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J2第34節 ツエーゲン金沢戦 プレビュー
苦手としていた偶数月も連勝スタート。
3連勝をかけた一戦はアウェイでの金沢戦となる。
残り9試合、一戦必勝で戦い抜きたい。
1.前回対戦
甲府が7位、金沢が6位で迎えた一戦。
リラが加入後初出場となった。
金沢の特徴を逆手に取り、2対0の勝利を収めた。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。
2.対戦成績
通算では7度の対戦を経てきた。
甲府から見て4勝1分2敗と勝ち越している。
アウェイでの対戦成績を見ても甲府が2勝1敗と勝ち越している。
こちらが全試合の対戦結果となる。
僅差の試合が多くなっていることがわかる。
3.前節
甲府
甲府の狙いが嵌り、宮崎純真のスーパーゴールで先制。
この1点を守りきり甲府が「ウノゼロ」の勝利を収め、2連勝となった。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。
金沢
アウェイ大宮に乗り込んでの一戦は新潟戦からスタメンを1人変更。
左SBの長嶺に代えて前節契約の関係上出場できなかった渡邊を2試合ぶりに起用した。
勝ち点差2で迎えた残留争いをしているチーム同士の一戦は立ち上がりにアウェイの金沢が試合を動かす。
4分、大谷が大宮DFラインの背後へ抜け出すと出てきたGK南の股を抜くシュートを放ち、金沢が先制する。
先制した金沢は守備ブロックを下げ、大宮にボールを持たせる展開を作る。
金沢のブロックの前でしかボールを持てない大宮は中盤でのボールロストから金沢に連続してカウンターを浴びていく。
12分には大谷がカウンターから2点目を決める。
大宮のビルドアップに大谷がプレスを掛けると丹羽がボールを奪い、藤村から大橋へと繋ぐ。
大橋からのスルーパスを受けた大谷が冷静に流し込み、金沢が追加点を挙げる。
ボールを繋いで前進をしたい大宮だが、金沢の切り替えの速さや出足の速さの前に前進ができずボールを失うことが多くなってしまう。
飲水タイムまで大宮はほとんど金沢のゴール前にボールを運ぶことができない。
中断を挟んだことで戦況に変化が出始める。
大宮の出足が良くなったことで金沢の球際の激しさにも適応し始める。
29分には馬渡が直接FKを狙い、ゴールを脅かす。
大宮がボールを保持する展開は飲水タイム前とは変わらないが、ゴール前に運ぶ回数は増え出していく。
一方の金沢もブロックを敷き、ボールを奪うと丹羽と大谷の2トップにボールを預けカウンターを仕掛けいく。
42分に大宮が1点を返す。
右サイドを崩すとSBの馬渡がインサイドへランニングをすると金沢守備陣はついていけず、馬渡はエリア内でフリーでシュートを放ち1点差とする。
飲水タイム前後で試合の展開が大きく変わった前半は金沢が1点リードして折り返すこととなった。
後半も試合の流れは変わらず、大宮がボールを持ち金沢がカウンターの機会を伺う。
54分に共に選手交代を行う。
大宮は菊地と松本に代えて柴山と佐相を投入する。
一方の金沢は大石に代えて長嶺を投入する。
攻撃的なカードを切った大宮と守備のテコ入れを図った金沢。
幅を使いながら金沢DFを破ろうと仕掛ける大宮だが、金沢の守備陣を前にチャンスも多く作れない。
やっと65分に河田の裏抜けから決定機を迎えるが、枠を捉えられず。
金沢も大谷のスピードを活かし、カウンターを仕掛けていく。
77分に再度同じタイミングで両チームが動く。
大宮は黒川に代えて中野、金沢は大谷と廣井に代えて杉浦と力安を投入する。
平松に代えて力安を用意していたが、直前で廣井が足を攣ったことで交代選手を入れ替えることとなった。
最初の長嶺投入が成功していた金沢だが、このタイミングでの交代は結果的に大宮が成功することとなる。
