見出し画像

原点回帰 V.2.6.7.7(2017/11/13投稿)

お邪魔いたします。シカゴ大学太田です。

麻雀はおもしろい。奥が深い。頭の体操に良い。そして手術と似ている要素がある。
医師になって以来、卓を囲んではいませんが、大学時代は気の置けない仲間とよく麻雀をしていました。いつもほぼ同じメンツでしたが、いわゆる麻雀が強い人と一緒にずーっと打っているとだんだん自分の実力が強い人に近づき打ち筋も似てきます。最終的には実力が拮抗してきます。それでも頭一つ抜きん出ているある先輩はよくフリーで雀荘に行きいろいろな強い人と打つことで経験を積み実力を伸ばしていました。私は雀荘に一人で出向く勇気もなく、いつも仲間内で打つのみだったので、基本的にはその先輩と打つことで実力を伸ばすに止まっていました。しかし、一緒に打っていれば誰でも実力が伸びるかというわけではありません。周りに感化され自動的に成長するだけで自分で考えどのように打つべきか考察しない、もしくはその能力に乏しい人はいつまで経っても実力は伸びず負け続けていたように思います。周りに実力を引き上げてもらうのは単なる、しかし大切な基盤作りであり、それと並行して自身で実力を伸ばすこと。この両者とも重要で、前者だけもしくは後者だけでも成り立たない。前者は良いmentorに巡り会うことと、良いトレーニング環境の施設に入ることなどでしょうか。これらは大半は運勝負であとはちょっとした自分の努力による。後者は100%自分次第で、誰か偉い人が言っていた「99%の努力と1%の才能」という言い回しがしっくりくる。この理論だと、今の不甲斐ない自分は運がなかっただけ、と言い訳する人が出現すると思います。私の麻雀理論は、麻雀は運だけではない、記憶力と観察力と確率論を主体とする実力、およびここ一番の第6感が勝敗を左右する。雀聖哲也によると、バイニンは運任せの勝負などしない、運すら実力で支配下に置く。

「今後、もしよろしければ北原先生のブログにお邪魔して、違う立場から少しづつ北原先生のトレーニングの様子を発信できればと思います」

私が初めてここにお邪魔した時に書いたことです。忘れてませんよ。はい。ってことでいつもの通り前置きが長すぎましたが、今回は北原先生がシカゴ大学にやってきて1年が過ぎ、その成長ぶりを報告したいと思います。

正規フェローとの兼ね合いはあるものの、結果的にこの1年は私の症例はほぼ全て北原先生と一緒に手洗いしました。外科医の方なら分かると思いますが、相手が手術に入ったことのない学生さんであろうと、何でもこなせるまでトレーニングを積んだ外科医であろうと一度一緒に手術をするとその人がどのようなタイプの外科医で、いわゆる外科医のセンスがあるかどうかはすぐに分かると思います。私の北原先生に対する第一印象は、先日の紙谷先生の投稿にあったそれとよく似ており、非常に安定性のある良い外科医になりそうな感じでした。無茶をしない抜群の安定感が持ち味です。もともとの手術に対する豊富な知識と経験を軸に、抜群のcopy and paste能力でどんどん実力を伸ばしております。第一助手の位置から教えながら手術をする経験の全くなかった指導医としては全くの初心者の私をして、私に自身の指導力がそれなりに備わっている、もしくは備わってきたと錯覚させてしまうのも北原先生の実力を反映していると思います。指導していて一番助かるのは、言葉で説明しようのない感覚的な外科的センスの領域において、図らずももともと私のそれとよく似たエリアにいる、もしくは私のエリアに合わせてくれる能力があるため、手術を教えやすく任せやすい点、それと一度注意及び指導をして理論的感覚的に理解し納得したことに関しては二度と注意をする必要がないことなどがあります。さらなる経験値でしかカバーしきれない事柄、一発勝負の難しい局面において私の指導処理能力を超えてしまって思わず私が術者を乗っ取ってしまう事柄を除いては私と実力がほぼ拮抗してきていると思います。以前は、針の角度や運針などが気に入らないと毎回手術を止めて注意していました。最近は、100%私の好みにあった縫い方、切り方ができるまで到達している、とはまだ言えませんが、イマイチな運針をしてしまったりした時に私に注意されるであろうことを事前に認識し「深すぎましたか?」などと自己申告してくるようになりました。その感知率は90%ぐらいでしょうか。もう一つの要素はスピードです。安全性確実性を確保した上で、スピードを追求するのは非常に重要だと思います。例えばAVRの遮断時間が30分でも60分でも大勢に影響はないと思いますが、複雑な複合手術になった時に遮断時間が200分か400分かは大いに予後に影響すると思います。私が指導されてきたのは you don’t need to move quickly but be efficient。時間の短縮の要素はたくさんあると思います。手術時間の使い方について研究すると、その3−4割は実際には患者に手技を施すわけではなくナースとの器械のやりとり、糸が出てくるのを待ってるなどの「無駄」な時間です。これらを限りなく0に近づけることで手術時間は激減します。 一番手っ取り早く手術のクオリティーに影響なく時間を短縮できる方法です。北原先生にもこれをまず実践するように、そして「時間の無駄遣いは許さねえ、あたしゃ止まると死ぬんじゃあ」オーラを出し続け手術室全体がスピードアップに積極的になるように持っていくように指導しています。現在の北原先生はefficiency向上については及第点ですが、いわゆる寛平さんオーラはまだ出ていないようです。最大の武器である安定性確実性からくる安心感がいい意味でも悪い意味でも周りに影響しているようです。安定確実性を保ったままどのようにオーラを纏うか見どころですね。総合的にはすごい勢いでラーニングカーブを駆け上がっており、頼もしい限りです。これからはだんだんカーブの傾きが浅くなってくる時期だと思います。ラーニングカーブがプラトーにならないようにする方法についてはいろいろありますね。。。

