という気持ちが沸くんですよね……(私も小さい時そういう子供でした)。またキャラクターのバランスが良く、すらすらと読める点も良いポイントだったと思います。
作者さんの書きたいことを書きつつ、ターゲット層もしっかり絞られたこういったお話は、こういった企画であまり見ることがなかったので勉強になりました。ライトミステリーのお手本、と言うに相応しいお話ではないでしょうか、楽しく読ませていただきました!
14 空泥棒/そのいち
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
老人と討論をして空という概念を盗まれてしまったお話です。
軽快な言葉遊びというような感じで面白かったですね。Twitterとかでこういう言い争いがありそうだなと思いました。
絵面としては主人公と老紳士が公園で話すだけなので地味なのですが、会話のテンポが良くて読みやすかったです。
ちょっとだけ主人公のテンションが高すぎて置いて行かれてしまったのですが、ここら辺は好みの問題が大きそうなので好きな人にはきっとハマるんだろうなと思いました。
次は、少し動きのあるお話にチャレンジしてみるの良いかもしれません。
これからもどんどん色々な作品を書いていきましょう!
謎のアンデッド
これちょっと判断に困りまして。
落としどころが不穏なのかホラーなのか🈮すら怖いコメディなのかちょっと判断がつかなかったです。
と言うのは空を定義付け損なったから「空がなくなる」という感覚がちょっと僕にはないので……。
議論というか個人の感想を詭弁でかき回していく、話とかネタとしては実際ありますよね。子供の頃だったり、コントだったりとして。
ただ、詭弁に巻き込まれた人間が空を盗まれた、という流れに共感しづらかったな、というのが正直なところです。
『不透明な会話』という作品がコメディに寄せるなら参考になるやもしれません。
謎の神
空問答のお話。全体的にあっさり読めてしまうというか、物足りなさを感じたのが正直なところです。紳士のキャラクターが胡散臭くて好きですね。なんとなく異能持ちっぽくてカッコイイです(討論で負かした相手の常識を奪い取る的な)。そして被害が連鎖的に続くところも、都市伝説めいた恐ろしさがありました。
紳士に負けないくらい主人公のキャラクターも濃いと、さらに読みごたえが増してよかったのかなと思います。
15 真冬に花火/そのいち
謎の有袋類
空泥棒を書いてくれた方と同じ作者さんの作品です。
かつて勤めていた会社へ空き巣をしにいく中で様々なトラブルに遭う話でした。
鬱憤が溜まった主人公、やけに渋滞した道、小さなトラブル。それが重なり合いうまくいかずに目的を未達成のまま逃げます。
冒頭にある人集りが、迂闊な犯人の犯行がバレない理由の「花火」の伏線になっていたのがすごくよかったです。
物語がやっと転がってきたところでパッと終わってしまうので、ここから更に人展開あったら、更に面白い作品になったのかなーと思います。
細かな心理描写や、出来事を積み重ねていくということがそのいちさんは得意だと思うので、そこを活かしてガンガン作品を書いて欲しいなと思いました。
謎のアンデッド
物凄く理不尽な男による殺人の話ですね。
自己評価が高く、自己評価について回ったはずの金銭的余剰を盗みに行く。
身勝手な印象に違わず身勝手に振舞い人を殺したことにすら爽快感を抱くが、真冬の花火とそれを見上げる無言の人々を薄気味悪く思う普通の人間の感覚が残っていて、実に気分が悪いキャラに書けていると思います。
不思議なのはこの話の前書きを読むことで『短絡的で理不尽だが短期的な運だけはいい男』に変わることですね。少なくともこの時点で誰かに咎められるわけではないので。
空の要素はタイトルで出た要素以外にはないのかな?
序盤の不運の帳尻が合わさったような印象の話でした。
謎の神
ある殺人犯の物語。殺人を犯すまでのシーンは緊張感があり、男の焦燥や怒りなども感じられてよかったのですが、終わり方が少し唐突なように感じられました。
真冬に花火! モチーフとしては非常にエモさを感じるだけに、ただそれだけの意味で使われているのが勿体ないように思います。真冬に花火が上がる意味と、この殺人事件が繋がってきたりするともう文句なしの百点満点です……!(かなり難しいことを言っています……)
16 かわいそうなキティと小さな星空/私は柴犬になりたい
謎の有袋類
こむら川でははじめましてですね。参加ありがとうございます!
かわいそうなキティが、王子様と出会って幸せになるお話です。
詩・童話カテゴリらしく、どことなく絵本を思わせる文体で物語が綴られているの作品です。
冒頭の暴力描写がどことなく大人向けのダークファンタジーと言ったような印象を覚えます。
夢の中のように次々とシーンが移り変わり、最終的にみすぼらしいおじいさんは王子様だったというハッピーエンドでした。
全体的にはアイディアを思いついた端から書いていってハッピーエンドにしたというような腕力の感じられる作品だなと言う印象です。
ドラゴンや樹の声は多分、最初にキティといた男の人の言葉を言っているのかな?とも思ったのですが、キティがなにものなのか、水晶の中の世界はなんなのかがちょっとわかりませんでした。すみません。
お伽噺や絵本をイメージしているのなら、このくらいグイッと力業と仄めかしがあるのが正解かもしれない……とも思うので難しいですね。
水晶の中にある世界や、ドラゴン、王子様といったファンタジーと、不遇な少女が織りなすロマンティックで素敵なお伽噺でした。
謎のアンデッド
大人が主人公の絵本。
大人が主人公になるだけで凄い生々しい痛々しさや辛さが襲ってくるんですね、気付かなかった。
当然絵本的な終わりの紡ぎ方のファンタジー力も生々しさの反転で強く感じれます。こういう手法があったんですね。
故に序盤の社会に擦り潰され、恋人に依存するシーンの痛々しさが切々と胸に来ます。ビン頭に投げつけるとか一般社会では傷害ですよ、コレ。でも、顔が見たくないになっても別れるにならない辺りの煮詰まった状態、胸に来ますね。
そしてヒロインを救う人物ですが、これ最初は拒絶かと思ったんですけど驚きと心配の声だったんですね。
童話・絵本的な話ってことでいいんですよね?
厳しさのある話だけに心優しい登場人物が心優しいままに終わると本当にほっとします。
謎の神
幻想的な御伽話のような物語。おじいさんの掌に広がった、小さな星空に足を滑らせてしまう、という不思議な描写に目を惹かれました。果たしてそれが幻想の世界の出来事だったのか、あるいはキティの元々いた世界の方が幻想だったのか……(悪いドラゴンの創り出した世界だったのかも?)。物語自体はハッピーエンドで終わりますが、作中で明言されていないところに奥行きがあって、色んな考察や解釈を楽しめるお話だと感じました。
最後のシーンが非常に美しくて好きです。瓦斯灯に照らされるマロニエの木、ぽつんと取り残された赤い絨毯。余韻を感じさせてくれる描写の上手さ、幻想的な雰囲気の生み出し方が光っている作品だと感じました。
17 缶けりワールドカップ/あきかん
謎の有袋類
前回は「僕は小説が書けない。」で参加をしてくれたあきかんさんです。
空き缶を蹴る架空の競技の話でした。
多分、異修羅的なことを缶蹴りでしたかったんだろうなと思います。
作者自身はとても楽しく作品を書いているように思えるので、このまま好きなものを書いていけると良いのではないでしょうか?
内容に関しては、知らない人達の知らないやりとりを一方的に話された感じで少し辛かったです。すみません。きっと、身内のみなさんが見れば面白いのでしょう。
個人的には、内輪ネタは思いっきり振り切るか、知らない第三者が見ても理解出来る内容だけど知ってる人が見ると更に面白い位のバランスがちょうどいいと思っています。
もし、これからも身内ナマモノ創作をしたい場合は、その塩梅を探るのも良いのではないでしょうか?
どんな作品でも完結させて、誰かに読んでもらうことは力になると思います。がんばってください。
謎のアンデッド
これ本当によく分からないんですが、まず缶蹴りの基本的なルールがふわっとしてますね。
何をして倒していいけど必要ならレギュレーションで縛る。なんでもありなら何でもありでブンブン振り回したほうがいいと思います。
あとクロスオーバー的なことをしているんだと思います、ちょくちょくツイッターで見る名前もあるのでクロスオーバーと理解しました。そこで疑問なんですけど誰?ってなりませんでしたか?僕はなりました。
缶蹴りで行われる対決ってのは面白いと思います。鬼ごっこをまじめにやるTAGって映画もありますからね。
ただ、このツイッターネームの方もピースメーカーからとってきたようなガンマンの方もなんですが見たことある何か誰かに乗り切ることが僕はできませんでした。
レギュレーションのページとかあるとうれしいなあ。
頭のほうでも言いましたが、序文はルール一つだったんですけどドラム缶から飲むとか規定が増えてるのが気になってしまいます。
謎の神
発想が非常に面白いな~と思いました。缶けりという何気ない遊びを、こうもバトル展開で魅せるとは。さらに、トーナメント形式で演出するというのも上手いですね。バトル展開とトーナメント形式は非常に相性がいいんですよね。各キャラクターの個性がしっかり立っているのもよかったです。
強いて気になった点を挙げるとすれば、このお話の中での盛り上がりのピークが藤原埼玉VS神崎ひなたになっているところでしょうか。やはりここは盛り上がりのピークを決勝戦に持ってきて、大会終了と同時にもう一つドラマを感じさせてくれる展開があると嬉しかったです。
18 黒い空/@kamodaikon
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます!
暗闇に飲み込まれてしまった男の恐怖を語った作品です。
巧みな比喩表現が光る怖い話でした。
怪異なのか、それとも男の錯覚なのかわからないところから、徐々に男にはどうしようもない現象であることがわかっていく様子は緊迫感があってよかったです。
家に電気が点いていないことに違和感を持った主人公なのですが、その時点では一人暮らしではないということがわかりにくかったので、家族と住んでいるということを冒頭で書いてしまうとより伏線が生きると思います。
今度もどんどん作品を書いていくと、書いた分だけ強くなれる作者さんだと思います。これからもコンスタントに作品を書いていきましょう!
謎のアンデッド
個人的な感想としてAlan Wakeを思い出しました。
ここまで比較的空のイメージが奇麗なものが多かった中でめいかくにきっぱりと不吉な様を描いた作品なので、どこか気持ち悪くのどに引っかかるような感覚を覚えますね。
見えないことで見えない部分の細部を想定してしまい、ずぶずぶと底なし沼に落ちるような感覚を覚えます。夜の黒に染まった自分さえも思うようにいかなくなり、そんな自分を拾い上げるのが日常の再浸食というのもいいですね。
最後、助かりつつもその助かった理由によりもう一度夜道を行くという展開も捻りが効いてます。
効果を得るためにつめつめにして書いてるのかな?そこは少し文章前後のアクセスがしづらいかもしれませんね。
謎の神
ホラーなお話。夜や闇といった暗がりから広がる恐怖。主人公の心情が丁寧に描写されており、特に、「自分の想像したことが現実になっているんじゃないか」という恐怖に駆られるシーンは、強く想像力を刺激されました。
ある種の都市伝説的というか、この体験が「よくわからないもの」で終わっているところも不気味さが助長されていてよかったです。彼の体験した恐怖……あるいは怪奇現象はなんだったのだろう? と想像を巡らせる楽しみもあるお話だと感じました。
19 ライブ・アバーヴ・スカイ/私は柴犬になりたい
謎の有袋類
かわいそうなキティと小さな星空を書いてくれた柴犬になりたいさんの二作目です。
エモ!って感じのギターで語り合う少女二人のお話でした。
これ、漫画で見たらめちゃくちゃ映えそうでよかったです。
多分、これはチハルとサユリそれぞれのやっていることをリアルタイムで比較しながら進んでいくということをしたかったのだと思うのですが、やはり短編だと視点が細かく切り替わると一瞬混乱してしまうかも……?
僕は最初めちゃくちゃ混乱してしまって何度か読み返したのですが、一人称視点の地の文をシームレスに切り替えるのは短編だとなるべく避けた方がいいのかもしれないです。
アタシとウチで一人称を変えているので、慣れれていけばどちらが今地の文で話しているのかがわかりやすくいので、一人称を分けた部分は親切だなと思いました。
終盤の演奏をしているシーンはめちゃくちゃエモいシーンなんだろうな……というのが伝わってきてよかったです。
小説、基本通りにすれば良いわけではないので、自分のやりたいことを効果的に出来るように色々試行錯誤して行きましょう!もっともっと強くなれると思います。
謎のアンデッド
えーと、映像を脳に起こしてカットをつないで書いてるのかしらね?
というくらいにPVっぽさがありますね。
ただ基本的に「映像的描写」って文字数がめっちゃ要ります。
なんでかっていうと動画のデータ量がクソ重いのと同じような感じです。PVの場合は演奏者の表現が指先に乗るかもしれない、なのでカットを細かく割って作ってやったりするんですね。
そういう意味で僕はこの小説の後半からは嫌いじゃないです、時間経過を表示するタイムコードのようなものを入れることで支店の切り替わりがシームレスに行えはじめてます。
だから前半がもったいないです。ぶつ切りの切り替わり、ちょっと読み込みがしづらいです。そこが勿体ないなー。
あと、情報量を叩き込んだ登場人物なんですけど情報量に対してその情報がすっと入ってこないのと描写が少ないですね。
後半とのギャップがすごいので、演奏前までを細かく追加してあげたほうが没入感が上がると思います。演奏シーンはお互いを信じて好き勝手やるシーンなんですが、二人だけの世界が完成しすぎてる感じです。通話とか入れてもいいのかもしれない。
でも、アーティスティックさとか同じ空のした感は薄れますね。難しい。
謎の神
お互いの音楽をぶつけ合う女性二人の関係性を描いた物語。序盤では視点の入れ替わりが激しく、正直どっちが誰なのか分かりづらかったです。演奏のシーンでは視点の入れ替わりが分かりやすかったので、ああいった一工夫があると良いと思います!
演奏のシーンではとにかく迫力の凄さに圧倒されました。後半の演奏シーンに込められた凄まじい熱気。魂のぶつかり合い。4’33という僅かな時間が経過していく演出が非常に素晴らしいです。演奏の中でお互いがお互いを超えようとする関係性を見せられた時は昇天しかけました。最後の一行に来る『00:05』の余韻も素敵。熱い時間が過ぎ去った後の空白感、冷たい夜の風すら感じられるような表現の仕方でとても上手だと感じました。とてもアツく、面白いお話でした!
20 アナコンドルVSフライング・ブルシャーク サメ狩人は挫けない/武州人也
謎の有袋類
美少年と言えば武州さん!と思っていたのですが、いつしかサメ映画から帰って来れなくなっている武州さんの作品です。
猛禽の翼を持つ蛇アナコンドルVS空飛ぶ鮫フライングブルシャークの対決でした。
鮫映画フリークスにはお馴染みのクソ鮫映画のネタも忘れないファンにはたまらない作品なのではないでしょうか?
エンタメをしていてワハハ!と笑える作品でした。
1万字前後の作品としては、ちょっと色々詰め込みすぎな気もします。詰め込んで「どういうこと?」となるところまで鮫映画を踏襲している……ということでもなければ、多分博士とハンナのエピソードを中心にするのがわかりやすいかな?と思います。
ハンナちゃんというか猛禽の知能があるのでハンナちゃんは知能が高く博士に愛着を持っているという部分が最高にエモ。ハンナちゃん……。
鮫ハンターや謎競技は鮫映画に付きものなのはわかるのですが、文字数と内容の相談もすると鮫初心者や鮫未履修者にも優しい作品になると思います。
エンタメ映画を小説に取り込んでいこうという試み自体はとてもやりがいがあるので、お約束の回収と初見さんへの親切さのバランスを探っていきましょう!!!
謎のアンデッド
スーパーB~Z級サメ映画大戦アナコンダシリーズを添えて。
すげえ完璧な一文だと自分で思いました。
なんていうかオチでちょっとハートフルなエリア作るのとかレニー・ハーリン監督のB級テイストで僕は大変好物ですご馳走様です。サメは実験体だし、サメが出て軍が出た以上軍人が黒幕であってほしいし、そこにまさかのアナコンダキメラの乱入ですよ。
ものすごいサメ及びアニマルパニック映画魂を感じます。
いいなー、これ。
謎の神
来たな……はがちさん! 今回も最高のエンタメ小説を引っ提げて参戦してくれました。どこか胡乱なキャラクター群、次々に飛び出る名言(例:対サメ戦闘競技、年貢のおサメ時、「お、俺の彼女よりすげぇ……」など)が、持ち前の高い文章力から繰り出されるので最高でした。タイトルだけ見れば、設定のトンチキさに頼った無茶苦茶なお話のように思えるかもしれませんが、それは全くの誤解で、サメVSアナコンドルの戦闘描写から感じさせるリアルさ、元ネタとなっている動物の習性を生かした展開、さらに字の文の説得力は凄まじく、読むたびに物語に引き込まれる自分がいました。いやー、めちゃくちゃ面白かったです。
ラストに博士の過去を開示しているシーンでも、本編ではいま一つ明瞭でなかった博士の象が浮き彫りになるようで、演出が上手いと思いました。そしてハンナとの最期も非常に味わい深くて好き……。
これはもう講評というよりただの要望なんですが、後日譚を書いてくれるともっと嬉しいです。具体的にはマークが騒動の後どうなったか・どうするか(次は何と戦うか~どこに行くか)的な内容があったりすると、さらに良い読後感というか、安心して物語から意識を手放せる度が上昇して最高でした。(これはもう完全に要望なんだよな……)
総括すると五億点です!!!! また次回もマークの活躍をお待ちしてます!
21 化け猫おちる/帆多 丁
謎の有袋類
わーーい!ユエちゃんだ!手癖で☆を投げそうになった危険な作品です。
帆多さんの長編からのスピンオフですね。
僕はちょっと読んでいるので、完全初見というわけではないのですが、多分初見の方にもわかりやすいはず?
ルビなども浸かって右目が、かつては別の存在だったことや、名前がリールーであること、一定期間物の怪を食べないとどうなるのかがわかりやすくまとめられていました。
スピンオフなので、色々載せよう! という気持ちはすごくわかるのですが、リールーが右目に宿った流れとかは、ちょっと複雑なので思い切って省いてしまってもよかったかも?
ところどころ散りばめられた王猫族や、独特なルビがすごく良いフレーバーテキストの役割を果たしていて、本編を読んでいなくても十分楽しめる内容になっています。
あと、キュンですよ!キュン!すごく良いキュンでした。
失っても、それでも変わらないものがある……リールーとユエの絆、そしてなんでリールーがクォンとの思い出を大切にしたのかがめちゃくちゃ最高の作品でした。
超よかったー。早くカクヨムくんはシリーズまとめ機能を準備してください……。
謎のアンデッド
完成度が高い。
なんというか世界観も魔法も物の怪も魔女という存在も、そしてそれに対応しようという兵士も含めて確固とした独自の世界法則を感じさせてくれます。
ギリギリとせめぎ合う様な、読んでみてもこれはこういう世界なんだときっぱりと告げてくるような質感が届いてきます。
大きな話の中の一部というのは、化け猫シリーズ、と銘打たれた段階で伝わるのですが一部だからってそこに過不足がなく物語とそれを織りなす世界観を明瞭に雄弁に伝えてきますね。
とにかく読んでほしいです。
感想でネタバレに触れないように、そして人の目に多く触れる機会があって欲しいなと思いました。
本当に物語の質感を感じられる、すごい作品だしすごい作品を書かれる人なんだな……。
謎の神
きっと元ネタがあるのだろうと思うお話だったのですが、今作だけでも十分に楽しめるお話でした。でも元ネタを知っていれば、きっともっと楽しめる気がする……!
読み終えた後にまた最初の章を読むと、か、悲しい……。これは体内に潜む魔女の魔女性を解明できないまま伴侶と添い遂げられなかったという風に解釈してしまったので、それでも旅が続く……というのが咎なのかはたまた宿命なのか、とにかく少女が背負わされたものの重さを感じます。或いは二人で一緒に生きた思い出を忘れずに三十年過ごせただけで幸福と思うべきなのか……。
また、文章力が凄まじいです。「語らずして想像させる書き方」が徹底されていて、文章として書かれていないことにまで思いを巡らせていける、心地よい読み心地を味わえました。
どんな形でもいいから、最後に幸せであってほしい。そう思わずにいられないお話で、今でも強く心に残っています。
22 向こうの空/尾八原ジュージ
謎の有袋類
前回は、魔法使い偽シンデレラ爆誕と禅士院雨息斎のゴーストバスター劇場で参加してくれたジュージさんです。
マンホールのようなものを開いた先にある穴、そこから見える空に魅入られるというホラーテイストのある現代ファンタジーのお話でした。
お父さんのエロ本を探していて、手帳を見つけ、蓋の開け方を知るまでの流れがすごく好きです。
4000字ちょっとでまとまっているのもすごい。サクッと読めて満足出来るとても良いショートショートという感じで満足感が高い作品です。
あえて言うとしたら、スタートダッシュをもう少し勢いよく出来るかもしれないのですが、この物語の展開ペースはすごく心地よいので好みの問題が大きそうです。
こういうちょっと怖いけど不思議なショートショートを上手い感じに繋げて中編とかに絡めていけると強いのかなと思いました。
アイディアのリサイクルをして、つよつよ長編にチャレンジしてみても良いのではないでしょうか?
次回作も楽しみにしています!
謎のアンデッド
高い所から物を落とすとどうなるのか。
これ割とみんな疑問に思いますよね、私も読んでて似た様な事をしたことを思い出しました。
物すごくシンプルな構造で地球を貫通した穴があるとしたら?
スタート地点がとてもシンプルです。それがとても有効に働いています。
自分の家の庭、という子供にとって唯一親以外の目を恐れずに済む場所にその穴があって、親が不在の期間が長く続く、さあどうしよう。穴が異常さを醸す一方それ以外の点では共感や理解がし易い仕組みですね。
恐れる気持ちと好奇心のせめぎあい。じわじわと上がる欲求。
主人公のソレが爆発する前に事件が起き、主人公は穴についての事に封をします。
全てがその一点に接続される、シンプルで馴染みやすく、馴染みやすいだけにぞっとさせられる。
ざっくりと考えると対象の質量重量分の損失を起こしながらループ幅をちょっとずつ縮めて行く、そう考えると本当にぞっとしますね。
謎の神
全体を通してめちゃくちゃ文章が上手だと感じました。蓋という謎に興味を惹かれていく経過だったり描写だったり、また主人公の考え方や行動も不自然なところを一切感じさせない話の運び方がすごい。
オチには思わず腰を抜かしかけました。あれ一体誰だったんや……。
ガチガチのホラー! という雰囲気を序盤から醸し出していくタイプの怖さとはまた違った空恐ろしさを味わわせてくれる良いお話でした。小説が上手い……。
23 欺瞞の匣/宮代魔祇梨
謎の有袋類
こむら川でははじめましてですね。参加ありがとうございます。
偽りの環境から目覚め、旅立つまでの物語でした。
過度に閉鎖された環境、管理され、接触を避けられる子供たち、窓の外だけにある美しい景色、手紙だけの両親……ここまで積み上げられていると「絶対何かあるでしょ」とワクワクしてしまう偽りの平和セット!
正直めちゃくちゃ大好きです。良い物語のエピローグというようなお話しで、小説としては、やっとお話しが転がり始めたというような印象です。
長編がどこかにあって、そのエピソード0みたいな……。もしないのなら、これのアイディアを元にした長編を作ってしまっても良いかもしれないです。
短編を書く場合は、ロケットスタートをした方がそれっぽくなるので、一行目からレイくんを出してしまっても良いかも?と思いました。
ツクモとレイ、九十九と零となってるところが最高でした。モモちゃんも百とかかってるんですね。
めちゃくちゃエモい……。
ツクモくんとレイの二人の物語が始まるラスト、冒頭の青い空と正反対の荒れ果てた土地という二人の今後が気になるおもしろい作品でした。
謎のアンデッド
大きな物語の初めの一歩。
静謐な病院に見えて実は、という近未来?もっと未来なのかな、の話です。
普通の病棟のように見せかけた違和感と、不穏さ。
何かを知っているかのような態度の謎の少年。
起承を受けて話が転がりだします、丁寧に書かれている話です。なのでこのエンディングからどういう話になるのか、という期待が持てますね。
謎の神
兵器として育てられた主人公が真実を知り、檻から飛び出すまでの物語。読み終わった後にタイトルを見ると、欺瞞の二文字が深くのしかかってきますね。文章力と謎への誘導、牽引力が高く、どんどん次へ次へ、と読まされました。
このお話は、大きな物語の中の序章、という印象が強かったです。きっと二人は、これから世界を駆け巡りながら色んなことを考えて、その時々の色々な空を見たりして生きていくのだろうと想像させます。
このお話のままでも十分楽しめるのですが、レイ君の正体が割りと謎めいたまま終わってしまっているので、その辺りは少し気になりました。もしかするとぼくが読みとれてないだけかもしれないのですが……!
世界感やキャラ設定に重厚さがあると感じましたので、このお話を元に長編に挑戦してみてもいいのかもしれません!
24 透明の記録/辰井圭斗
謎の有袋類
時と光とツグミと同じ作者さんですね。
空に浮かぶ天空都市、旧い言葉を使い、死者を弔う少女、そして目の色が違う捨てられた子供。
ルビの使い方や世界観の表し方がすごく上手でした。
意味のわかる言葉を書いて、その上にルビで呪文を書くのめちゃくちゃ好きなので「良質なファンタジーだー!」とウキウキして読むことが出来ました。
多分、長編の導入部分としては満点なのですが、短編として読むと「これから何かが始まるぞ」というめちゃくちゃいいところで終わってしまっているので、ちょっと物足りないなと思いました。
すごい良い設定や、登場人物たちがいて、おもしろそうな舞台があって……で終わってしまっている感じがします。
辰井さんは、じっくりと導入からスタートしてお話しを広げていく中長編が得意なんだろうなと思いました。
表現力も、文章力もとても高い作者さんなので、文字数に見合った物語を作れたら最強だと思います。
本当にめちゃくちゃ気になる設定と世界観なので、是非、この続きを書いて船の意味を持つジャフダイが、滅び行く都市をどう記録していくのかを知りたいなと思いました。
謎のアンデッド
伝承の一説。
始まりと、終わりがあり。そしてまた新しい伝承の始まりと終わりが内包されたお話。
空中都市の始まりと、地上の人々の繋がりをうっすらと滲ませながら、丁寧に地道な話を書かれているんですがその構造で一話目が凄く効果的に効いてきます。
物語が始まった段階で既に物語になってしまっている過去の歴史があり、また自分たちもその一部、というスケール感を表すのに地道に丁寧な一つの家族の話が後からボディブローのように浸透してきます。何と言うことの無いはずの描写が丁寧に丁寧に読者を追いかけてくる、良い話だなあ。
謎の神
風景の表現力が凄い。天空の都市に生きる人々の生活が、風に吹かれる様子が浮かんでくるかのような筆致。また、独特なルビの降り方も美しく、見惚れてしまうようでした。
作中では青い目の少年のルーツや透明が見えるというのがどういうことなのか、はっきりと判明することはありませんが、それでも主人公は自分で自分の為すべきをことを見つけられる、その終わり方がよかったと感じました。ぼくは割りとお話の中で謎が全部回収されているかっていうのを気にするタイプの人なんですが(短編だと特に)、このお話に関しては、少年のルーツが明かされなくても気にならないというか、とにかく「少年の生き方」というポイントに着眼点を当てて物語に没入させられるような、そんなお話として仕上がっているのを感じました。非常に読みごたえがあり、面白かったです。とても小説が上手いを感じます……!
25 空中要塞・ユグドラシル/上村みなと
謎の有袋類
村瀬先生シリーズなどの現代ドラマを書くことの多かった上村さんが、SFでの参戦です。
世界観の作り込みや、不気味な空中要塞、裁きを恐れつつも受け入れる人々やレジスタンスの思惑が着実に描かれているおもしろい作品でした。
淡々と物語や国の仕組みが書かれているのですが、エリックとリノがレジスタンスとしてする活躍、ドロドロとした帝国周りのいざこざ、皇帝と皇太子の関係性、ヴェロニカと皇太子の馴初めなんかも肉付けしたらそれぞれが2万字くらいのものに出来そう……なだけに、個人的にはサクッと流してしまうのはっもったいないかな?と思ったりしました。
これを元にして20万字くらいの作品に仕上げられると思うので、機会があればリメイクしてもいいのでは?
