観戦記⑧
8回目の今回、向かった場所は押原公園グラウンド。
高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ2022 関東2部 第5節ヴァンフォーレ甲府U18対桐蔭学園高校の一戦。
「ダノン世代」と期待された世代が高校最高学年を迎えたヴァンフォーレ甲府U18。
小学生年代で世界大会準優勝を成し遂げたチームからは既に内藤大和選手がトップチーム昇格を果たしている。
トップチームをJ1昇格に導いた経験のある内田一夫監督と大宮アルディージャから新たに今シーズンやってきた中村順アカデミーヘッドオブコーチがどのようなチームを作っているのか。
内藤大和選手を追ってトップチームに昇格する選手がいるのか楽しみだ。
一方の桐蔭学園は2017年度にチーム内の分裂がありながらも高校サッカー選手権に出場する等話題にもなったチーム。
内部分裂から立ち直り、昨年は神奈川県リーグを制覇してプリンスリーグに昇格。
いよいよ古豪復活が見えてきた。
選手情報等持ち併せていないだけにどのようなチームで素晴らしい選手と出会えるのか楽しみでならない。
1.スタメン
*メンバー表が無く、呼び名から推測して公式プログラムと照らし合わせました。
甲府側はプログラムに背番号も記載されていたため、問題は無いかと思いますが桐蔭学園側は全て推測で並べているため違う箇所や名前がわからない選手もいました。
詳しい方に教えていただければと思います。
また、情報が入れば追記させていただきます。
ヴァンフォーレ甲府U18
スタメン
12.高橋黎光【ヴァンフォーレ甲府U15】2年
22.佐藤柚太【名古屋グランパスU15】2年
3.小林隆【ヴァンフォーレ甲府U15】3年
4.篠原颯太【東京ヴェルディジュニアユース】3年
6.志村ぼん【ヴァンフォーレ甲府U15】3年
10.氏原幹太【ヴァンフォーレ甲府U15】3年
14.中川広土【駿台甲府高校】3年
20.中村瑠志【ヴァンフォーレ甲府U15】2年
9.伏見星斗【ヴァンフォーレ甲府U15】3年
11.佐藤楓【ヴァンフォーレ甲府U15】3年
17.高垣駿太【FC岐阜U15】3年
桐蔭学園高校
スタメン
1.入江倫平【桐蔭学園中学校】3年
2.三須友喜【SC相模原ジュニアユース】3年
3.原大稀【桐蔭学園中学校】3年
5.
6.飯島大地【横浜F・マリノスジュニアユース追浜】3年
7.中村壮太【川崎フロンターレU15】3年
8.阿部大輝【湘南ベルマーレU15】3年
9.
13.相徳青伊【横浜F・マリノスジュニアユース追浜】3年
10.
11.山形真之【海老名FC】3年
2.試合展開
灼熱の中、甲府のキックオフで始まった一戦。
立ち上がりは桐蔭学園が前への圧力を高め、押し込んでいく展開となる。
桐蔭学園はとてもソリッドなチームであり、高校サッカーらしく勢いで押し込むだけでなく丁寧に後方から繋いでいく姿勢を示していく。
ボール保持時にはGKの選手も参加し、ボール保持を試みる。
ビルドアップの出口となるのはサイドで幅を取るSBとなるが、ロングパスの乱れもあり上手く前進ができない。
また、2トップが前線で張っているものの裏抜けや中盤に降りて引き出す動きが少なくボールを繋ぐことがプラスになっているとは言い難かった。
目先の勝利だけを求めるなら2トップの2人が強さを持っているだけにシンプルに長いボールを入れていく方が効果的な攻撃になりそうだと感じたが、今後やり方を変えるのか選手の組み合わせを変えるのか、あるいは選手の成長によって補っていくのか楽しみだ。
一方の甲府もボール保持からの攻めを狙っていく。
桐蔭学園以上にピッチを広く使うことを狙っていたものの桐蔭学園の強度の高さの前に思っている程ボールを持つことができない。
ボール保持時の甲府は立ち位置は大きく崩さず基本となる433の形でボールを保持していく。