85分に中野が同点ゴールを決める。
小野からのスルーパスに河田が抜け出すと後藤と交錯し、こぼれ球に中野が詰める。
このプレーで負傷した河田が88分に交代となる。
同時に三門も下げ、大山と山田を投入する大宮。
直後には山田がCKからのカウンターでミドルシュートを放つが後藤が防ぐ。
90分には金沢が平松に代えて金子を投入する。
アディショナルタイムには馬渡のFKが枠を捉えるが、またも後藤が防ぐ。
試合はこのままスコアは動かず、引き分けとなった。
前半の飲水タイムまでに2点をリードした金沢だが、結果的にはその後押し込まれ続け追いつかれることとなってしまった。
4.今季成績
両チーム成績
勝ち点60で5位の甲府と勝ち点32で18位の金沢。
前回対戦時には勝ち点2差で金沢が上に立っていたが、その後の23試合で甲府は45ポイントを積んだのに対し金沢は15ポイントを積むのに留まった。
甲府
4勝1敗と好調を維持している。
前節も無失点と28節京都戦から6試合で失点は新潟戦の1点だけと安定している。
ここ6試合を5勝1敗と好調を維持している甲府だが、群馬戦を除きボール支配率では相手に上回られている。
伊藤監督の元、ボール保持の割合も高めてきたが直近の試合では支配率は高まってきていない。
こちらは今シーズンの全チームの平均ボール支配率となる。
甲府は5割を少し下回るのに対し、金沢は45%と甲府が多少は上回っている。
データ上は甲府がボールを持つ時間が多くなりそうだが、今シーズン喫した7敗の内5敗が支配率で上回った試合とボールを持たされる展開は得意としているとは言い難い。
以下は今シーズンの支配率ベスト10となる。
ボールを持つ時間が長ければ勝っているわけではないことがわかる。
金沢は直近2試合で新潟相手に73%、大宮相手には66%のボール支配を許したが1勝1分と結果が伴っている。
甲府相手にもボールを持たせることが予想されるが、甲府としては支配率が高くなることは良い傾向とは言えない。
金沢
前々節新潟戦で勝利したが、1勝2分2敗と黒星が先行している。
新潟戦の前まで13戦勝ち無しと苦しんでいた。
ボール支配にこだわるチームではないと触れたが、前線をシンプルに活かす攻撃が多いのかというとそうでも無いことが以下の図から伺える。
前線の選手として名前が載っているのは嶋田一人となっている。
出場時間に左右されるランキングかと思うが前線に入る丹羽はチーム3位の出場時間であり、栃木や秋田といったロングボールの多いチームには前線の選手も名前が載っていたことから丹羽の名前が無いということは金沢はシンプルに前線に蹴り込んでくるチームではないことがわかる。
1位から7位まではボランチか右サイドの選手の名前が出てきているため、右サイドからの攻撃が多いように思うがヒートマップを見るとその傾向には無さそうである。
中央にプレー割合が多い赤色が多く点在しているが、右サイドはプレー割合が少なくなっている。
松田や嶋田といった右サイドの選手は多くボールには絡んでいるもののボールを持つ時間は短くハブとなる役割が多そうだ。
だが、リーグ平均で見ると敵陣に入ってすぐのエリアは平均よりは高くなっている。
このエリアで松田からボランチを経由した攻撃が多そうだ。
では得点はどのように取っているのか見てみたい。
セットプレーからが最も多くなっていることがわかる。
PKも含めると3割近い得点がセットプレーからであり、ドリブルからの得点が多いことも含めチームとして崩しての得点よりも個人の技量による得点が多そうだ。
5.予想スタメン
甲府
勝っているメンバーはいじらない。
今シーズンの傾向から言ってメンバー変更は無いだろう。
金沢
こちらも変更は無いと予想する。
相手にボールを持たせ、耐える戦い方がここ2試合結果として出ているだけに今節も継続と予想した。
6.注目選手
