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心の処方箋はいつも音楽

楽しい時はいいよ、美味い酒と、肴があれば何でも。でも人生でもう忘れ去りたい、必要ない、そんな日ってあるじゃん。そういう時に曲を聴いて、『頑張れ』とか、『応援してるよ』とか、そんなこと言われても、俺の辛さがお前なんかにわかるもんか、俺の苦しみを舐めるな、お前なんか俺の何倍も恵まれてるじゃないか、そう思っちゃったんだよね。そういう思いを俺がしたから、そう思った俺たちが作った歌だからこそ、人生で一番最悪な日に聞いたときに、『あ、なんかこの人たちの曲はわかんないけど励ましてくれてる気がするな、ちょっと頑張ってみようかな』そんな風に思えるような、日本一深いところであなたと寄り添えるバンドでありたい。
back number / NO MAGIC TOUR 2019 / 清水依与吏MCより引用

人生で何度もあった、努力が報われないと痛感した時。そんな経験を繰り返しているうちに、人から頑張れと言われることが怖くなった。実際、上司からの手紙に書かれたその文言に、人目も憚らず目を赤くし、マスクを濡らした。そんなどん底の時は必ず、音楽が寄り添ってくれている。3年前の夏に参加したback numberのライブでのこのMCで、ふと気づかされた。

行きたかった大学入試の合格発表の際、なぜ努力が報われないのだと泣き叫ぶ私の横で、吉報が信じられないと喜びの涙を流す友人がいた。数年後に聴いた宇多田ヒカルの「誰かの願いが叶うころ」が想いを浄化してくれた。(詳しくは下記を)

この上なく好きな相手に告白しては断られた際には、ポルノグラフィティの「サウダージ」が抜群に効果的だ。「私は私とはぐれるわけにはいかないから」の「私」が、私とは異なり芯のある女性であることを痛感した。自らを強くしようと涙が溢れた。中学時代から大好きだったポルノグラフィティの大好きな曲。何度も聴いていたはずなのに、改めて歌詞の意味を理解できた気がした。依存的ではあったその恋愛に対し、少しだけ肯定的に思えるようになった。ちなみに少し前にYouTubeにアップされたこの動画、とてもおすすめ。

そして、小学校の頃から行きたかった会社の最終面接で失敗した際、言葉通り三日三晩泣きながら聴いた曲がある。東京事変の「透明人間」だ。

あなたが笑ったり飛んだり大きく驚いたとき
透き通る気持ちでちゃんと応えたいのさ
毎日染まる空の短い季節
真っ直ぐに仰いだら夕闇も恐ろしくないよ

あなたが怒ったり泣いたり声すら失ったとき
透き通る気持ちを分けてあげたいのさ
毎日染まる空の短い季節
手を叩いて数えたらもうじきに新しくなるよ

恥ずかしくなったり病んだり咲いたり枯れたりしたら
濁りそうになったんだ
今夜は暮れる空の尊い模様を真っ直ぐに仰いでいる
明日も幸せに思えるさ
またあなたに逢えるのを楽しみに待ってさようなら
透明人間 / 東京事変

当時の私としては、就職活動に於ける「努力が報われない」とは、即ち会社に自分が否定されていることに繋がった。業界柄、親族からもその会社を受けることを反対されていた。報われない自分を肯定できない自分。誰にも肯定されていない自分。否定的な感情で満ちていた私を、この曲が温めてくれた。

この曲は「あなた」がどんな感情になっていようと、「僕(透明人間)」は包み、「僕」の痛みを緩和している。私はこの曲を聴くと「あなた」と共に、自らの鋭利な心が溶け、丸くなっていく。きつかったねと、えらかったねと、頭を撫でられているように感じられる。その際、散らかっていた心と頭が空になり涙が止まらなくなる。そう感じて以降、数多の感情で心が尖った時は必ずこの曲を聴く。繰り返し聴いては寝て、翌日になると心が晴れている。

こうして振り返っていると、思い出したくもないような出来事のそばに、いつも音楽がいる。音楽という名の数多の処方箋で、私は治癒されていく。より一層、音楽が好きになる。嫌なことも、全てが嫌なことで構成されているわけではない。そう考えたら、私はまだ頑張れるかもしれない。

私の文章を好きになって、お金まで払ってくださる人がいましたら幸福です。