この際、桐蔭学園がSBに幅を取らせていたのに対して甲府はWGの高垣選手と佐藤選手に幅を取らせることでピッチの横幅を使うだけでなく高い位置で張ることで縦幅も広く使うことを狙う。
だが、DFラインからなかなか前進できないことで効果的であったかと言うと疑問はある。
桐蔭学園の強度は高かったものの甲府も怯まずにボールを持つことを恐がらなければもっと効果的な攻めは見せられたように感じた。
この点は次観戦する際の楽しみでもある。
中盤でのボールの奪い合いという展開が多く、お互いに大きなチャンスを作れない中で試合が進んでいくが徐々に甲府のペースへと変わっていく。
それでも少ない手数でもチャンスが多いのは桐蔭学園というイメージではあったが、先手を取ったのは甲府。
32分に左サイドでボールを受けた志村選手がアーリークロス気味にゴール前に入れると伏見選手が折り返し、中村選手がボレーで合わせ甲府が先制に成功する。
志村選手に対してのプレッシャーは緩かったものの質の高いクロスを入れたことが得点に繋がった。
先手を取った甲府は40分にも得点を決め、桐蔭学園を突き放す。
中央ペナルティエリアの外で混戦となる中でボールを持った中村選手がスルーパスを出すと抜け出した中川選手がGKの入江選手に当たらないように浮かしたシュートがゴールネットを揺らし、甲府に2点目が入る。
少ないチャンスの中で質の高さや決定力で勝った甲府がリードして前半を終える。
後半開始から桐蔭学園は3人を交代して反撃を試みる。
阿部選手、山形選手、10番の選手に代えて齋藤快叶選手(桐蔭学園中学校:3年)、小林宏大選手(横浜F・マリノスジュニアユース追浜:2年)、27番の選手を投入する。
3人共同じポジションに入った。
前半同様に立ち上がりは桐蔭学園が押し込む流れとなる。
続けてセットプレーを獲得していくが、ゴールに迫るまでには至らない。
そして前半同様に時間と共に甲府が巻き返す展開となる。
だが、中盤の攻防が多く決定的な場面はほとんど作れず時間が過ぎていく。
その中で前半以上にボールを大事にする姿勢を見せる甲府はゴールキックでトップチームと似たような形からビルドアップを開始していく。
トップチームはDFラインが右にスライドし、須貝英大選手がSBの位置にスライドする形でペナルティエリア内にGKの河田晃兵選手と浦上仁騎選手、野澤陸選手に加えてボランチの石川俊輝選手が菱形を作る感じでゴールキックを行う。
これはU18も同様でGKの高橋選手にCBの小林選手、篠原選手に加えてアンカーの中川選手で菱形を作っていく。
違いはサイドの選手の立ち位置か。
トップチームはサイドの高い位置で幅を取るわけではないため相手としては前線に人数を掛けることができ、スペースを作りにくい場面が見られた。
だが、U18ではWGが高い位置で幅を取ることで4バックの選手を釘付けにできることでゴール前では4対2、中盤まで含めると8対6と2人空けることができるため、トップチームと同じ形を採用しているがU18の方が設計としては優れたものであると感じた。
後は引き付けて剥がして行くことができればU18の大きな武器となりそうである。
61分に甲府は篠原選手と高垣選手に代えて櫻井秀都選手(ヴァンフォーレ甲府U15:2年)と池松聖那選手(東急SレイエスFC U15:3年)を投入する。
櫻井選手はそのままCBに入り、池松選手は中盤に入った。
そして高垣選手がいたポジションには氏原選手がスライドした。
76分には桐蔭学園は相徳選手に代えて29番の選手を投入する。
80分には甲府が中村選手に代えて高橋利帆選手(大森FC U15:2年)を投入する。
一方の桐蔭学園は5番の選手に代えて16番の選手を投入。
84分には小林選手が甲府DFラインからボールを奪い、シュートを放つも惜しくも枠の上に外れてしまう。
後半のチャンスらしいチャンスはこの場面くらいでお互いに静かな展開で後半45分を終えた。
前半の2ゴールを守った甲府が勝ち点3を得ることとなった。