“Am I answering your question?” 学会での質疑応答で質問に答えている時に自分が一体何を議論して何を言っているのかのか分からなくなってきた時に私がよく言うセリフです。北原先生の成長報告になってますかね?
ま、とりあえずそんな感じです。

画像1

写真:先日、解離の手術がありました。北原先生は術前にCTを見て「あ、これやばいやつですね、まあでもやらないと死ぬんでやる以外の選択肢ないですね」、術中には「ここは血出ますね」「ここに関しては、やばい度合いでは前回よりマシですね」「ここは糸入れといたほうがいいですね」「血出まくってますけどまあ圧迫で粘る以外ないやつです」など手術全体の手技を含め、全て正解を選んでいたと思います。結果的に私は重要な部分だけ第一助手を務める以外は何もすることがなくヒマでした。自分のオフィスでノルマのゲームをこなしたり、北原先生から与えられたとあるyoutube動画の研究に明け暮れてました。もし私が現場に全くいなくても私の思い通りの手術が遂行されたであろうと思った初めての症例でした。症例が終わったその日の午後に時間があいたので遅い昼食をとりにダウンタウンにある牛角に繰り出しました。上記のような感想を抱いていた私はそこでふと「もし先生が今日の解離の症例のアテンディングだったら今日と全く同じ手術をするか?」と聞いてみたところ 「まあ、そうしたと思います。中枢側の吻合ですけど、グラフトとの重なりがこーいうふうに。。。」って言っている瞬間の北原先生。

北原先生の習性箇条書きメモ
1, 慶應ボーイなのに笑いに異様に厳しい
2, パーカーをこよなく愛し見た目普通でお値段は飛びきり高い日本製のパーカーを勝負着としている
3, 絵の才能がいわゆる「画伯」レベル
4, 彼女募集中
5, 趣味が映画鑑賞と適当に言う人を「自分なんかまだまだでした」って半泣きにさせるほどの本気の趣味が映画鑑賞
6, 学術活動をこなす量、効率の良さがハンパない
7, 自炊しない
8, 洗い物を出さないことに執念を燃やす
9, 最近購入した仕事用のスニーカーが阪神タイガースみたいだという私の理論を決して認めない
10, このブログへの情熱がやばい
11, ブログへのコメントをどうやって増やすかという議論で1日が終わる
12, 北原オカンが結構な人物である
13, カラオケに行った時にすべきこと3か条を全うできないと北原友人になれない
14, ECMOが好きすぎて一緒に空を飛んじゃったりする

いいなと思ったら応援しよう!