2021年全国高等学校野球選手権大会 ベスト8予想
夏の甲子園が帰ってくる。
49の高校が、たった一つの栄光を夢見て戦う、高校最後の晴れ舞台。
ドラフト1位候補もいれば、負けたら野球を終える選手もいる。彼らの人生が交錯する晴れ舞台。
去年はこの晴れ舞台そのものがなくなってしまった。
開催されること自体への喜びも噛み締めて、去年の先輩たちの想いも胸に、元気にプレーしてほしいです。
そして無事に大会が終わることを祈っています。
今回は各ブロックの展望、ベスト8予想を書いていきます。
太字はベスト8予想校と特に注目する選手です。
トーナメント表はベースボールチャンネルさま作成の画像を引用しています。
Aブロック 投手戦の予感
二松学舎大付の秋山正雲に惚れた。元々評価が高い投手ではあり、市川擁する関東一との東東京大会決勝を観に行ったほど。 そしてその試合、圧巻のピッチング。
二松学舎大付の左腕育成力は毎年見事だが、歴代の投手たちの中でも指折りの完成度だと思う。
130km台後半から140km台前半のストレートはキレキレ、そこにスライダー、チェンジアップが加わる。何より制球が抜群。調子が良ければ高校生レベルでは打てないだろう。
絶対的な存在だけに、二回戦からの登場かつと大会決勝から間隔が空く日程はありがたいだろう。
守備も鍛えられており、援護ができればこのブロックを勝ち抜くことになるはず。
西日本短大付の大嶋、前橋育英の外丸と他の高校も力のある右投手を擁し、彼らの出来が良く、投手戦になるようであれば勝負の行く末は読めなくなる。
対抗の一番手に挙げるのは京都国際。打線が非常に強力で、このブロックでは一番手の評価。5、6点勝負に持ち込むことができそう。
エースの森下は実戦的な打ちにくい左腕。2番手以降の投手が京都大会でややピリッとしなかったのは気掛かり。
Bブロック 本命はいるが…
今年の智弁和歌山は(も)強い。エースの中西だけでなく、右腕の伊藤、左腕の高橋が台頭。継投で和歌山大会を勝ち上がってきた。
小園を擁する市和歌山との対戦では、打線が徐々に鋭い当たりを飛ばし始め、相手の守備の乱れを誘った。
守備・走塁も鍛えられており、弱点の少ないチームで、本命に推せる。
しかし、智弁和歌山といえど、このブロックを勝ち上がるのは簡単ではない。
初戦で対戦する宮崎商は選抜も出場した実績のある高校。
本命が勝ちあがることが少ない傾向にある宮崎大会を、堅実な野球で勝ち上がってきた。
右腕の日高、長友のリレーと、西原を中心にした打線は脅威。2009年の都城商vs智弁和歌山のような展開(先行逃げ切り)に持ち込めれば勝機がある。
作新学院も前評判は今一つながら、やはり栃木大会を勝ち上がってきた。触れている打線、二遊間の守備の堅さ、制球が安定している右腕と上位進出の条件は揃っている。
高松商は2年生スラッガー・浅野に大注目。メジャーリーグの強打者を彷彿とさせる構え、発達した下半身と連動する上半身、滞空時間の長いフライ…なにより強打者の気を感じる。バズーカのような肩で、右翼からの送球も要注目。間違いなく来年のドラフト上位候補だ。投手陣は左腕と変則の継投で勝負。
Cブロック スター候補生vs薩摩隼人
中堅校が揃い、予想が非常に難解。
その中でも実績一番手は敦賀気比だろう。
セカンドの東鉄心は監督の甥。中心選手としてチームを引っ張る。
2年生の上加世田は来年のドラフト候補で投打に注目。
投手陣は本田、吉崎、竹松の継投になる。
上記の東、上加世田、本田に加え、ポイントゲッターの大島が引っ張る打線はこのブロックでは一番手の評価。
日本文理にも下級生に逸材がいる。
2年生でエースナンバーを背負う田中晴也は投手としての能力もさることながら、左打者としての評価が高い。見ていて長打の気配を感じる打者。先輩の飯塚のような選手になりそう。
1年生の高橋も140km超のストレートをバンバン投げ込んでいて驚かされた。
三重も2年生ながら140km超のストレートで押せる上山、谷の2年生投手たちを3年生の野手陣、先輩投手たちが支える好布陣。昨秋以降の伸びしろが大きかったチームだ。
…とここまで下級生の好素材を抱えたチームを紹介してきたが、私が本命に推すのは樟南。なにより左腕の西田恒河がすばらしく、二松学舎大付の秋山とともに、この大会を盛り上げる存在になりそう。
課題である打線の援護次第ではあるが、西田がキレのあるストレートとスライダーで好打者たちを牛耳れば、自ずとベスト8が見えてくる。
Dブロック 力は抜けている…?
