2024年関東大学サッカー1部 明治大学vs筑波大学
龍ケ崎~水戸~西が丘
半年前、平日休みを取って極寒の龍ケ崎にいた。
インカレの準決勝を見るためだった。
中村草太のゴールで得た1点を、キャプテン・井上樹(甲府)率いる守備陣が守り切って明治が筑波を下した。
外気の冷たさと、ピッチの中の熱。死闘としか形容できない試合だった。
あの龍ケ崎の死闘を見ていたから、日程が決まった時からこの試合は行こうと決めていた。
今の大学サッカー界をリードする2強の対戦、場所は行きやすく見やすい西が丘、これは行くしかないだろうと。
リーグ1位と2位との首位攻防戦となったこのカード、実は半月前にも前哨戦が行われていた。
抽選の結果、リーグ戦の前に天皇杯1回戦で激突した両雄。
この試合は筑波が1-0で勝利し、2回戦に駒を進めている。
そしてこの記事で取り上げる3日前、天皇杯2回戦が行われ、筑波大学はなんとJ1首位を走る町田を下している。
この試合は町田側に4人の負傷者が出て、敵将・黒田監督の発言も相まって話題になった。
タフなゲームから中2日、心身ともに消耗している筑波が、最大の難敵・明治を相手にどう戦うかが見所となった。
メンバー
メンバーは前哨戦から、明治は中盤の選手を代えてきた。ボランチはFC東京内定・常盤が欠場、その代役に本職CBの鷲見を起用している。
筑波は町田戦から4人を変更、中盤の攻撃的な選手である柏内定・田村とCFのU-23代表・内野がベンチスタート。
キックオフ
球際で激しい攻防が続く。序盤は明治がペースを掴み攻勢に出る。
前半6分、巧みな抜け出しからエース・中村草太が芸術的なループシュートを決めて明治が先制。
前半24分に筑波はSB沖田が負傷。5バックで戦うことに。
ただこの5バックが明治の攻撃をことごとく封じていき、次第に筑波ペースになった。
前半36分、筑波は攻め上がったCB池谷が抑えのきいたミドルをねじこみ同点。以降も筑波ペースで前半が終わった。
後半も筑波ペースで試合が進む。
開始直後の後半1分、筑波の左WB安藤がペナルティエリア付近にカットインしてシュート、グラウンダーのボールが吸い込まれて逆転。
後半15分、明治は2枚替えでこちらも5バックに変更。中村草太と熊取谷、2枚の得点源をよりゴールに近い位置に配置。攻撃力のあるWBを高い位置に押し上げた。
その後は一進一退の攻防が続くが、ビハインドの明治は両WBのクロスを起点に筑波を押し込んでいく。
それでもゴールには至らず、筑波の逃げ切りかと思われた後半ラストプレー、明治左WB大野のサイドチェンジが右WB内田に収まる。内田が折り返したところに、ボックス内に侵入していたボランチ島野が合わせて劇的な同点ゴール!
両チーム死力を尽くした90分、同点に追いつかれた筑波守備陣がピッチに倒れこむ姿が特に印象的だった。
以下は気になった選手たちを書いていく。たくさんいる。
明治大学
藤井 陽登(3年・矢板中央)
前線に鋭いフィードも供給できるGK。シュートへの反応もすばらしい。
内田 陽介(4年・青森山田)
右SBで先発→途中から右WB。上下動を厭わず、タフに戦えて推進力もある。ザ・明治のSB。最後も敵陣深くに侵入して劇的同点弾をアシスト。
Jリーグに行く選手でしょう。
稲垣 篤志(2年・浦和ユース)
左SBで先発。クロス精度○、セットプレーのキッカーも担当。
大野 海翔(3年・浦和ユース)
後輩である稲垣と交代で出場。左足で精度の高いクロスを供給し続けた。ラストゴールの起点も彼の見事なサイドチェンジから。
島野 怜(3年・仙台育英)
順調に成長している大型ボランチ。攻撃に厚みを加え続けたことが最後の同点弾に繋がった。パンチ力あるミドルも撃てる。
熊取谷 一星(4年・浜松開誠館)
ヴェルディ内定。左SHで先発→途中から左シャドー。
危険なエリアに侵入する動き出し○
下級生時より戦える選手になっていて、J1内定は当然。
中村 草太(4年・前橋育英)
広島内定。右SHで先発→途中から右シャドー。
GKの動きをよく見た芸術点の高いループで先制点、左右どちらでも精度の高いキックが蹴れる、チャンスメイクもできる。
守備の追い方もうまくて、即戦力No.1で間違いなく今年のドラフト1位。
大学サッカー界のスタープレーヤー。広島もええ選手とったわ!
鷲見 星河(4年・名古屋U-18)
下級生時からCBで試合に出ているが絶対的なレギュラーとはならず。
この試合はボランチで先発。サイズは間違いなく武器、展開力を磨くことができれば。
高足 善(2年・前橋育英)
シャドーで先発。158cmと小柄ながら、ボールの受け方と相手との間合いの取り方がうまくて、キレのあるドリブルは一見の価値あり。
筑波大学
佐藤 瑠星(3年・大津)
安定したキックとセービングが持ち味。
飛び出しと判断も良くてプロに行くための要素は兼ね備えている。
沖田 空(4年・鹿島ユース)
水戸内定。スピードに加えて空中戦も強いSB、接触プレーで交代は残念。
池谷 銀姿郎(2年・横浜FCユース)
抑えのきいたミドルで同点ゴール。スピードと強さを兼ね備えている。カバーリングもうまい。
CB、右SB、右のストッパーどれも高いレベルでこなせそうで、来年はもう争奪戦になってるでしょう。
諏訪間 幸成(3年・横浜F・マリノスユース)
マリノス内定。筑波が誇る対空対人最強兵器。
味方への指示も的確。トリコロールの門番になる未来が見える。
小川 遼也(2年・富山U-18)
5バックの中央に君臨。
嗅覚があって、危険なエリアを察知して埋めていた。
クレバーでサイズもあって、個人的に好きなタイプの選手。
3年後はヴァンフォーレ甲府でプレーしませんか?
安藤 寿岐(3年・鳥栖U-18)
沖田に代わり前半途中から左WBで出場。
鮮烈な逆転弾をカットインからニアへねじ込んだ。
守備も対面の中村草太・内田陽介相手に奮闘。
鈴木 遼(3年・昌平)
右SHと右WBの両方を高いレベルでこなす。
運動量が半端なくて、筑波可変システムのキーマン。イメージはOBの戸嶋。
加藤 玄(3年・名古屋U-18)
激しい当たりで筑波の中盤を引き締め、フィルターの役割を果たした。
プレーメーカーでもあり、90分間身体を張り続けることのできるファイターでもある。
角 昂志郎(4年・FC東京U-18)
FC東京内定。中盤の左で出場。
足元のうまさと洗練されたプレー選択はFC東京ユース出身らしさ。
ドリブルで持ち運べるのも○
小林 俊瑛(2年・大津)
高校時代から注目されていた191cmのCF。
この日もターゲットマンとして、前線で身体を張り続けた。
とにかくすごい試合だった。
互いの魂がぶつかりあう試合からしか摂取できない栄養がある。
何年後かに振り返った時に「あの試合のメンバーはえぐかったなあ」ってなってるだろうなと。