文章はとても読みやすく、設定も魅力的で内容に大きな破綻もあるので、後は自分がどんなものを書きたいのか、どういう層に突き刺したいのかを考えると一回りも二回りも化けそうな作者さんだなと思いました。
今後もファンタジーやSFなど色々なジャンルにチャレンジして欲しいです!
謎のアンデッド
架空SFヒストリー。
天空の城からランダムに地上に向かって裁きが起き、その統治を受け入れている社会構造が出来上がっている、って言う所まで聞くとディストピアめいた世界なんですが。
この話で私が凄い面白いなーと思ったのが無作為の統治機構を受け入れる社会が形成されたうえで、統治機構に人間性が生じると人間VS人間の図式になり社会構造の縮図が変わる点、そして慈悲深い人間が排斥されている点ですね。
戦国・江戸期における君主の絶対性というのはあるけど無いって読み方があって「構築された社会に対する反乱」を君主が起こすと下から突き上げられて崩壊したりする、っていう話を思い出しました。
その崩壊のきっかけの生々しさと、きっかけとなった先王の崩御すら「未経験だった」ので対処できない展開も凄い架空の話なのに歴史的生々しさを作り上げていますね。
謎の神
めちゃくちゃ好きなお話でした。語り口が滑らかで非常に読みやすく、どんどん物語に引き込まれて読み進めました。裁きがどんな仕組みで働いているのかというのが、序盤のフックとしてとても興味をそそられましたし、またその理由が明らかにされた後も、最後になって本当の理由が見えた時は「なるほどな~」と思いました。また登場人物がそれぞれの役割をしっかり果たしており、発言や行動に違和感を感じさせないところも、しっかりと作り込まれていると感じました。特にヴェロニカ、クヌート、カールの三者の人間模様が特に見ごたえがあって面白かったです。ヴェロニカの存在や目的が謎めいたまま終わっているところにも色々想像が巡って楽しいです。
ユグドラシル崩壊の立役者。彼女自身に目的があったのか、それとも何者かの差し金だったのか……。
26 土を蹴る。本心の前で。/新宮すばる
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
ちょっと変わった男の子が好きな主人公が、幼馴染みの家に行くお話。
初めての小説とのことで、まずは完結おめでとうございます。
>彼の答えはいつも外国のビスケットみたいに淡泊だった
>逃げ道もファーストキスも失った
のように、とてもグッとくる表現や一文がありました。
等身大の女子にありがちな突飛な思考回路や、子供ながらに小さな子を事故から救えなかった気まずさを表現していて、重い話なのにカラッとしていておもしろかったです。
自主企画のレギュレーションでもある「空」要素だけちょっと拾えませんでした。すみません。
今回が初めての小説とのことなので、これを機にコンスタントに作品を書いてくれるとうれしいです。
謎のアンデッド
こういう文体、僕は好きです。
塾へ行く理由、とにかく一度試してみようという動き、そしてそのことを特に隠すでも恥ずかしいでもなくあけっぴろげに話す主人公。
物語の中で出てくる表現と小物について、とにかく細部の書き込みが上手いな、と思いました。
空、に関してなんですが僕は「五年前から合わなくなった幼馴染とその家族との時間」が「から」だったのかなー、と思います。
主人公が始めて、その年相応の弱さや脆さを見せる程の五年の空隙。その隙間があったから主人公が進路というか目的を再認する。
凄く好みです。
謎の神
主人公を巡る人間関係や、場面場面で登場するアイテムの描写力が素晴らしいと思いました。これらの解像度の高さに裏打ちされた物語が、リアリティを伴って迫ってくるように感じます。終盤のおじいちゃんのセリフにも貫禄があって、なんだかハッとさせられるようでした。きっと、これは主人公が一歩踏み出すきっかけを描いた物語なのだと思いました。
非常に読みごたえがあって、また考えさせられる深みをもったお話でよかったのですが、強いて挙げるとすれば、本企画のテーマである「空」があまり有効に活用されていなかったように思います。もしかすると何処かでなんらかの「空」を表現されていたかもしれませんが、ぼくはちょっと読みとれませんでした。すみません。
27 空を目指した君へ/@yumesaki3019
謎の有袋類
こむら川への参加ははじめましてです。参加ありがとうございます!
人に知らせずひそかにする善行である陰徳をテーマにした作品でした。
誰にでも優しく分け隔て無く接したい、空のようになりたいという幼馴染みが、飛び降りて意識不明になり、彼女の夢を結果的に主人公が叶えていくというお話です。
自分に出来ること以上のことをしてキャパオーバーになってしまう海の様子がとても悲痛な物として書かれています。
それに対して、主人公である優希がうまく慰められなかったことを後悔するのも、海の夢を引き継ぐ動機になっていてよい構成だと思いました。
会話文というか「」の使い方が独特で、今誰が話しているのかわかりにくいので、その部分をどうすればわかりやすくなるか工夫すると作品に読者が入り込みやすくなると思います。
このままコンスタントに作品を書いて欲しいなと思う作者さんです。
謎のアンデッド
コンセプトは凄い良く分かるんですよ、報われなかった人の為に報われる人生を歩む。
無念への返礼、応報と言いますか。
陰徳、という言葉を示したい。だから彼女のように空になりたい。何故なら彼女の心底が報われるべきだから。
という物語に没入させるための工夫なのかな?とは思うのですが会話文がキャッチボールのエリア、キャッチボールじゃないエリアが混在していて話の筋、会話の主体が見えなくなることがあります。演出方法を優先するか、それか話の導線を見易くするかは其々ですが、私には少し可読性が低く映りました。没入感が得られなくなると、後半の主人公主体の物語が弱く感じられてしまうのでそこは損だな、と。
報われなかった者への思いとかは分かるので、可読性を上げるといいと思います。
謎の神
空のように何もかもを受け入れる優しい人でありたかったけれど、なれなかった少女。そんな少女と親しかった少年が成長するお話。こういったお話は非常にぼく好みなのでとても味わいながら楽しみました。悲しいけれど、最後の数行に込められた希望には思わず涙腺が緩みます。
ここからは表現のテクニック的な話になってしまうのですが、「??」という風にクエスチョンが連続すると、文面がどこかコメディーっぽくなってしまうので、シリアスな雰囲気が良く似合うこのお話とは相性がよくないと感じました。
また、登場人物のセリフも少し読みづらかったので、同じ人物が連続して喋る時は同じ「」の中に納める、を統一した方がよいかと思いました。例えば、
>「いきなり何言い出すんだよ??自分を知れって海こそ自分が何をしているか分かってないだろ??
>「いつも誰かの為に動いて陰徳を信条にしてる!【いつか報われる】っていつの事だよ!!空になりたいって、自分はどうなっても構わないのかよ!!」
>「そんなの俺は嫌だ!!幸せになれるとは思えない!!」
というシーンも、一つの「」に収めてしまった方が、セリフ自体は長くなってしまうのですが読み手にとって分かりやすい形になるでしょう。「怒りに任せてまくし立てている」という主人公の逼迫した雰囲気も感じられて良いと思います。
題材や主人公の至った結論など、非常に見ごたえがあって良いお話だったので、次回作ではこういった表現の仕方も意識して書き上げてみるといいかもしれません!
28 空に、感情。/椎葉伊作
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
自分が生まれた時に雨が降っていた主人公が、雨に日に自殺をする話です。
これすごいよかったです。終始雨が降っているかのようなじんわりとした湿度と暗さがあって、主人公の拘りがしっかりと描かれているので読んでいてハラハラしながら読むことが出来ました。
咳き込んで吐血しているから、主人公には時間も残されていないと焦っているのかもしれないというところどころにあるヒントも想像力をかき立ててよかったです。
これは僕がちょっと人の情緒を読み取るのが苦手なせいが大きいのですが、【4】の「あなたが産まれた日に降った雨は、きっと——————」だけどう続くのかわかりませんでした。すみません。
ですが、それがわからなくても、自殺をした主人公が最後に至った感情や読後感を毀損していないと思うので、わかる人にだけわかる余地の残し方……という感じで詳しく書くのも野暮な気がするので難しいですね。
自殺で終わるお話なんですが、悲惨なラストではなく、カラッとしたラストの天気と同じような読後感で不思議な読み応えのあるお話でした。
暗い系のお話の中では今のところ頭一つ抜けている素晴らしい作品です。
謎のアンデッド
生まれつきの判定が悪くて這い上がれない。
アルコールに逃げた母と子供特有の不理解の世界で、空だけが同情してくれたように感じた主人公。
とても寂しい、孤独な話です。
触れ合うこともなく、言葉すらすれ違う。救いになったのは雨が降ってくれたことだけ。
その結果がもう一人の女性の行動を変えたので、結果を拾うと少し救いがあってでも主人公にはなかった。
執着もないので救いも必要ないのかもしれません。
そういう透徹した話です。こちらが寂しいと思うのも主人公には邪魔なのかもしれませんね。
謎の神
自殺の物語。天涯孤独の身の上や、空に同情を求めること、やっと自分で何を選択できると思った彼の心境から、主人公の感じていた生きづらさが伺えます。
屋上での二人の会話が心地よく、テンポよく進んでいくだけに、もし違った出会い方をしていたら仲良くなれたんじゃないか……と想像が膨らんでしまいました。でもそうはならなかった、というところにこのお話の痛切さがあるように感じます。最後の章で女性を見送る主人公の描写が、なんと寂しいことか……。このシーンを見て、死というものの取り返しの付かなさを改めて実感したと思いました。このラストの展開がとにかく刺さりましたね。死という難しいテーマをしっかり掘り下げて書かれたのだなと伺えて、そういった点でも非常に興味深く読ませていただきました。
29 ぬばたまの瞳、ぬばたまの心、ぬばたまの空蝉/鈴元
謎の有袋類
神ひな川ではヒューマンマンで、長編企画では異能持ち酒飲みお姉さんが素敵な短編を投稿してくれた鈴本さんです。参加ありがとうございます!
ぐえーーー最高の百合!!!なにこれーーーーー!なにこれーーーー!王道(?)の王子様的でモテる女性と、その女性にそっけなく接していた主人公のお話なんですが、後半の主人公ナナハンのギアの入り方がすごかったです。なにこれーー!
はわー……よかった。
短編って、一人称の視点変更は本当に禁忌くらいに考えているのですが、これは非常に効果的でめちゃくちゃよかったです。
拙者、その人だけの大切な呼び名が好き侍……。
怪力乱神を語るの空也さんといい、こういう人誑しの最高女を書くのが得意だと思うのですが、その人を惹き付けるという人物像に説得力があるのもすごいです。
ナナハンちゃんは、月でも土でもなく、太陽を隠して自分だけの顔を見る時間を作れる雲なのでは?と変な自分語りをしたくなりますね……恐ろしい作品だ。
タイトルに「ぬばたま」は万葉集などでよく使われる黒い実のことなんですね。
>うつせみの、人目(ひとめ)繁(しげ)くは、ぬばたまの、夜の夢(いめ)にを、継ぎて見えこそ
ここら辺からの着想だったりするのでしょうか?
タイトルの仰々しさと良くも悪くもギャップのある瑞々しくてアツい百合でした。
謎のアンデッド
凄いいい対比が描かれている作品です。
自分を空っぽ、相手には中身が溢れるほどある。
と、思うくらいに相手を思っている、という最後の転換がすごく良いです。醜い感情や動機が本当に醜いか、自分が空っぽかどうかをジャッジする時に人は自分に対してシビアに振舞うことは出来ても、正確にふるまうことはできない。だから怖くても試さなくてはいけないし、試さなくては自分を知ることがない。
勇気の百合。百合は勇気。
勇気への報酬もあり。
良質な青春物でもあります、いいなあこれ。
謎の神
ヒューマンマンの鈴元さん!!! 今回もめちゃくちゃエモなお話を見せてくださいました。
凄い。ぼく自身あまり女性同士の恋愛のお話に詳しくないのですが、とても面白かったです。主人公の一人称を追っていくほどに胸が締め付けられるような感覚を味わいました。
帆那さんのキャラクターが凄くいいですね……色々な人を惹きつけてしまうという設定にも納得です。
展開の運び方、言葉の選び方、人間模様の描き方、どこを取っても非常に見ごたえがある素晴らしいお話です。最後にちゃんと二人の関係が前に進んでいったのもハピエン厨としては見過ごせない嬉しいポイントでした。めちゃくちゃよかったです!
30 あの向こうの もっと向こうへ/味付きゾンビ
謎の有袋類
前回は手の触れる距離でどっしりとしたSFを書いてくれたゾンビさん。
今回は本当に僕の心臓を狙い撃ちをしに来てくれましたね。今回はではない。今回「も」です。
サイバーパンク×AI×吸血鬼!!!!特盛りですよ。
これだけ特盛りにしていて設定に破綻がなく、スルスルと読めるのがズルいですね。
管理AIたちのやりとり、インプラントの描写、AIのシステマチックだけど人間っぽさのある話し方……飄々とした吸血鬼……ズルい。
視点の切り替えがあるのですが、環境構築がAIのログ、閉鎖工程進行がミキヤ視点での現行作業とわかりやすかったです。
アンドロイドやAIが人型をしている理由付けや、吸血鬼の食糧確保についても書かれているの個人的にめちゃくちゃ好きでした。
僕の知能があれなことが問題なんですが、AIちゃんたちの名前を覚えきれなかったのでラストはAIの番号?にルビを振る形で名前を書いてくれると更によかったなと思いました。
講評なのでそれっぽいことを言おうと思っただけで、現時点でもめちゃくちゃおもしろいです。
サイバーパンク2077にハマり、ニーアオートマータが好きで吸血鬼好きの僕を狙った悪質なテロでした。最高!
謎のアンデッド
俺
謎の神
現代よりもさらに進歩した時代に起こった事故をきっかけに、人類の大半は死んでしまうけれど……というお話。登場人物が吸血鬼に人口端末という、なかなか珍しい組み合わせで面白かったです!
正直、専門用語が多くてぼくには難しかったのですが、これは知っている人が見れば非常に奥行きのある世界感や設定となっているのかもしれません。
青空の下、また新たな旅に出る二人。爽やかで軽快な会話が心地よく、安心して物語から意識を手放せるような、素敵な締めくくりがとてもよかったです。
31 アナザースカイ/海野しぃる
謎の有袋類
異世界麻薬王連載中!邪神任侠のしぃるくんが参加してくれました。
商業作家ということもあって、架空のゲームのルール設定や、機体についてが説明的になりすぎずに一回読んだだけでほぼ頭の中に入ってくるのは流石のワザマエ!という感じの完成度が高い作品です。
アキラがボーイッシュな女の子でも、男の娘でもどっちでも良し!な魅力もすごく良い。
アーマードコア×スプラトゥーンみたいなわかる人にはわかるゲームを下地にしている部分も好きです。僕はスプラトゥーンプレイヤーで、他の陣地取りゲームはあんまりしないので「塗る以外での陣地取りってどうなってるんだろう」となったので、具体的にどうやれば陣地判定にされるのかがわかると更にわかりやすかったかも?(読み落としてるだけだったらすみません)
強敵から煽りチャットが来て、キッズフィルターをきっかけにして打破するのがすごく好きです。マッマが近接蛮族なのも個人的に良い……高機動近接特化は良いぞ……。
ほんのり恋的な何かや、今後の展開を感じさせる余韻のある終わらせ方ながら、一つの山場を乗り越えたことで物足りなさもないという短編のお手本のような作品でした。
謎のアンデッド
文章力に突っ込みどころがねえ……。
近い未来、新型感染症の流行で様々なことを外に出て行うことができなくなった社会で、ネット上を主行動の場とした子供達のゲームと未来への希望のお話。
凄く良いのは子供と両親の普通がすれ違ってる描写ですね。
子供に不自由な世界と思っている親と、その親を不自由と思ってる息子。ノーマルというのは主観性が与えてくれる共感と幻想っていうのが明示されてて、それが未来のノーマルを示しているのすごく未来館を高めますね。
あと、お母さんの口を借りて対戦ゲームと卓上ゲームの話をするのをやめるのだ
謎の神
伝染病が蔓延し、生活様式が大きく変化した時代。今を生きる子供たちの「当たり前」も大きく変化している中で夢に向かっていく子供の物語。幸せそうな家庭の光景が眩しい……。世界感の説明を宿題の中に落とし込んでいるのがテクニカルで上手い! ゲームの戦闘シーンも臨場感がたっぷりで見ごたえがありました。
頑張って素敵な未来を目指していってほしいなと思えるお話で、とてもよかったです。短編として綺麗にまとまっていて、やっぱり流石だなと思いました。
32 空中魔城と落とし穴/七橋
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます!
ラストダンジョンに挑む勇者一行のお話でした。
ファンタジーのクライマックス美味しいところ取り!というようないきなり最終話系の作品でした。
魅力的なキャラクターが次々と出てきてめまぐるしく出来事が変わってテンポ良く読むことが出来ました。
自爆に巻き込まれて驚いて死ぬ、リーゼントが雪に突き刺さるみたいな部分のテンションがどう受け止めて良いのか戸惑ってしまったので、短編ではギャグかシリアスどっちかに極振りした方がバチッと決まると思います。
魔法の設定や、魔人の設定、バトルの描写など魅力的な部分はたくさんあったのでファンタジーを腰を据えて書いてみるのも良いのでは?と思いました。
今後も様々なチャレンジをして、たくさん作品を書いてくれたらいいなと思います。
謎のアンデッド
展開が超早い。
スタート地点がラスボス戦手前。
ラスボス戦に挑む、ための諸条件を満たすところからスタート。
なんですが、勇者の聖剣が抜けてない、というところでおや?っとなりました。
これはひょっとして……シュール系なのか、という理解になります。
なのでこの後怒涛の展開が来ますが「そういうもんだな」と受け止めやすくなりました。
罠にかかる、仕方なし。
トラップの解き方を調査できるけど、解くと罠にかかるのは知らなかった。それも仕方なし。というか魔王のことを知ってる魔術師だったのでそういうこともあると思います。
ただ、最後の聖剣だけを転移させる描写、これ未来に可能性を残したことを示してると思うんですけど転移の魔術自体は使えるんじゃん?という疑問がわいてしまいます。ここがすっきりしないところでしたね。
謎の神
魔神を倒すべく、空中魔城に挑む勇者一行の物語。お話自体は仲間が死んでいったりとシリアスに進んでいくのですが、二代目勇者の持っている聖剣が台座に刺さったままだったり、一代目勇者がびっくりして死んでいたり、魔人がデニムのジーンズを装備していたりと、けっこうツッコミどころが多くて何度か笑ってしまいました。オチの教訓にもいい味が出ていました。最後の「私の勝ちだ」は少しどういう意味か分かりかねたのですが、「今は勝てなくても聖剣が壊されなければ勝ち」という意味だったのでしょうか……?
なんというか、シリアスとコミカルが絶妙な融合を果たしている面白さがあるな! というのが率直な感想でした。作者さんの意図されていない読み方でしたらすみません。
33 アタック・オブ・ザ・ジャイアント・納豆 ネバネバのネバーランド/武州人也
謎の有袋類
武州さんの二作目です。
今度は納豆!パニックホラーに取り憑かれた武州さんの二作目はマーズアタック的な宇宙からの侵略者系の映画を元にされてるっぽい感じなのかな?
僕はあまり映画を見ないのと、守備範囲外だったのでよくわからない部分が多かったのですが、多分そういうのが好きな人的にはあるあるネタが多くておもしろいんだろうなという点がたくさんありました。
納豆は塩分を与えると糸が切りやすくなるなどの雑学がさらっと入っていたり、緊張感のある侵略者との攻防はさすがの筆力……!という感じでした。
好きなものを楽しく書けていて、自分の好きなものを好きな層に届けたいのであれば大成功なのではないでしょうか。
それはそれとして、また武州さんの美少年が読みたい!!!たまには美少年に帰ってきて!!!!(個人的な要望)
謎のアンデッド
SFと漫画ネタてんこ盛り。
遊星からは謎の生命体が来訪するし、寄生もする。
二大怪獣は東京を目指し、宇宙へ帰ろうとする意思のある黒い生命体は不快な音に弱いのも当然なのである、ありがとうマーベルコミックス。
とにかく畳みかけてきます。隕石落着、即寄生。そして、宇宙へ――!という流れが気持ち良いほどに来ますし、抗戦する自衛隊の兵器は効きません、なぜなら怪獣なので。
という文脈を持ってるかどうかが評価の分水嶺になると思います。
僕は好きです。コテコテなので。
鹿児島まで行ったら海自の航空隊が消火用ポンプ車とかあると思いますので変なリアリティのラインをあげるともっと効果的になると思います。
面白かったー。
謎の神
まさか二作ともB級映画で勝負しに来るとは想像できなかったんだよなぁ!!(賞賛)今回もめちゃくちゃ面白かったです。タイトルも秀逸で、見るだけで幸せになれます。
使っているガジェットがあまりにも突拍子もないはずなのに、お話が異様なほど地に足が付いているんですよね。自衛隊や交通網の描写がリアルすぎて、ずるずるとお話に引きずりこんでくるのが凄い手腕。ズルいのが最後に明かされた巨大納豆の目的で、一作目の時もそうだったんですけど無理矢理切なさをブチ込んできて、しかも違和感が無くまとまっているっていうのは凄いことですこれは……。
はがちさんはもう、いよいよB級映画的なお話を書かせたら右に出る者はいないレベルですね。最高のエンタメでした!
34 高度1万メートル、燃料0/只野夢窮
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
空の旅をしていたら、異変が起きて一人だけ生き残るというお話しでした。
一行目から何が起きているのかわかる部分や、緊迫感のある描写、人が徐々に平時を忘れて壊れていく様子などがとても良く描かれていておもしろかったです。
せっかく愛情はないが愛着は少しだけあるお見合いで出会った妻(相手は自分を好いている)という美味しい素材があるのに、サクッと気が付いたら死んでいた点だけ勿体ないなと思いました。
4000字ちょっとの作品なのですが、レギュレーションの上限まではまだ文字数の余裕があるので、その部分をもう少し書いてみるとグッと解像度があがってスルッと流さずに読む人の心を更にぐちゃぐちゃに出来ると思います。
飛行機が異常なことになった理由に全然触れていないのは個人的に好みです。
理不尽なことに理由無く巻き込まれて生き残る作品、いいですよね。
ホラー小説は二作目とのことなのですが、すごくよかったのでホラーをもっと書いたらどんどん強くなる作者さんなのでは?と思いました。
次回も参加してくれるとうれしいです!
謎のアンデッド
スッと始まり、バツンと電源が落ちるように終わる異常事態。
あり得ないことが起きて、あり得ない事態が継続し、突然終わる。
非日常の恐怖と、非日常の混乱と、非日常で壊れる人間を眺める人間。
この眺める人間が主人公なのですが、関せずを貫き通したことで唯一の生存者にもなります。
そして助かる前に示された異常性を示したまま、物語が唐突に終わりを告げます。
その過程をひたすら淡々と描写される、その気持ちの悪いすわりの悪さが主人公の特性のような気がします。
うん、何かに例えるっていうのが不似合いな作品です。実に丁寧に座りの悪い気持ちに追い込まれました。
謎の神
飛び続ける飛行機の中、混乱に陥る人間模様を描いたお話。
結局のところ、どうして飛行機は飛び続けていたのか? という点が気になります。ここの疑問がしっかり消化されていたら、お話を読み終えた後の充実感がさらに増したのではないかな思いました。
密閉された空間、どこまで続くか分からないという恐怖。それが、こんなにも簡単に人間をおかしくさせてしまうのだ、というのが伝わってきました。主人公の落ち着きっぷりが、こういった状況と対比になっていますね。生きのこるためには冷静さを失ってはいけない。けれど、主人公も実は静かに狂っていた……。いい意味で、後味の悪さが際立っているなと感じました。
35 乗客/江川太洋
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
飛行機ホラーが二連続!
こちらは挙動不審な隣の席に座る人が気になって理由を聞いたら……というお話しでした。
めちゃくちゃおもしろかったです。
じわじわ来るいやーな感じが、語り口からも感じられて、ひたひたとゆっくり忍び寄ってくる怖さがめちゃくちゃ嫌で最高でした。
長台詞が多いんですが、するする読めてしまうのがすごい。
カクヨムに置いてある作品数は少ないんですけど、ブログの方を見て見るとめちゃくちゃインプットもしていて、アウトプットも研究しながらやっていたので、納得の完成度……と思いました。
すごくおもしろい作品を書く作者さんなので、今後も色々書いて欲しいなと思いました。
乗客が好きな人は、ホームに飛んで江川太洋さんの他作品を読んでみるといいと思います!
謎のアンデッド
死の運命を予知して回避した結果、という展開の映画を思い出しました。
ただ、それより文章形態だとじっくり解説するこの作品のほうが不可避の死という感じが伝わってきます。
死神、と信じているものを見た男が話を回し、主人公はそれを受ける狂言回しの役目といった印象ですね。
問答無用の不可避の結果まで一路真っ逆さま。
死神が見える男もある意味諦めている地点から始まっているので、そこでもっと足搔いた痕跡とかを示すともっと読者が嫌な気持ちになると思います。
謎の神
飛行機に乗っている最中に、変な男が隣に座ってしまい……というお話。怖い、とにかく怖かったです。文章の方も非常に読みやすく、淀みなく次の展開へ次の展開へと誘われていくようでした。死神のエピソードにも、前田の挙動不審っぷりにも不安を感じさせる魅せ方を工夫しているのだなと伺えました。前半の飛行機事故への考え方が、オチとしっかり繋がっているのも上手い。
とにかくレベルの高い作品で、尾を引く不気味さが強く印象に残るお話でした。完成度が非常に高く、とても面白かったです。
36 テセウスの君、空っぽの空/神崎 ひなた
謎の神
人間の心は難しい!!! というお話でした!
謎の有袋類
神崎先生の作品!!!!
まじで僕は神ひなさんの作品を多分初期から見守っているんですけど、本当にめちゃくちゃすごい勢いでうまくなってるんですよね。
今アツい話題のサイバーパンク的な世界と、未知の感染症を扱っている作品なのですが0話とみてワクワクしながら次を見たら開幕住職がガトリンクで除夜の鐘をガンガン鳴らしているという「こういう世界ですよ」をわかりやすく示してくれるのがすごい親切な導入だと思いました。
一人称視点で語られるこの作品はアンドロイドがすごい魅力的に描かれているんですが、この少し好ましいと思っていて気の置けない相手だと「そら」のことを面居るんだと読者が思えば思うほど、読後感のエモさとちょっとした気まずさ、主人公の後悔みたいなものが味わい深くなってくるのすごくよかったです。
神ひなさんが書くファンタジーも好きなんですが、こういうSFもいけるんだな……という新境地を味わった気分です。
そろそろ10万字規模の作品を書いて、しかるべきコンテストにガツンと応募して、書籍化とか狙っていって欲しいですね……。
ばばーーんとコミカライズなどをして、僕に後方古参ファン顔をさせてほしいです。
謎のアンデッド
ガトリング砲が生きるまでの流れが凄い。
ガトリングで除夜の鐘を打つ、分るよ俺もガキの頃に近所の寺の鐘をエアgこの話はやめます。
でも、そこから一転実用性が高まると同時にこの話の光と闇と、絶望と希望がいきなり深まりました。
シームレスに突きつけられる世界の終わりと、生き延びた人々の事情。
諦め切ってるくせに、諦めきれてない主人公の立ち位置と、その振る舞い。SFと未来の延長が重なってその中で平凡で絶望と希望を抱いている主人公とアンドロイド。心は難しい。難しいから何度も挑めるのかもしれない。
37 空をみあげて/@styuina
謎の有袋類
第一回こむら川小説大賞から参加をしてくれている@styuinaさんの作品です。
擬音を多用する作風の@styuinaさんですが、今回は少し違う作風の異世界ファンタジーでした。
前半の絵本的な部分と中盤の街を説明するパートで良くも悪くもギャップを感じられる作品です。
これは好みの問題が大きいのですが、ファンタジーを書くときはリアリティーラインを意識するとグッとわかりやすくなると思います。
中性的な町並みが残っているけれど近代化された都市も、誰から見た「近代的」なのかわかると更に物語の中にある世界の「それっぽさ」が出てくるんじゃないかなと思いました。
ほうき星を神の怒りに例え、自分を不幸な目に遭わせた仇が不幸になり、壊れてしまう母親というダークな結末はすごくよかったです。
今後も色々なことにチャレンジして欲しいなと思いました。
謎のアンデッド
えーと、その正直ご自身で書かれていることが反省点の全てだと思います。
擬音が1245文字。総文字数が3129文字。
この比率ですと、読まれた方が文章の本文を短く感じると思います。
で、正直な感想としてはこの絵本のような文体嫌いじゃないです、むしろ味として機能しています。なので余計この擬音がもったいないです。わざとくどくする、効果を期待して伸ばす、以上に文字数を埋める機能として印象付けられてしまいます。この場合必要になるのは箒星の様子であったり、街の様子であったり、少年や家族の事であったり本体となる文章自体の総数を増やす、そのほうがせっかくの文章の雰囲気などが生きると思います。
少年と友達の会話を増量したりですね。雰囲気があるので余計に勿体ないなと。
謎の神
うーん、やはりどうしても前半の擬音語が気になってしまいますね。ほうき星の方はまだしも、煙があそこまで「もくもく」してしまうと、この町は煙だらけなのか? と感じてしまいます。それがお話の中で重要な役割を担っているわけでもないので、この場合は擬音語を効果的に使えているとは言い難いでしょう。
また、世界感がちょっとごちゃごちゃしていて混乱しました。中世っぽくもあるのですが、自転車やテレビが登場するということは1,900年代頃なのでしょうか?
