頭のなかどうなってんの?
気になることがあります。バズ・ライトイヤー似の妻の頭の中です。
ある雨の日、映画を見に家族で出かけました。人気の子供向けアニメだったこともあり、平日であるにも関わらずかなり混雑していました。この映画館は経験上、上映15分まえくらいで売店は長蛇の列ができてしまい開場に間に合わないことがままあります。
その日は開場20分前であるにも関わらずそれなりの列ができていました。妻はネットでチケットを予約していたため、彼女のスマホでしか購入ができないので、券売機にまっすぐ向かいました。妻もこのままでは大好物のポップコーンが買えないことを知っており、焦ったのでしょう。
「私チケット買ってるから、今のうちにフードサービスセンターに並んでて! チケット買ったら合流するから」
私はうなずくと娘の手を引き列に並びました。とっさに頷いたのですが、ある事がとても気になり頭の中を離れなくなったのです。ほどなくして合流した妻に聞いてみました。
「あのさ………フードサービスセンターってなに?」
「え? あのポップコーン売ってるとこ」
「あ、もしかして売店のこと?」
妻は少し笑いながら「あ~、売店か~」と鼻の頭を掻きます。私は言葉を続けます。
「フードサービスセンターってさ、なんか荒廃した共産主義的国家にある食料配給所みたいな名前だよね」
「それなWWW ディストピア感半端ないねW みんなボロボロの服着てさ」
「そう。そんでいつももらえるのがカロリーメイトみたいなやつと、ガストのスープみたいなやつ」
「でも受付の人はエレベーターガールみたいな格好して笑顔で配給すんのWWW」
「それじゃ、フードサービスセンターに並びますか」
「そうだねWWW」
ニコニコ顔の妻と子供とその日は映画を見ながらポップコーンを食べました。
この前もこんなことがありました。私が寝室でダラダラゲームしていた時の事です。
「ほら、もう寝る時間だから歯磨きしなさい!」
「やだ」ゲームポチポチ
「子供ももう歯磨きおわったんだよ! 怖い鬼くるよ!」
「このゲームはすぐセーブ出来ないのですよ、妻。あきらめるのです」
(スリープはできるけどね)
「そんなわがまま言ってると保安員くるよ!」
「………」ゲームポチポチ
「………」
「………」ゲームヤメ
「………」
「……保安員?」
「ブふ~~!!wwww」
天井を見上げ吹き出す妻。私は拳を握りいい顔で立ち上がります。
「この荒廃した共産主義国家において既に国の統治は崩壊しており、人々はいくつかの集落を形成し自分たちの中から保安員を選び自衛しているのである!」
「ちょwwそれやめwww」
「毎回ディストピアじゃん。マジで頭の中どうなってんの? 警察って言おうとしたの?」
「いや、保安員であってるw」
「あってるんかい! 保安員につれていかれるとどうなっちゃうの?」
「国の犬と繋がってるから、中央に連れていかれて死刑」
「死刑! 歯磨きで?」
「そう、歯磨きで。家族みんなで強く生きて行こうね!」
「うん……歯磨きしてくる」
以降我が家では映画館の売店はフードサービスセンター。警察は保安員と呼んでいます。本当に良い妻とめぐりあえました。