3.注目選手
ヴァンフォーレ甲府U18
6.志村ぼん
トップチームに昇格した内藤大和選手と共にこの世代を代表する顔。
左利きで足元の技術に長けたSBとなる。
小学生の頃は人一倍小さかった身長も今では177cmとSBでプレーする上で問題ないサイズとなった。
賢さも兼ね備え、どんなスタイルのサッカーにも適応できる柔軟性もあり、中学時代にはボランチでプレーしていたように中でも外でも力を発揮できるトップチームの荒木翔選手のような選手だ。
特に注目はキックの強弱を付けることが上手い点。
直線的に出す浮き球のパスは距離の調整が難しいものの志村選手はキックのタッチが繊細で絶妙な加減で出せる上手さを誇っている。
小、中、高といずれもキャプテンを務めているようにキャプテンシーも魅力。
個人的にはトップチーム昇格させて欲しい選手だが、同じポジションには荒木選手や小林岩魚選手がおり、三浦颯太選手の加入内定も決まっていることから昇格は難しいのかもしれない。
ポジションが重なるとはいえ、上げる価値がある選手であることに違いはない。
10.氏原幹太
左利きのテクニシャン。
高いテクニックと豊富なイマジネーションを駆使し、ゴール前で決定的な仕事をする。
中央を主戦場とする選手だが、試合の途中からは右のWGにポジションを移しカットインからチャンスメイクも見せた。
10番が似合う選手であり、元ドイツ代表のメスト・エジルを彷彿とさせる。
左利きのテクニシャンにありがちな守備への切り替えや強度に課題はあるが、高いレベルでのプレー経験によって課題はクリアできるはずだ。
直接トップチーム昇格は厳しいように感じるが、大学を経由して甲府に帰ってくる可能性は大いにあるだろう。
14.中川大士
個人的に最も見たかった選手だ。
昨年駿台甲府高校から加入したMF。
ユースから高校サッカーへの移籍は何度か耳にしたことがあったが、逆は初めて聞いただけに興味があった。
どのような経緯で移籍したのかはわからないが、甲府としては来てくれてありがたい選手であることは間違いない。
中盤の底から左右両足を駆使し、ボールを動かしていくゲームメーカー。
セカンドボールへの反応もいち早く、隙を見ては前線に攻撃参加も厭わない。
小柄な選手でありながら球際に激しく飛び込む勇気も持っている。
トップチームの石川俊輝選手のような気が利く、いてくれると助かる選手だ。
11.佐藤楓
ドリブルが武器のサイドアタッカー。
細かなテクニックから縦への突破や相手の股を抜いての突破等、華のある選手だ。
トップチームでも活躍した泉澤仁選手(現大宮アルディージャ)のように止まってから自分の間合いで抜き去るタイプではなく、スピードに乗った状態でテクニックを駆使して抜き去っていく。
イメージとしてはブラジル代表のネイマールのような華やかさを持っている。
ゴールに絡めるタイプには見えなかったが、目に見える結果が安定して出せる選手になると評価も付いてくるだろう。
大学を経由してプロ入りの可能性は充分にある。
20.中村瑠志
身長160cmと小柄なアタッカー。
昨年Jリーグユース選手権で見た際には1トップを務めていたが、今回は中盤でプレー。
印象は変わらず、裏抜けや間で受ける上手さを持ち守備への切り替えも速く守備のスイッチ役にもなれる。
ボールが無くても見せ場を作れる選手だ。
1トップ向きの選手とは言い難く、2トップの一角や今節のように中盤の攻撃的なポジションの方が適正は高いと感じた。
大分トリニータの中川寛斗選手やFC長野パルセイロの山口和樹選手のような選手になってもらいたい。
22.佐藤柚太
モダンなスタイルにも従来のスタイルにも適応できるSB。
中央にポジションを取り、WGを活かすこともできタッチライン際を往復することもできる。
SBとしては177cmとサイズもあり、守る上でも穴となる選手では無い。
3バックのチームではトップチームの須貝英大選手のように攻撃的なCBもこなせそうな雰囲気もある。
