税リーグ論争の論点整理

税リーグデマに関してでは、ほぼ確実な事実に関する誤情報について取り上げました。
Jリーグ関連デマ(税リーグデマ)及びサッカースタジアム関連デマへのカウンターで当初は存在したJリーグクラブには税金が注入されていないとの内容は訂正されております。
るーでるさんの、Jリーグクラブは税金に依存していない、とのご意見に関してはそれが明白に誤りであると指摘するすべを持ちません。

一方でるーでるさんのJリーグ関連デマ撲滅の内容に関しては他にも首を傾げたくなる箇所があります。
それについて取り上げます

1:Jリーグと税金

Jリーグクラブの赤字は税金から補填されていると信じてJリーグを批判している方。
→実在するかも知れません。

Jリーグクラブに自治体から補助金が入っている事実を知っていてJリーグを批判している方。
→実在するかも知れません。

Jリーグクラブが税制優遇を受けている事に怒っている方。
→直法1-147への批判はどちらかと言えばスポンサー依存への批判ですが、親会社の節税に怒っている方もいるかも知れません。

しかし、「税リーグ批判」の本質は、公設スタジアムの赤字と、安すぎる可能性が高い上に不透明なJリーグクラブによるスタジアム使用料です。

2025年Jリーグに所属する60クラブの内、FC東京と東京ヴェルディは味の素スタジアムを共用するため、本拠地スタジアムは59か所存在します。
柏、磐田、今治、長崎の4か所は民間所有のスタジアムであり、「税リーグ批判」の対象にはなりません。
残り55か所が自治体所有です。

そしてそのほとんどは赤字です。

私が知る限り間違いなく黒字であったJリーグクラブの本拠地は日本ハムファイターズがいた頃の札幌ドームだけです(味の素スタジアムは黒字になった年がある可能性がありますが確実な事は確認は出来ませんでした)。
成田ゆうき議員が示されているデータ(実はるーでるさんも例の記事で引用しているデータ)によると、指定管理料を収入とすれば黒字のスタジアムも存在します。
しかし、指定管理料はこの場合「税金」と表現して良いもので、「自治体所有のスタジアムの赤字を自治体が補填している」との説明は厳密には間違っていますが、概ね正しいです。
成田ゆうき議員は指定管理料を計算に入れないデータに基づいて「赤字」と表現しており、これは一般常識に照らして妥当な表現と考えます。

さらにスタジアムの赤字としては現れない自治体が負担する出費もあります。例:埼玉スタジアム2002公園管理運営費

「スタジアムの赤字」と「自治体が負担する費用」が「税リーグ批判」の本質です。

では一方Jリーグのクラブの払うスタジアムの使用料はどうでしょうか。
るーでるさんはJリーグの財政はガラス貼りと主張されていましたが、Jリーグの財務諸表を見ても、Jリーグのクラブがいくらスタジアムの使用料を払ったのか知る事はできません。
費目としては「試合関連経費」に含まれるのですが、この費目には試合当日の警備費用なども含まれています。
したがって、財務諸表を見ればスタジアムの使用料の理論的な上限値は知る事が出来ますが、それ以下であるはずの実際のスタジアムの使用料はわかりません。
Jリーグのクラブが払うスタジアムの使用料の妥当性を検証したくても、そもそもスタジアムの使用料がわかりません。
わかりませんが、スタジアムは赤字です。
赤字は税金で補填されます。
税に関する個人の意見は、何が正しくて何が間違っているかはこの際書きませんが、Jリーグクラブの赤字が税金で補填されていなくても、公的補助金注入や直法1-147適用に正当性があっても、「安すぎる(と推測される)スタジアム使用料とスタジアムの赤字と自治体が負担する経費」への弁護にはならないでしょう。

