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A Hybrid Quantum-Classical Autoencoder Framework for End-to-End Communication Systems

2025年の抱負

せっかく2025年って凄い年なのに、何か意味のあることをしないのは勿体無いじゃないですか。
なので「今年こそは海外旅行に行こう!」と思ったのですが、一人暮らし始めるとそれどころじゃないですよね。
それとも一人暮らしをするというのが今年の抱負なのか…?


概要

A Hybrid Quantum-Classical Autoencoder Framework for End-to-End Communication Systems
written by Bolun Zhang, Gan Zheng, Nguyen Van Huynh
published on Tue, 31 Dec 2024(v2)

[Abstract]
This paper investigates the application of quantum machine learning to End-to-End (E2E) communication systems in wireless fading scenarios. We introduce a novel hybrid quantum-classical autoencoder architecture that combines parameterized quantum circuits with classical deep neural networks (DNNs). Specifically, we propose a hybrid quantum-classical autoencoder (QAE) framework to optimize the E2E communication system. Our results demonstrate the feasibility of the proposed hybrid system, and reveal that it is the first work that can achieve comparable block error rate (BLER) performance to classical DNN-based and conventional channel coding schemes, while significantly reducing the number of trainable parameters. Additionally, the proposed QAE exhibits steady and superior BLER convergence over the classical autoencoder baseline.

[Abstract(翻訳)]
本論文は、無線フェージング環境におけるエンドツーエンド(E2E)通信システムに量子機械学習を適用する方法を調査する。我々は、パラメータ付き量子回路と古典的なディープニューラルネットワーク(DNN)を組み合わせた新しいハイブリッド量子-古典オートエンコーダアーキテクチャを導入する。具体的には、E2E通信システムを最適化するためのハイブリッド量子-古典オートエンコーダ(QAE)フレームワークを提案する。我々の結果は、提案されたハイブリッドシステムの実現可能性を示し、従来のDNNベースおよび伝統的なチャネル符号化方式に匹敵するブロック誤り率(BLER)性能を初めて達成しながら、学習可能なパラメータの数を大幅に削減できることを明らかにする。また、提案するQAEは、古典的なオートエンコーダベースラインと比較して、安定的かつ優れたBLER収束特性を示す。

コンテンツ

深層学習を使ったE2E通信システム

近年、深層学習を活用した無線通信システムが栄えている。
従来の通信システムは、数学的に設計された信号処理ブロックに依存しており、特定のタスクに対しては最適である一方で、複数のブロックが独立して設計されるため、全体として最適な構成を得るのが難しい。
深層学習ベースの手法では、個別の信号処理ブロックを統合して通信システム全体をオートエンコーダ(AE)としてモデル化し、中間層にノイズチャネルを使う。

従来の通信システムとAEベースのE2E通信システムの構造

データ駆動型の方法により、再構成損失関数を用いて送信機と受信機を同時に最適化することが可能になる。

E2Eアプローチは、既存のベースライン変調および符号化方式と比較してほぼ最適なブロックエラー率(BLER)の性能を実証し、最適な戦略が未知の場合において、チャネル劣化に対する効果的な解をシステムが学習することを可能にするものである一方で、AEは主に全結合層で構成されており、ブロックサイズが大きくなるとパラメータ数が指数的に増加し、計算コストやメモリ効率の問題が発生する。

QMLの登場

量子コンピュータの登場により、その計算能力の特性上古典的な2進計算と比較して、より高いメモリ効率と高速な収束率を実現することが可能になる。
先行研究では、E2E通信システム向けのハイブリッド量子-古典AEについて検討されているが、単一チャネル使用のみを考慮しており、実験的な設定では現実的でなく、ベースラインの送信機は全結合層を欠いており、単純な線形埋め込みにのみ依存しているため比較基準にあるアーキテクチャに準拠していない。
その上、誤り率曲線は大きな変動を示しており、一貫性があり解釈可能な傾向を示していない。

本論文では、実験条件を現実的に設定し、安定した性能を持つハイブリッドQAEフレームワークを提案する。
従来の古典的AEシステムで見られるパラメータの指数的増加問題を軽減し、BLER性能を損なうことなくパラメータを約50%削減する。
更に、提案したQAEは古典的AEベースラインと比較して優れたBLER収束性能を示し、並列量子回路設計により、One-Hotベクトルから符号化信号へのより効果的なマッピングを学習できることも明らかにする。