少年の母がおかしくなってしまうところや、その理由を敢えて明言しないことで不気味さが出ているのは良かったです。
38 糸の震え/鍋島小骨
謎の有袋類
推し作家さんである鍋島さんの作品です。
鳥、不遇な娘、半神半獣の男……鳥(二回目)ううーーー!
めちゃくちゃよかったです。これ、本当に一万字ちょっとの作品なんですか?となりました。
三人称視点で、カメラワークもかなり切り替わるのですが非常に読みやすかったです。夢を題材にして夢っぽさを出すとどうしてもぐちゃぐちゃになり、そのぐちゃぐちゃが夢っぽさを現わす要素として旨みをだしているのですが、この糸の震えはすごく読みやすかったです。
それぞれの因果、それぞれの魔、そして夢、願い、恨み。
空を「くう」として扱う作品もあったのですが、この作品はその中でも頭一つ飛び抜けているなという印象でした。
ルビの使い方もすごく効果的でした。馴染みのない名前でも、パッとわかるようにルビが振られていたり、誰を指しているのかわかりやすいのは本当に読みやすいのとエモいです。
段々と忘れていくことが、幸せなようで寂しい……。
最高なのですが、文字数がやっぱりもう一万字くらいあったほうが鍋島さんがやりたいことをするにはいいのかな……とも思ったので文字数に合った舞台を整えるみたいなチャレンジは今後もやってみていいのかもなと思いました。
この内容を一万字前後に圧縮しておもしろいというのが異常ですよ……。すごい。
ラハシャちゃんとデリヤさんのやりとりももっと見たいな……これは時間があるときに中長編に出来るのではないでしょうか?
それぞれの乾闥婆が生まれて消えるまでのオムニバスとか私読みたいです!
謎のアンデッド
うわー、という声が自然に出ました。
最後に空海の言葉が来ますが、始点はヴァニタス。
類似点を見出しやすいのですが、本編は輪廻へと戻る話なので無我に至る過程、忘却の一部でした。
すっと読める、ふっと自分の中に入力されていく文章と同時に物語が何故か進展してないような不思議な感覚を覚えるのですが、物語の佳境へと至るにつれ其れが解明されていきます。
始点と終点の言葉が良いですね。物語には雰囲気が付きまとうと僕は思っているのですが、見事にそれが空へと変換されます。
謎の神
乾闥婆という半人半神と少女の物語。なんだこれは……。あまりにも凄すぎる……。
普通、こういうテーマで書こうとしても、どうしても幻想と現実がごちゃごちゃになって読みにくくなりそうなものですが、この作品それが一切なくて「読ませる力」が本当に凄まじいと思いました。
物語の中で様々な死を内包しつつ、すべてが「空」(くう)であるという締めくくり方も、優しさと寂しさが一体となっているような、今までに感じたことのない読後感を味わいました。読了後にタイトルを見直すと、なんという美しさだろうかと感じ入ってしまいました。
素晴らしい点を挙げ出したらキリがないほど、とにかく素敵な短編でした。この感覚はぜひ実際に読んで味わってほしい……!
39 Drag&Rider/こむらさき
謎の有袋類
第一回から第三回までの副賞担当をしてくれた人がみんなドラゴンを好きなのでドラゴンを書こうかなと思って書きました。
ドラゴンはいいぞ。ナゴヤ座のNARUKAMIもいいぞ……
謎のアンデッド
読みやすい、という意味で一番ライトなファンタジーです。
ヒックとドラゴンやMHのように人と竜のいる世界。
龍騎士の一家に生まれ、まだ相棒のいない少年が伝説の龍と出会う。
冒険譚の始まりが終わるまでの瑞々しいストーリー。実際内容に沿った軽妙な文体で、プロローグだけれどもきっちりと終っています。
これ続き書けるよなー。書けるよな?な?
龍を恐れず、かといって過剰に尊重せず、さりとて敬意がある。
いいバランスの物語です。
謎の神
とある龍と出会った少年の物語。不思議と、とても懐かしい感触がするお話でした。龍とと生きる世界。それが、生き生きと表現されているように感じます。作中に登場する龍たちの名前が、とってもいいんですよ。他にもこんな名前の龍がいるかもしれない……と想像して、どんどん世界感が膨らんでいって楽しかったです。
エアは主人公と出会ったときにはすでに死期が近かったんだなと……それでも主人公のために、頑張ったんだなと思うと……涙が……。
悲しみで終わらない最終章に、未来への眩しい希望を感じました。読み終わってもなお、暖かさや優しさが胸に残るようで……このお話と出会えてよかったと思えるような、非常に素敵な物語でした。
40 からのつま/ドント in カクヨム
謎の有袋類
第二回こむら川では「車止めのオッサン」と「わたしはわたしではなくだれかでもない」の二作で参加してくれたドントさんです!連続参加はうれしいですね。ありがとうございます!
前回参加してくださった二作と同様、ぬるっと日常や認識に介入してくるようなお話でした。
急に妻が割れてしまい、戸惑う夫は救急車を呼ぶまではわかるんですけど、そこからの流れがドキッとしました。
ぬるっと常識がすり替わるというか、自分が知らなかったことを他の人は当たり前のように知っていたという恐怖や羞恥をとても上手に描いていました。
どうなったのか結果……書いてよ!(叫び)と心の底から思ってしまったのですが、お話としても作者の目的としても書かないのがベネっぽいです。やられた……。
割れる人間とそうじゃない人間がいるのか、それともみんな割れるのか……この考えに取り憑かれてしまった自分も、人間が割れる可能性を知る前の自分には戻れないのでしょう。
空を「から」と読んで回収したとても面白い作品でした。
謎のアンデッド
いや、気持ち悪い(誉め言葉)話ですね。
当たり前のことが起きたから当たり前の事だねと処理される当たり前の事態、に整えられた異常な状態。
なんですが、全てに置き去りにされた主人公が異常事態だと思っても周辺では常識で、価値観のギャップを淡々と突き付けられます。
あれ?おかしいのか?俺がおかしいのでは?と認知をずるずるとスライドされ、最後に男は。
凄いですね、本当に主人公と周りの対比が上手い。このオチに流れるのも納得です。
謎の神
妻が割れるお話。読んでいる最中、心のどこかで「業者っていうのは割れた妻を治す専門の人なんだろうな~」と思っていたんですが、甘かった。「割れる」とは即ち「死」なのだなと気付いた時、得体の知れない不気味さが湧き上がってきました。なんだろう、現実の世界に比べたら、ほんの微かな衝撃で「死」と等しい状況に陥るにも関わらず、そういった危惧というか特別の慎重さを感じない世界感なんですよ、普通に読んでいる分には。ただ、それを知らなかったのは夫だけ。というこの世界感がどうも奇妙で、いい意味での後味の悪さをもたらしているように思いました。覆水盆に返らずとは言いますが……淡々とした確かな文章力の高さで魅せる、強烈なお話でした。
軽い気持ちの弾みで大切な人と永遠のお別れにならないよう気をつけたいものだなと、そう思わされるお話でした。
41 ゾーイの手紙/尾八原ジュージ
謎の有袋類
ジュージさんの二作目です。
一作目の空と繋がる話とは雰囲気が変わって二作目は、宇宙ステーションの中にいるロボットが主役のお話です。
宇宙ステーションを保守するロボットが日課をこなしていると、風変わりな人間と連絡をすることになり、徐々にその人間に感心を持って行くという心温まるお話でした。
結末はちょっとほろ苦くて、決死の思いで作ったメッセージは宇宙の果てに流されてしまいます。
届けたい人には届かないだろうけど、いつか誰かに見つかって欲しい……ゾーイがいたことや、アイテールがあったことをいつか誰かが思い出したり見つけて欲しいなと思いました。
地球上に見える火花が不穏だったのが、戦争として回収されたのはわかっていてもグッと来ました。
個人の好みなんですけど、これだけ可愛くて健気なゾーイちゃん……報われて欲しかったな……と思ってしまいました。
感情がないと描かれているゾーイの決断が美しくも悲しい素敵な作品でした。
謎のアンデッド
切ない。
宇宙ステーションの保守ロボットと地上の管制官。
地上の管制官が丁寧であることで、ロボットのAIの振る舞いが洗練されていき人間性のような物を見出した事で地上の管制官の振る舞いも気持ちも切なく、地上の管制官のことを思ってのAIの振る舞いも胸を締め付けてきます。地球を見ると目視できる火花が増えていき、そして。
廃棄が決定したステーションから手紙を送ろうと思う判断は人間の心の振る舞いのように見えます。
そして結末。
届いたほうがよかったのか、届いても管制官の手元に届くことはあったのだろうか。いろいろな展開を考えさせてくれます。
謎の神
せ、せつねぇぇぇぇぇ!!! 切な死!!!! 謎の神は無事に死亡!!! 五億点!!
廃棄されたアンドロイド、はじめから人間に都合よく作られた感情、それでも届けたい気持ち。5,000字弱という中で、ちょうどよく収まっていながら、かつエモーショナルにドライブして、心を破壊してくる。非常に高い完成度として仕上がっています。
しかも結論としてゾーイの肝心な気持ちが届かないんですよ。
この感情……ぼくの壊れた情緒を……どうしてくれんのホンマに。(ハイパークレーマー)
宙はこんな物語も丸ごと飲み込んで、ただ蒼然とどこまでも広がっていくんだな……と感じさせてくれる読後感が、まさにテーマである「空」に相応しいのではないかなと感じました。これまで読んだ41作品の中で一番「空」というテーマの映し方が好きだと感じる素敵な作品でした。
42 空鳴き姫と白の守護者/Veilchen(悠井すみれ)
謎の有袋類
毎回主催者の心臓を狙い撃ちしてくださるすみれさんの作品です。
すみれさんは、ホラーから素敵な恋愛、最低限の描写だけで強い女性の一生を描くなど本当に作風の幅が広く、そしてお話しの構成力がすさまじい……。
すみれさんの書く人外、どことなく妖しくて美しくて、気ままで強い存在なのですが、ツボを押さえつつバリエーションがあって毎回喜びの悲鳴を上げています。
空鳴き姫と呼ばれる神からの祝福と呪いを同時に持って生まれた姫は、決して幸せとは言いにくい境遇でした。
白い烏の姿をとった人外が、彼女へ興味本位に近付き、段々と心を引かれていく様子がすごく素敵でした。
白銀の竜が、子を設けて幸せそうにしているけれど「もっとも良く歌が聞こえる位置を占めて譲らなかった」で、時々姫に窘められつつ、笑う竜の姿が思い浮かぶようで最高……。
すみれさんの作品は本当にめちゃくちゃ好きですし、筆力もめちゃくちゃ高い上に進捗エンジンもすごい強いので、こむら川で核実験みたいに普段しないことにチャレンジしてもおもしろいのかなと思いました。
これからも作品をとても楽しみにしています!
謎のアンデッド
竜、と言うのはやはり強大で強く尊大でありながらも人に打倒される、という印象がファンタジーにはあります。
どんなに強い怪物や伝説の生き物も、最後には人間の手によって倒される。追いやられる。
この物語も最後には竜が人に魅了され、竜でいられなくなります。
古典でも現在ファンタジーでも竜は強く、その竜を挫く人間は更に何等かが竜に勝る事がある、これは説明するまでもなくそう言う物だから、で物語の骨格を作り上げる事が出来る。シェアされた概念だと思うのですが、これはそれを最大限に行使した美しいファンタジーです。
竜であるが故に万能で、竜であるが故に人に落とされる。人であるから竜を落として幸せをつかむ。そういう話です。
凄い面白かった。
謎の神
思ったことと逆のことしか言えない姫、裏を返せば「言いたいことの逆を思えばそれが言葉になる」んですよね。「私は未来を告げるだけの人形だけじゃない」という姫の強い意志が感じられる第六話! ここが特に見ごたえがあってよかったです!
こういったテクニックの宿命として、どうしても姫のセリフを理解するのに迷う場面もありました。「この言葉はどっちの気持ちで言ってるんだろうな」と。ただ、逆にそれが彼女の生まれ持った難儀さというか、呪いの呪いたる由縁を感じられるようでもあって。読み解いてくごとに感情移入させられました。
そして物語がしっかりハッピーエンドで終わってくれるのは嬉しいですね……。今まで苦労した分、幸せに生きて欲しいと思えるような、素敵なお話でした。
43 ぼくらのろくでもない卒業式/こやま ことり
謎の有袋類
前回は吸血鬼兄弟物と神様百合で参加してくれたこやまさん。
今回も吸血鬼ものですね。ありがとうございます!
主人公はヨウのことが好きで、エイジもヨウのことが好きなことを前提としてサクサク進んでいくのでBLの素養がない人にはちょっと難しいかも?(僕に素養がないだけで多分好きな人は好きなのだと思います)
読者の感情コントロールを意識して、登場人物の魅力を行動や発言で示していくと更に感情移入がしやすいお話になる気がします。
物語の登場人物の数や舞台設定はわかりやすかったです!
吸血鬼周りの設定がちょっと気になってしまったのですが、自死がなかなか出来ないのに心臓に銀の杭を打ち込んだり、日光で死ぬというのがちょっと謎になっているので自分や同族、他の知り合いに頼めない理由などもあるとグッと人間ではない種族の良さが増すのではないでしょうか。
最後の二人のやりとりは、エモなのだなというのがわかってよかったです!
本物川小説賞でも言われていたことなのですが、ところどころ呼んでいて引っかかりがある文章があるので、エモを引き立てるためにも声に出して推敲してみるといいかもしれません。
短編の何色とマンドラゴラ主従はキャラクターの掘り下げがすごくよかったので、物語と舞台の規模の次は、登場人物の説得力を意識してコントロール出来るようになるともっと強くなれると思います!
謎のアンデッド
物凄くラストのシーンが熱量を放ってますね。
ここを書きたかった、という作者のリビドーが伝わります。
そこがとても良いです。
ただ、そこに至るまでのルートがふんわりしてるのが勿体ないですね。吸血鬼のようになるウィルス=吸血鬼に設計が固定されるんですが吸血鬼の殺害方法がちょっと分かりにくい。
杭ぶっ刺したら死ぬのか、銀で死ぬのか、日の光で死ぬのか、諸条件を満たさないと死なないのかですね。
日の光で死ぬなら人間で居たい、という自殺パターンとかありそうですよね。そして、諸条件を揃えないといけないなら無理ゲーになっちゃうのでこれはどっちなんだろうな?って言うのが気になります。吸血鬼の伝承通りの存在なのかどうか?って部分です。お約束のパターンから外しているからこそそこを明示してやるとシナリオフックになると思うんですよ。
最後のシーンの熱量が高いだけに、其処に至るまでの道筋が見えにくいのが勿体ないなあ。あと、物語の視点が子供だから日本語が拙かったりするのかな?という個人的な疑問。
謎の神
めちゃくちゃ素晴らしい短編でした。
キャラクターの関係性を爆盛りしつつも、世界感が置いていかれたり、話が破綻していたり、ということは一切なく、構成力と小説力の高さが伺えるようでした。
関係性に由来する感情が坩堝と化していて、溺れ死ぬかと思いました。
なんというかこう、見れば見るほどに上手いところが見つかるんですよ。平仮名の使い方や、言葉の選び方もすごく良くて、分かりやすくて、どこにも無理が無くて、研ぎ澄まされて、凝縮されている短編。
ラスト一行も美しいんです。ぼくとかつて友人だったもの。託されたもの。血肉に交じって一つになって、こんなんもう「生きていくしかねぇなぁ」と思わせるような締めくくり方が非常に良かったです。最高のjust feel alive!! 五億点!!!!!
44 ベンブケツブ/カリプトラ
謎の有袋類
はじめましての方ですね。参加ありがとうございます。
某質問箱に類似した何かに寄せられた質問に対して、陽気な人が長い自分語りをしてバッサリと切られるというなんとなく落語や小話を思わせる構成の作品でした。
たまにいますよね、こういう謎の自分語りをしはじめる質問回答者。飲食店のレビュー欄にいるポエムレビューおじさんを見ているときのような味わい深さを感じさせる作品でした。
これ、すごく好きな部分なのですが()のところがマジで絶妙に滑っていてキツいのが再現度高くて「うおー!」とテンションがあがってしまいました。
この絶妙な無礼さと、ヤバさを再現できるのはある種の才能だと思います。すごいいい笑顔になれました。
物語としては、豆知識を回答者が披露していくだけなのでパンチが弱いかな?とも思うのですが、ブラウザバックされずに最後までスクロールすると「わはは」となるので、肩の力を抜いて読める良い掌編だと思いました。
おもしろかったです。
謎のアンデッド
インターネット噺家!インターネット噺家じゃないか!
すげえ軽妙な語り口と振り回す言語選定、立て板に水のごとく叩き込まれるチョイスワードにぐいぐい引き込まれる独演会。
漢字の部首の話でここまでスラスラ言葉が出る?
出ない。
でも、出てる。そしてマシンガンのごとく並べ立てた言葉に対する一文のオチ。
すげえ、噺家の方ですやん……オチを読んでから頭に戻ると付いてるベストアンサーの投げやりパワーが跳ね上がって二周は余裕ですね。すごい作品だ。
謎の神
空という漢字を想う物語。某知恵袋的な舞台設定が斬新ですね。ちょくちょく混入してくる下ネタも淀みなくて好きでした。それにしてもベストアンサーの文面から滲み出るしんどさたるや……。もし自分が投稿者だったら「なんだコイツ!」ってなったと思うんですけど、そういう意味でもラスト一行で痛快に笑わせてくれたのが良かったです!
45 空っぽ少女と最後の吸血鬼/ももも
謎の有袋類
ファンタジーからエッセイチックな小説まで作風が幅広いもももさん!参加ありがとうございます。
吸血鬼ですよ吸血鬼。良いですね吸血鬼と人工ダンピールのクソデカ感情……。
連載の一話にも見えるのですが、一騒動解決させた後なので「俺たちの冒険は続く!」みたいな物足りないエンドでもないのがとても好きです。
良いですね、最後の吸血鬼、全盛期を過ぎて惰性で生きている元敵対していた人造兵器……すき。
最後の吸血鬼がVtuberになって血を搾り取ろうとしているのもよかったです。現代に対応している……。
一つだけ気になった点なのですが、これは僕が口元フェチというだけでもしマリアちゃんが本当に八重歯なら僕の読み取り不足として流してください。
乱杭歯と呼ばれる八重歯ではなく、鋭くて牙っぽい口元の場合は八重歯ではなく鋭い犬歯等の方が適切かなーと思いました。マリアちゃん、歯並びは悪くなさそうなのでそこだけ気になってしまいました……。
開幕のやりとりをラストの伏線にしたり、空要素の回収として主人公の名前だけではなく「物語を終えて空っぽのままの人生」を埋めるようなラストだったのがすごくよかったです。
短編を描く力は十分だと思うので、短編を叩き台にして中長編にチャレンジするのも良いのでは?
謎のアンデッド
ツンデレ吸血鬼が可愛い。もう、それだけでいいじゃないか(静かに帽子を取る
え、うそでしょこれこの内容で1万字使ってないの?っていう恐ろしい文章です。
組織の腐敗、日常の崩壊、非日常の浸食、彼女の真意、そして続く日常。序破離、そして余韻まで書き込まれてこの密度でこの文字数。さっと読めるのと裏腹の重厚感もあり、凄い強い現代ファンタジーです。面白いな、もう一周しよう。
謎の神
二人の関係性がとても良いです。最後の吸血鬼と、かつては対吸血鬼最終兵器だった彼女。どちらも「終わった後の物語」に生きているという、どこか倦怠的な雰囲気が漂っているのが好きですね。13の拘束という設定が超カッコいい!!!
起承転結に沿って、ひとつのお話としてしっかりまとまっていていると感じました。きっとこれからも二人の物語が続いていくんだろうな……と思えるような締めくくり方も非常によかったです。
46 理解のある彼くん vs おもしれー女 ニュートン無様敗北編/和田島 イサキ
謎の有袋類
アナル日本酒で鮮烈なデビューを果たし、金閣寺を燃やして銀賞になったイサキさんの登場です!
無からポップしてきた交際歴二年の理解ある彼くんを、女を食い散らかして心の何かを埋めようとしていた主人公が巨乳を手に入れるために窓から放り投げる話。
オッドアイのセフィロスみたいな吸血鬼も無からポップしてきたのがよかったです。そうだね……攻め様だよねやっぱり……という謎の納得感。
これは好みとかの問題だと思うのですが、個人的には地の文でガーーーーーっと主人公のお気持ちを表明されてしまうのが「うお」と気圧されてしまったので、好みが分かれる作品かもなと思いました。
他が結構ポップに軽めになっているので、いきなり来る主人公の自分語りが長いと主人公が言いたいことが見えにくくなってしまう気がします。
とはいえ、主人公の自分語りの中にチラチラと使われる「女体を壊れたスプリンクラーみたいにしてきた」というようなパワーワードや、後半の無から湧き出た攻め様、そして人間門松&急に始まるBLのようにお説教臭くならないようなアク抜きをしているのは流石のバランス感覚だなと思いました。
アナル日本酒、金閣寺を燃やす、百合に挟まる男で人間門松……続々とパワーのある作品を書いてくれるイサキさんが、次は何を生み出してくれるのか楽しみにしています。
謎のアンデッド
理解のある彼君(概念=実体)が実在してしまう世界線。
とんでもねえのが出てくるんですが、とんでもねえのは主人公のほうだった。
理解のある彼君概念に出会って自分を振り返る余裕が一般人にあるだろうか、いや無い。絶無であろう。
だがこいつはやる。もうひたすら主人公の凄みに戦慄する。
巨乳ちゃんの概念が一抹の癒しですね。そうか?そうだね。
原論として回帰するには相応しいのかもしれない、自分はこうであるからこうなのだ、というお話。
謎の神
来たな……和田島さん! 今回もタイトルの時点で不穏さが漂っていて素敵です。金閣寺炎上のインパクトにも負けない門松(隠喩)が登場してきたので最高でした。警察に連行されていく描写がマジで最高なんですよ……!
お話の筋だけ拾っていくと突拍子もない出来事の連続ですが、文章力が高く、業の思わせ方や主人公の変化までしっかり詰まっていて短編としての読みごたえが凄まじいことになってます。笑うところではしっかり笑わせて、魅せるところではしっかり魅せるというメリハリがしっかり利いているのもよかったですね。
何回タイトル見ても「ニュートン無様敗北編」の文字列が面白くて笑ってしまう。センスが素晴らしすぎるですよ……。
47 天空の眼/江川太洋
謎の有袋類
乗客を書いてくれた江川さんの二作目です。
硬めの文体で、読み応えのあるホラーでした。
空からの視線に怯える男の話です。
これ、とてもよく出来ていて最初は「なんらかの疾患かな」と思ったのですが、そうではないというのが後半明かされて、そこから一気に怪異としての空から見ている何かの恐怖が明らかになるのがよかったです。
霊媒師が出てきて解決!ではないのも個人的にはすごい好みでした。
念で出来た釘と掌から出てくる紐、太った霊媒師の妹という部分も、ホラーを余り読まない僕でもグッとくる組み合わせでした。
完成度が非常に高い作品なのですが、「厭」や「奇矯」難読語などにルビを振るなどすると、もっと読者にとって親切というか、読む敷居が下がるのかもしれないなと思いました。僕が勉強不足なだけというのと、想定する読者層によると思うのであまり気にしないでも大丈夫かも。
二作とも読み応えのあっておもしろいホラーでした。
こむら川参加者の方は江川さんのホラーが好きな人も多そうなので是非他の作品も読みに行って欲しいなと思います。
謎のアンデッド
昔に知人が体験したことなんですが友人が撮った写真にお化けっぽい物が移っていたそうで、それに気づくとその一枚の写真に複数の映り込みがあるのを脳がぱっと理解してしまうらしいです。
この話もそういう「気付いてしまったから余計なことを理解してしまう」お話ですね。
もし最初の時点で気のせいと振り切ったらどうなって居たのだろう、恐怖を覚えた時点で相談できていたら違っていたのだろうか?という書かれないIFを想定してしまいますが、彼は気づいてしまいチャンネルが増えて崩壊が始まる。
これは怖い話だ。
謎の神
非常に強烈なホラーです。空そのものをホラーの主役として活躍させる発想がとても新鮮に感じました。理不尽、不可解、不条理が非常に強烈に利いていて、読んだ後もしばらく意識から離れそうにない後味の悪さが凄まじい。もう空の見方が変わってしまうのではないかと怖くなるほどでした。ホラー短編としての完成度も非常に高く、どっぷりとお話の世界に引きずり込んでいくような文章力の高さもお見事でした。
48 東京にも空はある/上村みなと
謎の有袋類
空中要塞・ユグドラシルを書いてくれた上村さんの二作目です。
これ、僕はシリーズものとして読んでいるので初見の感想というか、これ単独として読めていないので他の評議員の方がどう捉えるのかとても楽しみな作品でもあります。
この作品は、多分上村さんの一作目を読んでいるのか読んでいないのかで読み方も変わるのかなと思いました。
僕は、一作目から見ているので「うおおおおこの女後悔してるけど自己憐憫に浸るためにいい感じの思い出に変えやがって」くらいのことを思ってしまいました。
そこがすごく良いところというか、おもしろいところで、作中でも言われている「空は空でしかない」に繋がる部分なのかなと思いました。
シリーズものの総決算のようにも見えるのですが、エピソード単品としてもしっかりと確立してる良い一話だと思います。
かなめ先生と対する友希ちゃんとは違う一面を見ることが出来たのもすごく嬉しいです。
人にも物事にも多様な側面があり、更に受け手によって同じものを見ても印象や気持ちは変わるということを実感させてくれるとてもおもしろい作品でした。
妖怪長編書いてみようおばさんみたいになってしまうのですが、短編を再収録して一つのお話としてまとめてみるとすごく良い作品になるのではないでしょうか?