補足

スタジアム側の公開資料からスタジアムの収入としてJリーグクラブの払っている使用料が推定できる場合があります。
横浜FCとY.S.C.C.横浜(今年からJFL)が本拠地として使用し、横浜マリノスも公式戦を開催するニッパツ三ツ沢球技場は売上の額を確認できる例です。
令和5年度は約6213万円となります。
またネーミングライツが年間4000万円ですので、約1億213万円がニッパツ三ツ沢球技場の収入となります。
では、支出はどうでしょうか?
上記の資料では約4億円と書かれていますが、これは三ツ沢公園全体の話です。
三ツ沢公園はニッパツ三ツ沢球技場の他、陸上競技場が2つとテニスコート、乗馬クラブ、散策部分で形成されています。
ニッパツ三ツ沢球技場にかかったコストは、上記の資料ではあちらこちらにバラバラに記載されており、陸上競技場とまとめて計上されている場合も多いです。
また人件費や清掃費、光熱費は公園全体で計上されています(さらにややっこしいのは乗馬クラブは別法人が運営しており、どの程度が上記資料に反映されているのか素人の私ではわかりませんでした)。
ニッパツ三ツ沢球技場の実際のコストは、かなり大雑把な見積もりしか出来ませんが、もしニッパツ三ツ沢球技場単体で黒字(コストが1億円以下)なら三ツ沢公園の他の部分で年3億円以上使っている計算になり、これは考えにくいでしょう。
あまり自信はありませんが、1億5000万円辺りがニッパツ三ツ沢球技のコストではないでしょうか。
この様にスタジアムの実際の収支はとても調べにくいです
味の素スタジアムは隣接する武蔵野の森総合スポーツプラザと合わせて黒字となった年がありますが、味の素スタジアムが単体で黒字であったのかどうかはわかりません。
ただ、ニッパツ三ツ沢球技と味の素スタジアムは複数のJリーグクラブが共用していた恵まれた条件のスタジアムです。
この2つのスタジアムでもギリギリ黒字かも知れない、数千万の赤字で済んでいるかも知れない、という状況ですので、他のスタジアムに関しては察して知るべしでしょう。

2:月2試合?

Jリーグクラブの本拠地は月2試合しか使わないと信じて「税リーグ!」と批判している人。
→いるかも知れません。

Jリーグクラブの本拠地はJリーグクラブに占有されていると信じて怒っている人。
→いるかも知れません。

Jリーグクラブの本拠地は天然芝養生のためにほとんど使えないと信じて怒っている人。
→いるかも知れません。

事実に関してだけ言えば、Jリーグクラブの本拠地は月3試合以上使われます。
Jリーグクラブの主催試合以外に全く使用されないスタジアムは存在せず、程度の違いはあれ、アマチュアも使用します。
天然芝のせいで使用頻度は下がり気味になりますが、Jリーグクラブが完全に独占しているわけではありません。

しかし、月3試合以上でも赤字です。
Jリーグは週末を中心に開催され、半分は敵地での試合のため月2試合のペースで公式戦は行われ、ルヴァンカップと天皇杯、アジアチャンピオンズリーグの試合もあるので、月2試合を少し上回るペースで公式戦が行われますが、例えばJ3のクラブがルヴァンカップと天皇杯で平均何試合本拠地を使うのか検証するまでもなく、スタジアムは赤字です。

ここから先は、スタジアムの赤字=税金の使い方の話であり、個人の信条、主観が大きな意味を持ってくる領域ですが、月3試合以上である証拠はスタジアムの赤字への反論にならないと思います。

以下、私なりのスタジアムの赤字への弁護を考えてみます。

1 Jリーグクラブは適正なスタジアム使用料を払っておりスタジアムの赤字に責任がない
2 スタジアムはアマチュアにも使われているので公共性があるため赤字でもかまわない
3 Jリーグの試合観戦に公共性があるので、スタジアムが赤字でもかまわない
4 Jリーグの試合がもたらす経済効果はスタジアムの赤字(もしくはJリーグの試合で発生するコスト)を上回っているので赤字でもかまわない
(5 図書館も赤字)
追記
6 Jリーグクラブが使わないともっと赤字
7 自治体が自治体所有のスタジアムのコストを負担するのは当たり前

こんな所ですかね。
Jリーグに関連した公的負担を擁護する意見も、批判する意見も、税に関する個人の意見ですから、自由に意見を持たれるのが良いと思いますが、事実に基づいて、攻撃的ではない方法で意見を発信するのが良いと思います。


尚、お察しの方も多いと思いますが、論点整理に当たっては清田スポーツちゃんねるの動画が大いに参考になりました。


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