システムモデル

E2E通信システムの送信機と受信機は、それぞれ異なるフィードフォワードDNNとしてモデル化され、中間層のノイズチャネルは非学習型の結合の役割を担う。
送信機では、ソースメッセージ $${\bm{s}}$$ を $${M}$$ 次元のOne-Hotベクトルとして受け取り、エンコーダ関数 $${f_E}$$ により信号 $${\bm{x}}$$ に変換される。
ノイズチャネルでは、送信機で変換された $${\bm{x}}$$ を用いて次のような線形変換を行う。

$${\bm{y} = h \bm{x} + \bm{w}}$$

ここで、 $${h}$$ は複素係数で $${\bm{w}}$$ は平均 $${0}$$, 分散 $${\sigma^2}$$ の分布に従う加法性ガウスノイズである。
受信機では、ノイズチャネルから得られた信号 $${\bm{y}}$$ をデコーダ関数 $${f_D}$$ を用いて推定メッセージ $${\hat{\bm{s}}}$$ に変換する。
出力としては、 $${M}$$ 次元の確率分布を得た後、最も高い確率のインデックスを選択する。

システム全体は次のような連鎖的な関数として表現できる。

$${\hat{\bm{s}} = f_D(f_h(f_E(\bm{s}; \bm{\theta}_E)); \bm{\theta}_D)}$$

$${f_h}$$ はノイズチャネルでの線形変換の関数であり、 $${\bm{\theta}_E, \bm{\theta}_D}$$ はそれぞれのNN内のパラメータを表している。
システムの目的は、損失関数 $${\mathcal{L}(\bm{s}, \hat{\bm{s}})}$$ を最小化することである。
送信機と受信機を共同で最適化することで、システム全体の性能を向上させられる。

QMLの概要

量子コンピュータと機械学習を組み合わせた量子機械学習(QML)では、重ね合わせや量子もつれの特性を活かすことで、従来の機械学習と比較してメモリの効率性や収束速度などを向上させる可能性を秘めている。
変分量子回路(VQC)はQMLに大きな貢献をし、量子ニューラルネットワーク(QNN)などのアーキテクチャに活用されている。
QNNの主な構成要素は、「量子埋め込み」、「パラメータ付き量子回路(PQC)」、「量子測定」の3つである。

量子埋め込みでは、古典データベクトル $${\bm{x}_d \in \mathbb{R}^N}$$ を以下の式によって量子状態 $${| \psi \rangle}$$ に変換する。

$${| \psi \rangle = \frac{1}{\sqrt{\sum_{i=1}^N |x_i|^2}} \sum_{i=1}^N x_i | i \rangle}$$

ここで $${N = 2^n}$$ は $${n}$$ 量子ビットの量子状態を、 $${x_i}$$ は $${\bm{x}_d}$$ の $${i}$$ 番目の要素を、 $${| i \rangle}$$ は $${i}$$ 番目の計算基底状態をそれぞれ表している。
PQCは、「パラメータ付き回転ゲート」と「量子もつれゲート」で構成されている。
パラメータ付き回転ゲートでは、調整可能な回転角を使用して量子ビットの状態を変化させ、量子もつれゲートでは、量子ビット間に量子もつれを生成し、回路の表現力を向上させる。
量子測定においては、通常 $${Z}$$ 基底で測定され、量子状態を古典的なデータ表現に変換する。

ハイブリッド量子-古典オートエンコーダ

ハイブリッド量子-古典オートエンコーダ(AE)のアーキテクチャは次の通りである。

ハイブリッド量子-古典AE

送信機は、並列の2つの量子回路で構成されており、それぞれ実数成分と虚数成分をエンコードする役割を持つ。
チャネルは、通信過程における信号劣化をモデル化し、ノイズやフェージングの影響を受けた信号 $${y}$$ を生成する。
受信機は、複数の全結合層で構成されており、最終層はソフトマックス関数を用いて出力する。

