J2第7節 ブラウブリッツ秋田戦 プレビュー
中3日で迎える今節はアウェイ秋田に乗り込んでの一戦となる。
前節首位横浜FCに敗れ、連敗となった。
モヤモヤを晴らす勝利を期待したい。
1.対戦成績
昨シーズン秋田が初めてJ2に昇格したことで対戦が実現した。
これまでの成績は甲府の2勝となっている。
初対戦となった甲府ホームでの一戦は終了間際に新井がCKから得点を決め、甲府が勝利。
秋田ホームでの一戦は前半にCKのセカンドボールに荒木が反応し、ミドルシュートを叩き込み甲府が先制。
カウンターから長谷川が左サイドからカットインし、ミドルシュートを決めて甲府が勝ちきった。
2.前節
甲府
首位横浜FCをホームに迎えての一戦。
またも先制を許し、追加点まで与えてしまった前半。
後半からはリラを投入して流れを変えた後半と前後半で違う色が出た試合となった。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。
秋田
アウェイ徳島に乗り込んだ一戦。
試合前には新型コロナウイルス陽性者が出た中で、スタメンは前節から5人を変更。
GKの田中、CBの千田と守備の要を欠いての一戦となる。
立ち上がりは徳島がボールを保持して入るが、徐々に秋田ペースで試合が進み出す。
最初のチャンスは秋田。
4分に稲葉のクロスに武が合わせるが、松澤が防ぐ。
サイド深くにボールを送り込み、セットプレーからゴールに迫る秋田。
15分には徳島が右サイドからオリオラ サンデーのクロスにバケンガが合わせるが、新井が防ぐ。
34分に秋田は三上の仕掛けから抜け出した茂がシュートを放つが松澤が防ぐ。
お互いの特徴は出る試合とはなるが、大きなチャンスは作れない。
焦れた方が負けるような張り詰めた緊張感の中、前半を終えた。
後半に入り、共にゴール前に迫る場面が増えていく。
クロスが増えていくが、共に味方に合わないことが多く決定機を作るまでは至らない。
56分に秋田は2トップを交代。
武と吉田に代えて青木と齋藤を投入する。
58分に徳島がチャンスを作る。
右サイドでオリオラ サンデーのパスに抜け出した新井からのパスを受けた渡井がシュートを放つが、新井が防ぐ。
秋田は2トップを交代したことで前からの守備の強度が増していく。
しかし、徐々に徳島が押し込んでいく展開となる。
秋田陣内での時間が多くなるが、秋田の堅守を崩すまでには至らない。
63分に秋田は三上に代えて高瀬を投入。
68分には徳島が2人の交代を行う。
児玉とオリオラ サンデーに代えて坪井と西野を投入する。
徳島の時間を凌ぐと秋田も徳島陣内深くに侵入できる回数が増えていくが、77分に徳島が決定機を作る。
右サイドからのクロスが流れると渡井のパスを受けた白井が狙いすましたシュートを放つが惜しくも枠を捉えられず。
直後に徳島は石尾に代えて川上を投入し、攻撃的な姿勢を打ち出していく。
徳島がゴールに近づいていくが、秋田の牙城を崩すことができない。
83分に秋田は2人の交代を行う。
才藤と茂に代えて普光院と藤田を投入する。
藤田はJリーグデビュー戦となった。
直後に秋田に決定機。
普光院のFKから青木が折り返すと飯尾が合わせるが松澤が防ぐ。
お互いに得点は挙げられずスコアレスドローで勝点を分け合うこととなった。
3.今季成績
両チーム比較
1勝2分3敗と黒星が2つ先行している甲府。
対して秋田は2勝1分3敗と1つ黒星が先行と共に負け越しているチーム同士の一戦となる。
甲府の唯一の勝利はアウェイでのものだが、残り2試合は負けておりアウェイが得意というわけでもない。
特に失点は倍近く増えている。
一方の秋田はホームの方が成績が良くなっている。
1勝1敗と五分の成績だが、得点は大きく伸ばしている。
だが、失点は倍増とホームでは守備面のテコ入れは必要となりそうだ。
甲府
2連敗中で3戦勝ち無しとなっている。
また、勝利した長崎戦を含めて4試合連続で先制を許しており、試合の入りで躓き苦しい試合が続いている。
自分達のやりたいボール保持にこだわる傾向が強い今シーズンの甲府。
パス数やボール支配率も高い数値となっているが、ビルドアップにこだわっていることがわかるデータがクリア数。
