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民間の立場から、中野区のオープンデータ推進に取り組んでみた話

こんにちは、@watamboです。本業では人材系企業に所属しており、プライベートは主に子育てと、行政データを整備・活用する「キカク」という会社をやっています。

今年の7月頃にこんなツイートをし、その結果多くの人にRTやFavをいただいたことがありました。

実はこの件、去年の11月頃に始まったことです・・・。
ただ、1年かけて、ようやく解決の糸口が見えてきました。今日はこれまで取り組んだことをまとめて公開したいと思います。

注意①
最初に断っておくと、「1年かけてこれだけしか進んでないの!?」と思われるかもしれません。やり取りに待ち時間が発生してしまうという手続きの特性上、仕方がない面もありますが、諸々試行錯誤しながら進めたので、振り返ると「こうすればうまく進んだかもな」など思うところは多々あります。

注意②
中野区から公式見解としていただいたことに限定して書いており、ここに書いたこと以外にも自治体の職員さんと議論したことや動いていることは沢山あります。それについてもニーズがあれば、オープンにできるタイミングで書きます。

注意③
記事内で紹介する内容に区議さんの発言を引用していますが、私は特定の政党や政治家に対する支持を公表していません。しかし、引用させていただいた方は勿論、今回の一連の活動を知ってくださり、中野区の課題に対して真摯に取り組んでくださった区議さんは様々な政党に沢山いらっしゃいます。ご尽力いただいたすべての区議さんに改めて感謝申し上げます。

キッカケ

昨年6月に、下記のような内容でCivic Tech Forumに登壇しました。

全国の自治体が保有しているが項目や形式がバラバラだったり、そもそもオープンになっていない情報を1つのフォーマットで見られるように整備すれば、

・行政データを活用したい人が各自手間をかけて加工する必要がなくなり、市民に役立つサービス開発やデータ分析・研究等に使う時間が増える
・民間が作るサービス含めた行政サービスがよりベンリになり、地域課題解決につながる

と考え、全国1,700件の自治体でバラバラに保有している色んなデータ(飲食店や薬局、観光施設、etc.)を集めて整備する、という活動を始めました。

審査請求をしてみた

さて、基本的には、どのような行政データも、

・既に公開されているオープンデータをダウンロードする
・「情報提供依頼」という、各部署で独自に設けている行政データを提供する手続きをおこなう
・「情報公開請求」という、各自治体の条例で定められた手続きをおこなう

の3種類いずれかのやり方でデータを取得することができます。

中野区についても、上記にのっとり、様々なデータのなかでも食品営業許可施設(飲食店や自動販売機、食品工場など食品を扱う機械や施設)の一覧データを提供いただきたい旨を区役所に打診しました。しかし、

・オープンデータは公開しておらず、情報提供依頼も受け付けていない。したがって、情報公開請求による文書請求となる
中野区の情報公開条例の12条2項にもとづき、各事業所の許可・届出を1件と数え、300円×件数分(例えば、中野区内には約6,000の食品営業許可施設が存在するため、180万円程度の金額となる)の手数料納付が必要

と回答をもらいました。
※ちなみに、条例の該当条項からも読み取ることができますが、他のデータ(薬局、旅館、美容室、コインランドリーなど)についてもひと通り確認し、同じく情報公開請求かつ1件300円かかる、という回答をもらっています。

本来、オープンデータとして公開されていてもおかしくないデータの取得に180万円もの高額な手数料がかかることに違和感を覚えたので、この決定に対する審査請求をすることにしました。

※「審査請求」とは、情報公開請求を受けて自治体の対応に不服を申し立てることができる手続きのことです。

弁明、反論、再弁明、再反論、再々弁明・・・。延々続く弁明と反論の応酬

審査請求した後は、審査請求を担当する部署が窓口になり、

・弁明書(自治体→請求者):自治体側の主張をまとめた書類
・反論書(請求者→自治体):請求者が、自治体の主張に対して反論をまとめた書類

をやり取りした上で、行政不服審査会で「どっちの主張が正しいか」を判断する流れになります。しかし、

審査請求@2020年1月8日
→弁明書@2020年4月13日
→反論書@2020年4月22日
→再弁明書@2020年6月16日
→再反論書@2020年7月13日

・・・と、ひたすら弁明書が来るだけであり、中々審査会が始まりませんでした。

※このような記事を書いている以上、弁明書、反論書、再弁明書、…etc.も本来全文公開するべきですが、全部で30点近く、ページ数は100ページを超えるため、必要な箇所をマスク処理かける、という作業が間に合っていません。従って、今回は流れのみ共有したいと思います。

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7月に、コチラから再反論書をお送りしたあと音沙汰がなくなったので、10月中旬にお電話し、現状のステータスを確認したところ、

行政不服審査会の適応対象外の事案である
・区議会に諮問した上で採決するが、保健所からの弁明が出尽くしていないので、それを以て区議会諮問を実施する

という回答をもらいました。

(「その流れ、いまさら言うなよ・・・。僕が聞かんかったら言わんかったつもりなん??」と思いましたが笑、)この審査請求の手続きは公的なもので、進める価値はあるが、別の手を考える必要がありそう。ということで再度模索を始めました。

