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ヘルメット イン ザ ミーンタイム

 アメリカの「ヘルメット」というバンドの「イン・ザ・ミーンタイム」という曲のプロモーションビデオがテレビ東京で流れたのは1992年の深夜。ケント・フリックと渡辺満里奈(!)がナビゲーターで、海外の新進気鋭のバンドを紹介する30分の番組だったと記憶している。ケント・フリックはなんか8チャンネルとかでヘリコプターやマシンガンのうますぎるモノマネ(確か映画「プラトーン(86年 米)」のエリアス軍曹が死ぬシーンのモノマネ)とかを披露し実家のお茶の間をいい意味でドン引きせていた外国人タレントだ。
そんな彼がグランジ全盛期のアメリカから紹介したのが「ヘルメット」──イントロの轟音発狂ギターと地鳴りのようなドラム、それに続くまるで怒りに任せてハンマーを振り下ろすような粗暴なギターリフが工業機械のように冷徹に反復する狂気のサウンドスタイルは、高校生のわたしをあっさり虜にしてしまった。
渡辺満里奈はドン引きしていた。
「ヘルメット」という名の由来は、バンドのリーダー、ペイジ・ハミルトンが付き合っていた彼女にバンド名のアイディアを求めたところ、「あんたがいつも被ってるそれでいいんじゃないの?」と言われた事からだという──当時ペイジは建築現場で働きながらバンド活動をしていた。

(ちなみにバンドが売れてから、ペイジはかの名女優ウィノナ・ライダーと付き合って別れた。ちなみにドラムのジョン・ステニアーはヘルメットを脱退し2000年代最重要ポストハードコアバンド「バトルス」のやたらシンバルの位置が高いドラマーとして大活躍している。)

なるほどいつも被っているものをバンド名にするというのはいいものです。三角巾。野球帽。スネオヘアー。
そして建築現場で働く俺たちはみんな「ヘルメット」の一員なのではないのでしょうか。なので今度から「ヘルメットのとんかつ」になります。

in the meantime…(そうこうするうちに…。)

さてヘルメット(一人称)なんですけれども、ここ最近忙しかったんですけれども、半年くらい前にある説を提唱しました。それは『作業員のヤバさはヘルメットのヤバさに比例する』という説です。
東日本大震災以降、日本の建築現場はあまり照明に電力を割けなくなりました。なので作業員は現場の明るさを補うべくヘッドライトをヘルメットに装着するのがもはや基本装備になっておりますが、意外とその取り付け方、いい加減ではうまくいきません。モノによってはちょっと下を向いただけでブリンと外れてしまったり、ゴムバンドがびろんびろんになったりするので専用のアタッチメントを購入しないと収まりが悪かったりします。また、モノによってはマニュアルがドイツ語だったりするのでそもそもゴムの締め方などが分からなかったりする場合もあります(経験者 談)。

さて半年前のある日の朝、わたしは駅でスーパーの弁当を食べている作業服を着た小太りな人物を見ました。それ自体は特段珍しい事ではないのですが、彼はすでにヘルメットと安全帯を身に付けており、直立不動で弁当を食べていました。通常、通勤時にはヘルメットを被りません。
そのヘルメットのてっぺんには、ヘッドライトではなく懐中電灯がガムテープでベッタベタに貼り付けられており、そして立ち位置が、改札へと向かう階段とエスカレーターの真横。この街に職場や学校がある全ての人々の目に必ず触れる位置で、ヘルメットのまま弁当を食べているのです。頭のてっぺんに懐中電灯がくっついたヘルメットで。
「こいつはかなりヤバいな。まさか同じ会社じゃねえよな。」
──そして案の定、彼はわたしと同じ一次会社の下に派遣されてきた作業員でした。非常に無口で動きは緩やかでしたが、彼のヘルメットの懐中電灯が、ガムテープの貼り付けが甘かったからか、歩くたびに頭の上でピコピコと動く姿はまるでピクミンかオプーナの様にコミカルでした。
彼は、粉塵がキツい耐火断熱材を扱う作業の際、突然鼻と口にサランラップを巻き付けて作業し始めたので、近くにいた人が「それは無理だろ」と言ったのに聞く耳を持たず、しばらく見ていたら急にいつもの2倍のスピードで暴れ出してサランラップを破り捨て、肩で息をしていたそうです。

「作業員のヤバさはヘルメットのヤバさに比例する」

・無地の白ヘルメットの前面にマジックで大きく「キムタケ」と書いてある
・巨人(野球)のヘルメットを被っている
・XーMENのようなヘルメットを被っている
・無口な人が現場のバーベキューの次の日ビンゴで当たった金色のヘルメットを被って来た
・自作のヘルメットが真っ二つに割れた

など、ヤバいメットの人はもれなくユニークな方ばかりだったので、この説は実証されました!

おわり


ハイエナズクラブのヘルメット













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