ノラガミ設定考察 終レポート 完全版⑧
毘沙門天
・百足 毘沙門天の化身で、節足動物である。ムカデは珍しく、子育てする虫として知られている。メスが卵から孵った幼虫の群れを守る性質がある。害虫を捕食してくれるため、益虫である。ムカデやオオゲジはゴキブリなどを捕食してくれるため知っている人は家のガーディアンとしてありがたがる。しかしインパクトのある外見のため、実害は無いのに、不快害虫というジャンルで駆除の対象にされてしまう。
父様を退治しようとして毘沙門天が天の敵、天敵になってしまったのは、不快害虫に対する世の対応を連想させる。
月マガは知ってるだけで2作(鉄界の戦士、ムシジョ)はムカデやゲジの漫画が出ている。仮面ライダーと良い、編集部は虫が好きなんでしょうな。キャタピラーもアラクニドも大好きだったのでわかりみである。
・七 兆麻や七は、百足から来る数字つながりの名称である可能性が高い。あるいは七福神から。または七支刀から。アヤはヘブライ語のアバ(父)と同語である。また文(アヤ)は織物を示す。よって神衣を兼ねた。七の真名はアスラ/阿修羅かもしれない。毘沙門天と同じくインド神話の神である。阿修羅は、娘の婚約者が結婚前に娘に手を出したとして、本人たちは納得しているのに、筋が通らないとして激怒し、行きすぎた戦争をし続けた逸話を持つ。
・螽/イナゴ 冬に虫と書いて、イナゴまたはキリギリスを表す。春に虫と書く、蠢く/うごめくに対応する。蠢は芋虫の動きを表し、愚かで道理をわきまえない様子も表す。螙/しみは、紙魚あるいはキクイムシを表す。また虫が番になることを蟠るという。
・眠り姫 毘沙門天は雪器によって切られたあと、随分と長く眠っていた。これは紡錘/スピンドルで指を刺し、イバラで包まれた城で眠った眠り姫を暗示している。イバラ/棘が兆麻であると考えられる。また人体(指や耳)を刺すものとして、スピンドルの雪器(短い方)と、釘でピアスの兆麻が対照的に描かれていると考えられる。また茨城県には金色姫物語が伝わっており、インドから船で流れ着いた眠り姫が養蚕を伝えたという話になっている。このため兆麻が、繭から紬を作る様に、毘沙門天の手に口付けていると考えられる。
・蝗/イナゴ 稲を食べる害虫。日本では佃煮などにしてイナゴを食べる。旧約聖書でもイナゴは食べても良い虫とされている。享保17年にイナゴによる大飢饉が発生している。
・鈴虫 バッタ科の昆虫。別名マツムシ。待つ虫である。美しい音色を出す。
・枇杷/びわ 枇杷の木は縁起が悪いと言われる。大きくなりすぎて庭に日がささなくなる。このため間引き選定が必須の樹木である。また枇杷の葉や実が健康に良いため、病人が枇杷を求めてやってきて病気をうつされるからとも。びわは、不破/ふわに通じる。
・紝/じん 紝は織り機に用いる絹糸のことである。機用の絹糸を織紝/しょくじんという。お絹さんという呼び方もまんま絹の意である。乗馬用のシルクスカーフには、馬の鞍と鞭が描かれたものが多い。
・紹/つぐ 糸と刀と口で、刀を掲げて祈りを唱える様子の象形。この漢字は糸を繋ぎ合わせる様を表す。よって、ディスタフの形状に近い錫杖の攻撃を受け、記憶が糸のように繋がってしまったのかもしれない。
・陸巴 アラビア系の薬師 大陸から来た可能性あり。空海と信仰があった、鑑真の側近の如宝がモデルの可能性あり。
・藍巴 藍染めから。藍はどんな天然素材とも相性がいい。麻も綿も絹も染まる。抗菌作用があって、素材も丈夫になる。立派な鎧になった理由か。刺繍が得意である。ここにも糸による手芸が登場する。
恵比寿
・何度死んでも代替わりできる、という神の性質は、蝶の羽化を思わせる。蝶は死者や、その復活の象徴であった。北海道の恵比寿神社には、大きな桑があって、日本三大クワのうちの一本である。
・蛹粉 蚕の繭から糸を取った後、残った蛹を粉末にして作った魚釣り用の餌。恵比寿は魚釣りを好む姿で描かれる。さなぎ粉はペットフードや人間の健康食品にも用いられている。
道真公
・真喩 繭 まゆの意 真喩も道真公のキセルになって咥えられているのは、同じく繭から作られる紬を意味している。編み物が得意で、セーターを解いてショールを編んでいた。
・桑原 桑は枝ごと葉を採取する台木伐採のため、桑畑は雷が落ちにくい。そのため雷避けの呪いとして桑原と唱える様になった。道真公の祟り避けとして、藤原氏が自分の敷地の周囲に桑を植えたとも伝えられる。桑より屋敷の方が高いため家に雷が落ちやすく、逆効果となった。藤原氏が雷避けとして「くわばらくわばら」と言い始めたという説がある。
アラハバキ