中野区議会で取り上げていただく

7月にツイートした内容を、中野区の区議さんが見つけてくださり、9月の定例会で酒井直人区長との質疑がありました。

上記から該当箇所を引用すると、

森たかゆき区議の発言

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森区議の発言に対する、酒井直人区長の回答

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立石りお区議の発言と、それに対する酒井区長の回答

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定例会の議事録を拝読した上で、区長にはもう少し具体的なActionを明言してほしいと感じたので、改めて区長に提案書をお送りすることにしました。

中野区長に提案書を送る

11月頭に、酒井直人区長に下記のような提案書を作成し、お送りしました。

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主旨は以下の通り。

・行政しか持っていないデータがあって、それをオープンにすることでベンリな民間サービスがより沢山生まれて、結果として区民の利便性向上につながる
・ただ、現状、例えば食品営業許可のデータはオープンデータになってないし、データを受理するのに180万円くらいかかる。
・他の自治体ではそもそもオープンデータだったり、オープンデータじゃなくてもお金はそこまでかからない。
・よって、中野区もオープンデータやりましょう。それか、せめてもっと安くしましょう。

オープンデータ化は関係者にもメリットがあることだと説く

上記の提案に対して、区長への提案書を受け付けている広報・公聴課から返信をいただきました。

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(Oh...。それって何も言ってへんのに等しいやろ・・・。)
区議の方にもご協力いただきながら、回答文書内の連絡先に書かれていた総務課、生活衛生課、情報システム課に連絡を取ってみることにしました。

各課のご担当者からお話を伺っていると、関係者が3部署にまたがっていることが分かりました。

・総務課:情報公開請求の窓口担当
・情報システム課:オープンデータを公開、運用する担当
・生活衛生課:食品営業許可台帳を管理する担当

更に、食品営業許可台帳など、情報公開請求がキッカケで生活衛生課にデータの出力依頼がくることは結構多い、ということも分かりました。

上記踏まえ、

・現状の情報公開請求のみでデータを提供する業務だと、問い合わせ件数や業務時間は削減できない
・オープンデータ化することで「データがほしい」という問い合わせに対応する件数も減らせるし、部署間のやり取りも減るので、かかる業務時間も減らせる

ということをお伝えしました。

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更に、これは去年登壇したCivic Tech Forumで知り合った自治体職員さんに教えてもらったのですが、実際にオープンデータ化をすることで業務時間削減に繋がった静岡市の事例も合わせてお伝えしました。

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中野区では、ICT活用や業務効率向上に注力しているとのことで、この「オープンデータ化することで業務時間削減できる」というのは、区政にとってもご担当者にとってもメリットがあることと認識いただくことができました。

公式見解がきた

上記の事例共有が功を奏したのか、後日、広報・公聴課からは、以下の通り「来年6月〜オープンデータ化に動く」と回答をいただきました。

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ひねくれた読み方をすれば「極端な話、来年度中にオープンデータ化しなくてもこの見解通り」ではあるのですが笑、流石にこのような見解を出したからには、例えば来年の7〜8月頃には食品営業許可データのオープンデータ公開がされるものと見込んでいます。

さいごに

この記事を書いていて、2つのことを思い出しました。

1つは、去年の7月に、Code for YOKOHAMAの定例会にスピーカー登壇した際言われたことです。

「情報公開請求って、スポークスマンみたいな人が嫌がらせでめちゃくちゃ大量の書類請求してくることがあって、自治体職員に嫌われてる制度なんだよね」
(メモを取っていなかったので多少表現違うかもしれません)

もしそういった嫌がらせ目的で請求している人がいて、過去にとても嫌な思いをした職員さんがいたら、今の制度を変える必要はない!と考えるかもしれない。

もう1つは、いわき市のデータを提供いただくために、いわき市役所に直接行った際、職員さんに言われたことです。

「うちは条例で決まってるから出せないけど、隣の郡山市はデータの公開とか進んでてスゴイんよ。でも条例を変えるのは大変なんよ」

職員さんも今のやり方がベストだと思ってやっているわけではない。でも、そう思っていても現場で変えられないこともある。

今回、中野区に情報公開請求したことがキッカケで、オープンデータ推進の流れに反するルールがあり、それは良くないから変えるべきだよね、という共通認識を持つことができたし、更には、区議会や区役所内部を巻き込んで「オープンデータ化しない」から「オープンデータ化する」に方針を変えることができた。
振り返ってみると、とてもやりがいある活動だったし、そこに社会的な意義もあったように思います。

2020年、中野区のオープンデータ化に向けてやっていきたいこと

私の個人的な野望であり、中野区が出している方針ではありませんが、以下やっていきたいことです。

【その1】食品営業許可以外にも、オープンデータ化ニーズのある行政データは沢山ある。それを明らかにし、中野区のオープンデータ化方針として提案する
【その2】オープンデータ公開にあたって、担当課の情報システム課が各課から受理するデータは、加工処理が必要なものが多そう。どうすれば、各課も情報システム課も手間なくオープンデータ公開の運用を続けられるか。課題を整理し、解決策を提案する
(2は、中野区からお金をもらっていたり契約関係があるわけではないので、ただの「おせっかい」になりますが・・・w)

中野区をハックして、行政データをオープンにして、中野区をオープンデータで1番イケてる自治体にしていくぞ。そして、世界をより良くしていくぞ!

参考(よかったら読んでね)


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watambo
自治体ごとにバラバラになっている行政データを整備して1つのフォーマットとして見られるデータベース作りと、そのデータ活用をする活動をしています。 サポートいただいたお金は、その活動資金に当てさせていただきます。ご支援のほどよろしくお願いします!