映画返校を観る
台湾映画『返校 言葉が消えた日』(徐漢強監督、2019)をみなみ会館で観た。
同名のホラーゲームが原作。
2・28事件後の1960年代、白色テロ時代の台湾を舞台にしたダークミステリ。意外にホラー色が強いが、あまりに困難な時代における青春と自由の一閃を鮮烈に描いた。切なくやりきれない。普遍性あるフィクション。
ゲームの方は視覚よりも精神的な恐怖と民俗色が濃いようだ。やってみようかな。
ラストに流れる主題歌「光明之日」は鎮魂詩の趣きがある。
本の中にあなたの名前はない。だけどあなたのことを忘れられない。物語のはずれで密やかな足音がする。廊下の果てに世界が壊れてゆく。手の中にある自由はこんなにも軽やか。それを残してあなたは林へ行く。
主題歌
https://www.youtube.com/watch?v=FrfWNfVgYCE
日本語MV
https://www.youtube.com/watch?v=UntJLcSGV9M
劇中ではタゴール『迷い鳥たち』とともに、厨川白村『苦悶の象徴』改造社1924が秘密裏に生徒たちが書き写す本として登場している。
厨川白村の著作は『近代の恋愛観』改造社1922など日本以上に広く長く読まれていたようだ。
『苦悶の象徴』国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/981650
工藤貴正『中国語圏における厨川白村現象 隆盛・衰退・回帰と継続』思文閣2010
https://shibunkaku.co.jp/publishing/list/9784784214952/
劇場版パンフレットでは1980~90年代の台湾ニューシネマ、『非情城市』『牯嶺街[クーリンチェ]少年殺人事件』に続く同作の位置づけがよくわかる。稲垣貴俊「『返校』映画化の焦点と射程」他収録
2019年度金馬奨各賞などを受賞したが、エンタメ作品に白色テロ時代を扱ったことに一部激しい批判も呼んだようだ。「作品自体もまた大きな責任を引き受けている」(稲垣)
映画HP
https://henko-movie.com/index.html#story
監督インタビュー
https://wezz-y.com/archives/92534
日本植民地から戒厳令、民主化時代へ 台湾の人気映画が物語る台湾社会と台湾人の変遷 赤松美和子https://newsweekjapan.jp/stories/culture/2021/10/post-97223.php
2019年度金馬獎主題歌賞
https://youtube.com/watch?v=xfzeHZI94nk&t=270s
ゲーム(Steam他でダウンロード・日本語対応)
https://store.steampowered.com/app/555220/Detention/
ゲーム評(電撃オンライン)
https://dengekionline.com/elem/000/001/619/1619266/
李則攸・巫尚益/七海有紀訳『返校 影集小説』角川ホラー文庫2021(30年後が舞台のサイドストーリー)
https://kadokawa.co.jp/product/322102000149/
Netflixオリジナルドラマ2020
https://www.netflix.com/title/81329144
劇場版上映劇場
https://henko-movie.com/theater.html
https://henko-movie.com/index.html#story
関西ではみなみ会館で上映中。塚口サンサン劇場で11月12日から上映。