書きたいものを書きながらも、新しいことに取り組んでいるのは本当にすごいと思うので、これからも書き続けて欲しいと思う作者さんです。
謎のアンデッド
綺麗な話です。
中に詰められているのは未熟さや成熟さ、未熟さゆえの失敗、失敗に失敗を重ねること、それはそれとして生きるということや生きているってこと。
生きているので人と出会うし、それが歓迎出来るだけの事じゃないと言うこと。
それらを束ねて生きるということ。
僕は映画が好きなのですが小津監督の作品のような視点、静かで何があっても動じず冷ややかに感じるまでに透徹した地点から語られる物語のようでした。
謎の神
現実を感じさせる筆致がとにかく凄い。語り手の人生、思うようにならない煩わしさや、過去への懊悩を捨てきれないと思わせる描写、話の運び方がとても上手でした。物語の中のキャラクターに留まらず、どこかに実在しているのはないかと思わせるような迫力を感じるようでした。空というテーマの使い方も非常に良かったです。
49 スカイ・コネクト/宮塚恵一
謎の有袋類
こむら川でははじめましての方です。参加ありがとうございます。
空は繋がっている……という作中台詞にもあるとおりのストレートなタイトルなのですが、作中作にも同タイトルの劇があるのが個人的にすごい好きです。
主人公の蓮司と、彼の玄関前で毎日待っている大学の後輩、二人の日課はバードウォッチングという名の散歩……という導入から始まるお話。
最初は何に対しても無気力気味だった主人公が、花恋さんに引っ張られる形で少しずつ行動を広げ、人と再び関わるようになり、最終的に小さな一歩を再び踏み出すという構成がめちゃくちゃよかったです。
後半で主人公の抱えているトラウマが明かされるのも、出てくる登場人物たちに感情移入をした後だったのですごくすっきりしました。
一人称視点と三人称視点が混ざり合っていて、ところどころ「あれ?」となる部分がありました。この作品なら、三人称視点である大きな利点はないと思うので、蓮司の一人称視点で書いた方が読んでいる方は物語に入り込みやすい気がします。
ですが、本当に些細なノイズになっているだけなので、好みの問題が大きいかもしれない……。
一度否定をした「空が繋がっている」という表現を、コブハクチョウに仲間が出来たかもしれないというところで蓮司さんが認めているのもすごくエモポイント……。
小道具や伏線の使い方が非常に巧みな作品でした。
謎のアンデッド
青春もの?いや主人公は社会人スピンアウトっぽいけど青春もので良いと思います。
停滞した青年、青年の寄り添う女友達、その青年の作品が好きな後輩。
停滞した青年が一歩目を踏み出すところ、までのストーリーですね。
軽快な物語で、読後感も爽やかですね。
惜しいのは一人称と三人称が混ざってるところ、あとスタート地点以前の物語を匂わせてますが開陳量が少ないこと。
青年に起きた出来事、青年と彼女の出会いの出来事、後輩の子は何故彼のファンになったのか、もう少し露骨に書いてもいいんじゃないかなあ?と思います。
軽快なテンポなんですが、キャラ掘り下げるともっとキャラが生きると思います。青春物としての軽快さは良かった。
謎の神
すっごく雰囲気が好きなお話でした。上手く言えないんですけど、読んでいて安心するというか。
主人公の状況をありのまま受け止めてくれる二人の存在がすごく優しくていいですね……特別な優しさというよりも、普段通りに接してくれるという類の優しさ。信頼関係の表れ。多分、主人公もずっと二人の存在をどこかでありがたいと感じていたんじゃないでしょうか。日常の風景を描きつつ、そういう優しさを感じさせてくれるお話で、だからこそめっちゃ刺さったのだと思います。ぼくは「かたや大学生かたやOBという距離感が好きなんだな」と気付かせてくれたお話。
空は繋がっているという言葉に込められた優しさも、最後に主人公が少しだけ前に進めたところも、非常に良かったです。
こういうお話がめっちゃ好きなんですよ……。出会えてよかった……。五億点!!!
50 雲の糸/Love Under the Cloudy Yarn/和泉眞弓
謎の有袋類
第一回こむら川では義姉(巨乳)と月に行く現代ファンタジーを、第二回ではイデアをテーマにした作品を書いてくれた和泉さんの作品です。
依存症をテーマとしたお話だと受け取りました。
タブレット(錠剤の方)を摂取して「み空」というものを見ることに依存していた主人公のルーシーは、ある雨が降る夜にやってきたルツという子供と出会います。
依存症の親を持つ小さな大人のようなルツに導かれてルーシーも薬物依存を断ちたいと思うようになるお話でした。
タブレットが最初、PCの方かと思ってしまったのでルビなどを利用するとよかったかもしれません。
キャプションに書いてあるサブタイトルと、イメージソングがわからなかったからか、作中で書いてある詩のような部分は正直よくわからなかったです。すみません。
一日だけの約束という部分がすごく好きでした。依存症がどんなものであるのか、それを断ち切るのが困難であることもわかりやすく描かれているように思いました。
和泉さんは生きづらさを抱えた人の懸命に立ち向かう姿を捉えて表現するのが得意なように思います。
伝えたい層に対して入り口や、作品の雰囲気をコントロールしていくと、さらに作品の特徴が際立っていくのではないでしょうか?
今後の作品も楽しみにしています。
謎のアンデッド
これすいません僕は冷静に講評できません。
何故ならLSDでルーシーでビートルズの弱点特効三点セットだからです、なんも落ち着いた講評も感想も出せねえ!
まずキッズが薬舐めてる所からして滅茶苦茶ビートルズ解像度が高いんですよ、あれは本当に良くも悪くも世の中舐め腐ってるバンドではあったので。タイトルとお話が丁寧に、かつダイナミックに展開していくんですけど最後の最後に希望を残していくので、読後感が果てしなく良いです、個人的な感想に終始してしまって申し訳ない。
謎の神
薬物依存という非常に難しいテーマのお話を、上手に描いた作品だと感じました。主人公が薬物をキメているときの描写がすごい。韻の踏み方がとても印象に残るだけでなく、世界感に引きずり込まれるようでした。またルツの言葉からは薬物の恐ろしさが実体として語られているように感じて、この点もすごくリアリティがあると思いました。今日一日、今日一日だけの約束を守り続けなければいけない。それは本当に大変なことなのだろうなと。
最終章の余韻がとても良くて、綺麗な空の描写がとても心に残りました。いつか二人がいい形で再会できる日が来ればいいと、そう思わずにいられないお話でした。
51 混線と冷笑/草食った
謎の有袋類
一作目のアオハルものとは打って変わって今回はダークな作風の草さんです。
これ、めちゃくちゃ申し訳ないのですが僕にはちょっと難しかったです。
運命の相手、紙(コップ)の向こうの相手が現れると一人前だというような世界のお話でした。
地の文とセリフがぬるっとごちゃまぜになり、語り方も一文が長くて読書の経験が薄い僕にはかなり難しい内容だったのですが、それでも不思議と読めてしまったのが筆力の高さを物語っていると思います。
でもよくわからない部分が多すぎて虐待されて見捨てられた死んだフミくんと、アレなショウくんの関係性と、田舎はクソという部分以外では多分取りこぼしたことも多いのだと思います。
ご本人がツイートで「これやったら読みにくいをわざと使いまくってる不親切実験作」と言っていたので、多分目論見は成功なのだと思います。
ちょっと僕には早すぎる作品でした。
これからもいろいろ実験をしてくれるとうれしいです!
謎のアンデッド
運命の相手と糸電話が接続される世界。
読み終えて思ったのが運命の相手が受動的なものか能動的なものかは確かに提示されてないんですよね。
読み始めて、読み終えるまでの間に引き込まれていて、余りにも当然なそのことを読み終えるまで忘れてしまっていました。
糸電話の席には運命の人がいる、けれど探すことは禁じられている。設計的に糸電話の先にある運命の相手には会わない方がいいことを知っているかのように。
意図的に話し言葉と地の文の入れ替えを起こしているのかな?タイトルの通りの事が起きますが、気付いた時には一度読みぬけていると思います。ぐいぐいと引っ張る力が凄い。
謎の神
また凄まじいものを読んでしまった……。
こういう文章の書き方って普通にやろうとしたらただ不明瞭になって終わりがちなんですけど、このお話にはそれが無いというか、主人公と地の文と世界観が自然に繋がっていると感じさせます。
多分、単体だけ取り出すと意味を図るのが難しい文脈とかがあるんですけど、前に出てきた文脈の意味があることで空白を読ませることができるみたいなことを要所要所でやってると思うんですよ。こんな曲芸みたいな文章、ホント良く書けるなと尊敬してしまいました。絶対真似できん。
フミの正体、紙コップの仕組みは最後まで見抜けなくて意外でしたし、最後の感情は非常に迫力があって読み終えるまでずっとワクワクしました。死んでも終わらなかった関係性に激情が乗っているのが好きなんですよ。めっちゃ刺さりましたね……五億点!!!
52 私の知ってるあの人は/七瀬モカ
謎の有袋類
キュンとする恋愛を描いてくれる七瀬モカさんです。参加ありがとうございます。
お話のフォーマットが、エブリスタとかのいちご文庫といった女性向けスマホ読者向けの小説サイト的な雰囲気のする作品です。
まぶしいアオハルものでした。学生同士の淡い恋心と、周りを気にしてしまうデリケートさと素直な言葉のぶつかり合いがすごいフレッシュな味わいといった作品です。
内容的にはすごく素敵なのですが、個人的にはもっと二人の先の関係性まで見たいなーと思いました。
これをフォーマットを変えてみて※を封じてみる書き方をしても作風が広がる気がします。
自分にはこのやり方しかない!と決めてしまうのはまだ早いと思うので、面白いなと思った人の作品の構成を真似してみるとまだまだ強くなれると思います。
僕は恋愛小説とかキュンは好きなので、これからも七瀬モカさんの作品を楽しみにしています。
謎のアンデッド
高校生、という時期のもどかしさや勇気のなさ、その時にしかない瑞々しさを書かれていらっしゃいます。大人になると忘れてしまうような恥ずかしいようなくすぐったい様な青春ものですね。
時間的に春~夏の短い間の本人達にとってはやきもきするようなイベントが起きているのですが、ややボリューム的には物足りないかもしれません。山あり谷ありの起伏がどちらもなだらかな物で穏やかな気持ちで読むといいかもしれない。
すっとよむのに苦がない文章なので、ホットスタート型のイベントとかを組み込めると面白いかもしれませんね。
謎の神
来たわね! 神ひな川でも真っすぐな青春を描いてくれたモカさん! 今回も素晴らしいお話でした。混じりっけのない素直な文章がとてもいいんですよ。登場人物の心境に起伏をもたらすことで、しっかり起承転結もできていたりと、着実に小説を書くのが上手になってきていると感じます。そう、このお話はここで終わるのがとてもよくて、空というテーマも上手に映えるんですよ……。すごくいいお話でした。
こうして青春の空気をのびやかに、素直に描けることは間違いなくモカさんの強みですね。これからも色んなテーマに挑戦しながら素敵なお話をたくさん書いてほしいなと思います。
53 野津田登山紀行/あきかん
謎の有袋類
あきかんさんの二作目です。
これ、僕はサッカーが全然わからないので専門用語の応酬?のような感じでわからなかったです。すみません。
町田にある天空城に登山をしなければ試合を見れないという発想は面白いなと思いました。
特に補足などもなく、わからない言葉が羅列されて終わるのですが、多分サッカーに詳しい人ならきっと面白いと思える部分も多いのだと思います。
ちょっと僕に全く素養がないのでわからない作品でした。すみません。
謎のアンデッド
ゼルビアのホームに徒歩で行く話です。
うん、それ以上でも以下でもないですね。
日記の体をした小説という見方もできますが、小説の内容は日記に帰属するので日記です。
ゼルビア、まあスポンサーが強い体制なので頑張ってほしいですね。
謎の神
旅行記のようなお話。徒然とした思考や静かな街を彷徨うシーンは非常に雰囲気が好きなんですが、ぼく自身サッカーに詳しくないせいもあって若干おいてけぼりを食らった感じがしてしまいました。サッカーに詳しい人であれば、受け取り方は違うのかも……? という感じでした。ちょっとぼくとは相性が悪かったですね……。
54 ナオコと俺/只野夢窮
謎の有袋類
高度1万メートルを書いてくれた作者さんの二作目です。
記憶を失った男と、その男が最後にあっていた人物の娘、二人の物語でした。
雨が要所で使われる印象的な天気となっていたのがすごくいいなと思いました。
割と勢いよく書いたのかな?と思える箇所がいくつかあって、ナオコさんが急速に心を開いてしまうので、そこをじっくり書けるともっと感情移入しやすいのかなと思いました。
二人が引かれ合う様子や、遊園地デートなどから、男が記憶を取り戻して自分のしたことに向き合ったのはとても好みでした。
一作目とは雰囲気の違う人情味があふれていつつも、少しビターさを感じられる面白い作品でした。
謎のアンデッド
記憶喪失。
記憶喪失したから性格が変わるとか、なかったことになる。
ってことはなかったです。
記憶のない男と家族のない少女の不思議な同棲なんですが、記憶を取り戻すまでの穏やかな生活と記憶を取り戻してからのリトライが良い塩梅です。
記憶を取り戻したことで二人の生活は終わりを告げてしまうんですが、この作品に出てくるヤクザ者の中で唯一責任を取る能力があるのが彼だったという。
Ifの展開に思いを馳せる辺りのリアリティの手触りがよかった。
謎の神
記憶喪失となった、とある男の物語。展開が少し駆け足気味かなとも思いました。ナオコが「俺」に対して距離を縮めることになったきっかけや、二人の仲が深まるようなエピソードがあればあるほど良いというか、「転」の段階でより一層強烈な展開になったと思います。そこが少し勿体なかったかなと感じたところです。
やもう堪らないですねこの人間模様……記憶を取り戻す前後の描写から最後の一文までがとても好きです。人生のままならさというか、ナオコが自分の人生を歩いていると思わせる描写がめっちゃくちゃ刺さりました。この最後の一文が空というテーマを非常に上手く映えさせていると感じました。
55 ドラゴンカーのシー太/ももも
謎の有袋類
もももさんの二作目です。
PUIPUIモルカー三話放送日に投稿されたドラゴンカー小説です。
おっとこれはトンチキか? とワクワクして読んでいたら油断したところをやられたという感じの作品です。
ドラゴンカーに乗りたいという夢を持っていた主人公は、大人になるにつれてそれは叶えられそうもない夢だと理解していきます。
相棒のウォンバットカーと共に日々を過ごしていると、よろよろとした高齢のドラゴンカーが空から墜ちてきた……から始まるお話しです。
天空都市があったりして、ファンタジー感の溢れる世界なんですけど、するっと入って来る設定がすごく好きです。
読んでいて「これ……ドラゴンカーの世話する仕事とかあるのでは」と思ったところで「人を雇うらしい」と一言書かれていて痒いところに手が届くというか、説明のしすぎでもないし、足りなくもないという絶妙なバランスだなと思いました。
最後のドライブで助手席に座った下りと、元持ち主の奥さんが訪ねてきたところがすごくよかったです。
モルカーの流行に乗りつつ、オリジナリティーと感動を載せたとても素敵な作品でした。
謎のアンデッド
流行りものの取り込みが超早い。
と、思って読みだしてちょっと泣かされましたなんか分かんねえけど悔しい。
みんな違って皆良いやつしかいなくて、優しさだったり、忠義だったり、親切だったり、恩返しだったりが詰まったひたすら温かい物語。誰も嫌な奴がいなくて、みんな一生懸命に生きてる登場人物たちが愛おしいですね。
本当に良いことしか書けなくなるくらいの温かい物語でした。
そして、本当にはやり要素の取り込みと利用方法がうまいです。
謎の神
先生がワオカーでやってくるときの「WA~O~WA~O~!」が最高に好きで、「これはまさかトンチキドライブバトルをするお話か!?」とスタンドアップしたんですけど、見事に泣かされました。とても良いお話ですこれは……。
ドラゴンカーと過ごした日々の物語が鮮明に描かれているし、場面ごとの描写も素敵です。シー太が浜を歩くシーンがすごく良かったし、かつての持ち主の妻が登場するところもすごく良かった。空というテーマの映えさせ方もエモくて、かなり完成度の高いお話として仕上がっているように感じました。すごく良いお話を読ませていただきました……!
56 空っぽだった私へ/@yumesaki3019
謎の有袋類
yumesakiさんの二作目です。
体も心も弱い少女が少しずつ前を向いて、ゆっくりでも一歩ずつ進んでいくお話しでした。
空っぽラムネというアイテムの「空っぽ」の意味だけ拾えなかったです。すみません。
一作目と同じように「」の連続で同じ人が話していたりするので少し混乱をすることがあるのですが、多分書き慣れていくうちに徐々にわかりやすい自分なりの表現を見つけられると思います。
このまま、失敗や些細なミスを気にしないでどんどん書いて読んでというのを繰り返して欲しいなと思いました。
自分自身と向き合うこと、生きることを諦めないこと、そして素直になることを肯定する優しい作品だと思いました。
作者の方がこの作品を通してどういう人に何を届けたいかが明確になっていて、とてもよかったと思います。
かなり根幹のテーマなので、似たテーマでたくさん作品を書いてみるのもいいのではないでしょうか?
今後も創作を続けてくれるといいなと思います。
謎のアンデッド
病弱な子に起きる不思議な出来事。
不思議な出来事を支えに成長する。
基本骨子はこうなんですが、不思議な出来事、が過去の自分からのエールなんですね。
一人の女の子が悩み、苦労して、傷ついてそれでも頑張って生きるハッピーエンドでハッピーエンドへ向かう途上のお話です。
あくまで不思議な出来事はきっかけとなるキーアイテムとして出てきているだけで、大きく関与はしないですが小さなことを積み上げてきちんと前向きになる話です。
内省的な部分が多く、そこで説明的になっている所がちょっと気になりますが、内省的な話の構造上こうなるのも起こりえるかなと。
全体を通して優しい話でした。
謎の神
自分の中にいる自分と対話しながら少しずつ成長していく、この場面がすごく印象に残りました。暖かさとか、優しさとか、そういう眩しい感情がすごく伝わってくるようでした。題材の選び方がすごく良いんですよ。
空っぽラムネをくれた人が、美少年と書かれているのですが、それなりの乳があるという描写もあって、そこは少し混乱してしまいましたね。
まだ書き始めたばかりの方だと思うのですが、テーマの選び方であったり、表現したいことの眩しさなど、目指している方向性がすごく素敵だと感じました。これからも色んな方の作品に触れ、色んな書き方を楽しみながら、どんどん成長していってもらえたら嬉しいなと思います。
57 メナンドロス王の問い/左安倍虎
謎の有袋類
左安倍虎さんの硬派で重厚なファンタジーです。
メナンドロス王が、願いを叶えるハルナートの秘宝を手に入れたことから全てが始まります。
暴君だったメナンドロス王は、全てに秀でた最愛の女性ロクサネのために様々な富を手に入れます。
しかし、利他を望み施しをすることを望むロクサネのことを次第に遠ざけ、心に空虚を抱えていく……ということから始まる物語です。
暴君は賢王になり、自らの過ちを知って輪廻をした後、前世で生きた土地にも続く空を見上げるという爽快感のあるラストでした。
様々な固有名詞が入り乱れているこの作品なのですが、僕は登場人物の名前を覚えるのに時間がかかるので少しだけ混乱したり「これは誰だっけ?」と何度か確認のために戻ることもあったので、短編でいっきに国の情勢やたくさんの人名を出すのは、多分少しだけデメリットもあるように思います(これは単純に僕の記憶力が無さすぎるのが問題かもしれないのですが)
物語の作り方、ストーリーの構成、世界観の作り方や結末へのカタルシスなどは本当にとても素晴らしくて、読んでいて「これ中長編でバルシネちゃんをもっと掘り下げたものも読みたい……」と思いました。
左安倍虎さんのファンタジー、とても好きなので機会があればまた長編などを書いて欲しいなと思います。
謎のアンデッド
骨太だった。
仏説的な部分もありますが、人を満たすものとは何か。
富・名誉・女・栄光。色々なものを手にして、色々な物を持ってしまったが故に満ちることはなくなった王の話。
ここに出てくる賢者が良い味を出していて、アドバイスも嘘もすべてのケツを持つ気で活用してくるし王が弱ったタイミングで畳みかけてくるので希代の詐欺師パワーが超高くて良い奴だった。
王は何を願ったのか、王の願いはどう叶ったのか。
最後のエピソードがいいですね。終わり巡る世界だ。
謎の神
宝玉に頼って願いを叶えることの虚しさ。どうすれば満たされるのかという問いの物語。
冒頭が世界感や歴史で始まっていると読みにくさを感じることもありますが、このお話では最初の場面で仏僧の殺死体や王のキャラクターを表していたりと、導入が上手く、読みやすいようにしっかり工夫が施されていると感じました。
終わり方もすごく綺麗でよかったです。青い空と砂まじりの風、その温度が感じられるような爽やかな感触がする読了感。
重厚で、非常に読みごたえのあるお話だと感じました。
58 やがて空より帰る/いぬきつねこ
謎の有袋類
クダのいる家という不思議な雰囲気たっぷりの伝奇ホラーで参加してくれたいぬきつねこさんです。
怖い話好きの主人公が、怖い話を集めている時に教えてもらった録音を記したという作品。
>旧家の暗がりに棲み、富を運ぶという不思議な生き物の話
すみれちゃん!!!ってなりました。こういうサラッと自分の他作品の話を入れて、気が付く人はうれしいし、知らなくても問題ないみたいなサービス、僕はめちゃくちゃ好きです。
本題の怖い話もなのですが、すごい雰囲気のある語り口でよかったです。
これ、三話構成にしてもよかったかもしれない……と思うのですが、改行で「ここから別の人が話しますよ」とわかりやすかったので、単純に僕の好みっていうことなのかもしれない。
空の色に変わる瞳、水の音で笑うという怪異、特に大事件を起こさないのですが神秘的で少しヤバさを感じる塩梅がすごく好きでした。
最後の絵はがきが届くラストも僕はめちゃくちゃ好きです。この何をするわけでも無いけど何かが自分を捉えたみたいなのすごい。
これからも色々作品を書いてくれるといいなーと思ってます。宵闇横町のお話の続きも待ってます……!!!
謎のアンデッド
民話系ホラー。
いなくなった先輩の話してくれた怖い話、それを主人公が思い浮かべて追いかけるという形で進行していきます。
怖い、というより不思議に近く、不思議そのものよりやや怖いに近い。
子供の頃に田舎での生活の最中にあった何かとの日々が描かれるんですが、その最後の回収が非常に効果的です。
先輩の話の録音を元に書き上げた怖い話だったはずが、それは事情があってかなわず記憶の中から掘り出したものだった、という流れのくみ方と理由の開示が上手い。そして最後の絵葉書。
怖いというよりかは彼は幸せなのかが気になりますね。
謎の神
いぬきつねこさんといえば胸に咲く花という作品の印象が強かったですが、今回のホラーもめっちゃよかったです。ホラーなのにすごく爽やかな感じがして、今までに見たことの無いタイプのお話だと思いました。
先輩の気持ちがよく分かるので、なんなら「また会えてよかったね」とすら思ってしまうんですが、明らかに先輩の様子がおかしかったり、変な届いた手紙が届いたりと、起こっていることは確実にホラーなのに嫌な感じがしなくて。とても好きなタイプのお話でした。水の音や匂いの使い方、空というテーマの表現の仕方もすごく良かったです。出会えて、読めてよかったと思えるようなとても面白いお話でした。
59 生まれちまった悲しみに/ラーさん
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
死にたいJKとさえない男の五味さんが心中をしようとして未遂に終わるまでの話です。
最初、体を売る代わりに宿を得るタイプの家出少女なのかなと思っていたのですが、途中でちがうとわかる部分が良いミスリードの誘い方だなと思いました。
五味さんがJKを殺して、死んだ姿に雪が積もるのを眺めて詩を呟いてエンドかなーと思いながら読んでいたので、途中で五味さんが普通にいい人で驚いてしまった……。意外性のあるラストでした。
五味さんがマジで部屋が汚い以外はかなりパーソナリティもまともで、愛無さんに謎の説教をするのが少しだけ謎でした。
五味さんの説教に説得力のあるエピソードがあればもう少しエモ度があがったのかもしれないです。
僕はこういう共感性が薄いタイプなのでこう思うだけかも知れないです……すみません。
生きてしまった主人公の愛無さんと、五味さん、二人がこれからどうなるのかわからないラストは、色々考えされられる結末ですごく良かったと思います。
過度に暗すぎず、でも明るすぎない素敵な作品でした。
謎のアンデッド
題材はとても有名な詩です。
生まれちまった悲しみに、の作者さんなりの解釈もなされているのかな。
僕がこの話で好きなのは男の側の理解と、女の側の感情のすれ違いのところですね。
自殺の理由の狭さを指摘した男ですが、女の側は本気さで対応する。話している点や納得理解の点がすれ違っているのでどっちの言葉もある程度通る代わりにお互いに深い所で理解しあえない。
そこをばちっと書いてて良いですね。
謎の神
死のお話。或いは生のお話。二人の関係性の描き方がとても良くて、導入から最後までじっくりと没入して読まされるお話でした。雰囲気の作り方がすごく上手で、読んでいて違和感を感じるようなところが一切ないんですよ。二人の会話や描写がすごく自然で。五味の書いた詩もすごく「書きそうだな」と納得してしまいました。「埋もれたままでいればいいものを――」のところが特に。めちゃくちゃ完成度が高くて、言葉ではなく物語で生や死の表現がされているのが凄いと感じました。勉強になります……!
60 わたしの日記/十六夜雪
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
転職をしたい有能女子が話す愚痴のお話しでした。弟が自殺したエピマジ便利じゃん!となるのが最高ですね。
姉弟児問題みたいなものもTwitterで流れてくるのですが、あまり悲痛な感じもなく、単純に主人公の性格が最悪な方向に振り切っているので良くも悪くも「なるほどなー」と読んでしまいました。
本当に性格の悪い女の自分語りを聞かされて終わってしまうので、指導教官に話して同情を買った後に友人に「弟君の好きなものも知らないんだ?」と聞かれてうまく誤魔化すみたいな立ち回りをみせてくれると主人公のクソ度と容量の良さを更にみせられるんじゃないかなと思いました。
突き抜けたクソ性悪人間というものの需要はあると思うので、自分語りをさせるだけではなく実際に動かして更に描写に磨きをかけてくれると、一回りも二回りも面白くなると思います。
個人的にはめちゃくちゃ好きな主人公のお話でした。
謎のアンデッド
徹頭徹尾徹底の徹底を重ねて自分のことしか考えてない主人公の話なんですが、すさまじくドライなことと姉弟親子の事情が主人公の主観で書かれているためにともすれば共感し得る主人公となっています。
一切容赦も余地もなく、自己都合しかそこにはなくそれを日記という形で「秘した物を見せられている」という点がワクワクしますね。
自分の自分のための日記なので投げやりな文体なのもよいと思います。
謎の神
じゃ、邪悪!! 人間が難しいけど、上手に生きれる器用なタイプの人ですね。容赦なく突き抜けているので、見ていて清々しくなるほどでした。この場合は、変に感傷がないからこそ良いというか、見ていて頼もしさすら覚えるほどでした。「人には言えない」からこそ覗けた彼女の内面、と割り切って読むのも十分楽しめましたが、いっそこの人間性で無双するお話も見たいですね。
というのも、この遥さんという抜群にいいキャラクターが日記の中だけで終わってしまっているのが勿体ない気がするんですよ。彼女がなんらかの事件に巻き込まれたり、人と関わっていく中で発露する人間性(意味深)とかも見てみたかったですね!
といった次第で、とてもキャラ造詣が光る書き手さんなのだという印象が強かったです。次回はもっと暴れさせちゃってもいいんじゃないでしょうか!?(完全に好みによる提案)
61 えびフライと桃色の空/いりこんぶ
謎の有袋類
いりこんぶさん、参加ありがとうございます。
文章を書き慣れてる人の作品だ!と思ったのですが、カクヨムにこれだけしか作品がないので、別サイトで活動してる方か、二次創作とかで文章を書いていた人かな?と思っているのですが、めちゃくちゃ面白かったです。
顔面の良い可愛い女と、その女を甲斐甲斐しく世話してしまう自分に自覚的な女の物語。
これは個人的なおっぱい狂人の感覚なのですが、小柄で華奢な場合はアンダーが65じゃ70の方がしっくり来る感があります。
小柄(150cm前後を想定)でアンダーが75だと、かなり骨格がしっかりした子になると思うので……。ですが、これは個人的な感覚なので正しく描写するべきとかそういう話ではなく、おっぱいキチガイがついつい気になってしまったことと言うだけです!(おっぱいが大きくても華奢な子の場合はあばら周辺にお肉は付かないので75はいかないけど、これで身長が170cm近い子だとめっっちゃ華奢でもアンダーが70や75あったりするのがおっぱいの不思議で魅力的なところですね)
蠱惑的で魅力的だけど、その分孤立してしまうちなみちゃんの魔性度がめちゃくちゃよく描かれていて素敵でした。
主人公が彼女を待つ間に見た空の色、そこからのちなみちゃんの「わたしが来る前のお空がピンクく見えるなんて、可愛いねー?」がもう……これは人が狂いますよ。
ぎゅっと濃縮された二人の素敵な物語でした。
この二人のこれからの物語や、出会いの物語なんかも知りたいなーと思ったので、このまま連載とかにするのはどうでしょう?
