見出し画像

フィンランドサウナに入ってバルト海に飛び込んだ話


これは去年私が、人生で一番記憶に残るサウナを体験した話である。

私はサウナーと呼べるほどではないが、人並みにサウナが好きである。
だから、ロンドンに来てからサウナで整うことはおろか、湯船にも浸かれないことにストレスを感じていた。そこで、フィンランドに初めて行くからには、絶対にサウナに入りたいと意気込んでいた。

実は、一度、イギリスのホテルのプールに付いているサウナに行ったことがある。しかし、感じたことはこうである。

「これじゃ整わないんじゃああーーーー!!!!!怒」

というのも、イギリス人的にサウナというのはスパの一環の認識なのか、サウナの温度は低いし、サウナ後の水風呂が無いのである…涙
あるとしても、ぬるいプールか、水をためたバケツ装置をひっくり返して水浴びするだけ。そんな甘っちょろいものじゃもちろん、サウナの整いを感じられない。

そこで去年、日本から来た母と一緒にフィンランドを旅行した際には、ヘルシンキにあるサウナをリサーチするに飽き足らず、サウナ付きのホテルを探して予約をした。さすがサウナの本場フィンランド、サウナ付きのホテルは容易に見つかるし、他のホテルとそんなに値段が変わらない。

ヘルシンキの港

まずはお手並み拝見(?)ということでサウナのホテルを楽しみに行ったのだが、なんとこのホテル、サウナ以前に内装がフィンランドのデザイナーの家具や照明が使われていてとにかく素敵なのである。

フィンランドの有名家具Artek の椅子や、
Harri Koskinenのブロックランプが使われていたり、

電球が中に入っているブロックランプ

デザインを勉強しているものとしては見逃せない素晴らしいインテリアデザインだった。

そしてサウナに入ることを考慮された、やわらかなタオル地のバスローブとスリッパが用意されており、それを持っていざホテルのサウナに向かった。

ベッドの上に置かれているタオル地のバスローブ

ホテルのサウナは、バスローブをかけられる更衣室と、人が最大4〜5名くらい入れるサイズの小さなサウナだけだった。

しかし、さすがフィンランド。イギリスのぬるいサウナとは違って、自分でサウナストーンに水をかけて温度を上げられるロウリュウサウナ。
男女共用のため一応水着を着ていったが、幸いなことに誰も使っておらず貸切状態。たまにストーンに水をかけてサウナ内の温度を上げつつ、母と2人で交互に更衣室のベンチで何度か整ったのち部屋へ戻った。この時点ですでにフィンランド来て良かった…と思った。

このシャワースペースの奥がサウナ

そして翌日、ネットで調べて気になっていたサウナ施設に向かった。

移動は路面電車

バルト海に面するこの施設の名は「Löyly(ロウリュウ)」。まさにフィンランドサウナを代表するような名前だ。

イギリスとは異なり、木造建築の多いフィンランドらしい建築でありながらも、新しい施設のためか内装も外装もお洒落だった。

おそらく日本の方らしき人も何人か見た。勝手に仲間意識を感じる私。

利用の流れとしては以下である。
①受付を済ませ、バスタオルなどを受け取る

②更衣室で水着に着替える

③シャワー室

④サウナがあるスペースへ

という感じだったと思う。ここで思ったのは、水着は事前に着てきた方が良かったなということ。更衣室は広くなく、混んでいたので、スペースに気を遣いながら着替えることになった。

いざサウナに向かうと、外につながったウッドデッキと、ミストサウナとスチームサウナの2種類のサウナがあった。サウナ室内では一緒に来た人と軽く喋る人もいるが、基本的には静かでみんなサウナをきちんと楽しみにきている。70代くらいのサウナーマダムは「ここはまだまだ温度低いわね」といった玄人トークをしていた。

日本のロウリュウだと、水をかけるタイミングをためらってしまうこともあるが、ここでは「水をかけようと思うけどいいかいー?」とお客さんがフレンドリーに声をかけてくれる。「Yes!」とノリノリの返答が他のお客さんからも返ってきて、なんともヨーロッパらしい気持ちの良いコミュニケーションである。

ぶわあーっと広がる蒸気と一気に上がる室温。
これこれ、私がまさに求めていたのはこれである。

そしていざ水風呂。と、ここで日本と大きな違いがある。シャワーはあるが、水風呂が無いのである。そして、目の前の海につながる階段…

そう、このバルト海に面したサウナは、水風呂ではなく、目の前の海に飛び込むのである。

それを知った時の母は、異国の海に飛び込むことを恐ろしく感じたようで、「えー!!本当に入るの?!大丈夫?」と止められた。しかし、せっかくサウナを楽しむためにフィンランドに来たといっても過言では無い私にとって、絶対にあの「整い」を感じたいのである。すでに先客サウナーたちは海に次々と飛び込んでおり、なんなら遠くまで泳ぎ始める強者もいた。

母の心配そうな視線をよそに、私も階段を降りていざ海に飛び込む。

………

最っっっっっっ高ーーーーーーーー!!!!!

一気に身体中の血管を引き締まっていく感覚。本当に気持ちいい。

まだ9月だったからか、冷たいイメージのバルト海だったが意外と優しいあたたかさがあった。水風呂と違って、手足を思いっきり伸ばせる海。ぷかぷかと浮かびながら、フィンランドの空を眺め、なんて贅沢な瞬間なんだろう、と気持ちよさを噛み締めた。怖がっていた母も、あまりに私が楽しそうにしてるので恐る恐る入り、最後はすっかり虜になっていた。

海から上がったあとは、外に置かれた木のベンチで「整い」を味わう。海から軽く吹いてくる風が気持ちいい。

ああ、フィンランドに来て良かった。

そして、感動はまだ終わらない。サウナに入って、小腹が空いた私たちは併設されているカフェ兼バーに行った。

テラス席は寒くて誰もいなかった

そこで味わったのがこちら。

フィンランド名物サーモンスープ。
一口飲んだ瞬間に、サウナで整った身体に染み渡っていく。
サーモンのうまみと、ほくほくしたジャガイモ、そしてディルという少し癖のあるハーブがいいアクセントになっている。

この最後のスープまで含めて、人生に一番記憶に残るサウナになった。
もし、サウナーの方でヘルシンキに旅行される方は参考になれば嬉しい。

もちろん、フィンランドはサウナだけではなく、世界一の図書館やデザインミュージアム、フェリー泊での移動、岩の協会、ムーミンミュージアムなど他に観光した場所も素晴らしかったので、また機会があれば別の記事にしようと思う。

フィンランドはイギリスと比べて治安も良いし、衛生面も綺麗(ちなみにウォシュレットもあった)なので、日本で育った人には旅行しやすい国だと思った。

ちなみに、私のパートナーが言うにはサウナ後に雪に飛び込むのも最高らしい。これまで行ったサウナは現代的なサウナだったので、次は本格的な本場サウナも行ってみたい。

ご覧いただきありがとうございました!