デンマークの王室ジュエリーコレクション ローゼンボー城
二週間のお休みを頂き、北欧でジュエリーの勉強をして来ました。
訪れた都市は3都市、その中でも一番最初の訪問地、デンマークのコペンハーゲンにあるローゼンボー城にある宝物殿では、世界中の宝飾美術館やコレクションを訪れた事のある私も、ちょっと驚くほどの質の高いコレクションと宝飾品の数々を見る事が出来ました。
大きなデパートやブランドのお店が並ぶコペンハーゲンの中心地から歩いて15分ほどにあるローゼンボー城は、1606年に夏の離宮としてオランダのルネサンス様式で建てられたお城です。コペンハーゲンを歩いていると運河が街の中心にある事や、建物などお隣の国、オランダのアムステルダムの街並みにとても似ていると感じます。ローゼンボー城はこじんまりとした煉瓦造りのお城でオランダ、フランダース様式の影響を受けたこの時代のデンマークの典型的な建築物だそうです。夏の離宮として建てられたと言うだけあり、小さなお城ですが周りはお散歩にちょうど良い気持ちの良い緑の広がる庭園に囲まれ、多くの地元の方々が限られた北欧の美しい夏の光を愛おしむ様にこのお城の庭園で散歩やお昼寝を楽しんでいました。
コロナ前もそうでしたが、ヨーロッパでこのような観光地へ行くときには必ず、オンラインでチケットを予約しないと数時間行列で待ったり、チケットを手に入れても行きたい時間に入場制限で入れない事もあるので、訪れるご予定のある方にはオンラインでのチケットの予約をお勧めします。
私も、のんびりと中心地のジョージジェンセンでお土産を購入し、このお城にお昼に着くと長蛇の列。
チケットを購入してお城の敷地内にあるお土産屋さんで大量のお土産を購入してまた、2時間半後の入場時間に戻ってやっとお城に入る事が出来ました。携帯電話やカメラでの撮影はできますが、セキュリティー上バックはロッカーに預ける必要があり、ロッカー前に置いてあるコインを入れて入り口にある無料ロッカーに預けます。
城内は本当に美しく整備され、写真の様にこのお城が現役で華やかだった時代の王侯貴族のドレスを纏った男女が何人も歩いていて、優雅に扇で煽ったり、お辞儀をしながら当時の生活を忍ばせ、勿論我々観光客の撮影にも応じてくださいます。調度品だけでなく、絵や小さなショーケースに17世紀から19世紀の華やかな珊瑚の置物やシール、勲章、チェーンや時計など比較的今のアンティークジュエリーストアでも売られているような当時の普段使いと思われる身の回りのお品が城内の調度品としっくり来るように小さなケースに入れられて展示されていました。ちょうど一週間前に、コペンハーゲンを訪れたアメリカの同業者の友人から、かなり凄い宝飾品がある事を聞いていたので宝石はどこにあるかを聞くと、お城の外に一度出た地下の別の入り口から入る宝物殿があるとの事でした。
王家の宝物殿の入り口の前には衛兵がいて厳重に警備をしています。徒歩15分程度の距離にあるアマリエンボー宮殿との交代式で、ここの兵舎を使っているらしく、滞在時間中にも何度か衛兵の交替式が見られました。
まず地下の入り口を入った部屋で圧倒されるのはシルバーにギルドを施され、ルビーが象嵌されたクリスチャン5世のチェスセットです。幼少の頃から玩具としてだけで無く、戦い方の勉強をするために父親から贈られ、あまりにも気に入って遊んだのか色々な箇所に修理の跡が見られるそうです。
この部屋には数多くの武器が展示されています。
この武器の展示は式用・競技会用、軍事用、狩猟用と4つの分類に分けて展示されており、特にジュエリー好きの方は写真のピラミッドの様な形のダイヤモンドの原石の形を生かした、スクエアポイントカットダイヤモンドとエナメルの装飾が見事な銃に目を奪われると思います。
その他には象牙やシルバーで出来た見事な帆船の模型なども、展示されていますが、その展示と一緒にこの帆船の模型を作った、男性の職人の肖像画も大切に飾られています。これは当時の王フレデリク3世が、このように職人にも敬意を表す人だった事がわかります。またこの城にはフレデリク3世が雇っていた錬金術師が作ったと言われるゴールドのナゲットも展示されています。
武器やオーナメントが展示がしてある部屋の下の階の部屋はお待ちかねの宝物殿の目玉とも言える王族の宝飾品の展示室となっています。
その中でも特に目を引くのは、美しい金細工に素晴らしいエナメルの装飾を施した宝石箱や勲章、ルネサンス様式の宝飾品です。イギリスのヴィクトリア&アルバートミュージアムやフランスの装飾美術館のコレクションを凌ぐのでは無いかと思うほどのお品が沢山あり、またエナメルのテクニックや質も他の同時代のヨーロッパの王侯貴族のコレクションと比べても抜きん出て素晴らしい様に感じました。
このNoteでは展示のお品の中でも特に、私が個人的に気になったお品をご紹介して行きたいと思います。
クリスチャン4世の王冠
展示物の中でも目を引くのはクリスチャン4世の王冠です。
この王冠は1595 年から 1596 年にかけてオーデンセのディリッヒ ファイアリングによって作られました。 素材はゴールドにエナメル、テーブルカットダイヤモンド、ジェムストーン、パール。総重量2895g!