謎のアンデッド
一室の中ですべてが進む。
短編というものに適したシーン展開をしっかり取られています。
全てを焼け野原にするガールのために料理を作るガールの視点でお話は進むんですが、料理をして外を見る、それだけでしっかりと周りの世界が息づいているのがわかりますね。夕日の描写が少し不思議で、その後その夕景に意味を与える展開もお見事でした。
百合というほど濃厚なわけではないんですが、そのわずかな気配の漂わせ方が良いですね。あと焼け野原ガールが焼け野原ガールなのが分かりやすく提示されてるのも良いです。
謎の神
ちょっとびっくりするくらい文章が良くてすごいです。読みやすいとか、読みにくいとか、もうそういう次元の話ではなく、読んでいるだけで心地いいんですね文章が。マジで上手い。家にある小物や料理、思考からさりげなく本筋に繋げてくる。見れば見るほど上手いんですよ。日常と生活の解像度がえらいことになっていて、想像力が刺激されまくりです。これ全部コントロールして書いてんだろうな……すげぇぇ。
言ってしまったら女の子が二人でご飯食べるだけなのに、すごい満足感のある読後感をもたらしてくれるお話でした。とてもよかったです。
62 単糸、線を成さず/たまごはん
謎の有袋類
たまごはんさんだ!参加ありがとうございます。
獣要素の強い女の子が悲しいことになるお話しでした。
淡々とした文章と、ダークな雰囲気を纏った作品です。
主人公のシャワーシーンやお化粧を落とすシーンなどの描写がすごく好きでした。
空をempty、からと捉えた作品で「むなしさ」的なものを現わそうとしたのかな?と受け取りました。
獣人と、そうではない人がいること、その間でなんらかの差別的なものがあることなどは受け取れたのですが、主人公がした行動以外のことが断片的でそこだけちょっと読み取れませんでした。すみません。
作者と読者は情報量がかなり違うので、書く側としては「親切に書きすぎかな」ってくらい情報を書いた方が多分、読者に色々なことが伝わりやすいんだろうなと思いました。
設定やキャラクターがとても凝っているので、短編で使い捨てしてしまわずに中編などでこの世界を書いてみるのも良いかもしれません。
個人的に獣人を散歩させるサービスがすごくアツいなと思いました。
コンスタントに作品を書いていくと、書いただけ伸びる作者さんだと思います!たくさん書いて一緒に強くなりましょう!
謎のアンデッド
まず最初に思ったのがこの世界観を書きなれているのかな?ということです。
最初のお風呂のシーンなんですが、なんと言うか練られているなあ、という感じがしました。
獣人のシャワーシーンというのをしっかりと想定して書かれている感じで世界観についての興味がわきました。
その後の学生生活、および水商売のアルバイトのシーンも骨子がしっかりしている、という感じが伝わりました。
惜しいのが、登場人物たちというか主要人物の感情や行動についてがうっすらとにおわせる程度にしか書かれていないことです。
登場人物、主要人物の行動と結果と因果をもう少し示して戴けると物語としての可読性が上がると思います。
謎の神
新型ウイルスの対抗するためゲノム編集が行われるようになった時代、という世界感が面白いですね。主人公の女の子が辛い境遇に置かれているのはもう痛いほど分かるんですが、ただ、全体としてちょっと分かりにくいかなと感じたのが正直なところです。今回の場合だと、世界感の説明や登場人物の関係性なんかは、もっと直接的な表現でもいいかなと個人的には思いました。
何事も相手がいなければ、というのはその通りですが、主人公の境遇に立ってタイトルを見つめてみると中々胸にクるものがありますね……。
63 リターントゥスカイ/かねどー
謎の有袋類
マンドラゴラにカクヨム処女を捧げたかねどーさんのカクヨム三作目です。参加ありがとうございます!
流石、ブログなどでアウトプットをしていたこともあってめちゃくちゃ読みやすいですね。
僕、経済小説とか全然わからないからどうしよう……と思っていたのですが、各話の下にある注釈のお陰ですごくわかりやすかったです。
キャプションにある人物紹介などなども、補足という感じで最初に読まなくても話の流れは掴めるのですごく親切な造りだなと思いました。
最初はキャプションを読まないで作品を読んだので、矢倉さんを勝手に女子だと思ったので、これは良い社会人百合……と思っていたんですが違った……。
注釈も交えつつ、お話しも特に急な部分がないまま綺麗にまとまっているので、多分これを入れると文字数がオーバーしてしまうのですが、ちょっと困るようなトラブルを入れて見ると物語に緩急が出来てそれぞれの登場人物の魅力が更に描けたかもしれません。
この設定と登場人物を捨ててしまうのは惜しいので、いつか中長編で青崎さんとその周りの話を見てみたいなと思います。
僕の推しはソムチャイさんです。ソムチャイさん、前妻とかいるでしょ?(偏見)
謎のアンデッド
おー、面白いですね。
経済用語とかはおまけで本体はリスクヘッジとスタートアップの部分ですね。
現況の世界情勢と被せてLLCとかでも起こりうる終焉と再始動。公金用途の導入順番とかもリアリティ高いですね。
その流れを退屈にさせずに読ませるところが腕前の見せ所です。
退屈さもなく、サクサクと進むので読みやすさも高い。
多分ある一定以上の賢いロールを登場人物全員がやってるからですね。リスク管理を考えたうえでの損切の描写とかがスムーズでよかったです。
謎の神
今回のテーマでお仕事系の話が来るとは思ってなかった! 豊富な知識に裏打ちされたリアリティの高さがとても面白くて、見ごたえのあるお話だと感じました。これは完全にぼくの不注意なんですが、作品の情報を見る前にお話を読んだので、社長と主人公の性別を逆転して読んでしまいました。
このままでも十分面白いのですが、キャラクターや物語にもっと起伏を持たせるとさらに読みごたえが深まってよかったかもしれません!
専門用語にはしっかり注釈がされており、ぼくのような素人にも分かりやすくてありがたかったです。ANAとJALの融合には思わずめっちゃ笑ってしまいました……!
64 そらわたり/ドント in カクヨム
謎の有袋類
ドントさんの二作目です。
前回や一作目はぬるっと入り込んでくるホラーだったのですが、今作は村で行われている儀式のお話しでした。
単なる儀式ではなく「そういうことになってる」などのやりきれなさ、そして「そういうこと」になっていることが本当にあるかもしれないという一抹の希望、老婆の語り口などめちゃくちゃ怖くて不気味で切なくて面白かったです。
年金の不正受給について調べた若者は、すごく重い物を背負ってしまった気がするのですが、彼もそのうちこの村で「そらわたり」をしてしまう気がする……と思わせる作りでした。
>ええとこいけるや ホーーーイホーイ
ここがうわーーーーって個人的になりました。
米寿になった孤独な老人が、無事にそらわたりを出来るといいなとつい思ってしまう作品でした。
謎のアンデッド
読み終わった直後の感情が悲しく、同時に少し鳥肌が立つ感覚を覚える。
単独の語りでお話が動くのですが気づいたら婆様と話しているような錯覚を覚える仕上がりです。
僻地の村の、奇妙な後ろ暗い変な生々しさが伝わってきますね。妙なリアリティがあって、それが生む怖さと悲しさがグッときます。
これ下手なことを言ってネタバレしそうになるのでこの辺で終わりますが大変面白い仕上がりです。
謎の神
年金の不正受給と、そらわたりの儀式。おばあさんの一人語りの文章が、染み渡るようで非常に良かったです。おばあさんのセリフだけだからといって文章の視野が狭くなると言うことは無くて、むしろ色んなところに想像力が行き渡るようで新鮮な感覚。おばあさんの抱えた不安や、「しかたなし」の言葉の意味を考えると、辛いですね。人間、誰しもいつかはそうなると思えば尚更です。
個人的には、「空」というテーマをすごく上手に表現した作品だと感じました。とても面白かったです!
65 美しい娘/@aoibunko
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
美しい娘に全てを捧げ、美しかった娘の心を手に入れた母親の話です。
読みやすい文章でつらつらとお話しが進んでいくのですが、モノローグ的なものになってしまって「スン」と受け取ってしまうだけになってしまう気がします。
せっかくの上限一万字なので、主人公や物語の登場人物に行動をさせることで一気にそれっぽくなるので、今度意識して見ると良いかも知れないです。
母親の無自覚な愛情と、残酷さ、ほの暗い欲望などがとてもよく書かれている不気味な作品でした。
謎のアンデッド
凄い静かな狂気。
娘を愛した母親が娘を自分の物にする。
娘が病気になってからの描写から伝わってくる、母親がただひたすらに淡々としている様が伝わってきて何よりもそれが怖いです。淡々としてるんですよ、なんかイメージが。ただひたすらに独占するために穏やかに振舞い続けてるイメージが湧いて来るのが凄い嫌で怖く気持ち悪い。
最後には相手にする嫌がらせを楽しみ始めて淡々と静かに壊れた人間が描写されてます。
謎の神
ど、毒親ーーー!!! 本企画の参加作で一番やばい女に当たってしまったかもしれない。歪んだ親心に振り回される可哀そうな娘さんを見ていると心が痛みますね……。淡々とした文章からも母親のヤバさがぎっちり詰め込まれているようでした。心が壊れる。
個人的には、このままでは母親に対する怒りが消化できないところもあって、というのもこれだと「母親がヤバい!」だけのお話で終わってしまっているんですね。なので娘さんの交際相手に復讐されるところまで見せてほしかったですね。
66 愛縁紀縁/一志鴎
謎の有袋類
第一回の時に投稿してくれた「偕老同穴の祈り」の続編として投稿してくれました。一志鴎さんの作品です。
ほんのり幸せだった前回を知ってると「おおお」となってしまうこのお話なのですが、このお話単独としても成立していると思います。
長く生きた少女が抱える憂鬱、そして無垢な少女との邂逅、少しだけ希望の見えるラストでした。
特に大きな物事が起こるわけではなく、公園で出会って会話をして終わってしまうので短編の一作としては物足りないかな……とも思います。
どちらかというと中編や長編の一話としての印象が強いので、短編として主人公が大きく変わったり、行動をした方が短編小説としては映えるかな? と思いました。
絶望に終わったり、不穏なわけではなく、小学生の少女との続きがあるようなラストなので、前作と合わせてなんらかの大きな物語としてリライトしても良さそうだなと思いました。
謎のアンデッド
えーと、これは本編を読まないと成立しない?のかしら。
まず本編抜きで読んだ感想と前置かせていただきます。
物凄い長生きの人外の子が生きることに飽いた中、たまたま出合った女の子との会話で救われる。
それ以上でも以下でもないです。描写が丁寧で作者さんのキャラクターへの愛情が伝わってきますね。
ただ、この作品だけだと総合としては何の話だか分からないというのが正直なところです。
本編のほうを読むと解決するのかもしれませんが、その方式ですとこちらに3000文字以上、本編が10000字以上なども可能になってしまうのでこの作品だけでとさせて戴きます。
謎の神
ぼくは前作を知っているので「ああ!」となりましたが、この作品単体でも一つの物語として読めるお話になっているのではないでしょうか。死なない不死の物語。
最後に名前を呼ぶシーンで少し「あれ、名前知ってたっけ…?」となってしまったので、ランドセルに名前が書いていたり名札を覗き見たりする描写があるとよかったかもしれません(単にぼくが見落としているだけだったらすみません…!)
不死だからといって無敵ではない、むしろ繊細な彼女がとても好きなんですよ……。少女との短いやり取りの中で、心について一つの回答を得られるシーンがとても優しい。すごく好きです、この「心が今日は遊びに行っちゃってるんだ」という考え方が。少女を見送るシーンもお話の締めくくりとしてとても綺麗に表現されていてよかったです。
67 緑の一陣の風/シメ
謎の有袋類
雨野川では、水を切る少女のファンタジーを書いてくれていました。こむら川でははじめましてですね。参加ありがとうございます。
輸送のために翼竜を使う世界のお話しです。
基本的には草食の翼竜や、その他にもドラゴンがいるらしい世界のお話で、細かな設定がすごく面白かったです。
翼竜と郵便局員はパートナーとなり、基本的には認めた人以外は乗せないというような設定もすごく大好きでした。
実は危険な生き物を操り、空を駆けるという姿に憧れた主人公と、自分の地域の担当局員さんの交流、そして相棒の危機に対して少年に背中を託す決して他人は乗せないはずの翼竜。
フォルフィッタが、他の局員や大人ではなく何故「ぼく」を選んだのか、何か特別な要素や出来事があると更にエモさというか、物語としての説得力が上がったのかな?とも思います。
翼竜の設定や、世界観などとても作り込まれていて、とても面白かったです。
水を切るの時も思ったのですが、すごく柔らかくて優しくて、不思議な話を作るのが得意な作者さんだと思うので今後もどんどん新しいお話を書いて欲しいなと思いました。
謎のアンデッド
少年の憧れと挑戦。
児童文庫を読んだような穏やかで爽やか、そしてめでたしめでたしで結ばれるお話ですね。
竜のいる世界で、竜に乗ることに憧れる少年が主人公ですが何故大人が乗るのかとか、職務上の問題とかで世界観を読み込ませて来るのが上手いですね。
無謀な挑戦も、そこに纏わるハプニングも、大人でも工夫がいることも。そんなすべてを乗り越えて迎えるハッピーエンド。
よかったです。
謎の神
翼竜と配達員、それに憧れる子供の物語。とても素敵なお話でした。名付けが非常にいいですよね……フォルフィッタときてジュエフィッタ……ルビの降り方もめっちゃ綺麗で見蕩れました。
文章もとても上手で、欲しい時に欲しい情報が提示されるので、すごく読みやすかったです。
竜と共存する空の世界に引き込まれるようで、非常に楽しく読ませていただいたお話でした。
68 とあるサラリーマンの一日/JN-ORB
謎の有袋類
ぬっちくんだ!投稿完了おめでとうございまーーーす!
週末の深夜に投稿された邪悪な飯テロ小説です。
雑に入った店が当りだと嬉しい……そんな細やかな気持ちを描いたついでに、ほんの少し恋愛の気配がする作品でした。
ところどころで酒をすごい飲む人の思考が滲み出ているのも好きです。
>ビールは半分近く残っているが、ハイボールが来る頃にはすぐに飲み終わっているだろう。
>ペースが早すぎただろうか。空になったグラスを見つめながら空虚な気分に浸っていると
この二文で「めちゃくちゃ飲む人の思考だ」と変に嬉しくなってしまいました。
特に大きな物事も起こらないのですが、この作品はそういう日常の切り取りとして最適なので、心地よい収まりがします。
最初に声をかけてきたお姉さんといい感じになるかも? という余韻も良い……。
前回のやべーーーーブラになりたいおじさんの話もおもしろかったので、コンスタントに色々な作品を書いて欲しいなと思いました。
謎のアンデッド
ものっすごい一つの感情が伝わってきて作者の酒への愛が深い。
普段何気なく飲んでいると気付かないような心境をこまごまと綴り、かといって酒が入ると振り返る仕事への愚痴と感想の曖昧な言葉を並べるという酒飲み解像度が大変高い作品です。
酒飲み解像度が高く、酒飲みの行動解像度も同時に高いので酒を飲むことと同時にステップの軽い登場人物のイメージが付いて来ますね。酒を飲みたくなる小説で、通りすがった女の子の回収も見事でしたね。ちょっとこの流れの別の店の話とかも読みたいかもしれません。
謎の神
このお話を読んでいる時は禁酒中だったのでめちゃくちゃ刺さりました。な、なんて美味そうにお酒を飲むお話なんだ……! いいですよね、一人酒。あの、賑やかな雰囲気の中で一人で飲むのがいいんですよね。めっちゃ分かります。ぼく漬物はナス派です。終始、「あ~いいですねぇ~」と頷きながらどんどん読んでしまいました。
ぼくこういう静かな食物語が大好きなので、とても好きな雰囲気が味わえていいお話でした! これ、どこで続き読めますか? 週間連載してほしいんですが……。
69 (with you,) Sky/こやま ことり
謎の有袋類
こやまさんの二作目です。
有翼人種とそれを狙う人間のお話でした。
一家揃って思い込みが強く、口下手なので誤解を招いて大変なことになってしまうというお話でした。
対外的に冷たくするのはわかるとして、新品のケープを買い与えなかったり、一緒に食事を取らないのは普通に兄弟間で格差を付けた扱いをする虐待では?となってしまったので、家族は愛していたオチにするのなら、そこを仕方ないと思えるような理由が必要だったかもしれません。
アレな親と、アレな親を庇う従者になり兼ねないな……と思ってしまいました(これは僕の育ちがアレなのでそういう受け取り方をしがちなだけかもしれませんが)
二枚の翼で飛べるフレイもめちゃくちゃかっこよかったのですが「翼を大きくして、風との調和をはかるように特訓したら」と書いてあったところで「どういうものなんだ翼……」と後半になってわからなくなってしまいました。
魔力的なものや気合い?で翼の大きさが変わるなど最初に書いてあるともっと親切なのかもしれません。
本物川小説大賞の講評でも言われていて、一作目の講評でも言った部分なのですが、ところどころ読んでいて引っかかってしまう表現があるので、音読して推敲をするなどすると良いかも知れないなと思いました。
ファンタジー、一万字では難しいのですが、何回もチャレンジしているので、規模感や登場人物の数はめちゃくちゃ良くなっていると思います。
従者萌え、ちょっとわからなくて従者であることを強調する部分のアツさはちょっとわからなかったです。すみません。きっと、主従萌えがある方にはエモなのだと思いました。
自分と同族性の萌えがある人に狙いを定めるのはとても良いことだと思います。
謎のアンデッド
有翼人のいる世界。
有翼人と羽のない人間が同じ世界にいて、それぞれがそれぞれに暮らしている世界で主人公は羽の欠けた出来損ない。飛べる種族にとって飛べないことが恥のような世界観、分かりい。
それが故に冷遇されている彼は周りを信じることができず、自分の家族も従者も頼り切ることが出来ません。
ただ頼れないというのと、故に嫌うというのは関係なく自分のひどい言葉を償うために村の外に出てしまい……。
構造としては分かりやすいです。難点としては家族や従者の行動ですね。家の外では示しの為に振舞うことと家の中で弟を優遇して冷遇する、と言うのは当然主人公としては勘違いを起こしますし捻くれるでしょう。
最終的に伏線の回収のような形で従者が答えを教えていますが、事前の展開とギャップがあります。
書きたいシーンを補強するパーツがちょっとちぐはぐしてしまっているなあ、と言う事は展開のための展開という感覚を加速させてしまいます。
序盤から最後まで素直で優しい少年として書かれる主人公像は掴みやすいので構造のちぐはぐさを感じさせずに済むストーリーラインだともっといいなと思いました。
謎の神
生まれつき羽の足りない有翼人の物語。主人公の抱いている劣等感が和らぐ過程を描いた良い物語だと感じました。
賊に追われている中の回想、という形で物語の輪郭を語っていく手法が上手いですね。イチイの隠された効果やドルケルハイトという花なんかも、とてもファンタジー要素が効いていて面白い! いつか彼が力強く空を飛べる日がくればいいなと思わずにはいられない、素敵なお話でした。
70 エンプティ・ヒーロー/狐
謎の有袋類
狐さんの二作目は、得意のサイバーパンクです。
サイバネティクステクノロジーが主流になった世界に取り残されつつある人工的に作られた存在。
命令を受け、それを善悪関係なく遂行するだけの存在が、たった一人の”ヒーロー”になったお話です。
めちゃくちゃよかったです。マンドラゴラの森からおかえりなさい狐さん……。
限られた字数で、世界観を読者に叩き付けて、人とは違う存在である主人公であることを示す等間隔の鼓動……。
この物語の彼が主人公のゲームをやりたいです!!!!!!
等間隔の鼓動で、人ではないとバレることを気にするヒーロー。幻滅されたくないと思うようになった彼は、もう空虚さに怯えることも減ったのではないでしょうか。
ラストシーンで「話し相手になってください、僕の“ヒーロー”」と言って青空が見えるシーンがすっっっっっっごくよかったです。
最高でした。
謎のアンデッド
疑念がない、と言うのは道具としては当然のこと。
その疑念がないことがデフォルトのツールに疑念を覚えさせるとどうなるのか。
主人公は疑問を抱かず使命をこなす、そんな存在です。
使命とは命令の実行であり疑念なくそれを繰り返し悲喜劇を生み続ける。
サイバーパンクにおけるAIが生命・知性・個体になり得るのか、と言う一個のテーマ感があり同時にサクサクと読み進めることが可能です。読みやすいサイバーパンク、古典の時代を思うとめちゃくちゃ貴重っす。
彼に芽生えた判断と自我はどうなるのか、そして再会した彼らは?
これもまた続きや長編として読みたいですね。なんとなくイートマンを思い出しました。
謎の神
空っぽのヒーローの物語。めっちゃ良いお話でした。冒頭の「願望器、聖人、サンタクロース。俺を呼ぶ名前は無数にあって~」のくだりが、最後になって繰り返されるところが特に良いです。キャラクターの出来栄えもすごくしっかりしているし、展開もアツい……。空を「から」と読むタイプの作品では、テーマの活かし方がダントツに分かりやすかったのでその点も評価が高いです。マジでサイバーパンクの書き方が上手すぎてめっちゃ勉強になりますね……。すごく好きなお話でした!
71 冷たい雨と花つぼみ/不可逆性FIG
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
二連続で運び屋のお話!こちらはヤクザに依頼をされて色々なお仕事をする主人公のカズヤと、その日の荷物だった少女のお話です。
身体的、性的虐待を受けた少女が、救われるお話で、結末も明るい未来への希望が提示されていて、読後感の良いお話でした。
短編でロケットスタートした方が個人的には好みなので、いきなり伊武さんへの電話から始まってもいいかもしれないかなとも思ったのですが、ここら辺は本当に好みの問題なので、他の人の感想や講評を見て自分の好きなスタートダッシュを編み出すと良いと思います。
アニメとかマンガだと冒頭の語りがすごく活きそうだなと思いました。
カズヤさんが妙に善人にならないところも、最後まで手を出さないという汚れていながらもなんらかの倫理観を持っているのが「生きてる」って感じでよかったです。
空虚だったアリサが、前を向けて、このまま新たな人生を生きられるようになるといいなと思いました。
謎のアンデッド
救済の話でしたね。
どうしようもない人間しかいなくて、どん詰まりの人間しかいずに、どうしようもない状態から始まりどうにもならないはずの物語に救済が残ります。
善人は出てこずに、被害者と傍観者の二人が物語を見つめるような視点で描かれる。唯一の善人が被害者しかいなく、そしてその子が背負っていた重みが取り除かれていく流れがストンと入るように語られていますね。上手いなあ……。
背負っていた重さを取り除いてエンディングを迎えるので苦しくもつらい物語だったはずなのですが読後感が不思議と軽やかですね。
いい話だった。
謎の神
運び屋と少女の物語。めっちゃ好きなお話でした。もう冒頭から流れるように運び屋のキャラクターをガッと魅せてくるので、FIGさんは文章力が凄まじく高いからな~と一人で納得してしまった……。本当に読んでいるだけで心地よくなるような文章を書かれる方なんですよ……。
ストーリーも「どうしようもない」をテーマに非常に良くまとまっている印象でした。愛とか、家族同士の想いとか、そういうものが光りつつも、でも「どうしようもない」のだ、という重みが、非常に味わい深かったです。この二人のお話が続くことは無いと分かってはいても、でもずっと見ていたくなるような、いい関係ですよね……。いやでも思い出すからこそ、特別な三日間だったと感じるということですよね。今は二人、どうしているのだろうなと思わずにいられない、魅力的な二人の描かれたお話でした。
72 空寂物語―捉月譚ー/正木環
謎の有袋類
初参加の方です。
正直よくわかりませんでした。物語を拾って読むギミックに意味があるかと思ったのですが、特にないようです。
お話の結末も、投げやりで終わっているようにしか思えませんでした。すみません。
お題に沿って作品を書き、完結させたことはすごいと思います。
謎のアンデッド
解釈の要る話、というのは比較的難しいなと思わされました。
童話とかで説諭的なものって大体「教訓を残すこと」「戒め」なんて方向性があるんですけど、問題はその解釈理解納得のラインを平易に落とすことで「読んだ人の多数が実感できること」を目指すじゃないですか。
この話、最初に主人公が拾った瓶の中の手紙を読んで、そしてオチまで行ってバツンと断ち切られます。この話の展開としては実に童話らしくよく書かれていると思います、童話ってオチがあるものないもので温度差が高く「これでおしまい!」ってできるジャンルですので。
その上で作品で匂わせようとしている物が掴みにくいなあ、と個人的には思いました。
SNSのやりとり、アルファアカウントにエアリプ飛ばして応対がないさまと投げ銭か?と僕は思うんですがそうなると説諭でも教訓でもないんですよね。そこが伝わらない(伝えない)のはせっかく書いたのにもったいないなと思います。
謎の神
正直、ぼくにはちょっと難しかったです。全体的にふわふわしていて分かりにくいというか。お話としてのまとまりが無いと感じたのが正直なところです。
前半の月から聞こえてくる声と、ウサギさんのお話が繋がってきたりするとよかったかもしれません。
73 俺が引きこもってエロ絵を書いてる間に人類が滅亡した/くねくね
謎の有袋類
初参加の方です。参加ありがとうございます。
タイトルの通りのお話です。
視点切り替えがちょくちょくあって、少しだけ忙しいのですが、おもしろかったです。
タイトルの通りに話が進み、最後に引きこもっていた俺が地球滅亡に気が付き、そして宇宙人たちの望まない作品を作るようになってしまうという皮肉な作品です。
良くも悪くもタイトル通りのお話なのですが、これを引きこもりだけの視点で書いて、最後でいきなり種明かしをするみたいなことにチャレンジすると、物語にグッと動きが生まれると思います。
短編での視点切り替えは、相当うまく使わないとお話が淡々としてしまうので、一度カメラを一つにするという縛りプレイに挑戦してみても良いかもしれません。
時間を300倍に希釈するといった宇宙人たちの行動や、使命に目覚めて交渉な作品を作った結果、滅びの道を選ぶというオチはすごく好きです。
良いSFでした。
謎のアンデッド
これ好き。
モチベーションをエロ絵に求めてる人間と、それを保護するエイリアンたちの話なんですが目的のすれ違いが上手い。
高度化した生命体として失われたものをエロ絵に求めるエイリアンなんですが、目論見に対して対象への干渉が上手く行ったり行かなかったりします。そこのすれ違いと大袈裟さがいい。
お互いに掛け違ったボタンは最後まで掛け違ったままで終わるんですけど、そこの相互の不理解の原因がエロ絵ってのが良いですね泰山は鳴動してるんですが理由はエロ。
謎の神
ロケットスタートからの展開が非常に目を惹きました。猥雑なエロ絵を描く主人公を保護する、という高度生命体の動悸がめっちゃ面白いですね!
この作品のオチは好みが分かれるような気がしますね。自分は好きなんですが(「変わろうとする気持ちは自殺だよ」が胸に刺さって抜けないタイプの人間なので)、あっさり締めくくられている感も否めないので、もっと読み手に衝撃を与えるような表現の工夫があってもよかったかもしれません。
一見するとトンチキなんですけど、細部までしっかり作り込まれているので引きずりこまれましたね……。一体、最後にはどうなるんだろうとワクワクしながら読めたお話でした。
74 高校生ちゃん空を飛ぶ/帆多 丁
謎の有袋類
帆多 丁さんの二作目です。
掃除機に乗って空を飛ぶ可愛い女の子と、女の子がベランダに現れてびっくりしたお姉さんのお話です。
丸山さん……丸山さんってあの丸山さん? とニコニコしてしまった。丸山さん……空の悪意の対応というか、細々とした不思議のもみ消しも引き受けたのかな……大変だな。インターネットの妖精、元気かな……。
僕は、大人が大人として子供をその人なりに守ろうとする作品が大好きなのですが、これは本当に「良い大人!!!!」となりました。
説教に自覚的だけど、こういうときはこうするんだよと言ってくれる大人、大切ですよね。
すごく良いお話でした。お給料が出るようになってよかった……。
ロケットスタートからの、流れるようなお話の展開、そして現実に差し込まれるファンタジー要素。めちゃくちゃ綺麗な導入と、起こるトラブル、そして爽快感のあるラスト!
すごい面白かったです。現実にあるあのアレとかソレ、もしかして、こういうことかも? と思える絶妙な塩梅なのがすごいですね。空に漂う悪意と、それを吸い込んでも雨雲などが無くなることはない……。
お姉さんともお友達になれてよかったね大学生ちゃん……。そうしみじみ思える素敵な作品でした。
謎のアンデッド
前の作品でも思いましたが「こう!」っていう世界観の提供と、世界観のリアリズムを揃えるまでの速度が超早い。
掃除機で飛ぶ人なんて見たことも会ったこともないけどあっという間に「いるわ……」って気持ちにさせるまでがもう凄く早くて旨いですね、俺の家のベランダにも来たことあったわ……くらいの気持ちにさせられます。
そのファンタジーの部分をあっという間に地に足つけさせる主人公の女の人が良い味を出しています。叩きつけられた非日常を即座に地に足付けた概念に転換してくれる。
なのでぐいぐい読めます。あっという間に終わってしまい、あれ?何文字だ?という可読性の高さもお勧めできるポイントです。
謎の神
掃除機に乗って空を飛ぶ女子高校生という発想が面白い! 新時代の魔法使いっぽくていいですね。全体的にしっかりまとまっていて、最後の一行の感じさせてくれる余韻もよかったです。
高校生ちゃんが空の悪意と対峙するシーンがあるとさらに盛り上がったと思うので、そこを観られなかったのが個人的には少し残念でした。
高校生ちゃん、この時に「私」と出会ったからこそ、いい方向に変われたのだろうな……と思うと、なんだか嬉しい気持ちになります。素敵な出会いを描いた良いお話でした!
