健康問題:1位はたばこ・2位は○○
佐々木敏の栄養データはこう読む!
第2章:「1 生活習慣病対策のためのアクション」より
「生活習慣病対策のために世界全体がとるべき5つのアクション」(2011年)によると、
1:「たばこ」→タバコの規制に関する世界保健機関枠組み条約の履行の推進
2:「食塩」→食塩の消費をおさえるためのマスメディア・キャンペーンと食品企業による自発的な活動
3:「肥満、不健康な食事、運動不足」→マスメディア・キャンペーン、食品への課税、助成金、表示、販売活動の制限
4:「有害飲酒」→増税、広告の禁止、入手の制限
5:「心疾患系疾患のリスクの低下」→生活習慣病高リスク者への複数種類の薬剤の利用
となっており、「食塩」が肥満+不健康な食事+運動不足よりも上位にランクインしている。
「アメリカ人成人全員が1日当たり3gだけ減塩する」というシナリオで計算を行った研究結果によると、年齢により差はあるが全体として約3.5%下がるはず、となった。
「3gも減塩してたった3.5%か」と思われるかもしれないが、「3gではなくわずか1gの減塩でも、全米の高血圧患者全員が降圧剤を飲むと仮定した場合に期待される死亡率の減少よりも、減塩による予防効果の方が大きい」とこの研究は結論付けている。
高血圧はとても多い病気で、降圧剤は最も多く使われている薬剤の1つであり、そのために莫大な医療費が世界中で使われている。
この研究は、毎日わずか1gの減塩がもたらす医療費抑制効果と、社会全体における健康効果の両方を見事に見せてくれた。
ソルトシェーカーの穴の面積と食塩使用量の関連を調べたオーストラリアの研究によると、人が1食に食べる食塩の量はソルトシェーカーの穴の大きさにほぼ完全に比例していた。これはどんな料理・味に関わらず、人は条件反射的にソルトシェーカーを同じ回数振っていたことを示している。
減塩対策は、個人へのアプローチと社会へのアプローチがある。2011年に発表された上記アクションでは「食塩の消費をおさえるためのマスメディア・キャンペーンと食品企業による自発的な活動」(=社会へのアプローチ)となっているが、これは社会的アプローチの方が大きな効果を期待出来ることを多くの研究結果が示しているためと考えられる。
今私たちがすべきことは、皆が減塩料理を覚えて1人1人が実践すること以上に、薄味の食品や料理を普通に食べられる社会環境を作って欲しいと食品企業や大手レストランチェーンや社員食堂にお願いし、その動きを支援し支えていくことではないだろうか。