ベルギー🇧🇪ブリュッセル後編 魅惑のパサージュ“ギャルリー・ロヤル・サンテュベール”
パリに行かれた方はあちらこちらの美しいパサージュを楽しまれたことと思います
パサージュは18世紀以降、パリを中心に建造された商業空間で、ガラス製のアーケードに覆われた歩行者専用通路の両側に商店が並んでいる場所です。
ギャルリー・ロヤル・サンテュベールはヨーロッパ最古のパサージュの一つで、通りの両側には、レストランやカフェに雑貨店など沢山のお店が並び、映画館や劇場も。
中でもチョコレートショップは王室御用達の店がずらりと並びウィンドウの壮麗な美しさ、見事な調和を保っています。
Godiva. Galler, Mary. Neuhaus, Van Dender. Leonidas. Pierre Marcolini.と210mの間に有名店がずらり。
全部のショップに寄って、ずっしりと重いお土産のチョコレートを買い集めました。美しいブリュッセル限定箱入りの物は娘たちに喜ばれそうです。
最高級カカオを使用したベルギーのチョコは、どの店のものも個性があり、素晴らしくまろやかで深い味わい。
GODIVAで比較してみますと、日本の販売価格の半額くらいで購入できます。
チョコレートを買い込み、道行く人を眺めながらカフェで一休み。
ホットチョコレート(chocolat chaud)は持ち手のないカップで提供されます。
このお店にはケーキは何種類もありましたが、迷わずマドレーヌを注文。
私は素朴で優しい味のマドレーヌが大好きなのです。
あちらこちらで食べてきましたが、甘さの加減、香り、しっとりした口触り、ふっくらと大ぶりなこのお店のマドレーヌは過去最高だと思います。
ブリュッセルにいらしたら是非。
口にする時は、マルセル・プルースト『失われた時を求めて』を必ず思い出します。
[紅茶に浸したマドレーヌを食べた瞬間不思議な幸福感に襲われ、その理由を探るうちに昔祖父母の家で叔母にお茶に浸したマドレーヌをもらって食べたことに気づき、そこからかつて過ごした田舎町の記憶が次々と蘇ります。]
このように紹介される有名な冒頭部分。
[味覚や嗅覚から記憶が呼び覚まされる心理現象はプルースト効果と呼ばれる]
この点に関して大変興味深く、若い頃から何かとそれを意識したものでした。
そして、
「今度こそ『失われた時を求めて』を全巻読み切る!」と揃えた新潮社の全巻を目の前にして誓いを立てるものの、数回挫折。
目の前にある本を、読もうとしているのに読めなかったというのは初めての経験でした。
ということで、私がマドレーヌを食べる度に蘇るのは、
【『スワンの恋』で挫折した苦い過去】
です。情けない。
さて、このギャルリー・ロヤル・サンテュベールや前編に書いた壮麗な広場グラン・プラスは、ブリュッセルを訪れた人は必ず立ち寄る、観光の中心なのですが、私も夫が仕事をしている二日間は、ホテルから近かったこともあり、犬連れで買い物や食事の為に何度も行っています。
有名な場所に行く、有名なチョコレートショップでお土産を買う、ここに来たからには必ず有名なワッフルやポテトは試すべし、と観光客は似たような傾向で行動します。
その為、観光客の中には何度か同じ場所で会った人もいて、チョコレートショップで会ってみたり、ワッフルを食べているところを見かけたり、お土産屋さんで絵葉書を選んでいる姿を見たり 笑
また、グラン・プラス周辺に行く為に、毎日必ずイロ・サクレ地区を通り抜けます。
ここは海の幸が並ぶレストラン街で、有名なレストランのシェ・レオンもあります。
ベルギーはカトリックであったことも影響し、美食文化が歴史的に受け継がれていて、どのレストランに入ってもレベルが高いので、安心して立ち寄れます。
そしてドイツに比べて、値段も低価格なのが大変嬉しいわけです。
車が入れない石畳みの通りは、外のテーブルも多く並び、肉料理だけでなく、魚料理も豊富。
特にムール貝とフリットが有名で、とても美味しいです。8月から3月までが旬ですね。
ドイツであまり食べられない為、どのお店も魅惑的なのです。
ギャルリー・ロヤル・サンテュベールに行く為に、少し手前のこのイロ・サクレ地区の通りを毎日通っていたものですから、ここにも顔見知りができます。
レストランの外テーブルの担当スタッフは、暇があると、道行く人に声をかけて、レストランへの客引きをしたり、単に観光客とお喋りをする人もよく見かけます。
このうちの一人のスタッフは、最初の日に夫と一緒に通った時、普通にレストランの宣伝をしてきました。
長身のニコニコ明るいお喋り好きのベルギー人。
観光客で賑やかな通りですが、犬も一緒のせいで覚えやすかったようで、帰りにまた通った時も普通に挨拶してきました。
翌日の昼間は、私と犬と買い物に出て往復し、夜は夫も加わって往復。そのまた翌日は昼間に私と犬で往復、計8回このスタッフと顔を合わせた訳です(^◇^;)
夫もいる時は、レストランの営業をしてくるのですが、私だけの時は、
「マダム! 今日も良い1日を!」とか、
「今日もグラン・プラス? 良いお天気で良かったね」とか、
いろいろ話しかけてきます。
買い物の予定もあるし、またマドレーヌを食べに行きたいといそいそしている私は、この人と話すと言っても立ち止まったりもしません。
また、あまりに話しかけてくるのが面倒で、結局このレストランには一度も寄らず(^◇^;)
『営業は適度にしとかないとね』の典型です。
3日目、夜は夫の仕事が終わったら、バスに乗って日本食を食べに行くことになっていたので、『ここに来るのも最後だなぁ』と思いながら、帰りがけに早足でこの道を通った時に、また寄ってきたわけです。
で、いきなり、いつもよりグッと近づいてきて、
「マダム、あなたは美しい。私は毎日あなたに会っているうちに好きになってしまいました。」
と英語で話しかけて来ました。
う〜む🤔、この人は私の実年齢を一体幾つだと思っているのか、恐らく私はこの人の親御さんと同じくらいでしょうね、と思いつつ、別にこれ以上話す必要もないし、人も多い道の真ん中ですし、怒るほどのこともないし、と考えた結果、立ち止まりもせず、
“Merci beaucoup. Je suis heureux de vous entendre dire cela.”
ありがとう。そう言ってもらって嬉しいわ。
と答えて、嫣然と微笑んで立ち去りました。
日本では言えませんね〜(^◇^;)
フランス語だと言えちゃう。
嫣然(自分としては気分的にそんな感じで、の意ですが)と微笑むっぽいのも、日本じゃやった事ないですね。
『海外だとマダムっぽくできるんだ〜私』
と思った次第。
気分はモニカ・ベルッチの若い頃 笑笑
帰ってきた夫に、
「あの人にそんなこと言われたよ〜」
と報告したら、
「へえ〜」 終わり。
この年で、告白された数の更新を果たしたのでありました。
ベルギーの可愛い小便小僧、絶品日本食レストラン、その他諸々、書ききれないので、『こぼれ話』に続きます。