税リーグデマに関して

このアカウントは去年あたりから活発となった、Jリーグと税の関係に関する言論(税リーグ論争)の中で、noteで1つ明らかな誤情報を発見し、それを執筆者に指摘するためにアカウントが必要であったために取得したものです。

指摘以上の事をする予定がありませんでしたが、1つ書きたい事が出来たので書きます。

税リーグ論争に関しては「サッカークラブに税金を1円でも使うのはもっての外」との意見から「自治体が所有するスタジアムをJリーグクラブのために公金で整備して差し上げるのは当然」という意見まで様々ですが、いずれも税に関する個人の意見ですので、どれが正しくてどれが間違っているかはこの際書きません。

しかし、主張は正しい情報に基づいて行われるのは当然の事でしょう。
主張その物をデマ対策と称するのなら尚更です。
以下の記事は正にその趣旨です。

Jリーグ関連デマ(税リーグデマ)及びサッカースタジアム関連デマへのカウンター|るーでる@柏葉

しかしこの記事には信憑性が低い情報が1つ、完全な誤情報が1つあります(親切にそれを指摘した何者かの投稿を「デマを書き込んだ」とする部分を入れれば誤情報は2つです)。
追記 コメント欄で頂いた情報からすると、完全な誤情報が2つ(3つ)が正しいようです。

1:直法1-147はプロ野球だけだった?


まず信憑性が低い情報とは、木村正明氏(当時のJリーグ理事)の証言を根拠として、直法1-147(スポーツチームへの赤字補填を親会社の宣伝広告費と出来る国税庁の通達)が2020年までプロ野球にしか適用されていなかったとする内容です。
以下の根拠でこの情報の信憑性には疑問があります。

【公式】2020年度 第5回Jリーグ理事会後チェアマン定例会見発言録:Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)
今まではどちらかというとスポンサーを担当される税理士によって解釈が分かれるところもありましたが、改めて今回すべてのスポンサーに共通の解釈が通達されたと理解しています。

(当時の村井チェアマンの発言)

この内容を素直に解釈すれば、2020年以前のJリーグの中に直法1-147を適用するクラブとしないクラブが存在した事になります。(追記 この部分への私の解釈には少し問題がありました。この箇所はコロナ禍で試合ができずクラブに宣伝効果がない可能性がある中で直法1-147を適用するかどうかの話でした。2020年以前のJリーグの事は村井チェアマンの別の発言がそれを示していました。こちらをご覧ください。 直法1-147の謎|Vikings



Jリーグのチェアマンと理事が同じ事に関して矛盾した事を言うのは何とも奇妙ですが、実際に浦和レッズに関して三菱が広告費名目で浦和レッズの赤字を補填していたとの証言もあります。

web.archive.org/web/20121010031511/http://www.ris-keiei.com/management/accounting.html
松本まず、スポーツ振興に関して税制面での優遇措置があります。Jリーグのクラブチームは、支援企業の子会社という形で運営しているところがたくさんあります。私たちの場合は、会計的に言うと51%の株を持っている三菱自動車が親会社ということになります。以前は親会社から「損失補填」を受けるというスタイルで運営されていました。
松本「損失補填」を受けている間はあまりありません。支援する企業も、採算が厳しいことを覚悟の上で、利益追求よりも「サッカーというプロスポーツ文化を創り、日本に新しいスポーツビジネスを根付かせていくんだ」という想いで支援してくださっています。私たちも92年の発足当時から2004年までは、三菱自動車から広告宣伝費という名目で補填していただき、プラスマイナスゼロの運営を行っていました。

問題の記事では三木谷氏の発言(サッカーは認められていなかった)も根拠として挙げられていますが、三木谷氏は他クラブの親会社がどの様な税務処理をしていたのか知る立場にはなく、三木谷氏の発言は松本浩明氏が実際に浦和レッズでしていた事の反論にはならないと考えるのが自然でしょう。

以上の様な根拠から、直法1-147が2020年までプロ野球しか対象としていなかったと言いきってしまって良いのか指摘をした所、デマを書き込まれたと言われ投稿を削除されました。

追記

 問題の記事で三木谷氏の発言は切り取りが行われていたようです。

『野球の野球の球団の場合、税務上、損金を親会社と通算できるんです。たとえば30億円の赤字があったとしても、それは親会社の広告宣伝費として計上していいという、特例が認められています。サッカーはそれが認められておりません』「ですから、サッカーは赤字になると赤字がそのまま残ってしまうのですが、ほとんどのチームは親会社の胸のスポンサーシップの金額で調整しているのです。」(トップスポーツビジネスの最前線-スポーツライティングから放映権ビジネスまで 2005年 講談社 p117より)

