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花愛づる春


お花屋さんにミモザが並び始めました。ちょうどこの時期にレモンケーキも出回り始めるので、心の中は黄色一色。

ともあれ、私が花を愛でる感性を持てるようになったのは、おそらく私の心の避難所・大島弓子先生の漫画のおかげです。
『綿の国星』の冒頭のエピソードに、見開きいっぱいの春の花と、チビ猫のモノローグが描かれたページが出てくるのですが、読んだときの私の気持ちは、まさにチビ猫のそれと同じだったと思います。「なんとすごい/なんとすごい/季節でしょう」──

以来、私は雪柳が好きです。
こういう、自分にとって乙女心がときめくようなイメージなりエピソードが宿っている花には、特に偏愛アンテナが反応してしまいます。

たとえば、すみれなどはもう、乙女派の記号といえる花でしょう。すみれがあしらってあれば同志が自然に集まると思っているので、いつか私が乙女な文芸本を出せたなら、背表紙の下のほうにすみれのマークを入れたいと思っています(少年探偵団シリーズでいう、黄金仮面が入っているところ)。
そういえば、今日入ったインドカレー屋さんの炊飯器が、花模様のついたレトロ炊飯器だったのもいとおしかった。まさか昭和の遺物ではないでしょうが、消えかけたパステル調のブーケが、なんともはかなげでフラジャイルでした。
逆に、最近「これは苦手だな」と思ったのは、フラワーアレンジメントの小花にラメが振ってあるもの。インクを吸わせた青いかすみ草などと同じくらい、強いられた不自然がかわいそうで悲しくなりました。

ともかく、花咲く春の訪れはまさに今。
今年もミモザをたくさん飾り、レモンケーキもきっと食べようと思います。


追伸:ところで、『バナナブレッドのプディング』には、衣良ちゃんが「バナナブレッドのプディングを食べたいと思っています」と挨拶するとクラスメイトが笑うシーンがありますが、あれにはどういう意味が含まれているのでしょうか? いまだに首をひねっています。

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