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J2第33節 FC琉球戦 レビュー

前回対戦の悔しさを晴らすには勝利しかない。
勝って次に可能性を繋げていきたい。

1.スタメン

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甲府
前節から1人の変更。
三平に代えてリラをスタメンに起用した。
兄セザール氏が亡くなった悲しみがありながらもブラジルに帰らず、甲府のために戦うことを選んだ決意に敬意を表します。

琉球
琉球は前節と同じメンバーとなった。
ベンチにはGKの田口と中川が戻ってきた。

2.全集中

気温29℃と夏場のような暑さの中で始まった一戦。
前線にボールを入れ込み、積極的に前からボールを奪いに行く入りを見せた甲府だが、最初のチャンスを作ったのは琉球。

琉球が今節狙いとしたのはこの形。
SBが幅を取ることで甲府の守備ブロックを広げさせ、WBの背後を突きメンデスを引き出す。
一方で右サイドでは関口が浦上や山田へ指示を出しながらプレスを掛けていくことで周りと連動しながら守備を見せていた。
これにより、WBの背後を突かれる場面はあまり作られなかった。
左サイドの連携はシーズン通しての課題であり、外国人選手をDFラインに組み込むことの難しさでもある。
また、関口は元々SBの選手であるのに対し荒木は攻撃的な選手であったことも影響している。

一方で甲府の狙いは琉球の中盤とDFラインの間となる。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『ライン間でプレーすることと、(野津田)岳人と(宮崎)純真のところで相手の背中を取ることがチームとしての狙いでした。』

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右サイドで幅を取るのは関口となるが、左サイドではローテーションする形で幅を取っていく。
新井が中盤に上がることは前節までと変わらないが、今節は荒木がインサイドに入る回数も増え左サイドではローテーションの度合いが増した。

伊藤監督のコメントにあったような狙いから甲府が先制に成功する。

シュートはスーパーなものである。
これは宮崎を褒めるしかない見事なものであったが、シュート直前の作りはチームとしての狙いが嵌ったもの。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『前半から自分たちがボールを握りながら攻撃が出来たところや、ボランチが相手のプレッシャーの背中を取って仕掛けられたところが、(宮崎)純真の得点に繋がったと思うので、チームとして狙い通りに出来ていたと思います。』
『(宮崎)純真に関しては、シュート力があるので、あのディスタンスでシュートを打ち得点を決めたことは良かったです。』

チームとしての狙いと個の優位性が噛み合ってくれば得点は今後も取れていけるだろう。

試合後の宮崎純真選手のコメントより。

『ここ何試合か良い形で受けられたり、受けられなかったりしていた。その中で修正してきたので、良い形でボールを受けられて良かった。』
『シュートシーンの前にも、あのスペースでボールを受けてドリブルを仕掛けられると思っていたので、(ボールが入れば)シュートを打とうと思っていました。』
『良い感じで右に逃げていきました。無回転シュートを狙って打ったわけではないが、ミートできたので打った瞬間に入ると思いました。』

シュートばかりに目が行きがちだが、以前までの宮崎は「ホール」でのポジション取りやボールを引き出すことに課題を抱えていた。
このエリアでボールを受けられるようになったことが今の活躍に繋がっているのではないか。
伊藤監督の元で目に見えた成長を見せ、飛躍の時を迎えている。

試合後の福井諒司選手のコメントより。

『簡単にミドルシュートを打たせてしまったというところで、カットインで入ってこられたときについていくことも大事。それと同時に、次に誰が出てくるのかというところで、ボランチが出るのかCBが出るのかというところをもうちょっと整理しないといけない。ああやって良いシュートを打てるチームが相手だと失点してしまうな、と思いました。』

ライン間の守備に課題を抱えている琉球。
今後立て直していくためにも修正は必要だろう。

先制し、勢いに乗った甲府は連動した攻撃からチャンスを作る。

先程の宮崎のミドルシュートのイメージが残る琉球の裏をかき、荒木のランニングを活かし最後は山田のミドルシュート。
この場面はビルドアップで琉球の選手を吊り出し、背後を取った。
宮崎へ新井からスルーパスが出たが、「レイオフ」と呼ばれるプレーが最近の甲府は増えてきた。
クサビのパスを受けた選手がワンタッチでサポートする味方に落としのパスを出して前向きの選手を作るプレーのことを「レイオフ」と言うが、この場面では荒木のクサビのパスを受けた野津田がワンタッチで落とし、新井が前向きでサポートしている。
連動した攻撃が増えだしてきた。

山田のミドルシュートの後から徐々に琉球もボールを持てる時間が増えていく。
先程も触れたように琉球はSBが幅を取ることで甲府のWBを引き出し、5バックを横に広げることを狙う。

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甲府は先制したこともあり、琉球のビルドアップに対しリラが牽制する形を取る。
それに対し、琉球はCBが一人残る形でもう一人は段差を作りビルドアップを行っていく。
甲府の中盤のラインが中央を固めて守るため、ボールが外回りに動いていくこともあり琉球はボールは持てても良い攻撃は見せられない。