QNNの詳細は以下の通りである。

QNNの詳細

量子回路は、振幅埋め込みを利用してOne-Hotベクトルを量子状態に変換する。
各量子回路には $${L}$$ 個のPQCが含まれる。

パラメータと計算複雑性の分析

従来のAEのパラメータ分析の結果は次の通りである。

古典AEのパラメータ分析

送信機において、古典AEは2つの全結合層で構成されており、全部で $${(M + 1)(M + 2n)}$$ 個のパラメータがあるのに対し、提案するQAEの方では2つの量子回路を合わせても $${2Ln}$$ 個のパラメータしか必要としない。
$${k = \log_2(M)}$$ (すなわち $${k}$$ はビット数)とすると、古典AEのパラメータサイズは $${2^{2k + 1} + (2n + 1)2^{k + 1} + 2^k + 2n}$$ であるのに対し、QAEでは $${2^{2k} + (n + 1)2^{k + 1} + 2Ln}$$ となる。
これにより、QAEでは $${k}$$ の値が大きくなるにつれてパラメータ数が大幅に削減される。

$${(n, k)}$$ の組み合わせを変えたときのパラメータサイズを比較したものが次のテーブルである。

パラメータサイズの比較

今回、 $${L = 3}$$ としており、QAEは古典AEに比べて約50%ものパラメータを削減している。
提案されたQAEはPennyLaneを使って実装されており、現在の量子シミュレーションでは実行時間が長く、計算コストが高いという課題があるが、将来的には並列実行などにより更なる効率化が見込める。

実験設定

QAEの性能比較の対象として、古典AEや伝統的な変調方式またはチャネル符号化方式をベースラインとして置く。
バッチサイズは32、学習率は0.001、最適化器はAdam、損失関数はカテゴリカルクロスエントロピーとして設定する。
学習時の信号対雑音比(SNR)は固定で10 dBに設定し、評価時には0〜20 dBの範囲で性能を測定する。
シナリオとしては、以下の3つで実施する。

  • $${(n, k) = (4, 4)}$$: BPSK

  • $${(n, k) = (7, 4)}$$: ハミング符号

  • $${(n, k) = (8, 8)}$$: BPSK

BLER性能は、以下の異なる3つのフェージングチャネルで評価する。

  • Rayleigh

  • Rician

  • 3GPP

ブロックフェージングチャネルを仮定し、完全なチャネル状態情報を利用して等化処理を行う。

$${\hat{\bm{x}} = \frac{\bm{y}}{h}}$$

性能評価

BLER比較

$${(n, k) = (4, 4)}$$ のシナリオにおいて、古典AEとQAEの両方が、全てのブロックフェージングチャネルにおいてBPSKを上回る性能を示しており、更にRayleighおよび3GPPにおいて、QAEは古典AEに対してわずかなBLER改善を示している。
$${(n, k) = (7, 4)}$$ のシナリオにおいて、古典AEとQAEの両方がソフト復号を用いたハミング符号とほぼ同等のBLER性能を示し、QAEが既存の準最適チャネル符号化の基準と同等の性能を達成している。
$${(n, k) = (8, 8)}$$ のシナリオにおいて、QAEは古典AEと類似した性能を示し、両者とも従来のBPSKを上回る性能を発揮している。

BLER収束速度比較

QAEは20エポック後により低い定常状態のBLERを達成し、この傾向は残りの範囲において一貫して維持されており、優れたBLER収束性を示している。
これは送信機側の並列量子回路が、古典DNNよりもOne-Hotベクトルを送信信号にエンコードするためのより効果的なマッピングを学習できることを明らかにしており、これにより、提案するQAEフレームワークが、古典AEのベースラインと比較して、パラメータを大幅に節約しながらBLER性能を向上させる効果的な手法であることが示された。

結論

QAEは、古典AEおよび通信方式と同等またはそれ以上のBLER性能を達成した。
パラメータ数を従来手法と比較して大幅に削減し、特に大規模なブロックサイズにおいて顕著な利点を示した。
更に、学習中のBLER収束特性が向上し、安定した学習結果を実現した。
一方で、現在の量子シミュレーションは実行時間が長く、計算コストが高いという課題がある。
今後の量子コンピューティング技術の発展により、さらなる実用化と効率向上が期待されている。

感想

「…たまたまじゃない…?」という感想の実験結果ですね。
深層学習で十分な性能を出せているのであればそもそも良いだろうし、QAEの結果も僅かな改良っていうことであれば計算コストの観点から使われないだろうし…。
あと、パラメータサイズとか収束速度とか、量子の特性から改善できるというのに少し懐疑的なんですがどうなんでしょうか?
量子機械学習の文脈での優位性って、古典じゃどうしようもできない予測をカバーすることができるっていったところにあって、単純に古典でできることに優位性をもたらすとはどうにも思えないんですよね。
まあ、難しいですよね。

終わりの1曲

The Wanted - Walks Like Rihanna

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