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現代ベトナム語は「赤い語」に支配されている!?

「ベトナム語における『黄色い語』と『赤い語』に関する考察 田原洋樹」という論文を読み、その概要を紹介するとともに、私が感じたことをお伝えしたいと思います。


この論文は、アメリカ・南カリフォルニアに住むベトナム系住民の言語を観察し、「黄色い語」と「赤い語」の語彙の違いをはじめとした言語変化の分析を行ったものです。

「黄色い語」とは、ベトナム共和国(旧南ベトナム)で使用された言葉のことで、現代ベトナム語ではほとんど使われていません。現在はベトナム戦争以降にアメリカやオーストラリアなど他国へ亡命した越僑や、反体制的な南部出身者などの間で主に使われています。

一方で、「赤い語」とはベトナム民主共和国(北ベトナム)の時代から、現在のベトナム社会主義共和国まで使用されている言葉のことです。私たちが現在学んでいるベトナム語も当然「赤い語」にあたります。

※黄色い語のNhà băng, phi trườngなどは以前南部の高齢者が使っていたのを聞いたことがあります。nhựt bổn, gởiなどはネット上でのくだけた表現として現在も使います。

上のような語彙の動態変化を見るのも興味深いですが、田原先生曰く「赤い語」には、社会主義的な語法や言い回しが含まれており、ベトナム政府の意向が自然に語彙や表現に反映されていると指摘している点に驚かされます。

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