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教習所記録⑧

第二段階もついに終了の兆しが見え、とうとうみきわめの日となった。ちなみに、第一段階のみきわめは一度「不良」となり補修を受けている経験から、もはやみきわめアレルギーの状態である。みきわめという言葉を聞いたり思い出したりするたびに憂鬱な気分になるのだから、この日は教習所行きのバス内で何度ため息を吐いたか分からない。
教習生活(自動車編)も佳境を迎えているが、改めて思う。

車を運転するということは、こんなにも認知能力が試されるものかと。
そしていざみきわめの時間になり、緊張のなかまずは路上を20分ほど運転する。みきわめでは路上が問題なければ場内で縦列、方向転換の確認をして良好判定を得られれば、卒検に辿り着くプランとなっている。

そう、まさしくそのはずだった。

走行して間もなく2つ目の交差点に差し掛かる頃、通過途中で信号が黄色になった。一瞬操作に迷いが生じる。私は安直にも巻き込み確認に気を取られ、アクセルを踏み始めていた。不意にガクンと車体が揺れる。

「対向車右折しに来てますよ」

指導員にブレーキを踏まれたことに気付き、青ざめる。ひとまず対向車の右折を待ち、そろりそろりと交差点を左折する。

ああ、終わった。

開始5分で私のみきわめは終了したのだ。
その後鬱々とした気分にタイミング悪く雨が降り始める。夜間のため、既に対向車のライトと飛沫で前方が見えにくくなってきた。
悪路のため制限速度30kmの道をそろそろと走る。遅い。明らかに遅いのだ。多分時速20kmくらいしか出していない。後々になって指導員には「あのとき後続車から煽られてましたよ。気付いてました?」と言われた。後続車に迷惑をかけているならその時点でさっさとスピードを出せと言って欲しかったが、蚊の鳴くような声で「いいえ…気付きませんでした…」と呟くことしかできなかった。焦りと不安から無駄にスピードを落としすぎ、路上走行する上で最も大切な「交通の流れに乗る」ことが出来ていなかったたのだ。これを怠ると、追突等の思わぬ事故に繋がりかねない。

「じゃあ信号を越えたらすぐに停車しましょう」
言葉通りに停車位置を探す。よし、ここだ。そう決めた場所に車を寄せていくと、またもや車体がガクンと揺れる。もう勘弁してくれ。
「ここって停めていいんですか?」
ハッとしてあたりを見回す。交差点からおよそ5m。ここは駐停車禁止である。
「ダメ…ですね…」
しかも左に寄せることができていない。慌てて少し先の位置で停車を試みる。
「もっと減速して。車体感覚を掴んでください」
車体感覚が分からない人間を路上に出しやがって。とは言えず、言われたとおりに停車し直す。ちなみにこのとき右手の確認を怠る。右手側にバス停や駐停車禁止区域がないか確認することも大事だと指摘された。

あと、停止位置から発信する際にハザードを自分で消すことをこのとき初めて指摘されたので、これに関してはこれまでの指導員との指導方法に相違があり戸惑った。(今まででハザードの操作はすべて指導員が行っていた)
卒業したらおまえら覚えてろよ。恨み節を噛み締めつつ、車内は既に葬式ムードである。

そうだ。私のみきわめはこれにて終了した。
車内の時計が指す残り10分の文字を見て、全私がそう確信した。
本来であれば20分ほどの路上走行をおこなう予定だが、既に開始から40分経過している。このことが何を意味するのか、私には言われなくとも直ぐに理解できた。
所内に戻ると案の定「残念ですが…」と切り出され、屍のような顔で「はい…はい…」と首を縦に振る。死体となった私に指導員が淡々とアドバイスを繰り出した。

①左折時はしっかり左に寄る
②交差点では安全確認を怠らない
③停車時は安全確認を行って必ず減速し、白線の上にタイヤが重なるよう停める

というわけで、私のみきわめは見事「不良」判定となった。第一段階のみきわめ時よりは案外冷静に結果を受け止めることが出来たが、今回は悲しさより悔しさが勝っている。
今回は普段あまり指摘されなかった点が減点対象となったため、みきわめは普段の項目より厳密に判定されているようだった。
ちなみに前回「まあ歩行者確認ができてれば大丈夫でしょう」と軽口を叩いた指導員のことも許さんとしているが、今となっては後の祭りだ。紛うことなく自分の実力不足である。

というわけで、まだまだ混み合う教習所〜二度目のみきわめキャンセル待ち編〜に続く。


切実に早く卒業したい。