京都新聞「京都駅八条口が「オタクの聖地」に変身中 かつての「裏口」エリアにアニメ・漫画の店が続々開業」に寄せて
京都駅周辺の変化(京都新聞記事に寄せて)
「京都駅八条口が「オタクの聖地」に変身中」24/08/02
京都駅八条口が「オタクの聖地」に変身中 かつての「裏口」エリアにアニメ・漫画の店が続々開業|社会|地域のニュース|京都新聞 (kyoto-np.co.jp)
『京都新聞』(芝田佳浩記者)で京都駅八条口のサブカルスポット化についてお話しています。後日紙面でも掲載予定です。
記事では
>今年4月に掲載した本紙記事「アバンティ開業40年『サブカルの聖地』に」を読んだ読者から、「京都駅八条口周辺には近年、他にもサブカル系の店が集まって面白くなってきている。ぜひもっと取材してほしい」との声が、京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に寄せられた。(略)
投稿者は、立命館大学人文科学研究所で近現代の文学を研究する傍ら、文学部でアニメや漫画などをテーマにした講義を受け持つ講師の島田龍さん。
と始まり、私の話を導入にしてもらいながら京都駅周辺の店舗・施設関係者のコメントなどが紹介、最後に再び私(島田)のコメントで締められています。
デジタル版は会員限定記事のようなので全文引用はできませんが、内容に沿いつつ、以下、もう少し詳しく私のコメントを述べたいと思います。
【1・はじめに】
5月の連休中に京都駅南にある京都市立南図書館に本を借りに行きました、そのついでに、アバンティにあるアニメイトや新古書店であるコミックショックを覗き、新規開業したばかりの鴨葱書店や同じく開業したばかりのブックホテル京都九条を見に行きました。ぜんぶ普通に歩ける距離にあることに感心しました。近年、京都駅では徒歩圏内に本にまつわるお店、漫画アニメなどのサブカル系のお店がどんどん増えているなあという印象を抱きながら帰途につきました。
同じ頃、購読している京都新聞で「京都駅前商業施設が「サブカル聖地」へ アニメ・漫画売場拡張で「オンリーワンに」24/5/8(高野英明記者)https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1235765
という記事を読みました。
そこで私はTwitterで次のように書きました。
「大きな店が一つ生き残るより、複数の店を一つのビルや地区に集中させた方が活気に繫がる。京都駅南は他にも新規開業の鴨葱書店、ブックホテル、南図書館(映画『HELLO WORLD』聖地)、遠藤書店(立飲酒場)、コミックショック、大垣書店、ふたば書房と魅力的なエリアになってきた…取材して欲しいぞ」
https://x.com/donadona958/status/1788404402547728845
その後、改めて京都新聞さんに取材リクエストをし、実現して頂きました。
学生時代から京都で暮らしてきて、四条河原町エリア周辺で書店やサブカル系のショップが近年どんどん減少しているのとは対照的だと実感しています。漫画を買う際に各店舗の特典が付くこともあり、以前は京都のいろんな店を回って買っていましたが、最近は通販を利用することも増えました。
【2・全国の主なスポット】
ただ、書店もサブカル系ショップも大きな店がぽつんと一つあるのではなく、様々な特徴を持った店がぎゅっと一つのビルや一つのエリアに固まっている方が人が集まるし、活気が生まれます。これは全国でもそうですね。有名どころだと以下のようなスポットが挙げられます。
★札幌の丸大ビル
シリーズ色んな街の電気街・オタク街 札幌市(北海道) ②オタク街編 (daily-gadget.net)
★東京(秋葉原)のラジオ会館
ショップリスト | 秋葉原ラジオ会館 (akihabara-radiokaikan.co.jp)
★東京(中野)の中野ブロードウェイ
中野ブロードウェイ公式サイト (nakano-broadway.com)
★東京(池袋)の乙女ロード
乙女ロード|IKE-CIRCLE (toshima.lg.jp)
★大阪(日本橋)