浦和学院の力が抜けている、と思う。
投手陣は2年生左腕の宮城と芳野に加え、吉田匠、金田、三奈木ら3年生右腕がつなぐ。
打線も力があり、守備走塁にムラがない。森監督が退任を表明し、士気も高いはずだ。
それでも本命に推しづらいのは、浦和学院の夏に勝負弱いイメージと、勝率が悪いとされる49番目(大トリ)の登場という点にある。
(49番目の登場校は、開幕戦を勝って勢いに乗る高校との対戦になる)
もしそういった懸念を払拭できるのであれば、優勝してもおかしくない戦力だと考えている。
そこで本命挙げるのは石見智翠館だ。エースの山崎は秋・春と調整を続けていたが、夏にしっかりと仕上げてきており、島根大会の決勝でノーヒットノーラン。初戦でいい勝ち方をすれば、一気にベスト8以上が現実味を帯びる。
弘前学院聖愛、日大山形、米子東はいずれも強打線をウリにするチームなので勢いづいたら一気に昇りつめそう。
とくに米子東はバッテリーのW舩木、2年生の太田、岡本、薮本とタレントが揃っていておもしろい。
Eブロック 偏りの妙
Eブロックは上側と下側で偏りがある組み合わせになった(と思っている)。
下側には実力校がひしめく。
その中でも実績で抜けているのは智弁学園。前川、山下、三垣らで形成する打線は大会屈指。西村、小畠の左右の両輪も健在で、優勝候補の声もある。
初戦の倉敷商は曲者で、エース左腕の永野が智弁学園打線に相対する。昨夏は仙台育英打線を完璧に封じ込めているので、大物食いの経験もある。2年生の野手陣も振れているだけに気が抜けない。
智弁学園が大会屈指の打線なら、広島新庄は大会屈指の投手陣。切り札の左腕・秋山、投打にわたって活躍が望める右腕・花田に加えて、左腕の西井が台頭。彼らの不調を補う活躍をした。守備走塁にも磨きがかかっており、秋山の復調次第では上位進出が望める。
初戦でぶつかるタレント揃いの横浜は、村田監督を迎え波に乗っており、好カードの一つだ。
上側には新田、東明館の初出場に加え、大型右腕・高須を擁する静岡と、投打に充実している日本航空。下側の高校と比べるとややネームバリューで見劣りするが、日本航空をベスト8と予想する。
(山梨出身なので願望込みです。故郷応援枠ということで…笑)
日本航空は今年が勝負年。6月にコロナの集団感染ということで出場すら危ぶまれたが、それを乗り越え山梨大会を勝ち上がってきた。
エースのヴァデルナはドイツとハンガリーのハーフの父、香港出身の母の間に生まれた。初見では打ちづらい好投手だ。
主砲でセンターを守るエドポロはガーナ人の父、韓国人の母を持つ。兄も日体大等で活躍した。とんでもないスラッガーになるか、大型扇風機になるか、試合になってみないと分からないほどのムラがある。出たとこ勝負だ。
メンバーのほとんども山梨県外(主に関西圏)出身。いったいどこのチームかわからない。まるでパワポケに出てくるようなチームだとすら感じる。
春季関東大会では東海大相模を撃破しており、潜在能力のあるチームだと感じる。まだ底が見えておらず、簡単に負けることも考えられるし、波に乗って上位に進出する可能性もある。
下側のチームが激戦を繰り広げ、潰し合いの中で消耗し、3回戦であわよくば主戦の温存を…などと考えてくれれば上側のチームにも勝機があるだろう。
1回戦から登場するチームで形成されるブロックは、トーナメントならではの妙味、紛れが存在するのがおもしろさ(ベスト8予想の難しさ)である。
Fブロック 今年は一味違う…?