リーグで最も少ないクリア数となっており、自陣で奪ったボールも相手に渡したくないというのが伺える。
そんなボール保持にこだわる甲府だが、ボール支配率が高い試合の結果はどうなのか見てみたい。
50%を上回るかどうかが試合の行方を決めていることがわかる。
上位4試合はいずれも先制を許しており、自らアクションを起こしてボールを保持しているよりも相手に持たされる時間が多くなっているのではないか。
それがボールは持てるが崩して決定機を作る機会が少なくなっている要因かと考える。
チャンス構築率を見てみてもその傾向は現れている。
ボール支配率で下回った2試合が最もチャンスを作っていることがわかる。
ボールを持つことが悪ではなく、相手に持たされる展開を作らせないようにしたい。
そのためには失点を減らさなくてはいけない。
ご覧のように琉球に次いでワースト2位の11失点を喫している。
1試合平均2失点近くしていては勝ち点は積み重なっていかない。
無失点という成功体験を掴めば自信にも繋がるはずだ。
秋田
2勝1分2敗と五分の成績となっている。
敗れた2試合を除けば失点は無く、安定した戦いを見せている。
データを見てみると秋田の特徴が掴みやすい。
まず、リーグ上位の成績を見てみるとスローイン、タックル、クリア、オフサイド、攻撃回数が上位となっている。
積極的にタックルを仕掛け、ボールを奪うとタッチライン際や相手の背後目掛けてクリアという展開が多い。
一方でパス数、直接FK、30mライン侵入回数、ペナルティエリア侵入回数、ボール支配率はリーグ下位となっている。
ボールを繋いで押し込むことには全く関心の無いチームと言える。
そして秋田は得点数がリーグワーストとなっている。
群馬、いわて、千葉と並び最小の4得点となっており得点が取れないことが負けが先行する要因となっている。
データ上は最弱の盾対最弱の鉾の対戦。
どちらが相手を上回るか。
4.予想スタメン
甲府
前節から5人の変更を予想した。
新井、関口、松本、リラが2試合ぶり、飯島の3試合ぶりの起用と予想。
CBには連戦の中で秋田と負担の大きい相手でもあり、山本に代わり高さもある新井。
WBは荒木が前節で負傷によって交代したため、須貝と関口か。
ボランチにはより球際に強い松本。
セットプレー対策も含めて高さのあるリラを最前線に。
最も難しいのが右のシャドー。
ここまで飯島、鳥海、宮崎が起用されてきたがいずれも良いパフォーマンスを見せたとは言い難い。
秋田相手には鳥海が最も良さそうだが、リラと長谷川との相性がいい飯島と予想した。
連戦のため、他にもチャンスを掴む選手は出てくるかもしれない。
秋田
前節から2人の変更を予想した。
2トップを変更するのではないか。
吉田と武に代えて青木と齋藤の起用を予想。
前節開幕からスタメン出場を続けていた田中雄大、千田、藤山といった主力が欠場。
試合前日に新型コロナウイルス陽性者が出たこともあり、いずれかの選手が該当するのではないかと考えている。
そうなると今節も欠場となるが、情報が無いため3人共スタメン予想からは外すこととした。
5.注目選手
甲府
今節の最大のポイントはセカンドボールの争いとなる。
セカンドボールの回収に長け、中盤での激しい肉弾戦にも負けない山田は今節のキーマンとなる。
チームが勝てず、上手くいかない中で苦しんでいることがコメントからも伝わってくるが、秋田は余計なことを考える余裕を与えてくれるチームではないため吹っ切れるにはもってこいの相手かもしれない。
自分の強みを発揮できる相手に結果が付いてくれば苦しみから解放されるきっかけとなりそうだ。
秋田
シーズン前にはJ1に昇格した京都サンガF.C.から興味を持たれているとの報道も出た稲葉。
残留を決意し、今シーズンからは新たにキャプテンに就任し名実共に秋田の顔となった。
秋田のサッカーの象徴とも言える存在だが、稲葉が輝けば秋田は強い。
甲府のボランチとのセカンドボール争いに勝てるかが勝敗を分けるポイントとなりそうだ。
6.展望
まず、注目となるのは試合前の吉田謙監督のインタビュー。
独特な言い回しのインタビューから画面からフェイドアウトする深いお辞儀で締めるのは秋田の名物の一つと言える。
現地観戦される方は試合前に見ることはできないかもしれないが、帰宅後ご覧いただきたい。
