2022年秋季関東大会準々決勝 横浜×健大高崎

「一番おもしろい」試合

「甲子園へ行けるか、行けないかが決まる試合が一番おもしろい」という持論がある。
その「一番おもしろい」試合は夏だけでなく秋にもある。
春の甲子園とも言われる選抜高校野球大会に出場するためには、前年の秋に行われる地区大会で好成績を収めることが必要となる。
各地区に出場枠が割り振られていて、来年は記念大会で増枠し、関東地区は東京地区と合わせて7校。関東5.5枠、東京1.5枠と言われている。
つまり秋の関東大会でベスト4に入ることで、甲子園出場がほぼ確定する。
なので勝てばベスト4になる準々決勝が、実質的に甲子園を決める「一番おもしろい」試合となるのだ。

今年の秋の関東大会は埼玉県で開催され、県営大宮球場、市営大宮球場という至近の2会場で試合が行われる。
この日、向かったのは市営大宮球場。お目当ての第1試合が横浜と健大高崎の強豪校対決。
横浜は神奈川大会を優勝して関東大会に駒を進めてきた。
夏の甲子園で活躍した2年生の主力が軒並み残った新チームで、期待値は非常に高い。

横浜

エースの杉山は140km弱のストレートに、キレのあるスライダー、カーブ、チェンジアップを兼ね備える。コントロールもよいし、横浜高校のサウスポーらしく、牽制やフィールディングがうまい。
初戦は浦和学院を完封しており、関東を代表する好左腕だということがわかる。

野手ではショートの緒方と萩。
緒方は1年生の夏から甲子園を経験し、サヨナラホームランも放っている。
身体にバネが仕込まれているかのような、躍動感のあるプレーが持ち味。キャプテンマークがよく似合う。
萩は力強いバッティングが魅力、右打ちの大型センター。
やや粗さはあるものの、ボールを引きつけて強振できる選手。
夏の神奈川決勝で甲子園行きを決める一打を放つなど勝負強さもある。

加えて目を引くのは1年生の台頭だ。旧チームから3年生が引退してできた穴を埋めたのは1年生たち。
2番セカンドの峯、3番サードの井上、4番キャッチャー椎木と上位打線担う選手たちはみな1年生。来年以降のチームも楽しみ。

健大高崎

対する健大高崎も、近年は秋に振り負けないチームをつくり上げてくるイメージ。2019年には秋の関東大会を優勝し、神宮大会でも準優勝と好成績を収めている。
（…一方で夏の甲子園の出場から遠ざかっているのは気になるが）
キーマンは旧チームからレギュラーである半田と増渕の1、2番コンビ。1番の半田は右打ちのセカンドで、力強い打撃が売りの切り込み隊長。増渕は俊足、右打ちのセンターで塁に出るとうるさい。
タイプの違う1、2番を横浜先発の杉山がどう抑えるかが試合のカギになる。
7番キャッチャーの箱山は1年生で、横浜の椎木との1年生キャッチャー対決も注目。
投手陣は小玉がエースとして君臨している。控えの加藤、多田も旧チームの時には関東大会での登板経験がある。
ちなみに健大高崎は通称で、正しくは「高崎健康福祉大学高崎」。学校側も通称を推してるので、みんな健大高崎と呼んでいる…笑

プレイボール

試合は1回表、1番半田が杉山のストレートを強振し、センターオーバーの二塁打。2番増渕のバントは微妙な判定ながらヒットとされ無死1、3塁。3番堀江の飛球は横浜のセンター・萩が好捕するも犠牲フライとなった。注目の1、2番コンビが仕事をして健大高崎があっさり先制。

横浜は3回裏に1死満塁のチャンスをつくるが、3番井上の捉えた打球はセカンド正面に飛びダブルプレー。
試合はその後淡々と進んでいく。
それにしても杉山は牽制、フィールディングが抜群にうまい。これだけでお金を取れる選手だなと。

激戦

立ち直って快投を見せる杉山に対し、立ちはだかったのはやはり健大高崎の1番半田。
5回表、杉山のストレートを引っ張り打球はレフトスタンドへ！2-0とリードを広げた。
半田はボールの見送り方に雰囲気がありますね。

健大高崎の小玉はストレートの制球力が抜群で、変化球との組み合わせで横浜打線を沈黙させていく。
しかしやられたままで黙っていないのも横浜。5回裏、無死満塁をつくって、先ほどゲッツーでチャンスを潰してしまった3番井上。
今度はセカンドの頭を越す文句なしのヒットを打ってこれが2点タイムリーに。2-2の同点に追いついた。

走者一掃

均衡状態が続いていたが、崩れたのは8回表。健大高崎は中軸がしぶとくヒットを重ね、1死満塁をつくって7番箱山。
実はこの試合、横浜ベンチは箱山をかなり警戒していたように思う。第2打席は申告敬遠、第3打席はタイムを取って注意をしていた。その箱山がこの場面で回ってきたのは嫌だったのではないか。
フルカウントからの6球目は、箱山が強振した打球は左中間を真っ二つ！走者一掃のタイムリー二塁打となって5-2！これが非常に大きかった。

健大高崎の小玉は走者を出しながらも粘りのピッチング。3点のリードを守り切って試合終了。
両校ノーエラーの息詰まる激戦を制した健大高崎がベスト4進出。春の甲子園出場に当確ランプを灯した！

Most Valuable Player

箱山 遥人
1年生ながら健大高崎の扇の要を務める。
この日の横浜打線はストレートに差し込まれる場面、変化球にタイミングが合わない場面が多く見られ、彼のリードも一役買っていただろう。
また、ネット裏から見ていてキャッチングがよく見えた。フレーミングでかなりの数のボール球をストライクにしていた印象。
なにより8回表の決勝3点二塁打は値千金。強烈な打撃で甲子園への道を切り拓いた。
1番セカンドの半田とどちらにするか迷った。半田も攻守に大活躍。すばらしい選手なので今後も注目していきたい。

詳細なスコアはこちらから。