・椎茸 クヌギは椎茸の原木にもなる。椎ちゃんはおそらくキノコの椎茸。それで編笠を着ていっぱい生えてくる。ちなみにキノコはたくさん生えていても別個体ではなく、菌床を本体とするひとつの生命体(と言って良いのか、菌はその細胞一つ一つ生物であり群体であり以下略)。
父様
・綿打 面打ちは綿打/めんうちである。木綿の弾けた実/綿花から、硬い種を取り出す作業を綿打ちという。また布団の綿を打ち直す作業は読みが異なり綿打ち/わたうちという。
父様は真綿、即ち蚕の繭、天の虫たる天照を打ち倒そうとしてこの名を名乗ったのかもしれない。しかし綿打ちは綿花を弾いて解すことしかできない。よって雪音/シルクの心を根本的に折ることは叶わず、その横暴な振る舞いに代わりに野良が傷ついてしまった。野良が父様/綿打ちによって振り回されて傷ついたため、野良は綿花である。
・カヤ/茅 イネ科植物の総称。またはススキのこと。茅葺き屋根の原料。茅鼠/カヤネズミが棲家とする。日本神話にはカヤノカミ(野槌ともいう)という女神がいる。漬物や灌漑用水の神。夫はオオヤマツミノカミ。オオヤマツミは狼信仰や蚕信仰とも関連が深い。
・ナギナタ茅 とても細長く密集して生えるカヤ。別名ネズミノシッポ。メジャーな牧草として知られ、これを敷き詰めるとハダニの発生を抑制できる。一方、野生化して小麦畑で繁茂してしまい、小麦栽培の弊害になっている。父様はしばらく天に見逃されていたのは、夜ト/ヨトウムシあるいは羊を育てて害悪を斬らせていたからであったが、夜トが反抗し、ついにその尻尾を天の前に見せたことから。
・茅鼠/カヤネズミ 父様の真名が不明である。流れからいけば、鼠が含まれる名前である可能性がある。螭の名は野槌/ノズチから付けられた可能性がある。
鼠の語源は寝盗みからきているという説がある。また地下生活をし、根の国に住むから根住みとも。夜トが夜盗虫で、地面に日中隠れている虫であることと相対する。雪音が父様に寝盗られた形になった理由。ネムリネズミという種もある。家に住み着く種を総称してイエネズミ/家鼠といい、蚕の天敵である。家蚕と相対する。七社神社裏貝塚では人間に駆除されたネズミが大量に見つかっている。七社神社は紀伊国高野山四社明神と、イザナミなどの七柱の神を祀っている。末社には疱瘡神が祀られている。イエネズミは柱を齧って歯の長さを維持しようとする。歯が伸び続けると食物を食べられなくなり死に至る。ネズミは大黒天や毘沙門天の使者であるともされる。
・ことわざ「鼠の尾まで錐の鞘」「鼠が塩を引く」などの諺がある。これも暦器のデザインや兆麻の真名に影響を与えていそうである。
鼠の名がつく島は全国に十数箇所ある。天照が父様ではなく夜トを選んだのは、程よく妖を退治する雪音/蚕から絹糸を紡ぎ出す芋虫夜トちゃんより、神々という柱を齧り、日本をチーズのように穴だらけにする父様の方が厄介ということかも知れない。本当にネズミがチーズを穴だらけにしてるのではなくて、発酵後のガスが抜けるから穴になるだけなのは有名だが。雪音のヨトウムシの導き方が天意だったのである。鼠は蚕と穀物の天敵であるため、天照の敵、また雪音/シルクを得た夜トの敵となった。
・カピパーランド 父様が夢の国でひよりにやらかしおったのは、鼠のパワーが最も集中する場所だからかもしれない。蜂の中には幼虫のうちから寄生蠅に襲われるものもいる。
病院で妖化したひよりは、雪音や夜トの様に蛾類の仲間になりたかったのかもしれない。(蜂の幼虫も芋虫様である)だがひよりが蜂類であることから、芋虫の夜トを齧る、肉食性の蜂の行動が出た。よって雪音/繭が芋虫の夜トを守った。
・蚕蛆 イザナミは蛆と最も関連が深い。鼠の死骸は蛆の好物である。
・椿の海 夜トの項目参照 父様は椿を引っこ抜く悪鬼である。それで春樹/椿の亡骸を見つけようとしたが、夜トに先を越されていた。代わりにひよりの尻尾をちぎりやがった。結果野良に見放された。
・常世の神 日本書紀/720年に記された蝶を祀った新興宗教。大生部多という男が橘の樹につく幼虫を常世の神として祀り、民衆を惑わした。橘は日本原産の唯一の柑橘類。紋章は椿に似るが異なる科の植物で、椿も橘も枯れることのない常緑の葉と丸い実を持つため、どちらも永続性を持つめでたい植物とされていた。大生部多は「常世の神を祀れば、貧しいものは富める様になり、老いた人は若返る」と言って、人々に作物や財宝を供えさせ奪い取った。それを秦造河勝(聖徳太子の部下)が討伐した。祀られた橘の樹の幼虫とは、クロアゲハの幼虫もしくは、シンジュサンという蚕の幼虫と考えられている。シンジュサンは日本語で神樹蚕、樗蚕(樗はセンダンの古名)、中国語で椿蚕。