畳み掛ける甲府は続けてチャンスを作っていく。

この場面も左サイドでローテーションしながらボールを回し、リラへクサビのパスを付けている。
それに対し、山田と中村が近い距離でサポートし「レイオフ」の形を意識している。
結果的にリラのパスがズレたものの自らボールを奪い返し、決定的なシュートを放った。

飲水タイム明けはメンデスの高さを活かす攻撃を見せる。
序盤からセットプレーでは沼田がマークしており、流れの中でもメンデスは沼田を狙い撃ちする形でポジションを取り高さを活かした。

攻守の切り替えが速い甲府の前に琉球は前進することも容易ではなくなっていく。
新井を中心にハイラインを敷き、全体がコンパクトであるためブロックの中にもボールを入れていけない。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『前半はパーフェクトに近いゲームをしたと思います。何回かチャンスを作られた場面もありましたけど、「ダイレクトプレス」「自分たちがボールを握りながらの攻撃」「セキュリティ」に関して、相手以上に我々がコントロールしていたと思います。ポゼッション率は別として、しっかりコントロールしながらゲームを進められたと思います。』

試合後の新井涼平選手のコメントより。

『琉球さんはバイタルエリアを攻略してから攻め入ってくるので、そこをコンパクトにすることを意識して戦わないといけないと思っていました。前半は高い位置からプレッシャーを継続して、(差し込んでくるボールを)狙いやすくなってハマったと思います。』

前半は狙いも嵌りパーフェクトな出来ではあったが、良い時間帯に追加点が取れていれば120点と言えただろう。
畳み掛けてチャンスは作っていただけに追加点が欲しかった。

試合後の樋口靖洋監督のコメントより。

『僕らも相手のハイラインを攻めることで相手を下げたり、相手がワイドにグラウンドを使ってボールを回してくる中で、取りどころを決めてやっていくところは準備していたんですけど、それを相手が上回る形で僕らがすべて受けに回る展開になった。特に前半は厳しかったなと感じています。』

琉球にとっては苦しい前半となったが、最小失点で防げたことが唯一の光明であった。

全集中でアラートに走り続けた甲府が前半はリードして折り返した。

3.出し切る

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『ゲームをコントロールしながら中央にくさびを入れること」や「サイドを崩して2列目からの飛び出し」などの相手がやりたいことを前半から想定してプレーしていましたが、我々がラインを上げたところの2列目の対応で、金井選手と沼田選手に1~2本裏を取られたところがあったので、そういうところは修正しました。』

パーフェクトな前半とのコメントもあったが、サイドの守備を修正したハーフタイム。
一方の琉球は2人の選手交代を行う。
阿部と上里に代わって清水と風間宏希を投入する。
チームの中心選手を同時に交代する思い切った交代を敢行した。

試合後の樋口靖洋監督のコメントより。

『後半は、少しアバウトなボールも必要だと思い、メンバーを2人入れ替えました。相手のラインを下げる狙いと、展開のテンポを上げるというところでの交代です。本来の足元でつなぎながらやりたいという形とは違う部分もありますけど、アバウトなボールをラフに相手の背後に入れながら押し込むというのが後半の狙いでした。』

試合後の風間宏希選手のコメントより。

『前半、ベンチから見ていて、終始圧倒的に甲府に攻められ続けてディフェンスもキツそうだったし、見ていてテンポが遅いなと思っていました。後半から入ると告げられてからは、とりあえず僕がボールをたくさん受けてテンポを出し、相手を走らせて、スキあれば裏を狙おうと思っていました。』

この交代が当たり、琉球が後半はペースを握る展開となる。
キックオフからの最初のプレーで清水をターゲットにしたロングボールを入れる。
また、清水と共に投入された風間宏希が積極的にクサビのパスを打ち込んでいく。
前への意識を増した琉球が甲府陣内でプレーする時間が多い立ち上がりとなる。

選手交代で流れを掴んだ琉球は交代選手がチャンスを作る。

風間宏希がセカンドボールを拾うと幅を取っている金井へ。
金井のクロスに清水が合わせるも河田が落ち着いて対応する。
風間宏希と清水が琉球を活性化させていく。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『上里選手と阿部選手が代わるかどうかはハーフタイムが終わってから聞いたので、ハーフタイムの指示では彼らがいる状況を想定して進めていました。ハーフタイムで2人が代わり、ロングボールが来ることやボランチのプレッシャーの掛け方、セカンドボールを拾う準備が重要になると考えていたので、後半からキャプテン(新井涼平)とよりコミュニケーションを取りながら、途中で選手を代え「フレッシュな選手たちでセカンドボールを拾うこと」「飛び出して行くこと」などの指示を行いました。』

立ち上がりこそ琉球の変化に戸惑った甲府だが、その波を乗り切ると落ち着いて琉球の攻撃に対応できるようになる。

一方の琉球は風間宏希の存在もあり、中盤でボールを奪えるようになりビルドアップの仕方も前半から変化させ前進を試みていく。

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風間宏希がDFラインに下がってボールを引き出すことを増やし、ビルドアップから攻め手を探る。