アニメイトが10年ほど前に移転したビルの中にメロンブックスなど同業種の店舗が集中出店
アニメイト、日本橋店をオタロードに移転 「アニメイトビル」誕生へ │ NIPPON-BASHI SHOP HEADLINE
★北九州のあるあるCity
あるあるCity (aruarucity.com)
あるあるCity - Wikipedia
北九州は、もともと空室が目立っていたビルに北九州市漫画ミュージアムを中心としたサブカル系の店舗を招致するよう市が協力して動いたと伺いました。今は大変な賑わいです。
【3・京都では‥四条河原町界隈の相次ぐ閉店】
京都にも東京秋葉原、大阪日本橋とは規模は違うとはいえ、電機街だった寺町通を中心にサブカルショップがたくさんありましたが、多くがこの数年で閉店してしまいました。
私はゲームやトレーディングカード、コスプレ系のショップなどは疎いので、漫画・アニメ系だけでいえば、主な閉店・撤退だけでも以下のようになります。
・ゲーマーズ(寺町、2019年1月)
・喜久屋書店漫画館(寺町、2019年2月)
・アニメイトカフェショップ(寺町、2019年2月)
・恵文社バンビオ店(長岡京、2019年2月)
・アニメガ文教堂(大丸隣、2019年5月)
・アニメショップさくらさく(新京極、2019年7月)
・とらのあな(寺町、2020年8月)
・アニメガ×ソフマップ 京都 イオンモールKYOTO店(京都駅、2022年7月)
新型コロナが日本に影響したのは2020年1月以降ですから、それ以前からの傾向といえます。
現在、界隈にはメロンブックス、らしんばん、アニメイトなどが残っていてたまに訪れますが、やはり寂しさはぬぐえません。
他にも、エディオン寺町店(2021年2月)の閉店に代表される電器街としての寺町の衰退であるとか、
京都の電気街「寺町」、最後の大型家電店が閉店 バブル期の賑わいは今や昔|まいどなニュース (maidonanews.jp)
寺町を含む河原町・四条エリアにおける一般書店、古書店の撤退、閉店がありました。
とはいえ、ごく近年は北区にあった大垣書店本店が四条室町に進出したり、まんだらけなどの多くの店舗が四条の高島屋に出店したりと盛り返しつつあることも見逃せません。とはいえ、全体的には河原町周辺はサブカル的には寂しくなっていると思います。
それぞれのお店の客層と品ぞろえ(全年齢向け、男性向け、女性向け、同人誌、ゲーム、グッズなど)、フェアなどいろんな店が集まってこそお互いが高めあって活気が生まれます。
四条河原町界隈の書店が相次ぎ閉店した時期がそうですじ、周辺の同業店舗がなくなり一店舗だけ生き残っても、その店舗の収益にそのままは反映しません。結局、ジリ貧になっていきます。これは雑誌もそうですよね。
【4・京都駅八条口周辺の変化】
サブカル系でいうと、
・京都駅八条口構内に京アニグッズストアがあります。期間限定の今年2月に閉店予定でしたが、要望もあって8月末まで期間延長しています。大学の講義や自分の研究で京アニ作品を扱うこともあるので、個人的にはもっと延長してほしいです。
・アバンティにあるアニメイトの拡充。アニメイトは新京極と京都駅の二面展開をしています。それぞれに客層の狙いがあるのでしょう。
京都新聞の記事では、アバンティ店は京都駅を利用する旅行客や通勤・通学客、新京極は観光客、近隣客をメインターゲットにしているというアニメイトのコメントが紹介されています。
また同記事では他に「同階には中古アニメグッズ店やカードゲーム専門店もあるほか、1階には人気アニメ「刀剣乱舞」の公式ショップが入る。」と指摘しています。
・寺町から撤退したゲーマーズが数年後、アバンティに出店。コミックの販売メインではありませんが、受け取りはできるはずです。
・イオンモールKYOTOにも、いくつかのキャラクターショップなどが入っています。記事では「人気ロボットアニメ「機動戦士ガンダム」シリーズの専門店「ガンダムベース」など、キャラクターグッズやフィギュアの店が複数入居する。」と補足説明。
サブカル系ではないながら、書店レベルでは
・鴨葱書店のオープン
鴨葱書店|京都・東九条 - (kamonegi-bookstore.com)
