ベトナムの「宝くじ売り」の闇
宝くじ売りの1枚あたりのもうけはいくらなのか?
ベトナムを訪れたことがある人なら、宝くじ(vé số)を歩いて売っている人(người bán vé số)を見たことがあるかと思います。この職業はベトナム社会の貧困層を象徴する存在となっています。
宝くじを売っている人々は、身なりがみすぼらしかったりするなど、ほとんどが貧しい人たちです。中には幼い子供や障害者、お年寄りなど、普通の仕事に就けない人たちも宝くじを売っています。彼らは宝くじ代理店(đại lý vé số)から宝くじの販売を委託され、街中を歩き回って飲食店などにいる人々に直接宝くじを売ります。
宝くじは1枚10,000ドン(約60円)で販売されていますが、彼らが一枚売るごとに得られる利益はたったの1,000ドン(約6円)です。これは販売価格のたった1割に過ぎません。残りの9割は代理店や胴元の宝くじ会社に渡ります。
貧しい人々を支援する目的で宝くじを買う人もいますが、実際に宝くじ売りの人の利益になるのはほんのわずかです。宝くじを買えば買うほど胴元が儲かる仕組みになっています。
普通の宝くじ売りの人は平均して一日数十枚を売り、数百円を得るのが普通で、どんなに調子よく売れても一日100枚(もうけは600円)程度だとされています。一日中歩き回って一般労働者をかなり下回る賃金である宝くじ売りは非常に過酷な仕事なのです。
さらに、代理店から委託されている人は規定の枚数を売らないと、残りの分を自分で買い取らされたり、罰金を科されたりすることさえあります。だから宝くじ売りの人は押し売りをせざるを得ない場合もあり、しつこい宝くじ売りを嫌がる人もいます。
また、宝くじ売りの人が勝手に店に入ってくることによるイメージの悪化を恐れ、宝くじの歩き売りを制限している店や地域さえあります。
セーフティーネットと貧困のループ
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