競技面においても秋田は特徴的なチームとなる。
ラグビーのように陣取り合戦の色が濃いのが特徴となる。
秋田は敵陣でのプレー割合はリーグトップとなっている。
甲府も高い数値を出しているが、敵陣へのボールの運び方は真逆となる。
秋田はDFラインから積極的にロングボールを入れ込み、敵陣深くにボールを運んでいく。
矢印は常に相手のゴール方向であり、無駄な横パスやバックパスは極力排除している。
前節の横浜FCや前々節の新潟とは全くキャラクターの異なるチームであり、適応できるか。
前線に蹴り込んでくる中で、秋田が主に取りにいくエリアは右サイドの奥となる。
右サイドが多くなる理由としてはセカンドボールを拾い、ダイレクトでクロスを入れていきたいためとなる。
秋田は前線に左利きの選手がいないため、左サイドの深くをとっても右足に持ち替えてクロスを上げるか利き足ではない左足からのクロスと精度が落ちる可能性を考えて右が多い傾向となっている。
このようにシンプルに右サイドの奥を取ってのクロスが流れの中で最も気を付けなくてはいけない。
また、狙うエリアを明確にすることでセカンドボールの予測もしやすくするメリットもある。
そしてロングボールと言っても秋田は2パターン用いる。
先程紹介したパターンはスペースにボールを流し込むイメージだが、ターゲットとなる青木目掛けてのロングボールというパターンもある。
青木に当ててセカンドボールを回収し、前向きに二次攻撃に出ていき圧力を掛けてくる。
空中戦で青木に勝つのは容易ではないが、そのセカンドボールの回収では負けたくないところ。
この場面は青木ではないが、ロングボールのこぼれ球を拾ってサイドに展開してクロスとやりたいことが出た場面。
こういった形を作らせないためにも今節はボランチの負担が大きくなることは間違いない。
セカンドボールの争いが最も重要なポイントとなるだろう。
甲府としてはロングボールの精度を落とさせるためにプレスを掛けていきたいが、多く用いるボランチが出ていく形は避けた方が良さそうだ。
セカンドボール回収して二次攻撃に繋げていきたい秋田に対してボランチの脇や背後を空けることは良い形とは言えない。
右サイドへのロングボールが多くなることを考えると甲府の左サイドに多くの選手を配置しておいた方が良いため、飯島が出ていく形が良いのでは無いか。
左サイドに展開されやすくはなるかもしれないが、秋田は器用なことができるチームでは無いため心配はいらないと思う。
サイドの深くを取りにいくことの狙いはセットプレーを取りにいくことにもある。
秋田としてはプレーを止めたい狙いもある。
足元の技術に劣る秋田としてはセットした状態を多く作りたいと考えている。
セットプレーであればキッカーに対して相手選手がプレッシャーを掛け、精度を落とすことは基本的にはできず純粋な高さ、フィジカル勝負に持ち込むことが出来れば足元の技術という他チームに比べ劣る部分での勝負を避けることもできる。
ウィークポイントを隠し、ストロングポイントで勝負する考え抜かれた戦術である。
こちらはロングスローから作ったチャンス。
ロングスローからのセカンドボールを拾い、クロスに繋げたように秋田の特徴が良く出た場面だ。
クロスに対して逆SBが飛び込むこともあり、ボールウォッチャーとなってしまうと大外から入って来た選手に決められてしまう。
このようにひたむきに全力で泥臭く戦ってくるため、気を付けなくてはいけない。
相手にボール保持を許すと秋田が最優先に固めるのが中央のエリア。
2トップが中盤へのパスコースを消し、外へボールを誘導していく。
秋田は442でブロックを形成し、コンパクトに中央を締めてくる。
DFラインを高く保つことでセカンドボールの回収率を高めていきたいため、甲府としてはいかにDFラインを下げさせるかもポイントとなる。
背後へ抜け出す形があまり多くない甲府ではあるため、ランニングの頻度を高めるだけでなくボールを失うことを恐れず裏へ動き出した選手をシンプルに使ってあげることも必要となる。
また、外回りにボールを動かしてのクロスが多いが秋田相手に単純にクロスの本数を増やしても効果があるとは思えない。