目利きによるセレクトショップですね。色んなイベントも開催されています。詩歌系も多く、たぶん、私の関わった本も置いてくれていたと思います。私はここで嶽本野ばらさんやファッション系の本を買いました。
・大垣書店が複数あります。圧倒的な品ぞろえのイオンモールKYOTO店、コミックに注力するヨドバシカメラ店、詩歌・小説など独自の品ぞろえが目立つルタ店とそれぞれに特徴があります。
他にふたば書房(八条口)、くまざわ書店ポルタ店など、面白いブックエリアに一気になってきたなと思っています。
他に古書店としては
・遠藤書店‥京都市南図書館の向かいにある夜は立ち飲みの店になります。
・コミックショック!八条口店‥京都滋賀でみかける新古書店のチェーン店ですね、掘り出し物がけっこうあるので重宝しています。
京都新聞の記事でもサブカル系のお店が増えることの相乗効果を実感しているとの店舗責任者江崎さんのコメントが紹介されています。
その他、
・京都市の南図書館‥アニメーション映画『HELLO WORLD』の聖地でもある。小さな図書館ですが、私は市の各区の図書館にある本をここで受け取ることが多いです。立地的にかなり便利なんですよね。
南図書館 - 京都市図書館 (kyotocitylib.jp)
・ブックホテル京都九条‥こういうホテルは全国増えてますよね。札幌で利用しとても満足しました。
BOOK HOTEL 京都九条|本を読むために泊まるホテル (bookhotelkyotokujo.com)
などがあります。
もちろん京都駅界隈もかつては近鉄百貨店の旭屋書店、そしてつい最近のアバンティブックセンターの閉店などなど本好きには厳しい状況にあったわけです。ブックセンターのみならず、近年のアバンティ内のショップの再編成という側面も見逃せず、明るい話題だけではありませんでしたが(そのあたりは限られた紙面では十分反映はできませんでしたが)、京都駅エリア総体としては上記の傾向が見られるといってよいでしょう。
【5・京都駅周辺という場所】
従来、京都駅周辺は京都の人間にとっては商業、文化の中心ではなく、あくまで電車やバスなどの交通ターミナル上の拠点という位置づけでした。観光客にとっては新幹線の駅がある京都市内への玄関口です。それは都への正門である羅城門(羅生門)があった平安時代と共通しています。いわば、京都のボーダー(境界)という機能を持っていたわけです。
そういう京都駅周辺が、寺町を含む四条河原町界隈がかつて持っていたサブカル系、または本の街としての顔を獲得してきているのが興味深いです。加えて河原町エリアとは異なる独自の可能性があるように思っています。
もともと周辺は東九条のコリアン文化の町ですし、京都芸大やアトリエなど若者たちのアートカルチャーの顔もありますし、京都劇場もありますね。京都駅界隈にそういった諸々が共存すると、全国でもなかなかない面白いエリアになるのではないかと期待しています。個人的には文学館なども新設されたらうれしいなと思っています。
規模は全然違いますが、例えば、サブカルの街であり、チャイナタウンであり、本屋が集まり、劇場もあり、アートカルチャーの街でもある東京の池袋のようなユニークな感じといえるでしょうか。
【東京・豊島区】文化と芸術マニアがたまらない街~池袋|さがつくマガジン (sagatsuku.com)
京都在住の不動産プランナーで『もし京都が東京だったらマップ』の著者でもある岸本千佳さんが、
京都駅を東京駅ではなく品川駅に例えていますが、同時に京都最後の未開拓地として京都駅を評価しています。
京都駅は京都最後の未開拓地|岸本千佳 (note.com)
『もし京都が東京だったらマップ』では、京都と東京のそれぞれ似たエリアを整理しています(四条大宮/赤羽など)。そのなかで京都にあって東京にないのが鴨川のようなエリア、東京にあって京都にないのが池袋のようなエリアとおっしゃっていて、その通りだと思います。
池袋の真似をしろというつもりはありません。いずれにせよ、京都駅界隈が京都の人間にとっても観光客にとっても大変魅力的なエリアになることを願っています。