横浜F・マリノスの松原健選手に似た印象を受けた。
まだ、2年生のためプレー強度を高めていければトップチーム昇格の可能性も見えてくるのではないだろうか。
桐蔭学園高校
1.入江倫平
185cmと長身ながら足元の技術にも優れ、ポゼッションにも参加できる現代型のGK。
高いコーチング力も備え、90分通して味方を鼓舞し続ける姿も魅力的であった。
ハイボールの処理やシュートストップの場面が試合中訪れる場面がほとんど無く、見られなかったことは残念であるが落ち着きもある選手のため大きく劣るタイプでは無いはずだ。
全国の舞台に立つことができれば名前が売れる可能性は充分にあるだろう。
6.飯島大地
桐蔭学園のポゼッションサッカーを支えるCB。
安定した足元の技術で攻撃の起点となる選手。
登録はMFのため、元々はボランチの選手なのかもしれない。
178cmとCBとして身長があるわけではなく、身体能力に長けているタイプでは無いため上のレベルで4バックのCBは厳しいかもしれない。
だが、ボランチや3バックの一角では充分大学サッカーでも活躍するだけの実力者である。
今後の活躍も見てみたい選手だ。
11.山形真之
長身を活かし、前線でターゲットとなる選手。
フィジカルが強く、空中戦も得意としている。
だが、前半で変わったようにボールが無い所での動き出しや守備での貢献度が高い選手とは言えず課題も多い選手だと感じた。
課題を克服しながらゴール前で勝負する回数が増やせれば得点に絡む機会は増やせるのではないか。
次見る機会があればどのような選手になっているか楽しみだ。
13.相徳青伊
左利きでキックの上手さに特徴があるボランチ。
セットプレーを任されるキックの上手さがあり、展開力もある。
縦パスを積極的に狙う回数が増やせれば恐い選手となれそうだ。
個人的にはSBが向いているようにも感じた。
現代サッカーにおいてSBがゲームを作ることも求められるため、ハマるのでは無いだろうか。
そこに推進力が加われば来シーズンから甲府に加入することが内定している三浦颯太選手のようになるかもしれない。
4.あとがき
甲府サポーターとして甲府目線で見てしまうことが多く、桐蔭学園を応援している方には申し訳なく思っています。
選手の情報も持ち合わせていないため、読まれた桐蔭学園関係者の方がいらっしゃれば選手名等教えていただけるとありがたいです。
甲府はトップチームに繋がるサッカーを展開しており、将来も含め良い軌道に乗り始めたと感じた。
「ダノン世代」と期待される世代ではあるが、当時のメンバーは志村選手と氏原選手のみと下級生含めて「ダノン世代」からポジションを奪っている選手もおり、全体的な層は厚いのではないだろうか。
怪我人等の情報はわからないため、何人かなんで出てないのだろう?と感じた選手はいたが不在を感じさせなかった。
目指すものがハッキリしてはいるもののまだまだ完成度は低いとも感じたため、このチームには伸び代は残されている。
クラブユース選手権や夏を経てどこまで安定して勝ちを重ねていけるチームとなるか楽しみだ。
桐蔭学園には良い意味で驚かされた。
桐蔭横浜大学で指揮を取っていた八城監督の元、桐蔭横浜大学らしいサッカーであった。
八城監督は桐蔭横浜大学の総監督も務めているため、桐蔭横浜大学でプレーする姿を見られる選手もいるだろう。
また、イメージとしては内部分裂のイメージが強かったが非常にまとまりがあり、全体で同じ方向を向いてチーム戦いを共有できおり素晴らしいチームであった。
インターハイや選手権の舞台でプレーする姿が見たいチームであり、その資格は充分にあるかと思う。
神奈川という激戦区を勝ち上がることは簡単ではないが、期待したい。
桐蔭学園という素晴らしいチームと出会えて良かった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。