甲府
メンデス
古巣金沢との一戦。
甲府でのデビュー戦も西部緑地公園と思い出深い土地での一戦となる。
昨シーズンは追い掛ける展開でFWとして起用されたが、本職のCBとして金沢サポーターに成長した姿を見せたい。
金沢
松田陸
来シーズン甲府に加入することが内定した飯島陸の前橋育英高校時代の同級生。
3年時には高校サッカー選手権で優勝し、プロ入りを果たした。
チームメイトの渡邊泰基と共に先にプロ入りしたが、ガンバ大阪では活躍できず今シーズンから金沢に移籍した。
ここまで全試合に先発し、飛躍のシーズンとなっている。
残留争いに巻き込まれているチームを救う活躍を見せたい。
7.展望
柳下正明監督のサッカーはマンツーマンをベースにハードワークする特徴的なサッカーであるが、今シーズンは陰りが見えている。
以前までは前線から積極的に人を捕まえにいき、連動してボールを奪いにいくスタイルであったが自陣にブロックを敷き守るやり方へ転換している。
ブロックを敷き、中央を厚く守る戦い方はJ1で戦っていた頃の甲府に近い戦い方と言える。
ブロックを固める意識は強いもののマンツーマンベースの頃の名残はあり、人に食いつく傾向はある。
2トップが中盤へのパスコースを消しながら中央を固めることで外回りにボールを持たせていくことを狙っていく。
中央を封鎖し、サイドへ追い出したボールに対してはSHが対応する。
SHが対応するということは2トップの脇が空いてくることとなり、CBがドリブルで前進することで金沢の守備ブロックを押し下げていきたい。
ただ、自陣に引いてブロックを構えることは柳下監督のサッカーにおいては本来はやりたくない形であるはずである。
残留争いに巻き込まれ、勝てていない現状を打破するために現実的な戦い方を選択しているが、できることなら前線から人を捕まえることでボールを奪う本来の戦い方で戦いたいところ。
そのため、引いて構え続けるだけではなくスイッチが入ると前線から嵌め込む形で連動してボールを奪いに来る時間もある。
甲府はボール保持の際、可変を行うことが多いが可変をすれば2トップは縦関係となり、可変を行わなければ2トップ+ボールサイドのSHで嵌める形で前線からプレスを掛けていく。
前線から規制を掛け、中盤でボールを奪いショートカウンターを仕掛けることが金沢の狙いとなる。
こちらは前節の2点目の場面。
大谷が大宮のビルドアップを牽制し、丹羽がボールを奪いショートカウンターで仕留めた。
甲府のビルドアップに対してもコースを限定し、ボールを奪うことは狙ってくるため警戒が必要だ。
甲府としては両サイドで幅を取ることで、SBをロックし人に食いついてくることを逆手に取り、プレスに出てきたSH裏のスペースから前進を図りたい。
スペースを埋める意識は強くはないため、一人剥がすことが出来れば全体的にズレが生まれてくることとなる。
その際、使いたいスペースは逆サイド。
ボールサイドに全体が寄る傾向にあり、4バックということもあり逆サイドにはスペースができている。
右サイドでは関口、左サイドでは宮崎が積極的に対面の選手に仕掛けていきたい。
こちらは前回対戦時の得点場面となるが、左サイドからの仕掛けに逆サイドの関口が飛び込んで得点に繋がった。
仕掛けだけではなく、この場面のように左サイドでは荒木や野津田がローテーションしながら宮崎が仕掛けやすい状況を作ることやSBの背後を取ってからのクロスという形を作りたい。
右サイドでは関口の運動量を活かし、サイドを攻略したい。
また、先程も触れたように人に食いつく傾向にあるためポジションをローテーションさせることで目先を変化させることで誰を見るのか曖昧な状況を作りたい。
こちらは前節の失点場面。
サイドでの繋ぎの中でインサイドに走り込んだSBを捕まえられず、ペナルティエリア内への侵入を許し失点した。
荒木、野津田、宮崎でローテーションすることで似たような形は作れるだろう。