そのため、いかに守備ブロックの中に縦パスを付けて危険な位置で長谷川に前向きでボールを持たせられるかもポイントだ。
前節上手く行ったボランチを落とす形でのビルドアップを継続しても良いのではないかと考える。
前節は野澤英之が務めてきた役割であるが、連戦ということで松本の起用を予想している。
ボールを奪いに行く際に秋田は2トップがスイッチを入れ、連動して人を捕まえに行く形で出てくる。
松本を降ろすことで前線が嵌るように見えるが、山田の所が空くこととなり中央で数的優位を作ることができる。
この優位性を活かし、松本のサイドチェンジから前進する形は上手くいくのではないだろうか。
4バックの性質上、大外の選手は遅れて対応せざるを得ないためSBを引き出して背後にシャドーが走り込み、SBの裏を取る形は有効となる。
この場面のようにアンカーないしはCBが一人余ることとなるため、そこからの展開は作れそうだ。
SBの裏を取ってもシンプルにクロスを入れるだけでは秋田は高さも強さもあるチームであるので跳ね返されるだけとなってしまう。
そのため、大分戦の得点場面のようにSB裏を突いてのマイナス気味のクロスは効果的となる。
また、前節の長谷川のゴールのように高さで勝負ではなく、速いクロスも効果的だ。
クロスに対して中で待つことが多いが、このようにニアに飛び込んでくる形は秋田としても嫌だろう。
そして秋田は前線の選手の運動量を落とさないことも特徴として挙がる。
選手交代が5人となったことの恩恵を最も受けているチームかもしれない。
基本的に前線の4人は90分フル出場することはなく、60分くらいを目安に交代を行う。
そのため、前線の選手は常に動ける状態を保ち、球際激しくプレッシャーを掛け続けてくる。
また、今節は秋田が中6日で甲府が中3日での試合とコンディションに差がある中での試合となる。
運動量で上回ることは難しく、2試合続けてビルドアップのミスから失点をしている中でいかにミスを減らせるか。
特にソユースタジアムのピッチは芝も長く、ボールは走らない。
前節までと同様に足元で繋ぐことに固執するようだとミスからカウンターを食らうという展開が増えてしまう。
繋ぐことはチームスタイルであるため、やめる必要は無いがシンプルに前線に蹴る回数は今節増やすべきだ。
また、毎節立ち上がりに失敗しているだけに今節は前半に違いを見せられるかも注目となる。
前節のレビューで相手に対して何をするかよりも自分達が何をしたいかを重要視しているため、試合の入りで後手を踏んでいるのではないかと書いた。
そこが今節は変わるのか。
秋田は振り切った特徴を持つチームのため、分かりやすいかもしれない。
前節までの戦い方に拘るようなら連敗が一つ増える可能性は高くなりそうだ。
昨シーズンの伊藤監督のように理想を捨てて勝ちに行く姿勢を見せられるか。
同じようにやりたいことだけをやる前半を過ごすようなら今後期待は持てないかもしれない。
やりたいこと+相手の嫌がること。
そして今節はピッチを含めて特殊な相手のため、状況に合わせてシンプルさも加える。
そこをクリアした上で結果が出るならチームは一歩成長できる。
チームとしても監督としてもターニングポイントとなるゲームではないだろうか。
7.あとがき
昇格を目指す中で6試合で3敗はあまりにも多すぎる。
まだ6試合、されど6試合。
一旦昇格は考えず、まずは秋田に勝つこと、そして勝ちを積み重ねていけるようにすること。
足りないのは少しのさじ加減だと思う。
その少しに気づけるのか、改善できるのかは大きな差となる。
早いかもしれないが、最初のターニングポイントはやってきた。
結果よりも過程が改善し、その上で結果が付いてくればベストである。
今シーズンも秋田は秋田らしさ全開で嫌なチームである。
超秋田一体で向かってくるのはどのチームも嫌であろう。
個人的には全員で一体となり、できることだけを何度も何度も挫けずにやる秋田のサッカーは好きである。
元々甲府もそういうチームであった。
スタイルは全く違うが少し懐かしさも感じている。
とにかく勝ちたい!
でも勝つだけではきっかけは掴めない。
勝てる道筋が見えるような試合となることを期待したい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。