『』の内側だけが問題の記事で引用されていましたが、全体を見れば松本浩明氏の証言と矛盾しません。
十分調べないまま信憑性に疑問を持った三木谷氏にお詫びします。

さらに川渕三郎氏の著書『虹を掴む』175~176pによると渡邉恒雄氏がチームに企業名を入れないと直法1-147の対象とならない懸念を川淵三郎氏に伝えたものの、川淵三郎氏は国税庁から


「ユニフォームの胸に企業名でも入れば問題がない」
「ユニフォームのどこかしらに、小さくてもいいから何か出資企業の証になるものを入れてくれれば広告宣伝費として認めましょう」
(詳しくは以下で原文が読めます)
第68回 交際費総点検!(12) プロ野球球団に支出した広告宣伝費~個別通達はJリーグ球団にも適用できるのか?/税務・会計本の感想文

との言質を得ていたそうです。
つまり1993年の時点でJリーグのクラブに適用される事は確実で、「2020年までJリーグには適用されていなかった」「プロ野球だけが適用されていた」は誤情報となります。
(情報を提供してくださったぽちさんありがとうございます)

2:Jリーグのクラブには税金は投入されていない?

注意:この章の情報は2025年1月11日時点での記述内容に基づいていますが、1月12日までに私の忠告と一致する形で訂正されました

こちらは、Jリーグクラブが公開している財務諸表を見ても税金が投入されているなどと読み取れない事を根拠に、Jリーグクラブに税金が投入されている事実はないと主張しておられますが、これは誤情報です。

札幌市公式ホームページ
https://www.city.sapporo.jp/suishinshitsu/r4hyoka/documents/20221023443.pdf
【目的】プロスポーツ支援
【内容】コンサドーレ札幌の運営会社である㈱コンサドーレへの補助。
(中略)
他都市の状況
山形県(モンテディオ山形)、松本市(松本山雅FC)、静岡市(清水エスパルス)、富山県(カターレ富山)、鳥取市(ガイナーレ鳥取)北九州市(ギラヴァンツ北九州)など多くの自治体で補助金を支出している。

議論の余地のない程に明確にJリーグのクラブに公的補助金(税金と呼んでも良い)が投入されています。
財務諸表を見てもこれらのクラブも税金が投入されていると読み取れないという事は、補助金は費目「その他収入」で処理されていると推測できます。


税金に「依存していない」ならまだギリギリセーフかも知れませんが、「そんな事実はない」は完全に誤情報です。

Jリーグ関連デマ(税リーグデマ)及びサッカースタジアム関連デマへのカウンターはデマへのカウンターを標榜していながら2025年1月11日現在Jリーグのクラブには税金は投入されていないという誤情報を発信しています。

執筆の目的がプロパガンダではなく、本当にデマの撲滅ならこの事実に誠実に向き合う必要があるでしょう。
尚、2025年1月11日現在この様な記述がある事は事実ですので、今後事態が改善されても、この内容は何か所かを過去形に変える以外は対処は必要ないと思いますが、真摯な対応がなされるのであれば、私も真摯に対応します。

追記

2025年1月12日に確認した所
Jリーグ関連デマ(税リーグデマ)及びサッカースタジアム関連デマへのカウンター

・Jリーグの財政はガラス貼りであって、税金が注入されているか否かは簡単に確認できる。(そしてそんな事実はない)

1月11日時点で確認できる

以上の内容が以下の内容へと訂正されておりました

・Jリーグの財政はガラス貼りであって、税金に依存しているか否かは簡単に確認できる。(そしてそんな事実はない)

「税金が注入」が「税金に依存」に訂正されていますが、結果的に私の忠告に沿った形で訂正されるのなら、最初から、削除してブロックしてデマ呼ばわりなどせず、私の情報提供に感謝をすれば良かったと思います。

尚、Jリーグの公開している財務諸表を見ても、公的補助金が入っているクラブがどこのクラブで、いくら補助金が入っているのかを知る事はできず、また税リーグ論争の本質である公設スタジアムの使用料も知る事はできませんので、一般的な「依存」の定義からすればJリーグの公開している財務諸表を見ても税金に依存しているか否かを簡単に確認する事はできません。

執筆の目的がデマの撲滅であれば、注意された方が良いでしょう。


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