日本クラブユース選手権U–18 サガン鳥栖U–18vsヴァンフォーレ甲府U–18
Jリーグは終了したが、ヴァンフォーレの2020年はまだ終わっていない。
契約満了となる選手も発表され、寂しい1週間となったが今度の主役は甲府の未来を担う選手たち。
クラブユース選手権は甲府にとっては4年ぶり6度目の出場となる。
その時のメンバーには先日契約満了となってしまった入間川選手が在籍していた。
監督を務めていた小佐野一輝氏は翌年の7月に癌のため亡くなられた。
今年より監督に就任した西川監督は親友にあたる人物。
アカデミーダイレクターとして4年、甲府のアカデミーを支えてきた。
小佐野氏が亡くなられた2016年にはU12の監督としてダノンネーションズカップで世界大会準優勝に輝いた。
最高成績は39回大会のベスト8となるが、西川監督と小佐野氏の合言葉である「マンパワー、フルパワー」で一番輝くチームを目指す。
一方の鳥栖は前回大会準優勝。
相良竜之介選手と兒玉澪王斗選手はトップチームに昇格することが内定している。
また、相良選手はJ1で得点も挙げており、兒玉選手はルヴァンカップに出場している。
また、2年生の中野伸哉選手は14試合に出場し、終盤には9試合連続出場した内7試合に先発とJ1の舞台でも活躍した。
その中野選手はU19の代表合宿に参加していることから欠場となる。
他にもU16に楢原慶輝選手、坂井 駿也選手、福井太智選手、竹内諒太郎選手と代表選手も多く抱えるタレント軍団。
前回大会決勝で敗れた雪辱を果たす大会としたい。
1.均衡
スタメンはこちら。
甲府は1トップに入る選手に怪我人が出ているようで中盤が本職の白倉選手が1トップに入る。
トップチームが長崎戦で行った野澤選手の1トップに近いイメージとなるか。
一方の鳥栖は上述したトップチームに昇格する相良選手、兒玉選手が共にスタメン出場となる。
立ち上がりはお互いにロングボールを前線に入れ込んでいく展開となる。
甲府が先にショートパスを繋ぎながらの前進を試みるも鳥栖も徐々に繋ぐ流れになっていく。
お互いにGKからビルドアップし、ボールを大事にするスタイル。
甲府はキャプテンの五十嵐選手、鳥栖はアンカーの西村選手を中心に組み立てを行いたい。
五十嵐選手はあまりDFラインに加わらず、前線にも積極的に絡んでいくプレースタイルであるが、西村選手はDFラインに落ちてビルドアップの起点となってボールを前進させていく。
共にトップチームもボールを大事にするだけにトップとアカデミーが連動している好感が持てるチーム同士である。
似たようなスタイルの両チームだが、お互いにシュートまでは至らない展開のまま飲水タイムを迎える。
飲水タイム明けも中盤で繋ぐ展開が続くもお互いにミスからショートカウンターの繰り返しとなるが、38分にワンチャンスを物にして鳥栖が先制する。
左サイドから楢原選手のクロスに相良選手が合わせ鳥栖が先制する。
小池選手がボールウォッチャーとなってしまいをフリーとしてしまった。
均衡した展開が続いていたが鳥栖が先制して前半を折り返す。
2.課題
後半に入り鳥栖がプレッシャーの強度を上げ、甲府のビルドアップを阻害し押し込んでいく。
後半12分にまたも左サイドからのクロスで鳥栖に決定機。
揚妻選手の好セーブで追加点を許さず。
後半13分にはお互いに選手交代をする。
甲府は白倉選手に代えて河野(2年)選手、鳥栖は楢原選手に代えて石原選手(3年)を投入する。
後半20分にまたも左サイドからのクロスで鳥栖に決定機を与える。
ここも揚妻選手が止め、難を逃れる。
トップチームに二種登録されていた選手だが、練習参加した成果を出せたのではないだろうか。
後方からのビルドアップで前進したい甲府だが、ビルドアップが上手くいかない。
トップチームでも時折見られた課題ではあるが左CBに入る熊谷選手が左足でのビルドアップを得意とはしていなかったためである。
右のCBとして起用されていたら全く違った印象となったのではないだろうか。
熊谷選手自体は決してビルドアップが下手なタイプには見えなかった。
トップチームでも今津選手が左CBに起用された時には見られた課題である。
左SBの岩﨑選手は左足でのビルドアップやフィードを得意としているタイプに思えたが、岩﨑選手をCBに起用すると左SBがいなくなってしまうのかもしれない。
後半33分にセットプレーから鳥栖に追加点が生まれる。
西村選手のFKから岡村が折り返し、安藤のヘディングで追加点をあげた。
後半37分に小池選手に代わって小高選手を投入する。
80+1分に鳥栖は田中選手に代えて二田選手(2年)を投入する。
80+3分には岡選手に代えて末次選手(3年)を投入し逃げ切りにかかる。
強豪鳥栖相手に金星はならず。
だが、決して大きく劣っていたわけでは無かった。
決定力やゴール前でのラストパスやクロスの精度で劣っていた。
一方で、中盤でのボール運びは負けていなかったがプレー強度では劣っていた。
県リーグで戦う甲府とプリンスリーグ九州を3連覇し、本来は今シーズン高校年代最高峰のプレミアリーグで戦雨はずであった鳥栖との差が出てしまった。
来シーズンの目標はまずはプリンスリーグ関東に昇格し、より強度の高いリーグで揉まれることが強化に繋がる。
決定力の向上やゴール前でのプレーの質の向上、プレー強度の強化とトップチームも含め、来シーズンのヴァンフォーレ甲府全体の課題と言える。
3.あとがき
まずは3年生の皆様、3年間あるいはU15やU12からの選手は長い間ヴァンフォーレ甲府を背負って戦ってくれたことに感謝します。
U18での3年間お疲れ様でした。
大学でサッカーを続ける人、高校でサッカーを辞める人。
選択は人それぞれ異なると思いますが、この先もヴァンフォーレファミリーの一員です。
大学を経由してヴァンフォーレに帰ってきてくれること、共にスタンドから応援する日を楽しみに待っています。
鳥栖はトップチームの志向するサッカーからアカデミーでも一貫したサッカーを行い、高校生の内からJリーグでプレーする選手を輩出している。
甲府としては鳥栖は目指すべきクラブといえる。
共にJ2オリジナル10と呼ばれるJ2初年度よりJリーグに参入しているチーム同士であり、お互いに経営危機を乗り越えたクラブである。
先にJ1の舞台に上がったのは甲府であったが、現在は鳥栖が一歩も二歩も先行している。
アカデミーにおいては現状手の届かないところまで進んでしまった。
トップチームが方向性を示したシーズンの中でU18の志向したスタイルも互換性があり、この先も甲府の志向するスタイルはこの方向性であることは明白である。
これでヴァンフォーレの競技面での2020シーズンは終了となる。
2021シーズンはトップチームもアカデミーも飛躍となる1年を願い、今年のレビューを終わりにしたいと思います。
お読みいただいた皆様、お身体に気をつけ、良いお年をお過ごしください。