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インスタントコーヒーの小袋

 インスタントコーヒーを頂くことがあります。1杯分が小袋に入ったものです。しかし私は、普段、カフェを転々としながら仕事をしていて、外でコーヒーをたくさん飲むので、自宅では滅多に飲みません。

 しかし最近、いい活用法を見つけました。ベトナムのカフェでは、たいていは無料でバイクを停めてくれます。そういうとき、駐輪係のオジサンにコーヒーの小袋を1つ、お礼に渡すことにしたのです。

 駐輪係のオジサンは、バイクを出すときは「どっちの方向に行くの?」と聞いて、私の進行方向に向けてバイクを出してくれ、暑い日にはバイクの上に暑さよけのダンボールなどを乗せてくれ、雨が降ると雑巾で濡れたシートを拭いてくれます。中には無愛想なオジサンもいますが、「ご飯食べた?」とか「今日は暑いねえ」などと話しかけると、大抵は笑顔になって対応してくれます。

 駐輪代は無料ですが、彼らはお店から給料をもらっているので、当然のことをしているだけ。でも、いろいろ気をつかってくれる彼らに、「感謝の気持ちが伝えられたらなあ」と、前々から思っていたのです。

 店から出てきて駐輪券を渡すときに、「これ、飲んでください」と、インスタントコーヒーの小袋を一緒に差し出すと、相好を崩して喜んでくれます。これまで30人以上に渡して、受け取ってくれなかったのは1人だけ。そのオジサンも「ありがとう! でもコーヒーは飲まないんだよ」といいながらも、嬉しそうでした。

日本での話ですが、「年配の方に席を譲ろうとしたら、叱られて悲しかった」という子供や若者の体験談を目にすることがあります。譲った側は善意でも、譲られた側にとっては迷惑だったのでしょう。親切をするのも、自己満足であってはいけないわけで、難しいなと思います。

 決して給料が高くない駐輪場のオジサンたちだって、安いインスタントコーヒーを、本当に喜んでいる人はいないでしょう。これは単なる私の自己満足なんだと思います。それを笑顔で受け取ってくれるベトナムの人たちに感謝すべきは、きっと私の方なのでしょうね。

(初出:2018年03月01日)

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