75 星食みの蟹/淡海忍
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
トンチキ小説だ!
こまけえこたあいいんだよ! というような感じで進む天の川に住む老人とその弟子、海里のお話でした。
>水は宇宙に住まう人々の生活の基盤である。天の川に流れる星の歌が磨いた水のみが宇宙を潤す。そんな水の管理を二人は担っている。
これを一行目に持ってきてくれた方が、お話をスムーズに読み始めやすいかも……?
最後の展開がかなり駆け足だったのですが、とにかく勢いがあって「わはは」と笑えるので、僕はすごい好きです。
星座というファンタジーになりがちな世界に走るバイク、そしてネオンが輝くノースシティ。
設定とかリアリティーラインは、かなりふわっとしてるんですが、作品から漂ってくる「俺はこれが書きたいんだよ!!!!」が伝わってきたのがよかったです。
!の連打などは「字数稼ぎかな?」と思ったのですが、些末なことですね……。良い作品でした。
これからも好きな作品を好きなように書いていくとぐんぐん伸びる作者さんだと思います。
謎のアンデッド
神話の延長と見せかけてSF神話だった。
蛇が岩を投げつけて倒されたと言えばヘラクレスを連想したのですが、早とちりでした。
この宇宙にはカニもウミヘビもまだいたのでした。
細かい所なんですがカニスプーンがいいですね。失恋の痛みも取っ払えるカニスプーン。だがカニは死ぬ。
星の神話なので星座が生まれるというのは読み込みと納得がしやすくて良いオチだなあ
謎の神
VS宇宙蟹のお話! 金魚のセリフや星の断末魔では思わず笑ってしまいました。お話としての土台、流れはしっかり出来上がっていると感じましたが、少し駆け足ぎみのようにも感じました。
場面に応じて表現を賑やかにして盛り上げたり、蟹と対峙するシーンでもっと文字数を費やしてみたり、登場人物全体を胡散臭くしてクセの強さを増してみたり……と、個人的にはまだまだこのお話を面白くできる要素がたくさんあるような気がして、少し勿体ないと思いました。なんだか、読んでいてどこかまだ遠慮を感じるというか。自分の好きをもっと大胆に詰め込んで表現することに挑戦してみてもいいのかもしれません。
蟹の他にも、色んな星座の元になった生き物たちもいるのではないかと想像が膨らみますね。とても面白い世界感の作品だと思います!
76 青と青の間で/味付きゾンビ
謎の有袋類
ゾンビさんの二作目です。
ええー? これめっちゃいいーーー!なにこれ……ずるい。
短編での視点変更、本当に混乱することも多かったり、感情移入がしにくいのでデメリットが多いなーと思ってるんですが、これは視点を交互にすることでエモをめちゃくちゃ高めているのがすごいですね。
空に落ちる少年と、空へ泳ぐ少女。
違和感が確信に変わり、こういうことかとわかる爽快感。
これは……このまま続きが気になるので、忙しいのもわかるのですが中編とかで読みたいです!
良いプロローグだなと思いました。大人に見つかって大騒動になりそうみたいなな展開は絶対にあるじゃないですか……。
3000字ちょっとで表現された素敵なボーイミーツガール作品でした。
謎のアンデッド
サクッと終わる話なら講評員の苦労を軽減できるってアタイ信じてる
謎の神
すごく良いお話ですねこれは……! 久々に読んでいて背筋がゾクっとしました。最後の章の余韻がめっちゃいい。彼女の意外な正体にも思わず驚かされました。
ぼくは短編を読んで「なんか途中でおわっている気がするな~」を割と気にする人なのですが、このお話はここで終わっているからこそいいんですよ。二人の楽しそうな「これから」を想像してしまって……希望に満ちている関係……。
場面の切り取り方が上手く、楽しそうな二人を魅力的に描いた素敵な短編でした。すごく好きなお話でした。
77 夜の街/武田修一
謎の有袋類
前回も機械人形との逃避行を書いてくれた修一さんの作品です。
今回はバッドエンドですね。
世界観の描写、雰囲気、夜の街という設定などとても素敵な作品でした。
それだけに唐突すぎるラストは、突き放されるラストが惜しいなと思います。
意外性のある結末というものにも、気持ちが良いものとそうではないものがあると思っていて、これはどちらかといえば後者に近いと思います。
違和感を抱かせるような伏線を入れてあげると、もっと満足感の高いラストになると思います。
以前の作品寄りも、わかりやすいというか、修一さんの頭の中にある情報を読者に伝えるという力はメキメキ伸びていると思います。
ふわっとした水彩画のような世界観に輪郭を伴った中心人物たち……と言った幻想的な雰囲気の伴う物語が得意だと思うので、どんどん好きなものを書いて強くなって欲しいなと思いました。
謎のアンデッド
嫌な気持になる話、いや話の内容としては嫌な気持ちになった時点で作者の狙い処なんじゃないかな。
夜しかない町の少女が太陽を見たいと言ったことで起きる転落の話。
なんですが、機械人形の方も彼女の希望を聞いた時に何を思ったのか。また失敗したのか、やはりまたそれを望まれるのか、彼女の処遇を決めることへの痛切か。
舞台の仕組みはほとんど出てきません、その分想像の余地があり、同時に歯痒い部分でもあります。何処かドライな文体なので、それが似合ってるとも思います。
謎の神
空を見たかった少女のお話。二人はどうして一緒に暮らしていたのか、夜の街とはなんだったのか、ノアの目的はなんだったのか、アリスはどういう目的で造られたのか……この辺りが把握できないまま物語が終わってしまっているので、そこが勿体ないかなと感じました。逆に、この辺りの理由が明確になっていると、最後のシーンから感じられる深みも一層増してくるのではないかなと思いました。
夜の冷たさやランタンの光を表現する描写がとてもいい表現で、そういった美しさが印象に残るお話でした。
78 春ピュア/川谷パルテノン
謎の有袋類
こむら川でははじめましての方です。参加ありがとうございます。
ハルという両腕が翼になった少女と、黄身彦くん、そしてシトネさんが巻き起こすドタバタラブコメ!というような雰囲気のお話。
文体の癖がかなり強いので、好き嫌いや合う合わないがかなり分かれる作品だなと思いました。
よくわからないノリのまま、よくわからないまま話が進んで、よくわからないまま終わってしまったので、もし、なるべく多くの人に読まれたいと思う場合は、文体のチューニングをすると良いのかも知れません。
でも、楽しく書いているのは伝わってきたので、よかったです。このまま俺の道を進むぞーーーーでも良いと思います。
ハルちゃんがすごく可愛かった。
謎のアンデッド
リズム感が軽快でテンポがいい。
先輩が強キャラ。主人公も独特なリズム感の生き物感が会話の端々に表れてますね。ヒロインの子がかなり特殊な生命体なんですが、それがもうちょっと現れると良いかも?
リズムよくというよりかは若干早くスピードを出した展開が続くんですが、それが詰め込まれ過ぎてる感が勿体ないですね。
ヒロインの事が掴めないので、人外であるという点がもう少し活きるといいなあ、と思いました。ハルピュイア系女子は今の所オンリーワンなのでもっと強く推してあげて欲しい、想像するとかわいいので。
話を転がすのに先輩が便利すぎた、っていう印象があるのでソレとのバランスだと思います。
あ、バードキスじゃないかな。フレンチキスではなく。
謎の神
ある日、ハルピュイアと出会ったお話。この状況を説明するのに遊戯王を引き合いに出してくる主人公に、思わず笑ってしまいました。日常系のとても明るいノリがいいですね! あとシトネさんがめっちゃお姉さんしててカッコいい。推しキャラです。
ただ、後半の展開が駆け足ぎみなのか気になるところです。個人的にはシトネさんの活躍の場面がかなりカットされているのが残念ですね……軍用ヘリや悪漢を相手にした上、パトカーまで強奪して勝利! という無敵な描写を見たかったです。
賑やかでとても好きなお話だったので、今後もこういうお話にいっぱい挑戦してくれたら嬉しいな! と思いました!
79 灰色の都市の君/マツムシ サトシ
謎の有袋類
マツムシサトシさん、人権獲得おめでとうございます。
ドラゴン君とボク――エイミの交流のお話です。
これドラゴン君がめちゃくちゃ可愛いですね。どことなく鳥の仕草に似ているのがツボでした。
>ちなみにコイツは、"ボク"というナマエだ。
自信満々に誤解しているところもすごいよかったです。
字数もまだまだ余裕があるので、プロローグ的な終わりではなく、一騒動起きたり、二人が仲良くなる過程を書いた方が二人の絆の強さが感じられて、よりエモかったのかなーと思います。
サイバーパンク的な世界観と、ドラゴンというファンタジー要素のある融合、ドラゴンの思考回路の再現など各所に工夫が見てとれる面白い作品でした。
謎のアンデッド
文章の慣れ味を感じる。
コンパクトにまとまったSFですが、報告書を読み改めて読み直してみるとリリースの時点で疑念を持たれてるのかなとか、含みが感じられますね。
異種族コミュニケーションと社会の機構とそれがもたらす悲しさと寂しさ。
ドラゴンの心に去来した気持ちが何か、ってのが分かるとより悲しくなるかもしれませんが、同時に物語として含ませ過ぎになるかもしれないのでこれで良い気がする。
コンパクトでタイトにまとまってるので作品として読みやすく、世界観も広げやすそうですね。
謎の神
翼竜の心情の仕方がすごく印象的でした。竜は高い知能を持っている、とはよく言いますがそれが具体的に表現されてすごく良いと思いました。ボクにすごく懐いている様子が伺えて、とても可愛かったです。
コンパクトに纏まってはいますが、文字数的にも余裕があるので「報告書」に書いてある内容を出来事として書き起こされていると臨場感があり、さらに良かったかもしれません。
翼竜と一人の青年の絆が優しくて、だからこそ悲しさが染み渡るような物語でした。
80 ホップ・ステップ・ジャンプ!/七瀬モカ
謎の有袋類
七瀬モカさんの二作目です。
アオハルが得意な七瀬モカさんですが、今作は部活動のお話でした。
場面転換などにまだ小説を書き慣れてなさを感じるのですが、お話自体はすごくまっすぐで優しい物だと思います。
緊張して、いつも出来ることが出来なかったり、好きなことが楽しめなくなることや、誰かの言葉で心が救われると言った普遍性のある共感しやすいテーマを明るくまとめているのがすごくよかったと思いました。
書けば書くほど上手になっていくと思うので、これからも好きなものをたくさん書いて欲しいなと思います。
謎のアンデッド
陸上女子。
競技スポーツを始める時の好きと楽しい、から競技としての性質と向き合いどう捉えて立ち向かうのか、の部分の青春物です。
決まった答えはなく、正解はそれぞれの形になる、正解はあるけど個人個人が向き合うことになる一つの壁。
好きな事から勝負へ移るときに何を支えとするのか、それを一人で悩んで先輩と共有し、一つ目の答えを出す。
良いですね、その時に味わわないと一生味わえない瞬間のお話でした。
謎の神
モカさんの二作目。やはり青春の雰囲気が眩しくて素晴らしいんですよ……。走り幅跳びの選手になった女の子のお話。
「あと少し」の章で、彼女がどんな風に苦しんでいるかという点が不明瞭だったのが気になる点でした。目標の何メートルまであと何センチ足りないとか、高校生の最高記録は何メートルだから……といった情報があると、彼女の苦悩に共感しやすいのではないかな、と思いました。
モカさんが得意とされている、女の子が素直に、そしてまっすぐ成長していく物語は、いつ見ても励まされるような気持ちになります。これからもご自身の作風をどんどん極めていってください。
81 彼の新曲/@sigh1117
謎の有袋類
相互の方が参加してくれました!ありがとうございます!
大人の恋愛話でした。切ないような、でもそれだけじゃなくて、やりきれなさというかちょっとした「このやろー」も入っていてすごく良かったです。
バンドマンでバーテンダーはそういう生き物……。でも、直接会う機会があって、この主人公が結末の通りの行動をするのか、彼の気持ちを聞いて気持ちが揺らいでしまうのかなんてことも考えたりしてしまう素敵な作品でした。
小説、一つしか無いのですが、文章がすごく読みやすくて、どこかで創作自体はしていたりするのかな?と思いました。
めちゃくちゃ好きなビターさと甘さの入り交じった恋愛ものだったので、よければコンスタントに作品を出して欲しいなと思います。
>「青い空の心が好きだった」なんて、陳腐な言葉を使わないで。
キャッチコピーにもある、この言葉がすごく印象に残る素敵な作品でした。
謎のアンデッド
解像度が高い。バンドマン解像度と、音楽好き人間の解像度がやたらと高い。
なんとなく付き合うような関係の中で、なんとなくあった話のコアの部分を最終的に蔑ろにされて怒る所とか体験した事は無いけど何か凄い分かる!みたいな感情がわいてきますね。
本当によくあるバンドマンというどうしようもない部分がある生き物と、付き合ったことのある女性の話でその時の出来事を勝手に歌にされて、それでも最後の言葉はとても強がった格好良さがあります。
段落下げ等を行うと一文目の最後の伸ばし棒もすっきりした配置になったりするので、そこらへんに気を使ってもいいかも?
でもこの音楽系解像度の高さはいいなー。
謎の神
失恋のお話。素晴らしい短編だと感じました。ちょっとびっくりするほど手触りが良くて、流れるような心地の良い文章がクセになりそう。
過去になった時間、人、思い出。忘れていたと思ったのに、大人になったと思ったのに……という主人公の感情が、とても素直に表現されていて、すごく良かったです。最後の一行、この締めくくり方も素晴らしい。「空」というテーマに対するアンサーの美しさはズバ抜けていると感じ入りました。
コンパクトに、そして研ぎ澄まされた美しい短編だと思います。このお話と出会えてよかった……。
82 空/@Pz5
謎の有袋類
Pzさんだ!参加ありがとうございます!
僕に読書経験が足りないのもあってめちゃくちゃ読むのに苦労しました。
○や+、†で地の文の視点が変わっているのはわかるのですが、名前が出ずに「彼」や「僕」、そして「私」で進むので頭の中がごちゃごちゃになるのでサクッと読むには不親切だと思います。
飛行機に乗っている男の人、実験の末に生まれたアーサー、夫と子を失い、仮初めの命であるアーサーを閉じ込めることで母であろうとした女性の物語でした。
多分エモなのだろうとは思うのですが、読むための慣れとノイズが多すぎてエモや本筋を楽しむ前に疲れてしまうと言うのが本音です。すみません……。
途中で挟まる(多分)ギリシャの神々に、それぞれが祈りを捧げるところは舞台などでありそうで好きでした。
謎のアンデッド
書きなれているな、という第一印象です。
それは文章の内容ではなく表現方法としての婉曲でいて壮大さを感じさせる書き方を手に馴染ませているな、という。
少年と母と、もう一人の少年によるそれぞれの視点が一つの家で交差して終わりに向かっていく、という形式ですね。ザッピング的いうべきか。
世界観が不思議ですが神々の名前を入れることで馴染みやすくなっています、個人の飛空艇とかは現実ではないのでよく知る異世界的な。壮大な文体なのである意味このエンドでも良いですが、ある意味可読性自体を下げる構造を選択している、ので世界観とかは匂わせる程度です。それ自体は選択ですがやはり読みにくいな、という部分は感じました。ただ、それは同時に含みを文章に持たせることで深読みさせる効力は高いんですよね。
またこの母親は繰り返すんだろうなあ……。
謎の神
三者三様の心境を描いた群像劇。
正直に言うと、ぼくはこのお話を正しく理解できた自身は無いのですが、最後の展開には思わず鳥肌が立ちました。物語の終末へと向かう疾走感に圧倒されたというか、すごくいい表現だなと思わず唸りました。
ただ、序盤はお話の流れを読み取るのが大変でした。力量は十分にある書き手さんだと思うので、あとはいかに間口を広げ、序盤で読者の興味を引き、分かりやすく表現するか、という難しい点を追求していくのも良い経験になるかと思います。
登場人物がそれぞれに神話の流れを汲んで懊悩したり、気持ちを奮い立たせたりといった表現をしているのも特徴的で、読みごたえがあるなと感じました!
83 空飛ぶ生き物/古川 奏
謎の有袋類
前回は「僕は光より速い風」で参加してくれた古川 奏さんです。参加ありがとうございます。
古川さんの作品は、本当にぬるっと脳を侵食してくる感覚があるというか、こう「わけがわからないが、こういうことなのだろう」を叩き付けてくるような気がします。
めまぐるしく色々なことが変わって、作品の中のルールが流し込まれる怒濤というお話の造りなので振り落とされてしまう人は一定数いるかもしれません。
話の速度のチューニングをうまく出来るようになると、作風を残しつつ、間口の広い作品を書けるのかな?と思います。
少年に助けられた少女の宿した希望が、命が終わった後にはくじらに宿り、そして空への欲求や希望を継承した鯨が朽ちることで海の小さな生き物に伝播し、クラゲに宿り、クラゲは気球のように空を飛ぶというラストです。
少年と少女は、その体の寿命は尽きたけれど、二人で空に行けたのだろうと思います。
好き嫌いは分かれるかもしれない作品だと思うのですが、僕は好きでした。
謎のアンデッド
うおー、すげえ。
終わる世界と進化の話。
世界は終わって行っても生命は生き残って、意志は引き継がれて先へ先へと進んでいく。
すごいな5000字ちょっとなのこれ……。
前半で少年と少女の物語は閉じるのですが、命が意志と希望を引き継いでいく。
柔らかな物語から始まって、後半に入ると重厚でそして貫徹していく物語。最後には空に届く。
柔らかさと重さの備わった話ですね。
謎の神
世界の終わりのお話。かと思いきや、時間を超えて成就する希望の話でもありました。読んでいて途中からどうなるんだろうと思っていたんですが、まさかこんな形で果されることになろうとは。もう、それ自体がどうしてそうするのか分からないまま、自覚のないままに、希望が空を飛ぶわけですよ。この構成は新しいなと思いました。
強いて言えば、物語の視点がクジラから微生物群に移り変わる辺りで一瞬「このお話はどこに向かっているんだ?」という不安に駆られたので、そこで読み手の意識を離さない、牽引していく工夫が必要なのかなと思いました。
希望というエネルギーの可能性がどこまでも続いていくと感じられるような、とても新しいタイプのお話で新鮮な読了感を味わえました。面白かったです。
84 証明の匙/蒼天 隼輝
謎の有袋類
そうてんさんだ!参加ありがとうございます!
サイバネティクステクノロジーが発展した世界の、とある人物の人間性に関する記録でした。
主観になっている人物の思考回路が淡々としているため、大きな出来事は起こらないのですが、人間性とは何か、個人とは、人格とは何かに向き合った作品でした。
モノローグのような感じなので、主人公を行動させるともっと物語としてのメリハリが出てエンタメ方面に寄ると思うのですが、これは静かに主人公が内省する小説として完成されていると思うので、これはこれで正解かも知れません。
まだ二作しかカクヨムに置いてないので、色々な作品を今後も書いて欲しいなと思いました。
謎のアンデッド
ナイス終末世界。
重度汚染区画からの残留物の回収、そこから垣間見える暗黒の世界やディストピア、という印象に色付けされたような開幕を淡々と物語る主人公なのですが、その次の幕からその人間的印象が剥がれ落ちていくのが見えます。
そして、その主人公がたまらなく人間臭いのです。
人間でありながら率先して人間を辞め、それでも人間臭さにこだわっている。
人間らしさを感じる始まり、それが剥がれ落ちていく中盤、そしてどうしようもなく人間臭い理由を示す終盤。
見事としか言いようがない。
謎の神
人間性について考えさせられるお話でした。読み終えた後に「ああ、それでこのタイトルなんだな」と気が付ける心地よさ。効率化できる作業を敢えて効率化しない矛盾、それが彼を彼たらしめる最後の砦なのだなと。食事の前に手を合わせる描写がすごく良かったです。サイバネティクスに侵食された肉体の描写も想像を刺激されて面白かったし勉強になりました。
生きるために失われた自分自身と、そして最後に残った拠り所。とても重厚で見ごたえのあるお話でした。
85 そらを見上げるもの/綿貫むじな
謎の有袋類
たぬきさんだ! 参加ありがとうございます!
前回は、パンデミックものを書いてくれていましたが、今回は竜と人のお話です。
第一回こむら川の時も竜を書いてくれましたが、今回は絵本のような神話のようなそんな要素が強いお話でした。
竜が寝る度に時代が変わっているのも、事前に少し悩んでいる間に一週間過ぎていたというシーンがあるお陰で、竜と他の生物では時間の感覚が違うんだなとわかって親切だと思います。
これは僕の好みなのですが、人間の登場から竜と人間が敵対して、竜が人間への気持ちに気が付くまで少しだけテンポが落ちてしまう気がするので、人間をもう少し愚かに書いても良いのかな? とも思いました。
でも、人間を愚かに書きすぎると説教臭くなるので難しいですよね。
最初のスタートが、最後と繋がっている構造で、一話とエピローグが対になっているのが綺麗だなと思いました。
空を見上げていた人間が、竜と一緒に星々の間を飛ぶ未来が来て欲しいなと思える素敵なお話です。
謎のアンデッド
凄く親切なオーバーロードのドラゴンのお話。
竜にあこがれ空の飛び方を聞いてくる生き物の中で、最も長く付き合うことになった人類。
その人類を時に気にかけ、時に煩わしく思い、でも嫌いにならないでいてくれたドラゴンと人間たちの優しい話ですね。
どんどん進化していく人間の文明を片手間にあしらえる辺りやはり竜だな、という存在感を示してくれます。
最初のお話の所で竜の背に人間を乗せていて、魚が竜に憧れて飛ぶ方法を聞く下りへ接続されますがその後にサルが人間に進化するくだりがあり、おや?っとなりました。載せていた人間の子供たちは最後に島に降ろしてるしどういうことなんだろう?
そこ以外に気になるところはないです。良いやつだなドラゴン。
謎の神
竜が生きてきた中で出会った進化の歴史。やがて人間のことが好きになって、いつか遠い宇宙の果てまで――と想像するようになるお話。きっとこの世界に竜という存在がいたら、こうなっていたかもしれないと思わされました。優しさを感じる、とてもいいお話でした。
竜という存在に見守られながら、愚かでありながらもゆっくり進化していくんだろうな、人間……と思わされる、余韻まで味わい深く楽しめたお話でした。
86 メリー・ブラッド・ラーメン!/富士普楽
謎の有袋類
こむら川でははじめましてです!
少し弱い吸血鬼と、その眷属のお話です。
ワガママでちょっと暴力的で中二病の少年が、眷属に少しだけ素直になるというお話です。キャプションを見るまでずっと夕日を少女だと思い込んでいた……。
これは好みのお話なのですが、楽くんの視点だけで夕日が素直になった方が、夕日を楽がどう思っているのか伝わりやすいのかなと思いました。
僕にワガママヒロインの耐性がないので、楽が夕日を好きな理由がちょっと薄いかな……と思ってしまうのですが、多分ワガママな子が好きな人からするとこれが良い!かもしれないので難しいですね……。
文字数が苦しかったのかな? と思う部分もあったので、一万字に収まる物語の大きさやエピソードの取捨選択をすると、この作品の吸血鬼とその周りのこと、楽と夕日の関係性がもっと際立つように感じます。
吸血鬼が、血を混ぜることで人間と同等の栄養を取れるようになり休眠をしなくて済むようになったこと、休眠をしているので寿命が長く見えるという設定がとても面白かったです。
公には認められていないけれど、吸血鬼用の私設があること、吸血鬼で医者を営めるという不思議な社会もすごくおもしろいなと思いました。
長編の人肉を食する種族の話など、世界観を練って作るのが得意な作者さんだと思うので、これからも面白い世界のお話を書いてくれるのを楽しみにしています。
謎のアンデッド
人間と吸血鬼が隣り合う世界。
頑なに上から振舞う吸血鬼の子が何を思っているの、何がきっかけなのか。それが見えた時に彼の振る舞いに理解が及びます。
子供特有の我儘や独占欲の裏に見える感情が重くドスっと来ますね。人間の子供のほうも自覚のないままに彼を救っています。
言語化出来ない(してない)行動理念に何時か自覚的になるといいなあと思います。
謎の神
吸血鬼と眷属の物語。二人の仲の良さや絆が垣間見えるような、いいお話でした。この世界の吸血鬼の設定が面白く、とくに〝つぐみのもの〟と呼ばれているというのが特に好きでした。ただ、短編という規模感を考えればちょっと設定の説明に割かなければいけなくなっている割合が多いかな? とも思ったりしました。ただ、それでお話の方が疎かになっているわけでもないので、正直この辺りは好みの問題かなと思います。
最後の一行にも、二人のキャラクター感が出ていていい締めくくりだなと思いました。二人で仲良く頑張るんやで……!
87 こいつらバ美肉したオレのことを好きすぎるだろう/山三羊
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
多分、これは相互のワシソダさんを題材にしている作品で、ワシソダさんが「すかい」さんと名乗っているのでお題を回収というお話なのだと思います。
ちょっと判断に困る作品なのですが、題材にした方とある程度仲が良いのならこういう作品も良いのだと思います。
そこまで直接的なやりとりがないので、各エピソードは知ってはいるもののよくわからない部分が多かったです。
後半の、バ美肉した長年の友達に襲いかかってしまう心理や、急に泣き出すみたいなやりとりはコミカルでよかったです。
身内特攻作品、多分評議員のほとんどにはわからないので、身内ネタは知らなくても楽しめるけど、知っていたらもっと楽しいくらいの塩梅にするのが良いかも知れません。
バ美肉した男がサイバネティクステクノロジーで体を置き換え、それによって周りがクラッシュしていくという題材はとても良いので、すかいさんネタを控えて再度創作チャレンジしてみるのもよいのではないでしょうか?
謎のアンデッド
んー、内輪の話ですよね。
なんか生の餃子だか何だかがどーたらって見た気がします。
なので逆にこれお尋ねしたいんですけど、内輪の話として面白かったんでしょうか?僕はこの辺滑り倒す可能性のほうにベッドするタイプのゾンビなのでやったことないんですが、内輪に向けては最低限受けてるといいなあと思います。
あと内輪受けなので後半は勢いとノリでガシガシ行きますけど、実際に受肉したって本体はどこに行ったんでしょうか?完璧な理想の性転換が可能になってそのモデルになったらTSエロ漫画みたいな展開しました、ということ?多分ここ突っ込まれるところじゃない、と思われそうなんですが、一応講評なので。
いや、アバター言ってるんだから本体はどこかにいるのかな?内輪ノリのままふわっと進行して終わったので僕からは「そういう話なんですね」というのが最終感想です。
謎の神
し、しんどい……!!! というのが読み終えた後の率直な感想でした。バーチャルユーチューバーになった後の人間関係が生々しすぎるんですよ。読んでいる最中思わず「うわぁ……」と声が漏れてしまいました。
正直、お話としてはインパクトがあっていいなとは思ったんですが、「空」というテーマがどう使われているのかが分かりませんでした。
バーチャルユーチューバーという流行りを抑えている点でも、こういったお話は需要があるのではないでしょうか。今後も研究を重ねつつ創作を楽しんでほしいなと思います。
88 よそもん/ぶいさん(ぶいち)
謎の有袋類
ホラーと言えばぶいちさん!参加ありがとうございます。
今回の主人公は獣人でしたね。人に似た顔、下半身は獣、そして副乳と角。良いです。これはえっちです。
人語を拙く話すのもめちゃくちゃ不気味で好きでした。
短編ですし、理想は一行目から動かすことだと思っているので、えいやっと一話目でいきなり土屋さんを落とし穴に落としちゃってもよかったかもしれない……。
生け贄や、獣人の存在、最後に出てきた「よそもん」の語り手の汚さなどとても好みの作品でした。
獣人がいる世界のお話、他にも読みたいので、オムニバス形式で何話か続けてもいいのかもしれないな……と思いました。
副乳がよかったです。獣人は良いぞ。
謎のアンデッド
ウマい話には裏がある。
それを地で行った作品でした。
現代のどこか、こことは違う場所に居ると言われる人獣、人という言葉がついてると相互理解が可能なんじゃないかな、という期待というか幻想を抱いてしまいますね。
その山にいたのは獣でも人でもなく、そして美しくて綺麗な獣でした。でも、この話の怖いのはソレを知ってて人を供物として捧げるシステムが完成してることです。
人獣は人獣だから当然の行いとして人を食うのでしょう。だから人間は自分たちを守るために自分たちの括りの外の人間をそれとなく差し出す。人を食うことも含めてあるがままに生きるだけの人獣と、何も知らずに差し出される生贄。ドン詰まり感のある読後感がいいっすね。
これ堂々と現代日本!って書いても嫌な気持ちになるんじゃないかな。
謎の神
お山のもんという謎の生物の物語。怖い!
