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破滅願望を持つ私が、「ヴィヨンの妻」になる話

 初めまして、私は何処にでもいる普通のOLです。今日は私のちょっとした話を聞いてもらいたいと思い筆を取りました。

 皆さんは「ヴィヨンの妻」を読んだことがあるでしょうか。

 まあ読んだことがなくてもいいのです。内容を要約すると「才能があるがダメな男を夫に持つ妻が小さな破滅を経験し、それでも生きてゆく話」といったようなものになります。これは私の勝手な要約だから、興味を持った人はぜひ読んで見てほしいです。

 それで、その「ヴィヨンの妻」の主人公、通称「さっちゃん」が私にどういった関係があるかというと、「さっちゃんになって」と言われたからです。

 年下の、顔もきちんと知らない、ただ絵が素晴らしいという才能を持つフォロワーに。

 「俺のさっちゃんになって」と。

 「シャルロッテ 」でも「シンデレラ」でもなく、夫に泣かされ不幸のどん底にある「さっちゃん」に。

 なんて酷い話でしょう。都合のいい女になれと言われているようなものです。

 けれど、それに対して私は「はい」と答えました。

 今まで言われたどんな台詞より、心の底から「嬉しい!」と思ってしまったのです。(文学部の女は文学絡めたセリフに弱い)

 そして今、私は働きながら出来うる限りのお金を持ってその人のために物を買っては送っています。その人の「ヒモになりたい」という願望を満たし、私の「ヒモを養いたい」という願望を満たすために。

 ここまで読めば、皆さん私のことを馬鹿な女だとお思いになると思います。実際私もそう思います。いくらお金をかけてもその人は私が困った時に何にもしてはくれないのです。お付き合いするわけでもない。きっと、親が見れば泣くでしょう。

 けれど、それでもいいと思うほど、その人の才能に惚れてしまったのです。

 だって、人間本当は皆誰もが心の何処かでダメな人に惹かれているのですから。

 「人間失格」も「ヴィヨンの妻」も「斜陽」も、今もなお読まれているのはそういう男に惹かれずにはいられないからに違いないのです。そうでなければ、こんなにも愛される作品にはならなかった。

 皆幸せになりたいと願いながらも、そういう人間にめちゃくちゃにされたいと願っているものなのです。

 私も幼い頃から、太宰のような人間に出会い、いつか破滅したいという欲望を抱えて生きてきました。

 そして私は幸か不幸か、そういう人間に会ってしまったのです。

 どうしようもなく、寂しがりやで、うだつの上がらない、才能の持った人間に。

 だから私はその人にとって、都合のいい人間になろうと決めたのです。いつかこの事を後悔する日がくるとしても、今この時だけは決意を持って行うのだ、と。

 私がこのことを書こうと思ったのは、そのことを誓いとして残そうと思ったのと、もし似たような願望を考えた人がいたのなら「あなたのような人間は他にもいるよ」と知っていてほしいと思ったからなのです。

 一生懸命周りの人に合わせながらも、そういう欲求を持つ自分はおかしいんじゃないかと不安になっている人に。

 大丈夫。あなたみたいな人は他にもいます。

 実際私は今とても穏やかで、満たされています。不幸だとはちっとも思っていません。

 「女には、幸福も不幸もないもの」なんですから。


 以上、読んでいただいてありがとうございました。

 馬鹿な女がいるものだと、ネタにしていただければ幸いです。

P.S もし本人がこの記事を見ても、こっそり笑ってくださいね。

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