手放したら、幸せがやってきた。シリーズ③
私の人生で一人暮らしをしたのは、バリ島での3か月間のみ。
短期間というのもあるけれど、一人暮らしでも、ちっとも寂しくなかった。
目の前に広がる田んぼには稲が揺れ、そこを歩くあひる、バナナやヤシの木、放し飼いの鶏、犬猫、ヤモリや蟻、名前のわからない虫、鳥…
私のまわりには生き物であふれていた。
月貸しのVilla(戸建ての宿)に入居した初日。
網戸などない明け放した部屋に、大きな蜂が7,8匹飛び回っていた。
私は、スーツケースの荷物を取り出す気も起らず、ベッドに腰かけて
「はて、どうしたものか」と蜂たちを眺めていた。
時間はたっぷりある。
私は、ちょっとした遊びを始めることにした。
飛び交う蜂1匹づつに、念を送り、ここから出て行ってもらうようにお願いをしたのだ。
1匹出ていくと、次の1匹へと。
20分経つか経たないうちに、全部出て行ってくれた。
それ以来、扉を開け放していても蜂は部屋に入って来なくなった。
ただ、この遊びは万能ではない。ハエや蚊には効かない。
都会に住んでいると、人とわかりあえなかったり、団体になじめなかったりすることがある。孤独を感じがちだ。
バリ島では一人なのに決して孤独を感じることはなかった。
自然や大地が、無条件に私を受け入れてくれている気がしたのだ。
バリの人たちの人柄も関係しているかもしれない。
この安心感からか、私は人から嫌われ一人になる恐怖から解放され、自分を出せるようになっていった。
たとえ一人になっても、決して一人ぼっちになどなりようがないことを知ったからだと思う。