2つの「コレステロール」が招いた誤解と混乱
佐々木敏の栄養データはこう読む!
第1章:「コレステロール値を下げるには」より
食品中のコレステロール:
主に動物の細胞膜に存在し、細胞内外の物質輸送を担っている。
特に神経組織に多く、他には卵の黄身にも豊富である。
血液中のコレステロール:
コレステロールは主に肝臓で合成され、全身の細胞に輸送される。
コレステロール単独では動脈の中を移動出来ないため、リポたんぱく質と結合し、リポたんぱくコレステロールとして輸送される。
「リポたんぱくコレステロール=脂質(リポ)+たんぱく質+コレステロール」であるが、
血液中のリポたんぱくコレステロール全体のことが「血中コレステロール」と呼ばれており、誤解の元となっている。
リポたんぱくコレステロール(=「血中コレステロール」)のコレステロール部分は肝臓で合成されたものだが、その一部分は食品から摂取されたコレステロールに由来する。
すなわち、血中コレステロールの一部分がコレステロールであり、そのコレステロールの一部が食品由来のコレステロールという関係であるが、
食品中のコレステロール=血中コレステロールではない。
血中コレステロール濃度はコレステロールのみでなく飽和脂肪酸によっても増減するが、食品中のコレステロールと血液中のコレステロールに同じ名前が与えられたために、飽和脂肪酸よりコレステロールの方ばかりが注目された。
2012年までの40年間でコレステロールの摂取量は3割減少し、飽和脂肪酸の摂取量は逆に3割増加していることから、注意すべきはコレステロールより飽和脂肪酸に変わっていったと言えそうであるが、現実には2つの「コレステロール」が招いた誤解と混乱は未だに尾を引いている。