蝶の中には死体に止まって吸うものも多く、蝶が死者を喰う、あるいは死者が蝶になるとして忌む感覚があった。常世の神事件は夜トが淫祀の神と言われた理由にも繋がり、当然、社も存在しない。貧しいものが富める様になり…というくだりはキリスト教の山上の垂訓に近似する。聖徳太子が厩戸で生まれたという伝説自体、キリスト出生の伝説を拝借したと言われている。キリスト生誕後700年経っていた当時、中国ではネストリウス派というキリスト教の一派が活動していた。経典が日本に来ていた可能性は高いが、当時の人は仏教の経典と区別できず、聖徳太子に重ね合わせたと言われている。後世では浄土真宗の開祖親鸞聖人も山上の垂訓を所蔵しており、プロテスタントに近い思想形態を作り上げている。
よって父様が夜トの原型としたのはシンジュサンである可能性が高い。よってヨトウムシの夜トが雪音という蚕を得て、同じく蚕であった本来の福の神の姿に戻れたのである。
・アシェル モーセやヨシュアがエリコの街を殲滅した当時のエルサレムには、古い太陽の女神アシェルに対する信仰が残っており、聖書の神にとっては邪教であった。アシェルの石の柱を打ち倒せ、と何度も繰り返す下りが旧約聖書にはある。父様が太陽神を恨みに思うのはこれが由来である可能性がある。とてつもないハタ迷惑な逆恨みだが。
・天照 絹はヘブライ語でムシュイと言う。自らを産霊(むすひ)、結びの神とした。
・空海 空海は弟子であった女性を時の天皇に奪われており、生き別れとなったのち、再会することなく女性が亡くなっている。真名井御前という女性で、元伊勢の一宮籠神社の神官海部(あまべ)氏の娘で、幼名は厳子(いずこ)→何処/いずこに通じる。10歳のときに京へ出て、空海に出会った。そして実家に伝わる潮満珠(しおみつたま)と潮干珠(しえひるたま)」を空海に授けている(筆を二本、手に入れた様子と重なる)。宝珠を預けたことから、空海と真名井御前は夫婦の間柄であったともされる。しかし実家の関係で、20歳で淳和天皇の妃となり真名井御前と呼ばれるようになった。天皇から逃れるように、真名井御前は空海の元で出家する。しかし尼寺に籠ったのち、空海が会いに行けずにいるうちに亡くなる。そして空海は真名井御前をモデルに桜の大木から33日で如意輪観音像を彫りあげた。
空海は金星を飲み込む、真名が真魚であるなど、キリスト教との関連が挙げられている人物。
空海の逸話に犬が登場するものがある。空海がある民家に泊めてもらったところ、家主が田畑を荒らす獣に困っているという。空海は紙に何かを描いて封をして家主に渡した。すると田畑の被害がぴたりと止んだ。封を開けるなと言われていたが、家主は気になって開けてしまう。すると紙には犬の絵が描いてあり、封が開くが否や、紙から飛び出して出ていってしまった。
タケミカヅチ
・竹 言わずと知れたタケノコのタケちゃんである。近年はバンブー繊維として竹も糸や布に加工されている。抗菌効果がある。竹はエジソンが最初に電球のフィラメントに用いた(しかも日本産の竹)ほどに、半導体として優れている。
・土佐の虎斑竹 高知県の一地方にしか自生しない貴重な竹。他の地方に移植しても虎柄は出ない。タケちゃんが虎柄の腹巻きをしていたのはこの竹が由来と思われる。
・タケトラカミキリ 竹を食べる害虫。太い竹にも穴を開けてしまう。
・チビタケナガシンクイムシ 竹の外皮もボロボロする食欲旺盛な虫。幼少期のタケちゃんを思わせる名前の虫である。
・黄云 阿吽は仏教において、阿が吐く息、吽が吸う息であり、万物の始まりと終わりを意味する。転じて、相対するものや、ピッタリと見合うものを表す。黄云とタケミカヅチがそっくりな姿なのは阿吽にちなんでいる可能性がある。
・云は雲を表す。黄色い雲で雷雲を表す。
・黄金竹 棹が黄色い孟宗竹。園芸で珍重される。竹は稲科の植物で、40年に一度花を咲かせ、すぐに実をつける。地方によっては、竹の花が咲くと実を採取して食べる風習がある。雪音/蚕/コメと、黄云/稲科の黄金竹なので、話し合いがスムーズにいった、のかもしれない。またディスタフの材料や綿打ち弓の材料も竹であることが多い。よって、タケちゃんも術師の名前を知る人間を看取り、蘇りの手段を減らすという大貢献をしたのである。
雪音がディスタフ、竹製の糸紡ぎの道具であるから、タケミカヅチが余計に祝が羨ましくなったのかもしれない。この回で、夜トが雪器の帯でタケミカヅチを縛ると言っており、これはディスタフにリボンで羊毛を巻き付ける様子の暗示とみることもできる。
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