天然の防腐剤としての「塩」

佐々木敏の栄養データはこう読む!
第2章:「3 歴史のなかでの食塩の役割」より


塩は天然の防腐剤としての役割があるが、これは微生物が生きていくためには水が必要で、微生物が食塩が使える水を奪ってしまうためと考えられている。
「微生物から水を奪う」という点では、乾燥や砂糖漬けも同じ観点である。

また、腐敗の原因となる微生物の多くは極端な低温や高温では活動出来ない。加熱すると食品そのものが変質してしまうため、冷蔵・冷凍保存することが塩を使わない最も確実な食品保存の方法といえる。

気温が高いほど食べ物の腐敗が早く進むという観点では、亜熱帯や熱帯などの低緯度地域ほど食塩が大量に必要そうにも思えるが、実際は逆である。
食塩摂取量の調査はなかなか難しいが、日本では東北地方と関東地方北部辺りが高食塩摂取地域で、最も低いのが沖縄県であると推定されている。
中国大陸でも同様らしく、塩辛いのは北京料理で、塩味が少ないのは中国南部の広州や香港周辺の広東料理のようである。

寒い地方では食料が得られる季節が限られているため、秋頃に冬越しのために食料を確保し蓄える必要があるためである。
北国の伝統料理には、冬越しのために考えられた保存食品が数多くある。
※この南北差の法則?はヨーロッパでは成り立たない。また日本でも北海道の食塩摂取量は必ずしも多くないと推定されている。


日本人には信じ難い話だが、食塩をほとんど使わない民族の存在が世界で数か所知られている。(アマゾン河上流域のヤノマモ族、シング族など)
そこでは食塩の代わりに灰を使用する。灰はカリウムが豊富で、カリウムはナトリウムとは逆に高血圧を予防してくれるミネラルである。
彼らの血圧は一生を通じてほとんど変わらず(加齢に伴う血圧上昇はなく)、高血圧の人は殆どいない。

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