64分に琉球は武田に代えて中川を投入する。
1分後には甲府が2人の交代を行う。
宮崎と野津田に代えて鳥海と野澤を投入する。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『2点目をどん欲に取りに行くこと、ストライカーとして2点目3点目を1試合の内に固め取り出来るような選手になって欲しいと思います。』

宮崎に向けてのコメントである。
点を取った後の宮崎は消極的になってしまう時がある。
調子が良いからこそ周りが見え、選択肢が増えてしまい判断を迷ってしまう。
貪欲にゴールを狙い続ける姿勢を持つことでより恐い選手となっていくだろう。

なかなか攻め手を作れなかった甲府だが、中盤で奪ってからのカウンターに活路を見出していく。

中盤で山田がボールを奪うとリラから中村を使い、背後へ抜け出したリラへスルーパスを送るとリラがフィニッシュ。

73分にはメンデスのボール奪取からショートカウンター。

鳥海のミドルシュートは枠を捉えられず。

直後に琉球が選手交代。
池田に代えて上原慎也を投入し、2トップに変更する。

上原慎也を投入したことでターゲットが増えた琉球は2トップにボールを入れる回数を増やしていく。

78分に甲府は荒木と中村に代えて須貝と三平を投入する。
運動量を落とさない交代となった。

80分に甲府のビルドアップのミスを突き、琉球に決定機。

余裕はあっただけに冷静にシュートを撃ちたかったところ。
甲府としては安易なミスはしてはいけない。

オープンな展開が増えだし、甲府にもチャンスは作れる状況となる。

84分に甲府は山田に代えて山本を投入し交代枠を使い切る。

89分に琉球は風間宏矢に代えて赤嶺を投入し、前線のターゲットを増やす。

90分に甲府はスローインからリラに決定機。

福井を背負って反転すると滑り込んだ福井をキックフェイントで交わし、シュートを放つも猪瀬が防ぐ。

共にチャンスは作る中、アディショナルタイムに後半最大の決定機が訪れる。

上原慎也がクロスを上げるとメンデスのクリアがゴール前にこぼれる。
中川が先に反応し、シュートを放つが河田が足で防ぐビッグセーブ。

終盤には危険な場面を作られ、前回対戦の悪夢が過ぎったが守りきりリベンジを果たした。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『クリーンシートで終わっていることは本当に素晴らしいことです。これは前線から中盤、ディフェンスラインそしてキーパーが意思疎通出来ていることだと思いますし、これが今勝てている要因だと思います。しかしチャンスもいっぱいあったので、残り9試合を勝ち切るにはあと1~2点を取っていかないと上の順位には到達出来ないと思いますので、2点目3点目を取れる力というのをこれからつけていきたいと思います。』

危ない場面は作られたが、またも無失点。
チーム全体が同じ方向を向いて戦えている証拠である。
だが、追加点を取れていればもっと楽に勝ち点3を掴めていただろう。
残り9試合の課題となる。

試合後の樋口靖洋監督のコメントより。

『非常に残念な結果です。残り9試合になりましたが、やはり僕らは良いボールの奪い方をして、ボールを握って相手を崩すという本来のスタイルをしっかり出せる準備をしたいと思っています。次の愛媛とのホーム戦ではそういう試合をして、この流れをしっかり変えたいと思います。』

後半の琉球は本来目指す形は出せていたのではないか。
残り試合でもう一度這い上がる姿に期待したい。

試合後の福井諒司選手のコメントより。

『「勝たなければ」というプレッシャーよりも、「もっとやらなければいけないんだな」というところはけっこう感じています。人のせいにしてもしょうがないので、やっぱり自分がもっとやらないといけないというのを考えながら、また次へ向けて頑張るしかないと思っています。』

これはどのチームにも言えるのかもしれない。
もっと自分がやらなければという意識を全員が持てばチーム力は自ずと上がってくる。

全てを出し切った戦いで2連勝となった。
一戦一戦勝ちを積み重ねていきたい。

4.MOM

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山田陸
細かなミスも散見されたが、前半から飛ばしたことによる疲労が大きかっただろう。
球際の争いで優勢に立ち、琉球の攻撃をシャットアウトした。
今や甲府は山田陸のチームと言っても過言ではないほどの存在感を見せている。
伊藤監督の教え子だから起用されている選手ではない。

5.あとがき

まずは1勝。
内容はどうであれ勝ち続けていくしかない。
前回対戦同様アディショナルタイムに決定機を作られたが、今節は凌いだ。
良い時間に追加点が取れていれば違った試合となったが、次節以降の課題として持ち越しとなる。
難しい試合は続くが一戦必勝で勝点を増やし続けたい。

琉球にとっては6戦勝ち無しとなった。
前半の戦い方はその雰囲気を感じさせたが、後半の戦いは勝てていないチームのものではなかった。
きっかけ一つで再浮上できるはずであり、次節以降期待したい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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