約3キロという重量です。
王冠の大きな先端に描かれた数字は、王の美徳と権力を表しています。王冠の正面にはペリカンが自分の血を子孫に与えるためにつついているのが見えますが、これはすべての王が臣民を守るために自らの血を犠牲にする必要性を象徴するとともに、伝統的な献身の表現でもあります。キリストの犠牲の死について。王の右腕の上にはライオンに乗ったフォルティトゥードが、左腕には王の武術と最高裁判官としての地位を表すユスティティアが描かれています。王冠の後ろには授乳中の母親が描かれており、国王が教会よりも優れていること、神への愛と臣民への献身的な姿勢を示しています。 内側には王領州の紋章が入っています。王冠は、ルネサンス様式で作られ、当時としても時代遅れであるにもかかわらず、意図的に開いた構造になっています (宝物庫 3 のクリスチャン 5 世の王冠と比較してください)。これは、スウェーデンとノルウェーで構成され、デンマークが首長を務める連合である北欧カルマルニオンの王冠に関連していると言われています。このクラシカルな意図的な選択は、おそらくスカンジナビア統一に対する彼の多かれ少なかれ正当な主張を示すためのものであったと思われます。
この王冠が最後に使用されたのは 1648 年のフレデリク 3 世の戴冠式で、彼は財政上の問題を抱えていたものの、王冠を近代化することに決めました。”クリスティアン4世が王冠を質に入れたため”ハンブルクの銀行家から王冠を買い戻さなければならなかった不名誉な記録が残っています。
(いくら王族でも贅沢のしすぎです!!!)
この素晴らしい王冠を作ったこの素晴らしい王冠を作った金細工師ディリッヒ ファイアリングについて
彼は16 世紀後半にオーデンセで金細工師として働き始めた事が記録に残っています。 1581年にフレデリク2世に仕え、1595 年より前の数年間、彼は国王のためにいくつかの銀の作品を制作しました。 銀のトランペット、数多くの金の鎖、そして金の肖像画のエナメル。 彼はまた、ダイヤモンド、ルビー、サファイアを取り付けたり、エナメル細工を施したりしました。 ファイアリングは1596年、クリスチャン4世の王冠を作るよう命じられました。 これは、保存されていることが知られている彼の唯一の作品であり、多彩な装飾と美しく造形された人物像を備えた、ルネサンス期のヨーロッパの金細工師芸術の主要な作品です。 1597年、彼は大きなサファイアを使用した宝飾品(おそらく現在はクリスチャン5世の王冠に置かれているもの)と、国王の真珠のついた馬用ブランケット用のいくつかの金の指輪を製作した記録が残っています。
数多くある指輪のコレクションの中でも特に目をひいた物はこのリング!
カルセドニーの土台にアゲートで作られたてんとう虫!表面が少し摩耗しているところから、恐らくこの持ち主もリングを気に入っていたのでは無いでしょうか?