お話としては非常に良く、不気味な雰囲気を楽しませていただいたんですが、個人的には少し「空」の要素が薄いかな? というのが気になった点でした。
これ、村の人々が慣習に従うしかないのは、現代の文明レベルをもってしても、どうしようも無い生き物だからっていうことなんだろうな……と思うと、ゾッとする話ですね。美味い話には裏がある……。
89 空から魚がふってきた/@koge-gr
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
空から魚が落ちてきた魚の正体を突き止めようとする少年たちのお話です。
無邪気な少年たちが「ノーベル賞だ」と言い合っているのがとても微笑ましい物語でした。
途中で魚が大人には見えないことや、消えていく魚……など、読んでいてとてもワクワクしました。
結末が「これからも追いかけよう」で終わるのですが、個人的にはもう少し先の「17時までには帰れそうもない場所」まで魚が落ちるようになった時のことです。
後日談として、大人になった朝日と晴翔くんが過去を思い出すみたいなラストだと、更にこの物語のロマンティックさや、子供が話す無邪気でキラキラした夢みたいなものが際立つかもしれません。
子供の時にだけ見える不思議なものと、それを友達を共有するワクワクを思い出すようなとても素敵なお話でした。
謎のアンデッド
一読した感想としては子供特有のすっげえ事から始まる小さな冒険物なんですが、割と後半怖くないですか?
子供二人にはしっかり事実と認識され、撮影媒体にも問題なく映っているという振る舞いなんですが周りの大人には見ることができない。
子供特有の感性だと見えるのか、大人には見えないのか、大人も見えていながら無視しているのか、それとも……。
なんとなく怖いものがそろってはいるんですよね、時間が遅くなっていく現象とか、子供にしか見えないとか、遅くなるまでに帰るように言う親とか。無邪気な子供の裏に何となく見える不穏さを感じてちょっと怖い話なのかも?とも思います。
謎の神
空から魚が降ってくるお話。
お話のテーマや序盤のインパクトは非常に良かったのですが、謎が謎のままで終わってしまっているのが少し気になってしまいました。一体、どういう現象が起こっていたんだろう……?
繰り返し少年たちが口にする「ノーベル賞だ!」というセリフがすごく微笑ましいなと思いました。なんとなく、小さい時の記憶を思い出してしまうような。
小さい時の不思議な出来事を描いた、可愛いらしいお話だと感じました。
90 冬の現実/志々見 九愛(ここあ)
謎の有袋類
小池百合子といえばここあさん。前回マジで脳を揺さぶった傷痕を残したで賞の作者さんです。
本当にあのサブリミナル小池百合子小説の方ですか? と思わず作者ページを五回くらい確認してしまうほどに作風が違う作品でした。
幼い頃の甘い初恋の思い出と、そして初恋の彼を失った喪失。
それも過去のこととなった主人公が、妹と買い物に行き、そして迷子の少年と出会うお話でした。
後半は、現実に起きていることなのか、それとも彼女が見た幻なのかわからなかったです。すみません。
ホラーや、後味の悪いお話は結末や現象をどこまで明らかにするのか難しいですよね。
冬の現実というタイトルが、どんな意味であれ不気味に見える怖い作品でした。
謎のアンデッド
ちょっとわかんないんですけどガンダムWでヒイロユイの口癖の呪いが発動するの?
自分が嬉しい、幸福だの瞬間に飛行機雲を見るとリリーナキルしたくなる呪い的な?
すんません、ちょっと僕にはわからなかった。
文章としては序盤から姉と別れるまでのしっとり感と、子供に対応するとこまではしっかりとした筆力が感じられました。
内容としては分からなくなりました、申し訳ない。
謎の神
小さい頃の痛ましい記憶。それが再び現実として現れて――というお話だと感じました。正直、ぼくには難しかったです。あの最後のシーンで首を絞める理由がはっきりと分からなくて……ただ、小さい頃の記憶はまだ彼女の中で尾を引き続けているのだろうなと、それが深刻なところにまだ達してしまっているのだろうなと、そういうどこか悲しさが感じられるお話でした。
91 春は来る/流々(るる)
謎の有袋類
一作目ではミステリーを投稿してくれた流々さんの作品です。
言葉も通じない土地にやってきた家具デザイナー志望の男性と、その周りの人たちのお話でした。
デンマークに引っ越してきた主人公の元へ来る神父さんも、通訳をしてくれる吉岡さんもとても優しくて、物語の舞台である冬のデンマークとは正反対の温かさを感じる物語でした。
ほっこり出来る物語で、未来に行き詰まっていた主人公を説教するでも無く、さりげなく「春は来る」と元気付けると言った細やかな優しさがとても好きです。
鈍色の空も、いつかは春が来るし、晴れるように主人公の人生にも何か良い結果が起こるといいなと思いました。
謎のアンデッド
あ、いいですね。
情景が浮かびます、言葉が通じなくても体当たりで外国に行っちゃ動き、それゆえの寂しさと雪景色の静寂と静謐さ。
一人になって誰も知らないところに行けば自分を取り戻せるんじゃないか、そういう心理の揺れ方が丁寧です。
上手くいかないことに当たって内省的になるタイプの主人公なんですね。
外に感情が噴き出すのではなく内に溜まっていく。雪みたいに。
シチュエーションと国と雰囲気のマッチングがすごくいいです。
謎の神
雪が降る国で、現実に翻弄される男のお話。現実から逃れ、逃避した先にもまた別な現実があって……という辛さが共感できました。どこに行っても一人で生きることなんてできない。
一作目を拝見した時も想いましたが、全体的にお話を書き慣れていらっしゃるんだと思います。些細なところですが、主人公が何者で、どういう人なのか? という情報をもっと前半部分で強調すると、さらに彼に感情移入ができてよかったかもしれません。
絶対に当たる天気予報は――というセリフが好きです。なんだか、自分まで元気付けられるような気がして。また来る春を目指して頑張ろうと思えるような、優しいお話でした。
92 熱気は踊る/常盤しのぶ
謎の有袋類
こむら川でははじめましてです(本当に?)参加ありがとうございます。
松島!見たことある!と思ったら雨野川小説大賞でフェリーに乗っていた二人組みのお話と同じ登場人物でした。
単独としても成立するお話だと思います。
急に来て急に誘う松島と、それに付き合う主人公。タグにBLと書いてあったので、恋人的な関係ということなのでしょうか?
サクッと来てサクッと出かけて、気球に乗る二人なのですが、はしゃぐ松島がすごく好きです。
心が汚れているので景色よりも主人公の顔を見ていたのを思うと「わざとだな?」となんらかの意図を疑ってしまう……。多分心配していたのだと思うのですが、苦悶する表情いいよね……とも僕はなりました。
下限ギリギリのお話で、ワンシーンを切り取ったお話なのですが、前回と今回を繋げて動きがある物語を作ると、より松島の良さが出るのではないでしょうか?
松島との物語を一万字以上二万字以下で書いてみるのも良いと思います(僕が読みたいだけです)
最初に主人公が考えていたメニューと同じメニューを食べたいという松島……そういうところだぞ!
とても良いBLでした!ごちそうさまです。
謎のアンデッド
私には見えませんでしたがこれ関連性が深く長いんだろうな、と思いました。
意地悪な男と付き合いのいい男が飯を食ったり気球に乗る話。
背景情報があるんだろうな、というくらい手慣れた文章感ですね。
ちょっとその他の作品を僕は知らないので申し訳ないです。
ただ、読んだだけで他にも共通した作品があるんだろうな、というのは伝わってきました。
謎の神
日常の切り抜き方が上手くて、短くコンパクトでありながら、しっかり纏まっている印象を受けました。松島のはしゃぎっぷりからは子供っぽさが溢れてて、いいキャラだなと思いました!
気球に乗るという行為が、主人公のトラウマや松島との関係を描くのにいいガジェットととして機能しているんですよ。
常盤さんは神ひな川時にも魔剣のお話で参加してくださったのを覚えていますが、本当に多彩な方だと思いました。短編の力量は十分にあると感じたので、少しずつ規模の大きな物語に挑戦していってもいいのかもしれません。
男性同士の関係を描いた微笑ましい、心温まるようなお話でした。
93 アタック・オン・ザ・ドラグーン/宮塚恵一
謎の有袋類
アオハルもののスカイ・コネクトを一作では書いてくれた宮塚さんの二作目です。
二作目はハードボイルドな雰囲気のある作品ですね。
竜(ドラグーン)と呼ばれる有機体の翼を持つ無人機と、傭兵、そして生きる意味を失った空っぽの少女、三人の物語です。
対戦車狙撃銃(エレファントガン)や電磁パルスを使った竜との戦闘シーンがすごくかっこよかったです。
緊張感のある冒頭、それと対比的にのんびりとした日常を思わせるエピローグの対比が見事でした。
このまま連載にも使えそうな終わりなのですが、全然物足りなさのない面白い作品でした。
>「擦り傷だ。痛みも何もない」
ここが、強がりではないと二回目に気が付いて「うわー」って変なテンションになりました。
綺麗な伏線や、鮮やかで爽快感のある戦闘描写、そしてポールとスティーブの関係性と美味しいところが盛りだくさんなエンタメハードボイルド小説でした。
謎のアンデッド
空を支配するAI操作のUAVと、それを落とす傭兵と少女。
固い手触りのSFが来ましたね。
空要素はUAVとその支配下かな?一つの街を試験場にして行われる戦闘試験とその被害者。
試験内容の傍若無人さといい、街を背景にしてる事と言い政治的機能が停止してるような感じがありますね。
そうなるとAI判断というのも会社責任だけで執行されているのでかなり厳密な運用ではなく、性能面でのみ厳密さを求める形になりそう。
怖い。
被害者を生み出さないために奮闘するサイボーグ兵士かっこいいですね。
謎の神
宮塚さんの二作目ですね。一作目とは打って変わって、ハードボイルドな世界感や戦闘描写の巧さが光るお話でした。すごく好きですこのお話。
電磁パルスグレネードを使う練習はするのに、対戦車銃の練習には力を入れないのかなと気になったんですけど、エピローグを読んですごく納得しました。スティーブめっちゃキャラが立ってるしカッコよくて好き……!
口では決してそう言わないだろうけど、これからも救われない孤児のために戦うんだろうな……と思える、余韻まで含めてとても面白いお話でした。
94 宝石の春、歌う鯨/水瀬
謎の有袋類
第八回本山川小説大賞の覇者です。参加ありがとうございます。
覇者の貫禄!超最高でしたねこれ。
>その日は嫌になるほどの快晴で、僕たちが見上げた空はどこまでもどす黒い色をしていた
ここ天才だなと思ったのですが、これがなんとなく語感を詰め込んだだけじゃなくて、
>この空は見る人の心の色を映し出す。ある時からそうなった
とCQの時みたいにぬるっと入って来る少し不思議要素がめちゃくちゃおもしろかったです。
構成としてもすごくよくて、キャプションに書いてあるフレーズが前半と後半に書いてあるのもすごく印象的でした。
雛目あくりが雛目あくりであるということの素晴らしさ、そして彼女のそばにいる主人公である倫太郎の最後の台詞がめちゃくちゃよかったです。
こういうエモさ、守備範囲外なのですが、すごくよかったです。
覇者の貫禄というようなめちゃくちゃ面白い作品をありがとうございました!
謎のアンデッド
遊びでやってんだよ、という言葉に痺れる。
好きでやってる事が好きでやってる事でしかないし、それ以上でもそれ以下でもない。
好きなように遊ぶ事の前に、大きな箱も大勢のオーディエンスも意味をなさずに、また片田舎のスタジオに舞い戻る。
好みだなー、この話。魅力を覚えることは自分を優先してタグをつければいい、だから大人として振る舞う登場人物たちも、本音でしか動かないヒロインも皆好き勝手に価値のある物にタグをつけて、そのプライオリティだけは譲らない。
ミュージシャンたちの物語だなあ。
心境によって見える空の色の描写が良いですね。阿呆みたいに輝いて見える空を見ることが出来たってこと自体が凄い経験で、それを見せることができたので満足だった。
かっこいい話だった。
謎の神
なんのために歌うのかという答えに行きつくまでの物語。有名になるよりも、もっと大切なことがある、「なんのためにやっている」という本質的な問いと、その答えがすごく心に響きました。物語の締めくくり方もすごくいい。大人になるという問題に登場人物はたくさん頭を悩ませているんですが、それも最後の一行で鮮やかに解消されてように思えて、お見事だと思いました。読了後は本当に見送るような気持ちでしばらく茫然と余韻に浸かっていました。
この二人が、また今日もどこかで笑っていたらいいなと思いました。
とても良いお話を読みました。
95 消失少年と、生きること/十六夜雪
謎の有袋類
クソ女の自分語り日記を書いてくれた十六夜雪さんの二作目です。
多分連作なのだと思いますが、レギュレーションに「連作の場合、それぞれの関連性を無視した講評を行います」とあるので、事前に投稿された話との関連性を無視をして講評を書きます。
アルビノの少年が無神経な少年に持論を語られ、自殺する話です。
二人が話をして、そして片方が自殺をするだけになってしまうので物語としてはちょっと起伏が少なく感じました。
上限が一万字と少しあるので、世良くんと姉の関係性や、これまでのことを書いたりしてもよかったのかなと思います。
前作と合わせて中編や長編としてまとめてみると、面白い作品が出来るかもしれません。
命や倫理観を題材として、死ぬ意味や死にたい気持ちに寄り添う優しい作品でした。
謎のアンデッド
んー、あれですね。
関係性が見えてこない(知り合いとは別人なんですよね?)上でこれだけ無礼ぶっ放してくる他人に優しい人が飛び降りる、それが悲しいって話でしょうか。私はこの作品しか読まないので、この作品上の物語でしか判断できないんですが。
普通にいいことは他人の決定は他人の決定なので生きたいも死にたいも好きにしたらいい、ってところは共感できますね。
その上でバックボーンがこの作品上にはないので僕に読み取れる動機、例えば自死であったり、都合の悪い物を消してきた物語が分かりませんでした。
書かれてないことは読み解けないので。
その上で、この物語は何かとなるとやはり失礼な事をいう少年の言葉に踊ってしまうのは葉月君に余程のカリスマか迫力があるってことなんでしょうか。
ここに書かれてない話は知り得ない事なので申し訳ない。
謎の神
タイトルの通り「生きること」が主題となっているお話。
最後の展開で彼が死という選択を選んでしまったので少し驚いてしまいました。まだ文字数にも余裕があったので、この選択に至るまでの経緯をもう少し具体的に表現してほしかったかなと思いました。
もう二度と出会うことのない二人の会話が、最終的な結末を変えることは無い。それだけ、彼の抱えていた闇は重かったといういうことなのでしょうね……。悲しいお話だと思いました。
96 シュレディンガーの消えた猫/ナツメ
謎の有袋類
二冠王、ナツメさんの二作目です。
話の構成が本当に上手ですね……。
開くと物がなくなる。最初はたこ焼きからはじまって小さな違和感が確信に変わるまで、そして確信が友達からの疑いに変わる様子。そして、それでも接してくれた新しい友達。
わこちゃんに恵美理が頼り始めたところで、一話を思い出して「え……」と不安になりながら読み進めました。
意外性のあるラストでは無く、決まっている悲惨な結末に向かっていくのですが、それまでの道のりがめちゃくちゃ怖かったです。
読み進めた上でもう一度序を読み直して「うわあ」となるすごい作品でした。
途中までの温かな交流、わこちゃんの控えめな優しさが全て心を砕く狂気に変わる恐ろしい作品……。
謎のアンデッド
ルールがシンプル過ぎて怖い。
うわ、怖。
目視できないものを開けると消える。起こっていることは大変シンプルです。目視できない袋状以外なら通常通り扱うことができる。
ああ、なるほどじわじわ解決に向かっているのだな、と思ったらこのオチ。目視出来ないの適用範囲が物体以外にも及ぶって発想はありませんでした、怖い。適用されるルールの範囲から考えると心神喪失状態の彼女のソレも消えてしまって戻ってこない。
サクッとすべての救いを最後に投げ捨てられてしまった。
謎の神
一章目を見た段階から一体どんなお話になるのか色々予想していたのですが、見事に想像を裏切る展開で「そういうことかーーー」と声が出てしまいました。意外な結末で面白かったです。冒頭を配信記事の形式で書くというのも面白い手法だなと思いました。
開けたものが無くなるという現象が何故起こったのか? 分からないまま終わっているのが不気味ですね……。
救いようの無さがいい意味で後味を引く、面白いホラー小説でした。
97 引き抜かれた空が叫びを上げる/君足巳足
謎の有袋類
土に還り賜えマンドラゴラ!!!!!
年末の奇祭を終わらせに来たきみたりさんの作品です。
トンチキだと思いきや、かなり本格的なSF小説でした。
遙か昔に死んだ作家、そしてその作家の話を訳した百一人目であり、たった一人の乗員。
ぬるっと入って来る回想で一瞬だけ混乱して、何度か読み直したのですが、これは講評で脳が疲れているからな可能性も高いです。
視点の切り替えと、記録が入り交じると脳が疲れていなくてもちょっとだけわかりにくいのかもしれません。でも、講評じゃなかったら「最高ーーー」と叫ぶのであんまり気にしなくても良さそうかな?とも思います。
一話では娘だったのが「いたずらっぽい笑顔は、見慣れた妻のそれに似ていた」ってなるところとかすごく好き。
遙か昔に船に乗り、そして神になった彼の記した記録を読み、世界の真実を知る二人のラストが印象的でした。
謎のアンデッド
あ、これあれですね。
中身触れないほうがいいですね。
中身触れない感想ですが、序盤でもやもやしても大丈夫です。最後に話が華麗に折り畳まれて風呂敷に包まれます。
いいですね、神話信仰の原点を見つめなおし、出発地点の思いを知って背負う話。
そのための言葉で、そのための言い回しなんですね。
綺麗にまとまった!ってなりますね。
謎の神
きみたりさんがこのお話を書いた文脈を知っているせいで冷静に講評できる自信が無いのですが、めっちゃ面白かったです。
>空とは百頭草(マンドラゴラ)であると神は言った。
という衝撃的な一文から始まる物語。ロケットスタートはバッチリです。そっか……神が言ったんならしょうがねぇよ……。でも大丈夫? このお話はどこに行くの? ちゃんと畳める? と心配しながら読んだんですが、ちゃんと空に向かってきれいに着地してたのですごい。こんなマンドラゴラの使い方ある? って少し感動しちゃいました。
強いて言えば時系列が行ったり来たりするので読んでいる時は少し分かりにくいところもあったのですが、最後まで読み終えた時の「そういうことか!!」がとても気持ちいいです。登場人物の会話や心情にも芯があって、見ごたえがありました。
誰かの想いが時を超えて、星を超えて、神話という形で今に繋がっている。それって上手く言えないですけど、すごく素敵なことだと感じさせてくれるお話でした。
98 深海の夜空に星五つ/2121
謎の有袋類
2121さんの人外小説だーー!参加ありがとうございます。
船の事故で海の底へ着いた男性と、人魚の少女のお話です。
深海の窓から見える光る深海魚が夜空みたいに見えるシーンから、人魚が現れるまでの幻想的なシーンの連続ですごく美しかったです。
短編なので、一行目に人魚を出してから、船の事故に遭ったみたいなロケットスタートをしてもよかったかもしれないなと思いました。
でも、講評なので僕の好みを言っているだけで、ゆっくりと人魚との邂逅を楽しめるこのスピード感もとても良い物だと思います。
2121さんの作品は、蚕の話から知っているのですが、人が死んでも温かな気持ちになれるのが特徴だと思っています。
人魚がふと男の口内にある飴玉を舐めるシーンや、海底で死んだ人を海流に流すシーンなどに人ではないもののルールや倫理観が見えてすごく面白かったです。
謎のアンデッド
恐ろしいほどゾッとするしかない人生の最後に、ほんの少しの救いがもたらされる話で残酷で綺麗なストーリーです。
もうどうしようもないドン詰まり、そして最後の安息とどうしようもない切羽詰まった嘘。
胸に来ますね。どちらも優しいけど、どちらもこの状況を覆すことは出来ず寄り添うことしかできない。
お互いの優しさで最後に受け取れる小さな報酬が切なく、優しさしかないのに悲しい。
優しくて切ない話でした。
謎の神
ぼくが勝手に「川の最終便」呼ばわりしている小説上手人、2121さんの作品です。今回もよかった……。死期の近い男と人魚の約束のお話。
飴玉の使い方がすごく上手だと思いました。最後に交わす約束も、見上げる空も、いい感傷に結び付くような描き方で、とても綺麗なお話だと感じます。深海を「空」に見立てて、最後に本当の「空」を持ってくる、という構成も、非常に上手いやり方だなと思います。
静かな雰囲気と共に、果されなかった約束の余韻を感じさせてくれる素敵なお話でした。
99 空の旅路/QAZ
謎の有袋類
夢を食む夢から一年!QAZさんの作品です。
一年で20作近く書き上げたQAZさんなのですが、メキメキとお話を作るのが上手になってるな……と思います。
なので少しだけ講評もそれに合わせたものにしようと思います。
異形の女王と対峙する主人公の二人、という形で開始されるこの物語ですが、実は異形なのは主人公の二人だったという叙述トリックでした。
最後、女王と呼ばれたAIで種明かしをせずに、最後までカシナの視点で語った方が「そういうことか」みたいな感動が大きいかな?と思います。
視点の切り替えをするとお手軽なのですが、ちょっとだけ縛りプレイをした方が臨場感や主人公たちと感情を共有しやすいので、カメラの切り替えをなるべくしないお話作りをしてみると更にグッと書きたい内容を書くためのスキルが身につくと思います。
すごい勢いで成長をしていて、本当に読みやすくて面白い作品でした。
似たような世界観の中編などにチャレンジをしてみるのも良いのでは?
これからも好きなものをたくさん書いて欲しいなと思いました。
謎のアンデッド
あー、ああ、そういうねー。
と最後に納得を叩き込まれました、なるほどね!
遺失、遺産機構を使うからその時点で思考が誘導されてました。
なるほどギリギリ生きている世界じゃなくて、もう破綻してしまっているんですね。AIの判断を聞くにもう全てが一度終わってしまっているんですね。ディストピアのその先に新しい世界を作る、そこに人間はいないのかもしれない。
謎の神
空と地上、二つの世界の事情が描かれた物語。主人公と相棒の仲の良さや、登場するアイテムの発想が面白いと感じました。
気になったのは、あらすじと内容の差がすごくて、ちょっと戸惑ってしまったところでしょうか。好みが分かれると思うんですけど、「こういうお話が読みたい!」と思って開いてくれた方にとっては割りと容赦ない内容になっているので、ちょっと不親切なのかもしれません。
最後に主人公たちの本当の姿が明かされるところや、天上人の傲慢さが描かれるシーンは迫力があり、重くのしかかってくるものがありました。QAZさんは人間の愚かさ、救い難さを描くのが上手だと思っていて、いつかそういった悪意を乗り越えた先にカタルシスを感じさせてくれるようなお話も見てみたいと思ってます。
今後もご自身の持ち味を生かしながら、色んな形の創作に挑戦してほしいなと思います!
100 天鷚/あいさ
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
伝奇小説や時代小説のような雰囲気の作品です。
呪われた姫が、太刀で神を討とうとし、化生……化物になってしまうというお話でした。
雰囲気を取るか、読みやすさを取るかこういう作品は難しいのですが、読んでもらいたい対象によって正確さを重視するか、ルビなどを利用するか、少し現代的な文章を混ぜるか調節すると更に間口が広くなる気がしました。
僕は勉強不足なこともあって、正確に読み取れたのかちょっと自信がないです。すみません……。
ですが、言葉遣いや、作中の時代背景や、あやかしやその逸話についてなども、とてもよく調べられているように思えて、作者の方が創作に真剣に向き合っているのだなということが感じられました。
祝姫の決心、そしてそれを止められなかった灯丸の関係性が短い文章の中にギュッと詰まっていてすごくよかったです。
>甲高い雲雀の囀りだけがどこまでも響いていた。
この余韻のある終わり方がすごくよかったです。
謎のアンデッド
平安時代くらいの話ですかね?
神と契約の贄にされた姫と、それに仕えていた男の話になります。
強い力を持つ神を太刀で討ち果たし、祟りを受け入れる。
理解しやすい話です。
出世の道具にされた娘、神との契約により呪いを受け、納得できない一心で神を屠る。
言葉をその時代風にしてることで読みやすさを落す代わりに雰囲気を重視した形でしょうか。
納得したわけでもない心はどうしようもない解決へ走り、そして神は消え姫も消え去る。
祟りは成就し、因果は家族にもいつか及ぶのかな?