県岐阜商vs明徳義塾は初戦屈指の好カード。
県岐阜商は鍛治舎監督、明徳義塾は馬淵監督と高校野球界きっての名将が率いるチームだ。
さらには県岐阜商には野崎、明徳義塾には代木と、世代屈指の実戦型左腕がおり、互いに守備走塁も鍛えられている。
一瞬の隙が命取りになる、ひりつく勝負になりそうで楽しみ。
初戦ということを考えて(好きなのもあるが)馬淵明徳推し。
明桜は大会屈指の右腕・風間球打を擁し、注目が集まるチーム。ショート兼2番手投手の石田も非常にポテンシャルの高い選手。初戦の帯広農の打力も侮れないが、鍛治舎監督、馬淵監督が風間をどう攻略するのかを見てみたい気もする。
上側の山に目を移すと、石黒擁する高岡商、北信越で実績を残している松商学園、エースで4番の伊東が引っ張る東北学院も侮れないものの、愛工大名電が戦力的に抜けているように思える。
浦和学院と同様、夏に弱いイメージがあり、ベスト8予想では指名しづらい愛工大名電であるが、今年は一味違うのではないかと踏んでいる。
バントを多用する戦術で有名だが、愛知大会を見る限り、今年は打者の能力を信頼し、バントをやや少なくしている印象を受けた。それなら推せると判断。
投手陣は寺嶋、野崎の両右腕と、左腕の田村俊介で盤石。田村は打線でも核となり、主将としてチームを引っ張る存在でもある。
東邦、中京大中京、享栄と、自ら以外の愛知4強を倒しての甲子園出場。充実ぶりが目を見張る。
Gブロック 接戦必至の初戦がカギ
専大松戸vs明豊も初戦屈指の好カードだ。
キーになるのは専大松戸のエース・深沢鳳介の投球。個人的には世代No.1の右サイドハンドだと思っている。
さらには2番手の岡本が急成長。チームの構成を考えると非常に大きく、夏の連戦に耐えうるチームをつくってきた。
選抜で敗退のきっかけをつくったエラーをし、千葉大会決勝でサヨナラ満塁ホームランを放った4番の吉岡はこの大会でも印象に残るプレーをしそう。
選抜準優勝の明豊は打線、投手陣ともに分厚く、優勝候補とすら考えているが、選抜の初戦、東播磨戦のようにエンジンの掛かりが遅いと初戦で沈むことになる。
神戸国際大付と北海は出てる大会で毎回当たっている気が…今年の選抜以来の再戦。
春に勝った神戸国際大付は阪上の状態が不透明だが、春よりはよさそう。2番手の楠本も経験を積んで成長。打線も仕上がっている。
個人的には北海の雪辱に期待してみたいが、エース左腕・木村大成の調子が気掛かり。南北海道大会では力感に欠けていた。宮下を中心とした野手陣のバックアップ次第だろう。
高川学園の河野はいかにも勝てそうな左腕。小松大谷の北方との4、5点勝負になるか。
長崎商は右腕2枚のリレーで守りの野球。対する熊本工は切れ目のない打線で得点を重ねていく。
初戦はすべてのカードで競った展開になりそう。初戦の明豊戦を突破すればにはなるが、能力の高い右投手を2枚揃え、打線にもパンチがある専大松戸を本命としたい。逆に明豊があっさりと勝つようなら、このブロックの最有力候補になるだろう。
Hブロック 横綱と伏兵と
優勝候補筆頭とも言われている大阪桐蔭は、今年も超巨大戦力を有する。
投手陣は松浦、竹中、関戸など、150km近い速球で押せる投手を複数擁する。更に恐ろしいのは、どこからでもホームランが飛び出しそうな打線だ。
大阪大会では苦戦をしたが、ギリギリのところで勝ち上がってきた。そして初戦の難敵を退けることができれば、戦いの中でチームとしての成長を重ね、優勝に最も近い高校になると予想している。
もっともどこで負けるのかと言われれば、最も確率が高いのは初戦だろうと考える。初戦は超難敵、東海大菅生とのビッグマッチ。これは最注目カードで決まりだろう。
東海大菅生は選抜で好調だった2年生右腕の鈴木がベンチ外。その分を復活したエース左腕の本田、同じく左腕の櫻井、外野手兼任の千田の継投で賄う。連戦となると分からないが、ワンマッチなら問題ないだろう。
野手でも千田がキーマン。スケールの大きい選手が甲子園で大暴れできるか。
攻守に洗練されていて、野球の質は大阪桐蔭に引けを取らない。仕上がり次第ではあるが、大阪桐蔭に伍することができる戦力を有している。初戦を制し、ベスト8まで勝ち進むのは東海大菅生だと思い切った予想をしてみる。
他におもしろいのは阿南光。2年生左腕の森山がブレイクし、来年のドラフト候補に名乗りを上げそう。沖縄尚学の當山との投げ合いは見物。
初出場の鹿島学園は強打の盛岡大付と。藪野が粘りのピッチングで接戦に持ち込めるか。
聖光学院が連続出場していた福島の今年の代表は日大東北。久しぶりの聖地で躍動できるか。
相手の近江は投打にわたって2年生の山田が軸。来年の上位指名候補だ。3年生右腕の岩佐も能力が高く、勝ち上がりが楽しみな布陣だ。