クリスチャン 5 世からクリスチャン 8 世までの王が使用した絶対君主の王冠。王冠は最初にクリスチャン 5 世の戴冠式に使用され、最後に 1840 年のクリスチャン 8 世の戴冠式に使用されました。今日、王冠は君主制と国家の象徴として使用されています。唯一の儀式的使用は、亡くなった君主のカストル ドロリスの儀式の際に君主の棺に置かれる際にも今でも使用され、この王冠はデンマーク王室の紋章および国の紋章の一部です。 1670年から1671年にかけてコペンハーゲンのポール・クルツによって作られました。ゴールドにエナメルとテーブルカットストーン。総重量2080g。また、2 つのガーネットと 2 つの巨大なサファイアが使われており、その大きなサファイアの由来はフレデリック 1 世に遡り、おそらく 1474 年にミラノ公ガレアッツォ マリア スフォルツァ公爵から彼の父クリスチャン 1 世への贈り物でした。この上のパルメットにはテーブル カットのダイヤモンドがあり、その後ろには金糸のクリスチャン 5 世のモノグラムが見えます。絶対主義が廃止されて以来、王冠は亡くなった国王の礼拝の場でのみ使用されてきました。権力と威厳の象徴としての王冠は、「コロナ」として知られるローマの勝利の花輪にまで遡ります。その支柱は、フランス王ルートヴィヒ 14 世の王冠からインスピレーションを得た閉じた形を作り出し、統治者の絶対的な権力を象徴しており、その責任について主権者である王に責任を負わせることができるのは神だけです。クラウンのブレースは上部でオーブ状につながっています。
ローゼンボー城には、デンマーク王と王妃の王冠とそれに関連するレガリア(ラテン語: regalia、英語: regalia、リゲイリア)は、王権などを象徴し、それを持つことによって正統な王、君主であると認めさせる象徴となる物品が数多く展示されています。
王冠のサークレットは 2 つの大きなサファイアで 4 つに分割されており、平らなものは着用者の額にあるフリードリヒ 1 世に遡ることができます (おそらく、ガレアッツォ マリア スフォルツァ公爵から彼の父クリスチャン 1 世への贈り物と考えられます) 1474 年にミラノで作られました)、ヘッドの後部には厚いものがあり、一方の側にはスピネルが、もう一方の側にはガーネットが付いています。これらの石の間にあるサークレットの 4 つの曲線セグメントは、テーブル カット ダイヤモンドで作られた渦巻き模様で装飾されています。 サークレットの上端には、大きいものと小さいものが 4 枚ずつ、合計 8 枚のアカンサスの葉があります。これらのアカンサスの葉は、ダイヤモンドがちりばめられたリブで装飾されています。前面のアカンサスの葉は大きなテーブル カット ダイヤモンドで装飾されており、その後ろにはクリスチャン 5 世のロイヤル サイファーが見えます。これらのアカンサスの葉のそれぞれの裏側には、ダイヤモンドがちりばめられた狭い半アーチがネジで取り付けられており、これが王冠の上部で交わって、ダイヤモンドで装飾され、その上にダイヤモンドがちりばめられた十字架がついたスカイブルーのエナメルの球体 (モンド) を支えています。 。このクロスのトップにはカボションルビーが付いています。リューズの重さは2080gです
世界中の王族のジュエリーの書籍を購入し、時間があればそのコレクションが見れる場所を訪問していますが、このローゼンボー城のデンマーク王室のコレクションには正直その数と細工の美しさと細かさに驚かされました。
またコレクション自体がイギリス王室のジュエルタワーの様に完全に観光可されて有名な訳ではなく、時間を指定される事はありましたが、混雑していなく、ゆったりじっくりと見れる事が魅力です。
ヨーロッパの王室はどこもそうですが、王室同士の交流があり、宝石の素材や製作も自国のみならず、ヨーロッパのみならず世界各国から良い物を集めて贅沢に作られています。特に自国のデンマークで製作された金工とエナメルの質はその中でも群を抜いてトップクラスと言えるでしょう。
北欧やロシアはエナメルの細工が有名ですが、それが、厳しい冬を室内で過ごす事や、夏が長く、仕事に集中出来る事、またカラフルな色が暗い冬の間の厳しさや寂しさを明るく力づける事なども理由の一つでしょうか。本当に驚くほど美しい数多くの作品が多い事に驚かされます。
勿論デンマーク王室が所有している宝物はこのローゼンボー城にあるものの
他にも多数あります。注意をして見ると現在83歳のマルグレーテ2世(現在イギリスのエリザベス2世が崩御した為世界でただ一人の女性君主)は本当にお洒落で、数多くのロイヤルジュエルを思わぬ使い方でさまざまなドレスに組み合わせて使用している写真も見つかります。
パールネックレスを逆に使ってブローチをパールネックレスから下げていらっしゃるマルグレーテ2世。その他にもブローチをヘッドとして使ったり
ネックレスを巻き付けたりと素敵なアイディアでロイヤルジュエルをセオリー通りでなく一捻りされるお洒落な装いをされていらっしゃいます。
デンマークで思いがけずに素晴らしい王室のジュエリーと美しい金工細工の
素晴らしさを再発見する事ができました。
最後にこの素晴らしいローゼンボー城にご自宅のコンピューターから訪れる事が出来るのヴァーチャルツァーがありますのでご紹介致します。
ローゼンボー城の入り口から入り、室内の豪華な装飾や絵画や家具などのしつらい、展示品などを楽しむ事が出来ます。
是非皆様もデンマークの至宝をお楽しみいただければと思います。
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