vsモンスタークライアント奮闘記(その1)
どうも、ベテランデザイナーのはしあやです!
デザイナーをしていると、どうしても[モンスタークライアント様]との対決を避けることができないものです。
下っ端の頃はそれでも先輩や上司や会社に守られているものの、少し上に立てば徐々に、そして独立でもしようものなら“矢面”に立たなくてはいけないものとなります。
その向かい風たるや、春の嵐か台風か?と思えるほど。
フリーランスデザイナーを目指そうとしている人や、まだ入社して上司たちに守られている人たちに、これから訪れるであろう[モンスター]の動向をお伝えして、なにかあった際には「対処するシミュレーション」として使っていただければと思います。
そしてどれだけ歪んでいくのか・・・。
いやきっとみんななら乗り越えられるはず!
「とってもいい人」に注意すべし
まずは、最初の打ち合わせで「とてもいい担当者様(or発注者様)」がいたら、素直に受けとってはいけません。
「よろしくお願いします!デザインの発注は素人なので、教えてくださいね!(にっこり)」
はい、ここで注目は「発注をしたことがない」というところです。
こちらから必要事項をうまく聞き出しつつ、進行は全てこちら側で調整しながらリードして差し上げて、なおかつ先方の先回りを常にしながら、最速で仕上げて…そして最後の最後でドンデン返しをされる可能性が入ってきたということです。
歴戦の上司がいるなら、ここは「勉強」と思ってどーんと構えていて大丈夫です。これが「会社員デザイナーの特権」です。歴戦の上司の対応を間近で見つつ、自分への被害は最小限。なんて素晴らしいシステム。
しかし、これが独立したデザイナーや零細企業の一人デザイナーとなると話は違ってきます。多分、案件を終わらせることができないとか、案件が終わっても消耗しきってボロボロになってしまう可能性が…。
なので、まずチェックするべきは以下の通り。
これを「要注意7つのチェックポイント」と呼んでいます。
(いや、勝手に呼んでいるだけです)
1:相手が今までデザイン発注に関わったことがあるのか疑え!
2:相手がどこまでの権限を持っているか見抜け!<重要!>
3:そもそも、自社の仕事にもまだ慣れていない●●だった話
4:実は線引き主義で「下請けには厳しい方」だった話
5:話は上手いが実は「全然聞いてない方」だった話
6:メールや連絡を「ギリギリまで放置する人」だった話
7:実は「慣れてくると本性を出す人」だった話(見抜くしか!
さて、第一弾ではこの①と②のパターンをご紹介。
※今回は読み手側がデザイナーになった気分を味わえるよう、ストーリー仕立てで進めさせていただきます。
デザインの発注が初めてなんです〜♪
パワフル地雷キーワードともなりえるこのワード。
※ただし、中にはちゃんとWebサイトなどで自ら調べたりして、協力してくれる良質クライアント担当者様もいるので注意が必要。
「何をどうしたらいいのかわからない」
これだけであれば、こちらの方で要望を聞き出して差し上げて、コントロールしてあげて…でうまく進むはずなんです。
あとはこちら側の腕の見せどころ。
きちんと要望を引き出すには、さてどうしましょうか。
クライアント様の気分を害さないように…害さないように…。
対人スキルはMax発揮しましょう。
なければ経験値積めば良いだけ。
ある日、打ち合わせの後、日程も決めました。
急いで2日後に数案を出してみました。
現場には、指示を出してくれて初回打ち合わせ以降、一緒に案を練ってきた先方の担当者さんです。そこに大体、先方の上司は居合わせていません。
「おお!いいですねぇ!これがいいです、この最初のやつ!このままでもう何もしなくて十分ですよー!(大喜び)」
ホッとする一瞬ですね。
デザイナー側は、不足分の提供日確認や文字の校正などをお願いしてその場は非常に和やかに和やかに進みます。会社や仕事場に帰るときのすがすがしさったらありゃしません。
あとは修正が届くのを待って、スケジュール通りに進んでいることを仲間と喜びます。
そして数日後・・・。
敵は権限をほぼ持ってない窓口係の人だった!
そう、このパターンが結構厄介な上に非常に沢山遭遇するのです。
会社に届いた、赤字で元の原稿すらも読めないくらいの修正。
デザイナー、がっかりします。
絶妙なバランスで先方の要求を組み立てたところに、いろんな要素の追加と削除の嵐で、もうそのままでは形をなしません。
こんな修正が届いた場合、待っているのは・・・。
イチからやり直しという地獄です。
これがもし、食堂などで「発注違い」での作り直し…ならまだ救いはあるのです。従来の注文を作り直すだけなのですから。
でも、デザインは違います。
そもそも「従来」というものが存在しない。
無から必死にひねりだしたものを、予定にないもので埋め尽くされるのです。イチからの作成ではありますが、最初に聞き出したヒアリング内容と全く合致しない内容から、新しい得体のしれないものを作れるような人はいません。
「本当にすみません。私はすごくいいと思ったんですが、上司が…どうしても変えたいと…」
はい、このパターンたくさん出くわすことになります。
担当者さんも、本当はあのデザインを通したいと心から思ってくれていたはずです。しかし、会社組織が大きくなればなるほど、上層部が厚ければ厚いほど…上の考えは下まで下りてきませんし、時間もかかります。
その間に、上の方の意見が変わってきます。
力のある担当者なら、自分のプレゼン能力を駆使してそれでも通してくれる場合もありますが、そんなスーパー担当者さんは50人いればよくて1人か2人でしょう。大体は意見通らず、申し訳なさそうに謝られて終わりです。
でも、担当者さんを恨んでも仕方がありません。
上司や経営陣からの要望を吸い取れるような場を設けてもらえる場合もありますが、中小企業ならともかく、それなりの規模の会社さんがクライアントの場合はほぼ絶望的なので、これは「あって当然、なかったらラッキー!」くらいの心持ちで挑みます。
初稿デザイン時点での力のかけ具合はMax7割くらいまで。
余力があるなら、別案を複数用意する方にベクトルを変えて、リスクヘッジをしたほうがよほど良いです。複数案全部がダメでも、方向性を読み取るヒントになる場合はありますから。
肩を落としてデザイナーは再度、要望に合うものを「作り直す」こととなるのですが、最初に作って、しかも大絶賛されたということはそれなりのものができていたはず。それを一度全て解体してから、「別のもの」を作らなくてはいけない状況です。
編み物でいうなら、手の混んだ手袋を編み上げて喜んでもらったのに、先方からの要望で元の毛糸に全てほどきなおした挙げ句、今度はそれを使って当初よりサイズのでかい編み込みのあるセーターを、前回より日程を詰めて作ってくるように、とか言われているようなものです。
大変です。
さて、そうして出来上がった修正案を出すとさらに問題が…。
(続く)