金沢は与えられたタスクには忠実であり、正攻法には強いチームだが裏をかかれると脆さを見せる。
攻撃において金沢が狙うのは高い位置で奪ってのショートカウンターとなる。
理想は敵陣でボールを奪い、前線4人でペナルティエリアの幅で攻撃を完結させること。
特に警戒しなくてはいけないのは大谷のスピード。
甲府のハイラインに対し、大谷が抜け出す形は金沢としては狙ってくるだろう。
この場面のように入れ替わられる形で抜け出されてしまうと甲府の選手で大谷のスピードについて行ける選手はいない。
そのため、ラインコントロールは慎重かつ大胆に行わなければならない。
ボールを繋いで崩していくチームではないが、栃木や秋田のようになりふり構わず前線に放り込んでくるチームではない。
ボールを持った際の金沢はSHがインサイドに入ることで前線4人がペナルティエリア幅で勝負し、SBが幅を取る。
遅攻になると金沢は繋いで中央を崩していく形よりもSBからのクロスで得点を狙っていく。
この場面のようにSBからのクロスに前線4人がエリア内に入っていく。
また、ピンポイントで味方に合わせるよりはスペースに入れていき、そのスペースに前線の選手が飛び込んでいく形を作る。
クロスに対し、人に付くだけでなくどのスペースが空いているか認知しておくことは必要だ。
クロスからの得点は多くはないが、GKとDFの間のスペースに流し込まれると事故が起きやすくはなる。
相手とボール、スペースを認知しアラートに守りたい。
前節の琉球は後半から清水と風間宏希を投入し、流れを変えた。
前々節の山形は強烈なタレントを抱え、その前の新潟は堀米やロメロフランクを投入することで選手に与えるタスクを変え戦況を変化させた。
選手交代によって試合を動かすことができるチームとの対戦が続いていたが、金沢は強度を維持するための交代が多くなりそうだ。
選手を変えることで戦い方に変化をつけるチームではなく、後から入ってきた選手がスタメンの選手よりも飛び抜けた何かを持っている選手もいない。
良くも悪くも監督の指示に忠実である。
交代によって劣勢になっていくことが多い甲府だが、交代策で優位に立てる相手ではないか。
スタメン11人の時間帯にリードし、途中交代の選手が試合を決める展開は理想的となる。
イメージとしては山形に近いチームではないか。
山形ほどの圧力や技術の高さは無いが、山形よりも割りきりがあるチームで新潟戦のように耐えることを選択することもできるチームである。
残留争いに巻き込まれている状況も含め、割りきった戦い方をされると攻めあぐねカウンターやセットプレーから失点し勝ち点を失う可能性は高まる。
焦れずに、アラートに戦わなくてはいけない試合となるだろう。
8.あとがき
前節琉球に勝ち、2連勝となったがまだまだ勝ち続けていかなくてはいけない。
6試合で失点わずか1と守備陣の奮闘が目立っているだけに攻撃陣が複数得点を挙げられれば勝ち点3を掴む可能性は高まる。
スーパーなゴールが続けて飛び出しているが、チームの狙いも嵌りチャンスも作れている。
金沢は特徴のあるチームなだけに対策は立てやすいチームと言える。
チームでチャンスを作り冷静にチャンスを仕留め、勝ち切りたい。
序盤は躍進の可能性も感じさせた金沢だが、急激な失速により残留争いに巻き込まれることとなってしまった。
前節は残留争いのライバルに2点リードを奪いながら勝ちきれなかったことは痛かった。
だが、甲府が勝てなかった新潟相手に次の試合で勝ちきったように弱いチームではない。
次節以降勝ち点の近い相手との対戦が続くだけに上位争いをしている甲府を倒し、弾みが付く一戦としたい。
今節含め、残り9試合チームと共に最後まで走り続けます。
お付き合いいただけると幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。