話としての神の出番は死後のみで恐ろしさ、強さと言うものは余り伝わりません。
女性が太刀で殺すことが出来る神、という物の持つ力が強い様には捉えづらく其処が勿体ないと思います。
神の存在の凄まじさを物語るのは神を殺した物へ祟りを完遂する部分だけ、という形になっていますので。
雰囲気を重視する事と同時に怖ろしいはずの神が容易く殺される所以があるといいと思います。
雰囲気はいいんですよね、こういう文体のつくりは好きです。
謎の神
一族の繁栄のために神に呪われる運命を辿った祝姫の物語て……だと思いました。正直、ぼくにこういった時代の知識が無いせいで、役職が意味するところなどよく分からなかったところは多いです。すみません。
間口を広げて多くの人に届きやすくするという話になると、極力古語は現代語に置き換えたり注釈を加えたりといった工夫が必要なのかなとも思うんですけど、そうなると作者さんが真に書きたいことや作品の雰囲気とも遠ざかってしまう気もするので、そこはもうどちらを取るかの問題になると思います。
神を殺して、化生になって、それでようやく祝姫は自由になれたんだなと思うと、複雑な気持ちになりました。見送ることしかできなかった灯丸の心中も考えると、やりきれないというか、悲しいお話だなと感じました。
101 ここではない、違う空の下で/里場むすび
謎の有袋類
里場むすびさん!参加ありがとうございます。
未来から来た贈り物を過去に贈る中間地点のような物のお話でした。
これ、ちょっと色々な情報がありすぎて一度読んだだけだとちょっとわかりにくかったです。
一万字で扱うには複雑すぎる舞台なので、内容を詰め込んでRTAみたいになっている気がします。
書いている側では情報が整理できているだろうことが説明不足だったりしてちょっとわかりにくくなっているのかな?と思います。
一万字はかなりタイトなので、時系列を入り乱れさせたり、何度も驚きの展開が入るような展開はあまり向いていないかもしれません。
【落ちもの送り】というアイディアや、第○○次世界のような発想、そして異聞書記という設定はとても面白いですし、それぞれのキャラクターも魅力的だと思います。
好きなものを詰め込んで、とても楽しく書いているのは伝わっていたので、次回は是非好きなものを絞って、文字数に合った規模の作品を作ってみるにチャレンジして欲しいと思います。
謎のアンデッド
このギミック好きです。
レイヤーを張り付けるように世界は改変され、世界の改変を認知できるもののアナウンスがないと変化に気づくことがない。
面白いな、世界設定をガンガンかき混ぜれる。
ただ、主人公視点で話が進んだ結果として世界の改変アナウンスの成果が見えなかったり、最終的に主人公が追われる側になって異聞書記の仕事の成果・ありがたさがいまいちピンとこない部分です、読者として。
設定設計が面白いので、その辺補完した奴が読みたいですね。
謎の神
とある異聞書記の物語。次々に変わっていく歴史の中で、そのことを認識しているのは自分だけ。この設定が面白くて、色んなお話に使えそうだなと思いました。あと、自分で自分を妊娠させるという発想がとても斬新だと思っていて、これはしばらく頭から離れそうにないです。
中盤から後半にかけての展開が一気に変わったので、そこが少し着いて行くのが大変でした。自分以外の自分が数人出てくる、という展開は面白いんですが、短編という規模感を考えるとどうしてもややこしくなってしまうのかなというのが正直な感想です。
異聞書記という職業など、独特の発想が面白いなと感じられるお話でした。
102 最初のニュース/坂崎かおる
謎の有袋類
坂崎かおるさん、参加ありがとうございます。
ある女性から語られる「初めての空を走る車での犠牲者」のお話でした。
淡々と話していた女性が、徐々に静かな狂気を見せ始め、そして罪を懺悔し終わったあとに、なんでもなかったようにお菓子を勧めてくるというなんとも言えない読み口のお話でした。
車が空を走り始めてすぐの様子、そしてトオルくんと語り手の交流、小さな絶望と怒り。
僕は性格が悪いので「旦那さんのことも口封じに殺していたりするのか?」と深読みしてしまいました。
すごく面白かったです。短編としての単独作品では無く、短編集に入ってたらなんとなく嬉しいという気持ちになるような完成度の高い作品でした。
僕の中ではトラック枠ですね。
謎のアンデッド
読んでください。
すごいシンプルに人の心のふらふらだったり闇だったりを見せつけてくる個人の述懐なんです。
なんですが、まあこの述懐してるお婆さんがもう、嫌な良いキャラしてます。
人生の上りが見えてるんじゃないか?というくらいの「いつ終わってもいいから言っておくか」感があってもう嫌、最高。
最後まで読むと自己満足にすぎないんですよ、これ。
自己満足のために告白してるだけっていう。
いやー、嫌な良い婆さんです。話もシンプルで面白い。
謎の神
自動車が空を飛んだ時代を振り返る、告白のお話。近未来の世界感と、人間模様が綺麗に噛み合って、流れるように読まされるお話でした。読み進めるごとに、「いずれこうなっていくんじゃないか」と思わされるような。
後半では、語り手が淡々と罪を告白している様子が怖いなと思いました。もう昔の話とはいえ、すごくあっさりしているのが恐ろしい。
読みやすくて、親切で、分かりやすい。短編として綺麗に、丁寧にまとまっている印象を受けるお話でした。
103 逆スイッチ/マツモトキヨシ
謎の有袋類
はじめましての方です。参加ありがとうございます。
逆スイッチというかなりキャッチーなタイトルだったのですが、めちゃくちゃ本格的なホラーでした。僕の中でのトラック枠です。
夜中に読むんじゃ無かった……と後悔して、半開きになっている扉が気になってしまうし、閉じていた戸棚を開くのも少し怖くなる。そんなお話です。
秘仏の説明をして、順と書いたタイトルで閉ざされる扉、そして逆で開かれた扉の先は……。
僕はこういうホラーで、よく隠された意味などがわからなかったりするのですが、それでもぞっとしたり、気持ち悪いなと思うので本当にすごいものを読んだなという感覚です。
ホラーに詳しい人や作者の方が解説をしてくれたり、考察をしてくれるのを楽しみに待とうと思います。
謎のアンデッド
おお……怖……夜中に講評するもんじゃない気がしてたけど手遅れでした。
秘仏はそこにあり、そこになし。
頭の中に浮かぶそれが実在するようになり、それが実在しないように子供が蓋をする。
来たら何が起こるのか、ということは明示されていません。
明示されない代わりに人が一人消える、という結果が提示されます。
そして、それが来ないように務めるものがその秘仏の詳細を伝える。
山間の村の寺の伝統に縛られてるからこそ起きる矛盾、居ないほうが望ましいのに居るために要る情報を伝達する。
気持ちの座りどころが大変気持ち悪いです。落ち着かない気持ちになる。
面白い。
謎の神
秘仏のお話。かなり本格的なホラー作品を読んだなと感じました。
あの時、久田には何が見えていたのか。彼が最後に残した言葉と一緒に考えてみると、上手く言えないんですけど背筋がゾッとします。
ぼくは「仏像って尊いものなんだ~」という漠然とした考え方をしていたんですけれど、このお話を見てからはちょっと考え方が変わりましたね……。
なにか、違う世界への恐怖を思わせるめちゃくちゃ怖いお話でした。ホラーが上手い……。
104 天使の妹である私がオギャっと生まれる少し前から今日までの話。と見せかけて大体お姉ちゃんの話/妹
謎の有袋類
妹さんの作品です。
最終日、ラスト一時間になると「そろそろかな」と待ちわびるような体にされてしまいました。
妹さんの妹の作品です。
妹が大好きな天使のお姉ちゃんについて語るお話なのですが、お姉ちゃんがマジで翼も天使の輪っかもある天使というお話です。
だーっと一人称視点でまくしたてていく姉への愛と執着。それはそれとして校則で妹自身の人生は進んでいたという勢いのある作品でした。
モノローグ形式で進んでいくので、物語の中でもう少しどたばたをしてくれるとお話にメリハリが生まれるかも知れません。
ラストシーンでお姉ちゃんが迎えに来るシーンがすごくよかったです。
お姉ちゃん、天啓的なもので急に旅立ったのかな?とかあまり考えずに「妹ちゃんよかったねえ」となりました。
妹さんの良い妹作品でした。
謎のアンデッド
お姉ちゃんの話なんだけど妹の話だった。
あ、凄いなんですがこの力強いの。とにかく徹頭徹尾姉の話から始まり姉で締めるんですけど、荒唐無稽で突拍子もないのにどんどんお姉ちゃん解像度がすげえ勢いで上がっていく。そして釣られるように主人公の解像度も。
凄い力強く、ファンタジーなんですよ。オープニングでは地に足つけてないような感じなのに気づいたらめっちゃ力強く両足で踏ん張ってる地続き感のあるファンタジー。
回る話、そしてオチ。スゲー、すげえ面白かった。
謎の神
泣いちゃったわ。タイトル通りのお話なんですが、めちゃくちゃいい話でした。終始お姉さんへの愛が伝わってくるのが良い。また、年を経るにつれて、少しずつ地の文が短くなっていくのがマジで最高なんですよ。流れるような文章で「光陰矢の如し」をしているんですよ。号泣しましたね。もう前が見えない。
ロケットスタートも完璧だし、空というテーマの使い方も最高です。多分、ぼくはこういう人生の話に弱いんだと思います。なのでめちゃくちゃ刺さりました。文句なしに5億点ですね。このお話と出会えてよかったです。
105 不死身の烏は夕陽とともに/CK/旧七式敢行
謎の有袋類
羽根っ娘についての愛を日々呟いているCKさんが参加してくれました。ありがとうございます。
機体との神経接続、そして体を蝕むナノマシン、変色する髪と翼……飛べなくなる代償と重々しそうなことが書いてあるのですが、爽やかな感じでお話が続いていくのがすごく好きです。
戦闘シーンも、専門用語がわからなくても「サシバ04は俺のコールサイン。サンセットは隣の島にあるレーダーサイトだ」のように書いてくれるので、すごくわかりやすかったです。
本当に些細なことなのですが、カクヨムの左サイドバーに「本文を整形」という項目があって、自動で段落先頭を「」以外は字下げしてくれる機能があるので、それを使うと可読性があがって、更に読みやすくなると思います。
お話もスピンオフだったりするのかな?と思いながらも単独の話として成立していて、ルースや本庄さんの魅力がしっかり伝わってきました。
緊張感のある戦闘シーン、そして冒頭のシーンに繋がる最終話、最後のハッピーエンドがめちゃくちゃ癒やされました。
自分の翼で空は飛べなくても……後部座席がある……。
カクヨムには一作しかないのが残念です。羽根っ娘ちゃんのお話、もっと読みたいなと思いました。
また次の作品もお待ちしています!
謎のアンデッド
羽根っ子!?こんなところにも!?
マンマシンインターフェイスとして機能するシステムを埋め込んだ複座式戦闘機による防空戦。
人間の操縦以上の性能と引き換えに、機械に侵食されるシステム。
かっこいいなあ。やるべきタスクを全て終えてコントロールを返し、浸食されきる。
ピリオドとしてはこうなるよな、っていう感じの展開が王道って感じです。
余韻を残したエンディングがいい。良かった。羽根っ子に酷いことをする人ばかりじゃないんだ。
面白いっす。
謎の神
カテゴリ的には空戦のお話になるでしょうか。ぼくはあまりこういったジャンルに詳しくないのですが、とても楽しめるお話でした。戦闘時の緊張感と、ルースの華麗な戦闘描写に目を惹かれます。
最後の展開は、ナノマシンに全身が侵されても脳と心臓を置換することで対応できるんだな~という風に解釈したんですが、合ってるかちょっと自信がない……。
ハピエン厨としては彼女が生きててくれてめっちゃ嬉しかったです。この二人の仲の良さが、ずっと続いてほしいなと思えるいいお話でした。
106 そらフられるわ/椎名ロビン
謎の有袋類
23:59!すかいさんの作品です。
これ、単独の話としてももちろん成り立ってるんですが、僕は前回の傷痕を残したで賞なので覚えています。
今日子先生、大丈夫? 胃壁に穴空かない????
軽快なツッコミを出来る今日子先生と、前回の壁になりたいガールに並ぶトンチキなやべー女である空音さん。
実質バカ専用プレゼントボックスってめちゃくちゃ好きで、夜中に声を出して笑ってしまいました。
マトリョーシカ状態の全部の箱をぶち破ったボーリングの玉、そして綺麗な夜空……結果がタイトルでわかっているけれど、どんなことをやらかすのかめちゃくちゃ楽しく読めました。
今日子先生シリーズ好きなので、また読みたいなと思います。
謎のアンデッド
すごい。最後までガーって呼んでタイトル読んで「ああ……(察し」ってなる構成、そしてガンガン読ませる序盤からの怒涛の展開。怒涛の展開……というか主人公偉いよ、よくこんなのの友達やってんな……ってしみじみさせられる。
それくらいキャラの生き生き感が半端なく、同時にどうしようもないときはどうしようもないムーブをする友人の女の人も生き生きしていますノープランな生き物なだけで。
ノープランだけども。
すごい勢いの怒涛のラッシュを喰らい最後の最後でちゃんとお題を回収してタイトルについて考えるとオチはいつもそこにある。
計算力がすごい。
謎の神
ツッコミやボケのセンスが光っている作品だなと思いました。特に「まだ捕まってもいなければ有罪判決が~」のくだりが好きです。
ただ、ボケ、ツッコミ、心情描写までを毎回一セットで丁寧に描いているので、テンポが単調ぎみになっているのが、強いて言えば気になったところでしょうか。
最後まで読み終えた時は「あの流れから、いい雰囲気で締めくくった……!?」と驚かされましたが、キャッチコピーに結末がしっかり書いているのに気が付いて思わず笑ってしまいました。
とてもいい気持ちで笑わせてくれる、賑やかなお話でした。
◆大賞選考
謎の有袋類(以下有袋類):前回の第一回こむら川小説大賞と同じく大賞選考評議員三名がそれぞれ大賞に推す作品を三つ選んでもらって、意見が割れた場合は合議で各賞を決めていきたいと思います。
僕の推しは「ぬばたまの瞳、ぬばたまの心、ぬばたまの空蝉」「やがて空より帰る」「逆スイッチ」です。
謎のアンデッド(以下ゾ):大賞のワイのチョイスはこれや
ドラゴンカーのシー太
テセウスの君、空っぽの空
ナインリッヒーズの祝福
謎の神(以下神): 天使の妹である私がオギャっと生まれる少し前から今日までの話。と見せかけて大体お姉ちゃんの話、糸の震え、やがて空より帰る
有袋類:割れた
ゾ:結構割れましたね
有袋類:「やがて空より帰る」が二票入っているので賞で良いでしょうか?
神:いいと思います!
ゾ:いいと思う。
有袋類:ありがとうございます。第三回こむら川小説大賞、大賞はいぬきつねこさんの「やがて空より帰る」です。おめでとうございまーーーす!
神:おめでとうございます!
ゾ:おめでとうございまーす。
有袋類:では、金賞、銀賞を決めていきたいのですが……割れましたね……
神:どうしましょうね……びっくりするほど被ってない!
ゾ:正直趣味の範囲の違いが出てる感じですからね。
有袋類:主催者権限で、過去に川で賞を取ったことがある人は弾きましょう(テセウスと、糸の震え)ごめんね神さん……(僕もテセウス入れるか迷った)
神:ぼく実は賞取ったこと無いんですよ
有袋類:人を喰らう箱で取ってませんでしたっけ?
ゾ:喰らう箱と死なない少女?
神:あれ、ちょっと確認してきます!
有袋類:入ってなかった!ごめん!
神:第二回こむら川に応募したやつだったんですが、入ってなかったですね! ということは…!?(ということはではない)
有袋類:てっきり冠持ちだとばかり……
神:余は無冠の神……
ゾ:え?じゃあ候補内ということですね
有袋類:です!では、改めて「糸の震え」を抜いたもので投票してみましょうか?
神:やったぜワンチャン残った!!!
有袋類:ナインリッヒーズ、テセウス、シー太、ぬばたま、逆スイッチ、天使の妹から一つ選ぶでどうでしょうか?
ゾ:了解です。悩ましいな、これ
有袋類:賞、運みたいなものですからね。えいっといってしまいましょう!
神:ぼくがさすがに自作推すのもアレなので、その中だと天使の妹、シー太を推しですね
ゾ:金……テセウスで。
有袋類:僕は逆スイッチです!
ゾ:割れすぎて草
神:金……天使の妹!
有袋類:テセウス、僕も好きなんですよね……。
有袋類:テセウス金賞で!(主催者権限)
ゾ:テセウスで金賞を取られた方おめでとうございます!
神:ドォォォォォォォォォォォォッッッッ!!!!!!!!! おめでとうございます!
有袋類:おめでとうございまーーーす!
ゾ:まあ実際普遍的に通じるんですよね、テセウス。もももさんの面白いんですけどタイミングバフも強いので(普遍性を大事にしている死体
有袋類:銀賞を決めたいのですが、ちょっと今回はご新規さんが誰も受賞していないので、初参加の方から決めたいなと思うのですがどうでしょう?
神:初参加だとどなたが残っているんですっけ
有袋類:ぬばたま・逆スイッチ・ナインリッヒーズです!
ゾ:趣味で押すやつですねこの三択
有袋類:趣味でいきましょう!
神:うーん……甲乙つけ難いですが、ぬばたまで!
有袋類:ぬばたま!
ゾ:了解です。んー、僕は初期の推しを行きます。ナインリッヒーズで。
有袋類:では、銀賞は鈴元さんの「ぬばたまの瞳、ぬばたまの心、ぬばたまの空蝉」です!おめでとうございます
神:おめでとうございます!
ゾ:おめでとうございます!
有袋類:ナインリッヒーズもめちゃくちゃ好きですし、なんと初めての小説!とのことなので特別賞でナインリッヒーズということでどうでしょう?
神:新しいですね! いいんじゃないでしょうか
ゾ:ナインリッヒーズが初作品っていうのがホラー要素じゃないか……ホラーが流行しているのか……?(
賛成でーす
神:あれが初作品ってマジで凄いですよ(驚嘆)
有袋類:では
金賞 テセウスの君、空っぽの空/神崎 ひなたさん
銀賞 ぬばたまの瞳、ぬばたまの心、ぬばたまの空蝉/鈴元さん
特別賞 ナインリッヒーズの祝福/きなこさんに決定でーす!
ゾ:いいぞいいぞー、おめでとうございます!!!!
有袋類:初作品から強いの恐怖ですよ
神:おめでとうございます!!!!
ゾ:たまにいらっしゃいますよね。初参加から強い謎生物
有袋類:では、個人の五億点賞にいきましょう!
ゾ:これを一本選ぶのに俺はお昼時間全部使った
有袋類:早い物勝ちなので、被ったら第二候補にしましょう!
神:ぼくも大賞候補だけで7作あったのでめっちゃ選ぶの大変でした
有袋類:せーの
神:天使の妹である私がオギャっと生まれる少し前から今日までの話。と見せかけて大体お姉ちゃんの話
有袋類:ドラゴンカーのシー太
ゾ:宝石の春、歌う鯨
有袋類:被らなかったー!
ゾ:全部強いやつだ
有袋類:それぞれ五億点賞のみなさん、おめでとうございまーーーす!
神:おめでとうございます!
ゾ:おめでとうございます五億点の皆さん。
そしてみんなも自分の五億点を見つけよう。
有袋類:シー太と逆スイッチ、最後まで悩んだんですよね(僕の中のトラック枠)
神:シー太よかったですね。風景がすごく上手に綺麗に描かれてて…
ゾ:逆スイッチはびっくりするほど完成されていましたね。式の発動条件も大体書いてあるんだと思います、アレ
有袋類:ホットトピックの使い方うまかったですねシー太……モルカー……
ゾ:シー太、様々な要素の掛け合いとど真ん中を走るストーリーがしっかりしててスゲエ好き。
神:先生がワオカーでやってくるときの「WA~O~WA~O~!」がズルすぎるんですよ(めっちゃ笑った)
ゾ:そんなキャラのつけ方ある?ってなるよね、あれw
神:キャラの個性がいい意味で強くてすきw
有袋類:逆スイッチもなんですけど、今回ホラーがめっちゃ強かったです。ナツメさん「シュレディンガーの消えた猫」も「乗客」「天空の眼」「そらわたり」も全部良かった
神:乗客と天空の眼の作者さんは今回が初ですよね。すげぇ上手かった……
ゾ:基本的に空で連想される物のばらけ方凄いなと思いましたね
有袋類:鍋島さんの「糸の震え」なんですが「空」がバチッと決まってて、お題の捻り具合とまとまり具合だと頭一つ抜けてましたね……
神:糸の震えは、凄かったです。圧倒された。マジで頭一つ抜けてると思います
ゾ:あれ読んでるうちにマジで取り込まれた感じになるのすごいですよね
有袋類:鍋島さんにはですね……やはりゴリラを大暴れさせた上で五億点を取って欲しいという歪んだ愛情があってですね……
神:砂場遊びをしていたら46㎝砲が降ってくるようなもんです。トラックというよりもはや戦艦
神:やはりゴリラの枷をかけるしかないのか……!
有袋類:謎のアンデッドさんが選んだ「宝石の春、歌う鯨」もめちゃくちゃ好きです。流石第八回本山川小説大賞の覇者……
ゾ:あー、そういう経歴が。私特定の二つの川にしかいないから知らんかった。
神:すごかったです。糸の震えと同じくらい衝撃的でしたね……
有袋類:ぬるっと空の色が変わって見えるって設定を差し込んでくるのすごかったです
ゾ:テレキャス持ってる奴は大体ワガママなんだ俺は詳しい(テレキャス持ち
神:ぼくがバンドやってたりロキノンという空気にもっと詳しかったらもっとさらに刺さったと思うんですよ…(専門用語がちょっと分からなかった)
有袋類:天才はギタリストなんですよ……ギタリストをドラムかベースが支えていると最高……うう……
ゾ:テレキャスボーカルなんて好きなことしかしないから(
有袋類:妹さんの妹小説もよかったですね。天使のお姉ちゃん……
神:ぼくは天使の妹でガチ泣きしました……ぼくの中では優勝なんですよ
ゾ:あのリズム感は何なんですか天使のお姉ちゃん。
有袋類:妹さん、毎回名前の通り妹小説をぶっこんでくださるんですが、好きのパワーが強くてすごかったですね……
神:選考の時も常にガン推しするしかなかった……すごく良かったです。
有袋類:深夜の疲れた脳に天使のお姉ちゃんの優しさが沁みましたね
神:講評にも書いたけど年齢を経るにつれて描写のスピード上がっていくのがすごく「光陰矢の如し」を感じさせるんですよ……すごく染みました
神:体感の時間が短くなっている、というか
ゾ:ホラーというか因習というかでいうと、よそもんとそらわたりの印象も強いですね僕は
神:そらわたり、めっちゃ好きでしたね……よそもんも怖かった
有袋類:よそもん、やはり副乳の獣人が最高でした。効果的な主催者特攻ですよ
神:熟知している職人の技だ…(複乳特攻)
有袋類:そらわたりよかった……。絶望の中にある小さな希望とやるせなさ……
神:そらわたり、おばあちゃんの一人称の使い方が上手いことうまいこと……すごく惹かれました
有袋類:今回、感染症物と、サイバーパンクものが多くてテセウスももちろんなんですが「アタック・オン・ザ・ドラグーン」と「証明の匙」と「エンプティ・ヒーロー」が特によかったです
ゾ:時流の物がやはり印象としては脳に食い込んできますね
神:ドラグーンはハードボイルドさが、証明の匙は終末観が、エンプティヒーローはエンタメっぷりが強くてどれも好きでした!
ゾ:サイバーパンク+感染症だと……しぃるくんのアナザースカイが個人的に強いっす。
神:しぃるニキはやっぱ安定して上手ですね……希望ある未来の感じさせ方が素敵…!
ゾ:理解の範囲の中に要素を納めこんでいるの、やはり巧みな男よ……
有袋類:めちゃくちゃ読みやすかったですし、流石プロ……というまとまり方ですごかったです
有袋類:初参加の人の中だと、リターントゥスカイ好きでした。経済小説すごいおもしろかったです。
ゾ:リターントゥスカイ良かったですね。難解な言葉を平易に読み解かせてくれる。
神:専門用語にちゃんと解説を入れてくれるのですごく勉強になった
有袋類:えびフライと桃色の空も良い百合で好きでした(百合もBLも得意ではないのですが百合の方が好みの場合が多い)
神:それも初めての方だ。ちょっとびっくりするくらい上手でしたよね……
有袋類:みなさん、本当にどこに潜んでいたんですかね……
神:文章の詠ませ方がすごいんですよ……めっちゃなめらかで読み心地がすごく良い……。
神:ほんとですよ(毎回トラックが数台来る)
ゾ:なんか読んでて思ったんですけど上手いな、と思う人は誰が大賞でもおかしくないし、そういう人が初めてだったりするの超怖いですね
有袋類:彼の新曲も僕は特攻でした。バンドマン……バンドマンでバーテンダー……うう
神:初めての方でいうと「彼の新曲」もすごくよかった
有袋類:被ったw
ゾ:かぶったw
神:wwww いやでもこの方もちょっとビビるくらい文章がすごいんですよ!! 空ってテーマの使い方もめっちゃ上手かった!
有袋類:ナゴヤ座関連の相互さんなのですが、参加してくれてめちゃくちゃうれしいですね(ナゴヤ座をサブリミナル的に宣伝する心構え)
ゾ:いったい何アメさんなんだ……そしてナゴヤ座……?なんだろうその西区にありそうな響きは……(
神:最後まで大賞に推そうか悩んだ作品のひとつなんですよね。すごく良かった…
ゾ:彼の新曲、音楽フォロワーとしての解像度が超高くてなんぞ?ってなりますよね
有袋類:あのフェードアウトして、ラジオから聞こえてきた歌声で気が付くで「ううう」ってなりました
ゾ:音楽ファンの視点と、彼のファンの視点の双方が成り立ってるのすごかったですよね、アレ
神:それですよ、心情描写が匠の域
有袋類:過去のなんらかを思い出して胃が痛くなりました
ゾ:フィクションじゃないっすか(目を逸らす
有袋類:(ブーメランを取り出して首に当てる有袋類)
有袋類:今回も、一定数、俗に言う「ペガサス」はあったのですが「生まれちまった悲しみに」と「冷たい雨と花つぼみ」好きでした!
神:ラーさんとFIGさんだ。どっちも小説上手人なんですよね。今回もめっちゃ面白かった……!
有袋類:生まれちまった悲しみに、最初男が女を騙して雪に埋まるのを眺めるエンドかと思ったら、普通にいい人でめちゃくちゃ驚きました。救いがある終わりよかったです……
有袋類:お二人とも、こむら川でははじめましてだったのですが、露悪的すぎなかったですし、俗に言う「意外性のある結末!」もせずに丁寧に出来事を積み重ねているのがすごくよかったです
ゾ:あ、すごい個人的な驚きでしたが羽根っ娘が殴り込んできて驚いてました(
有袋類:羽根っ娘よかったです!!!
神:羽っ娘、すごく良かったですね。あの終わり方が良い!!!!!!(ハピエン厨大歓喜)
有袋類:羽根っ娘……無惨な最後かな……と思っていたけど違った。よかった……
ゾ:すいません羽根っ娘なので悲惨エンドに対して構えてて超ほっとしました
有袋類:「不死身の烏は夕陽とともに」よかったです。また羽根っ娘を布教しにきて欲しい……
ゾ:めっちゃありでしたね。あと空中要塞ユグドラシルの天に聳え立つ存在が地に足つけて落とされる展開が好きでした。
ゾ:というか皆さん上手い。
神:常連さんは上手人がやたらと多い……
有袋類:僕、ユグドラシルは長編にしてもらってじっくり読みたいなと思いました。あとヒロマルさんの機人の空も!長編にして続きを読ませてくれーーーー
ゾ:僕も続きが読みたいのが???あるんですけど?????
有袋類:ひ!
神:わろてしまったww
有袋類:がんばります……!
ゾ:よろしくお願いします。
有袋類:僕だけではなく!中編長編チャレンジもして欲しい人はたくさんいるので、合間を縫って長いのを書いてみて欲しいなと思います!
ゾ:みんな書いたらええねん終わらせられる範囲の中長編(読者の視点
有袋類:謎の神さんも、一緒に10万字がんばろうね♡
神:ヒッ!
有袋類:人外の部だと、「深海の夜空に星五つ」と「空鳴き姫と白の守護者」もよかったですね。
神:川の最終便とすみれさんだ! やっぱお二人とも安定して上手なんですよね…!
有袋類:最初からうまいみなさんもいるのですが、ここで名前や作品があがらなかったみなさんも完結させただけで5億点ですし、すごく面白かったです。
神:大賞レベルの作品もいっぱいありましたね……(ぼくは大賞候補だけで7作あった)(これでも絞った)
有袋類:やはり続けていくと上手くなる人もいるので、こむら川を参考にしなくても、どこからかのフィードバックを受けて、いい感じに続けてどんどん完結作品を増やしていって欲しいですね。神ひなさんとかは毎回名指しで言うんですけど、マジでたくさん読んでたくさん書くと強くなるお手本みたいな感じですから……
ゾ:読書の本質は貴方自身を映す鏡だ……なのでこの中にあなたの五億点もきっとある。
そしてなかったら貴方が五億点になるんだよ……!
有袋類:別に正しい意見を喰らえーーーーというわけではないので、3つある中から好きな講評を参考にして強くなって欲しいですし「お前のアドバイスを聞かなくても面白いのを書いたぜ」で連続参加してくれてもいいですしね
神:好奇心の迸るがままにレッツ短編!!
有袋類:いい感じにまとまった
ゾ:ここは新宿ではないのでお前が締めろコールとかはしない、俺はいいゾンビだから……。
有袋類:治安がw
有袋類:闇の評議員のお二方もありがとうございました!一ヶ月で106作の講評という荒行……(そのうち半分はラスト一週間で来た)
神:122作やった3か月後にこんな目に遭うとは……でもとっても楽しかったです!!
有袋類:では!ラストに告知がある方はどうぞ!
ゾ:また何処かの川で……お会いしましょう……(特定川に沈み消える
有袋類:カブキカフェナゴヤ座という演劇をしている方がいて、そこで歌舞伎の鳴神を元にした演目をしています!
90分で終わる龍神×少年の作品なので是非!
→THE NARUKANMI
ゾ:ぶれないなwww
神:5分で読書! キミは絶対に騙される カドカワ読書タイムさんより絶賛発売中!! よろしくお願いします!!!!!
ゾ:よろしくお願いします!
ゾ:告知事項あるの凄くないですか?弊社の新製品とか?(身バレの危機
有袋類:新料理???
神:一体何屋さんなんだ……
ゾ:豚の角煮を作ってその後から半熟卵を作るでしょ?
その半熟卵を半分に切って、角煮のたれ、わさび、ウニを乗せて一口で食う。
有袋類:飯テロだ!
有袋類:ではでは!第四回もやれたらいいですね。みなさんお疲れ様でした&ありがとうございましたーーー!
ゾ:お疲れ様でしたー、面白い作品いっぱいありますので君だけの五億点探してくださいねー
神:お疲れ様でしたーーー!!! また企画でお会いしましょう!!
◆お知らせ
作品にファンアートを描きたい!や、個人的にこれに賞を贈ってイラストを付けたいなどがありましたら謎の有袋類のTwitterへリプかDMなどをください。
こちらの結果発表ページにて紹介させていただきます。よろしくおねがいします。